【第39話:消滅させるな】
結局オレ達は見学する事になり、周りを観光がてらブラブラした後、5分前になったのでさっきの受付の前まで戻ってきた。
時間までにちゃんと戻ってきたのだが……、
「遅いわよ! この学園に入るつもりなら何事ももっと余裕を持って行動しなさい!」
と言って、戻ってきたらいきなり怒られた。勿論入るつもりも全くないのだが……。
「こら! ビアンカさん、せっかく興味を持って見学を希望している人達なんですから、そう言う態度はやめなさい」
すると、さっきの受付の愛想の良いお姉さんが、その怒っている女の子を嗜める。
そんな風に言われると、若干冷やかしで来ている事に後ろめたい気持ちになる……。
「いきなりごめんなさいね~この子は根が真面目すぎてダメなのよ。もっと柔軟に行動できるようになると良いのだけど」
「そ、そんな事言われても!」
「まぁ良いわ。えっと、今日は結局見学はあなた達だけみたいだから、のびのび見学出来るわよ。この子はビアンカ。ちょっと真面目すぎるけど良い子よ。今日のあなた達の案内をするからよろしくね」
「び、ビアンカですわ。今日はあなた達の案内を担当する事になっているから、よ、よろしく」
ちょっと頬を赤く染めて照れながらそう言うと「ついて来て!」と言ってサッサと先に進んでいってしまう。
学園指定の黒いローブは着ておらず、チェックのスカートにニーソックスの制服っぽいその姿は、前世のアイドル衣装を思い出し、赤髪にサイドテールの美少女という姿と相まってちょっと見惚れてしまった。
ちなみにこちらの世界の人は非常にカラフルな髪をしている。
それは簡単に髪の色を染める事ができる魔道具が比較的安価で売られている為で、年頃の女の子は気分によって変える子もいたりする。
ただ、うちのパーティーの女性陣は今まで変えたところを見た事が無い。
リルラは黒髪ロングでそもそもその魔道具も持っていないし、リリーとルルーは一応は持っているようだが、『白き獣』の獣人としての誇りからか元の白髪ショートから変更したのをみた事がない。
ちなみにカリンは、意外な事に女の子らしくよく髪型も色も変えて楽しんでいる。緑系がお気に入りのようで一番よく見かけるのだが、髪型や色が少しでも変わっているのに気付かないと不機嫌になるのは勘弁して欲しい。緑のトーンを1段階下げたとか言われてもわかりません……。
「コウガ様……ここにとびっきりの美少女がおりますのに酷いです!」
どうやらオレがちょっとビアンカに見惚れていたのがバレたようで、リルラが拗ねて腰に抱きついてくる。
リルラも純和風エルフ(ややこしい)の美少女といった感じで可愛いのだが、ちょっとまだ幼いからな。どちらかと言えば妹みたいな可愛さだ。
「リリー。今からでも髪を染めると言うのも再考しないと……にゃ」
「ルルー。それより私たちももう少し服装に気を使う方が先かも……にゃ」
二人も何を張り合っているんだ……。
「二人とも十分綺麗だからそのままで……」
どの程度かまではわからないが、二人がオレに好意を抱いてくれているというのは、さすがにひと月以上も一緒に過ごせばオレでもわかる。
でも、オレも年頃の男の子なわけで、凄い可愛い子や綺麗な子に目が行ってしまうぐらいは許してくれないだろうか。ダメ?
