【第48話:名探偵】
「えっと……今何と……?」
間違いであって欲しいと思いながら聞き返してみるが、返ってきたのは、
「ビアンカさんはこの国の第一王女よ~。この国の王位継承権第一位だからゆくゆくは女王様ね~」
後の女王様だという更なら衝撃の情報だった。
この国『トリアデン王国』の王様は、男女の差なく歳上で血筋の濃いものが王位を継ぐことになっているそうで、ビアンカに何か大きな問題が発生しない限り次期女王陛下なのだそうだ。
「な、なんでそんな人が学院で学生を……それに、そもそも護衛も付けずに見学ツアーの案内とか何してるんですか!?」
この国の後継者を護衛も付けずに見学ツアーの案内をさせるとか頭おかしいんじゃないのか……。
そもそも案内していたのがオレ達じゃ無かったら命の危険もあったはずだ。
「待って! 私がこの国の第一王女『ゼシカ・フォン・トリアデン』なのは事実だけど、この事実を知っているのは学院長と王様だけなの! 今回の件で私は命を救ってもらったようなものですし、迷惑をかけるつもりはないわ!」
何でも学院までの送り迎えは護衛付きの馬車で来てるようだし、学院内で危険に晒されるのが想定外だったようだ。
「そうですか……でも正直驚きました。ずっとビアンカさん……ゼシカ様と呼んだ方が良いですね。ゼシカ様を驚かしてばかりで申し訳ないと思ってましたけど、最後に逆に心底驚かされました」
オレがそう言うとゼシカ様は一瞬悲しそうな顔になり、その後迷った素振りをしたのち、
「あ、あの! コウガ、あなた達と出会ったのは『この国の第一王女ゼシカ』ではなく『ただの優秀な学生のビアンカ』だから、ととと友達として、今まで通り『ビアンカさん』と呼んで欲しい! いや、むしろビアンカで!」
と顔を真っ赤にさせながら目を瞑って言ってきた。
オレは皆と視線を交わして頷きあうと、
「わかりました。呼び捨てはちょっと勘弁して欲しいですが……優秀な学生のビアンカさん、オレ達なんかでよければ友達になってください」
そう言って手を差し出す。
その手を取るビアンカの笑顔はとても素敵だった。
~
とりあえずビアンカさんの件が片付いたので、その後オレ達はジルの手も借りて11階に封印を施し、一度学院長室がある9階まで戻ってきていた。
封印結界はウィンドアさんがすると一日がかりらしいのだが、何をどうやったのかジルがサポートして5秒で完成させた。どうやったのかとかはもうオレには聞かないで欲しい……。
「お婆ちゃん。それで何故封印結界が解かれていたのかはわかったのですか?」
リルラが、ウィンドアさんに淹れて貰った蜂蜜入り紅茶を美味しそうに啜りながら問いかける。
「そうね~。今日の見回り担当がドアンゴ先生なので彼が一番怪しいのですけれど、確証がないわね~。そもそもドアンゴ先生に私の結界が解けるとも思えないのですけど~?」
不思議ね~とマイペースなウィンドアさん。
≪うむ。犯人はそのドアンゴとか言う男で間違いないぞ≫
ジルは千里眼で確認した事を皆に説明する。
「あららら? ジル様にかかったらどんな難事件でも一瞬で解決ね~。名探偵ジルさんね~」
そりゃぁ、ジルの千里眼があれば、どんな名探偵にも負けないだろう……。
「それでドアンゴ先生と言う人が犯人なのは良いとして、目的は何なのです? ……にゃ」
≪うむ。恐らくだが魔族どもにたぶらかされておるようだ≫
ジルの話を聞いてみると、何でもそのドアンゴ先生とやらは物品鑑定のギフトを持っていて、その能力を魔族に目を付けられ、高額の報酬と引き換えにとある物を持ち出すように取引を持ちかけられたようだ。
「もしかしてそのとある物って!?」
ビアンカに心当たりがあるのか、少し慌てた様子だ。
「そうね~。私たちより魔法が得意な魔族が欲しがるような物と言えば、ビアンカさんの思っている物で間違いないんじゃないかしら~?」
ウィンドアさんもその心当たりがわかったようだが、一体なんだ?
「「ビアンカさん、それは何なの? ……にゃ」」
双子らしくハモって聞き返すリリーとルルーに、ビアンカは一瞬浮かべた嬉しそうな表情を引き締め、こうこたえるのだった。
「それは……太古より伝わる王家の秘宝『破戒の宝玉』よ」




