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【旧版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~  作者: こげ丸


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【第21話:その名はジルニトラ】

 超常の戦いが始まった。


 風の大精霊『シグルステンペスト』の光り輝く白き風は、意志を持って邪竜『ジルニトラ』に襲い掛かる。

 白き風はその意志によって切り裂き、抉り、更にはそのジルニトラの巨体をも絡めとろうと纏わりつく。

 風でありながら実体を持ち、その圧倒的な質量で『ジルニトラ』の自由は奪われたかに見えた。


 しかし、何も起こらなかった。


 ジルニトラの眼が輝いたと思った瞬間、全ての白き風は消滅していた。


 その後はただただ『圧倒的』だった。


 戦いにならなかった。


 ジルニトラがその爪を振るうだけで大精霊を守るはずだった最上位の精霊結界は砕け散り、その尾を振るうだけで音速の動きは捉えられ、ただ牙を突き立てるだけでシグルステンペストは光の粒子となって精霊界に強制帰還させられたのだ。


「そ、そんな……私が千年の時を費やしてようやく契約を交わした大精霊が一瞬で……」


 巫女装束の女の子は完全に心が折れた様子で、力なくうな垂れ両ひざをつき、


 ……儚い嘲笑を浮かべて一筋の涙を流していた……。


 オレはその涙でようやく我に返る。

 あまりの想像の埒外な出来事の連続に、情けない事に身動き一つ取れずにいた。


 不謹慎な事は重々承知しているが、オレはその儚げな姿を見て綺麗だと思ってしまった。

 助けなければと、助けたいと思ってしまった。


 そしてそう思った時にはもう体が勝手に動いていた。

 無意識に【月歩】を使い、女の子の前まで躍り出ると、驚きに目を見開く女の子を抱き、そのまま連続で【月歩】を用いて限界の速度を超えて邪竜の尾のひとふりを何とかかわす。


 そして岩陰に女の子をおろすと、今度は邪竜の足元に向けて【月歩】を使用する。

 ジルニトラに取ってはオレなんて虫けら同然だっただろう。

 実際ジルニトラの攻撃がかすりでもすれば、いや、その攻撃の余波だけでもオレの身体は消し飛ぶ。


 だが、その油断が、その圧倒的な力の差が、オレに1回限りのチャンスをくれた。


【ギフト:竜を従えし者】

 この者あらゆる竜を従える事が出来る。


「その説明文本物だろうな? 信じるぜ?」


 恐怖を紛らわすためか思わず軽口がこぼれたが、こんな分の悪い懸けをするんだ。これぐらいは許されるだろ?


 そして……祈るような気持ちでギフトを使用する。

 オレの体が薄っすらと光を発すると、伸ばした左腕から放たれた螺旋状の光が邪竜『ジルニトラ』に向かって行き……漆黒の身体に吸い込まれた。


「・・・・・・」


 邪竜がオレを見つめていた。


 邪竜ジルニトラの眉間には先ほどまで無かったはずの紋章が浮かんでいる。


 そしてその同じ紋章がオレの左手の甲にも……。


「成功……したのか?」



 ~時は少し遡り、リリー視点~


「やっと可能性がある人を見つけたと思ったのに『神獣の試練』を早めるだなんて……」


「そうだね。『堕ちた獣』を倒す希望がようやく見えたのに……」


 私たちはコウガと別れた次の日、北門の側にあるらしいとある宿に向かっていた。

 この街に来ている灰色狼の獣人『カウス』と言う人物と会う為です。


「ここで連れ戻されるわけにはいかない。カウスならわかってくれるはず……」


「今の私たち2人だけで挑んでも『神獣の試練』を乗り越えれるとは思えない……」


 ~


 3ヶ月前の事でした。

 私たち姉妹が『神獣の使徒』となる儀式が行われるはずだったその日、神獣『セツナ』様が忽然と姿を消されたのです。


 神獣『セツナ』様とは私たち獣人族が暮らす『猛き森』の守り神で、『神獣の使徒』とは私たち『白き獣』の獣人族に代々受け継がれている称号です。

 この称号を持つ者は『神獣の試練』に挑む事が許されており、見事乗り越えれば『神獣の加護』を授かる事が出来ると言われています。


 話を戻します。セツナ様が姿を消された次の日でした。

 灰色狼の獣人族族長『ゲウロ』が、族長会議の場にて「セツナ様が姿を消されたのはお前たち姉妹の力が足りないからだ。だからその強さの証を立てろ」と、無理やり1年後に『神獣の試練』を受ける事を承諾させられてしまったのです。


「それが、いきなり次の『双生の満月』に試練を行うとか急すぎます……」


 そのゲウロから先日手紙が届いたのですが、次の『双生の満月』、今日からだと3日後に『神獣の試練』を行うから迎えをやると書かれていたのです。


「失礼。ここにカウスという者が泊っているかと思うのです……にゃ」


 ルルーが言葉足らずに宿の主人に尋ねたのですが、今ちょうど奥の広間にいるので案内してくれるそうです。

 この街では珍しい。この宿の主人は犬の獣人のようです。


 しかし、ここで違和感に気付くべきでした。


「やぁ、リリー様、ルルー様。お迎えにあがりましたよ」


 そう言って出迎えてくれたカウスの声は背後から聞こえたのです。

 突然現れた気配に驚き振り向こうとしましたが、後頭部を殴られ私たちは意識を刈り取られてしまったのでした。


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※旧版ではなく、ぜひこちらをお読みください!
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