「何をしていますの!! 早くこっちに来てください」
オレ達が中々こないのでビアンカが怒り出したようだ。あれ? 彼女は最初からずっと怒ってるんだっけ。
~
ビアンカの案内でオレ達は1階から3階までの学院の施設を順に見せて貰っていた。
この塔は直径300メートルほどもある丸型のフロアで、階によってその高さが違う構造になっていた。
本当は上の階を見て見たかったのだが、4階から9階までは魔法学の研究機関が入っているので見れないそうだ。
ただ、10階は吹き抜けで大きなホールになっているようで、そこは後で見せて貰えるらしい。
今日は学院は休みのようで、教室に生徒はほとんどおらず、魔法の実習室などで何人かの生徒が的に向かって攻撃魔法を撃って練習していたぐらいで、これと言ったものは無かった。
ただ、材質が何かわからないような実習室の壁や不思議なオブジェ、魔物がポップするポイントに結界が張られていたりと、見てて飽きる事は無かった。
~
オレ達が1階から3階までの一通りの見学を終えた時、ビアンカが一人の男性に話しかけられた。
「ビアンカさんですかぁ。休みだと言うのに今日も登校しているのですかぁ。やはり優等生は違いますねぇ」
その男はどうやら教師のようなのだが、ビアンカやうちの女性陣を足の先から舐めるように見る視線がいやらしく、ちょっとオレ達は不快な気分だった。
「ドアンゴ先生……。今日は見学ツアーの案内役を受けていますので」
「ほう……その子たちですか……ん!?」
「どうされたのですか?」
そのドアンゴと呼ばれた教師は、オレが背中に背負っている槍を見て驚いたように見えた。
オレの装備は全てジルに頼んで隠蔽と偽装の魔法をかけてもらっているのだが、もしかして何か気付かれたのだろうか?
ジルも同じ隠蔽の魔法で隠れているのだが、こちらは気付かれていないようなのだがどういう事だ。
オレが疑問に思っていると、オレにだけ聞こえるようにジルが指向性を持った魔法音声で話しかけてきた。
≪主よ。どうやらその男、物品鑑定系のギフトを持っているようだ。気を付ける価値もないような強さの男だが一応その槍の価値を見抜かれたかも知れぬ。消滅させておくか?≫
「ちょ!? 消滅させるなー!!」
思わず大声で突っ込んでしまった……。
「きゃ!? 急に大声上げないでください! いったい何ですの!?」
「えっと……すみません……」
何か理不尽だ……。
「それじゃぁドアンゴ先生、まだ案内が残っていますので失礼します」
ビアンカもこの教師は苦手なようで、サッサと話を終わらせると歩いて行ってしまう。
オレ達もあまり関わりを持ちたくない相手だったので、軽く会釈だけしてビアンカの後を追うのだった。
~
気分を切り替え、今は最後の大ホールに向かっているのだが、
「うわぁ! この魔道具面白いですね!」
皆にはそこへ向かう為の魔道具が今までで一番ウケていた。
「これは昇降魔道具ですわ。10日1回は魔力を充填しないといけないですけど、とても便利でしょ?」
ビアンカは自身の通う学院の設備が褒められたのが嬉しいのか、ちょっと嬉しそうに説明している。
「でも……どうして自分で飛ばないのでしょうか?」
首をコテんとした仕草は非常に可愛いのだが……また常識の無さを披露している……。
「へ? 自分で飛ぶってどういう事ですの?」
「ん~? そのままなのですが……見せた方が早いですね。こうやって「ちょっと待て!?」」
「ふきゃ!?」
オレはやからしそうになっているリルラの頭を上から強引に抑え込み、そのまま髪をわしゃわしゃしてやる。
「こ、コウガ様! な、何ですか!? ちょ、ちょっとやめて下さい~!?」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに抵抗するリルラだったが、オレは放置してビアンカにフォローを入れる。
「あぁ! みんな空飛べたらこの魔道具の無い建物でも便利なのになぁって話です!」
この大陸で魔法で空を飛べるような魔法使いは、いずれも大陸中に名を馳せるような大魔法使いだけだ。
絶対面倒な事になるのがわかっているので、何とか阻止した。
「ん? 何でリリーとルルーは頭をこっちに突き出しているんだ……」
「「ちょっと……なんでもない……にゃ」」
何をしたいんだか……。
「何か良くわからないですけど、まぁいいですわ。もう着きますわよ」
オレ達が身内で何かわたわたしているので、ビアンカが不思議そうにしていたが、どうやらもう目的の10階に着くようだ。
「さぁ、ここが魔法研究の発表などを行う『王立ウィンドア魔法学院』自慢の大ホールですわよ」
そう言って自慢げな大きな手振りで紹介した先、扉の向こうには無数の魔物が蠢いていた。
「やっぱりカリンのお薦めは……」
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ちょっと思う所ありまして、タイトルを
『異世界の、、、』から『槍使いの、、、』に
改題しました。
執筆は今後も何も変わらないですが、これからも
ご愛読よろしくお願いします(≧∇≦)
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