【第2話:秘密じゃない秘密の遊び場】
朝、目覚めると見知らぬ天井があった。
いや。見知らぬというと語弊があるか?
紅雅 穿輝としては知らない天井があった。
寝ているのは粗末なベッド。
家は少し古びているが、ログハウスのような感じで元の世界の感覚で言うと少し洒落た感じに見える。
紅雅 穿輝としてではなく、この『異世界クラフトス』でコウガとして育ったオレが5年間過ごした家だ。
ここは名も無き小さな山間の村。『アデリア大陸』の小国『トリアデン王国』の最西端にある村だ。
一番近い『地方都市ドアラ』でも徒歩で1週間はかかるような所で、めったに行商人も訪れない辺鄙な場所にあった。
頭がまだ少し混乱しているが、ようやく落ち着いてきた。
今日はコウガとしての5歳の誕生日の朝。
起きたら当たり前のように前世である紅雅 穿輝としての記憶が蘇っていて、幼い5歳までのオレの記憶や感情と上手く融合されたような不思議な感じだ。
0歳から前世の記憶があったら正直耐えれなかったかもしれないので、これは正直ありがたかった。主にオムツ的な所とか。
ちなみに女神様のイタズラなのか、前世で苗字だった「紅雅」が今世では名前として「コウガ」と名付けられていた。
若干思うところはあるが、前世でも下の名前で呼ぶのは早くに亡くなった両親だけだったので、コウガと呼ばれる事自体はしっくりくる。
そんな事を考えていると扉が開いて母親が部屋に入ってきた。
「あら?コウガが先に起きてるなんて珍しい事もあるのね。やっぱり誕生日だからかしら?」
と言って、ふふふと笑みを浮かべる。
自分の親をつかまえて言うのも何だが、すごい美人だ。
これで元A級冒険者で槍術の達人だと言うのだから信じられない。
村の近くで魔物が見つかったりすると、だいたいいつも母さんが退治している。
「何惚けているの? まだ寝ぼけているのかな?」
「え、えっと、おはよう母さん。もうご飯出来た?」
オレは前世の記憶が蘇ったせいで少し恥ずかしかったが、今まで通り接することにする。
「コウガが朝ごはんの事聞くなんて珍しいわね。いつも小食で朝ごはん食べたがらないのに?」
今まで通りというのは案外難しいようだ……。
前世で大食いだったから、ちょうど普通ぐらいになったかもしれない。
こうしてコウガとしてのいつもの日常は、いつもと違う朝を迎えて新たに動き出すのだった。
~
それから数日の時が流れた。
先の誕生日では練習用の木製の槍を貰った。
記憶が戻る前に母さんと同じような槍が欲しいと駄々をこねていたので、ちゃんとした素材で作ってくれたようだった。
ありがたくこれからこれを使って練習しよう。
そして、異世界人には必ず贈られると言うギフトが何なのか調べてみた。
母さんや村の人たちに聞いてまわってようやくギフトというものが何なのか、どうすればギフトの有無やその効果が確認出来て、どうすれば使用出来るかがわかった。
オレは人に見つからないように裏山(と言っても村自体山の中だが)の秘密の遊び場に向かう。
まぁ秘密と言っても遅くなると当たり前のように母さんが迎えにくるので、実際には秘密でも何でもないのだが……。
スキルの確認だけなら別に家の中でも良かったのだが、何でもギフトを使用する時はほのかに発光するらしいし、そもそも攻撃系のギフトなども存在し、それを試すのは家の中では危ない。
ドキドキしながら歩いて5分ほど。ようやく秘密の遊び場に辿り着く。
「良し! まずはギフトの確認をしよう! ドキドキするな~♪」
オレは年甲斐もなく……いや、年相応なのかな? とにかく興奮して気持ちを抑えられずにいた。
ワクワクが止まらない!
村の人に聞いた話では、ギフトとは左手の甲に宿るそうで確認するには左手の甲を自分の額にそっと添えてこう言えば良いらしい。
「我が名はコウガ。神より授かりし贈り物、今 謹んでお受けいたします」
すると、左手の甲と額に光る紋様が浮かび上がる。
そして自然に理解した。
【ギフト:竜を従えし者】
この者、あらゆる竜を従え使役する事が出来る。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 凄い! 凄いよ! 竜! 竜だよ!」
オレは歓喜していつのまにか絶叫していた。
嬉しすぎて思わず変な踊りを踊ってしまったのは内緒だ。
「ヤバイなこれ!? 夢のドラゴンテイマーになれる!!」
聞いた話ではギフトを授かるのは100人に一人ぐらいはいるそうだが、普通のギフトは少し力が強くなったり、耐性がついたりする程度らしい。
その中でも強いとされているギフトは、強力な剣技や特殊な魔法が使えるようになるものと聞いていたので、オレはこの手のギフトが貰えるものと思っていた。
「これって勇者の聖剣を召喚する【聖剣を託されし者】や、賢者の全ての詠唱魔法を使用可能になる【魔法の真理】並に凄いギフトなんじゃ!」
まぁでも勇者やSランク冒険者は並のドラゴンなら一人で倒すそうだから、その辺りの規格外の人達程ではないか。
「それでも凄いや!」
オレは興奮を抑えきれなくて、誰かにこの事を伝えたくて母さんの元に走って向かう。
でも、オレはこの時興奮で気づいていなかった。
このギフトの落とし穴に。
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5話ぐらいまではサクサク公開予定です☆
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