【第22話:リルラなんとかかんとか】
オレは自分の左手の甲に浮かび上がった紋章をボーっと眺めていた。
そこには確かに『繋がり』を感じる。
「やっぱり……テイム成功してるよな……」
そう呟いた時だった。
≪そのようだ。まずは主よ。我の意識を呼び戻してくれた事に感謝する≫
「え!? 話せるのか!?」
オレはまさか返事が返ってくるとは思っていなくて驚きの声をあげる。
≪無論。このような姿なので魔法で発しているがな。それにしても永い夢を見る事になってしまった……≫
「永い夢?」
≪そうだな。本当に永い永い夢を見る事になった。昔、邪神に堕ちた神がおってな。救う事が出来なかった故、我自らが滅してやったのだ。しかし、存在を散らす最期の力を使って『獣堕ち』の呪いをかけられてしまってな。今更だが油断さえしなければな……。その後は意識が混濁してね。獣のようにずっと森を彷徨っていたというわけだ≫
凄い話だ。それにしても伝説に残っている『神殺しの竜』って言うのは本当だったのだな。
だけど、伝えられている伝説と善悪が逆だったようだ。
しかも、まさかあの邪竜『ジルニトラ』がこんな紳士的な竜だなんて誰も予想だに出来ないだろう。
それにしても……少し冷静になってくると神をも殺す古代竜とか一個人が所有してしまってよいのだろうか……。
「ちょ、ちょっと待って! あなた様は何で普通に邪竜と話なんてしてるのですか!?」
オレがどうしよう解放した方がよいのかな? とか考え始めた時、状況がまだ飲み込めていない巫女装束のエルフが突然会話に割り込んでくる。
そう言えば助けたのに放置してした……。
≪ハイエルフのお嬢さん。さっきは済まなかった。記憶が混濁しているが、その歳であの大精霊と契約を交わすとは中々の才能のようだ≫
そう言って暖かい目で巫女装束のエルフを覗き込む。
「ひぃぃぃぃ!?」
でも、巨大な顔を目の前まで近づけたものだから、変な悲鳴をあげてしまっている。
涙目になってるのがちょっと可愛いのは内緒だ。
「大丈夫だよ。オレは【竜を従えし者】でこの邪竜『ジルニトラ』をテイムしたから悪い事はさせないよ」
≪じゃ、邪竜だと……!?≫
自分が邪竜と呼ばれている事に何故かショックを受けている。邪竜と呼ばれている事、知らなかったのね……。
邪竜『ジルニトラ』と言えば、世界中の人が知ってるぐらい悪名高いなんだが、今はそっとしておいてあげよう。
「邪竜をテイム!? なななな何者なのですか!?」
ぼぼぼぼ冒険者です。
「何者ですかと言われても困るけど、とりあえず冒険者やってるコウガだ。よろしくね」
「ぼぼぼぼ冒険者って何!? 邪竜より強いのですか!?」
何故心の中の呟きがわかった!?
「いやいや……神代から生きる古代竜なんて天地がひっくり返っても勝てないから。普通のドラゴンでも勝てる冒険者なんて数えるほどしかいないんじゃないかな? しかし、冒険者を知らないって君こそいったい何者? さっきも大精霊とか使役してたし、どうして『ジルニトラ』に戦いを挑んだの?」
「失礼しました! 命を助けて貰ったのに申し遅れました。私はハイエルフのはじまりの4精霊の一人、偉大なる風のクロンヘイムを祖先に持つ『リルラリルス・ウィンドア・スクラーサ・ソリテス・クロンヘイム』と言います。コウガ様は気軽にリリーとお呼びください。親しい者は皆そう呼んでおります」
そう言って、何故か少し頬を赤く染めるのは可愛いのだが……名前が長い……そして掟破りの名前被り……。
「あと冒険者が何かわかりませんが、森から出た事がないからか、1000年ほど精霊界にいたからではないでしょうか?」
「わかった。それでリルラ。君は古代竜とどういう因縁なの?」
仇敵とか言ってたし、一族が滅ぼされたとかだろうか?
「え? リルラ? ……あ、はい。私は1200年前に当時私が育てていた『精霊宿る花』の花壇を踏みつぶされたのです!」
なんて酷い事を……と少し目に涙を貯めているが、いまいちオレの頭の理解が追い付かない……。
しかも見た目は10歳なるかならないかの可愛い系美少女なんだけど、いくつなんだろう? 少なくとも1200歳以上だよね……?
「その……なんだ。『精霊宿る花』ってのは貴重なものなのか?」
「私たちのエルフの隠れ里にはいっぱいありますよ?」
「え?」
「え?」
後で聞いた話だが『精霊宿る花』ってのは本当に里なら数えきれないぐらい自生しているらしい。
しかも精霊が宿ってる特殊な植物……と言う訳でもなく、精霊が宿りそうなほど神秘的で綺麗な花という事だった。
ちなみにエルフが植物は大切に扱うのは有名な話だが、全ての植物にこういう思い入れがあるわけではなく、ここらに群生している杉のような木は別に切られても何とも思わないらしい。
うん。わからん。これはきっと種族や文化による感性の違いなんだろう。
「そ、そうか。それはまた酷い事をされたな……」
「はい。ですがコウガ様との話を聞く限り、ジルニトラ様は呪いによって自我を封印されていたとの事ですし、水に流します」
すると、話を聞いていたジルニトラが、
≪そのような事をしたのか。自我がなかったとはいえ悪い事をした≫
と、巨大な頭をさげて、またリルラに悲鳴をあげさせていたのはご愛敬だろう。
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【祝テイム】とうとうドラゴンをテイムしました~!(*'▽')
GW中の連続投稿はこれで最後になります。
明日からはほぼ毎日1話更新の予定ですのでよろしくお願います!
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