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【第18話:腹いてぇ】

黒闇穿天(こくあんせんてん)流槍術(りゅうそうじゅつ)、【雷鳴(らいめい)】!」


 オレは逃げる隙を作る為に【雷鳴(らいめい)】を放ってアシッドワイバーンの顔面に一撃を喰らわすが、麻痺毒で鈍ったオレの攻撃などほとんど効いていなかった。

 ただ、それでも驚かすぐらいの効果はあったようで、オレはその隙をついて、


黒闇穿天(こくあんせんてん)流槍術(りゅうそうじゅつ)、【月歩(げっぽ)】!」


 アシッドワイバーンの視線を切る為に【月歩(げっぽ)】を連続で使用して一気に距離を取る。


「ぐっ!? がっ!?」


 しかし、5回目の使用に失敗して盛大に吹っ飛んでしまう。

 発動に失敗するのなんていつぶりだろうとぼんやり考えつつも、大きめの岩の後ろに飛び込むように身を潜める。


 運良くアシッドワイバーンはオレを見失ったようだが、所かまわず周りに当たり散らしている。


「くっ、はた迷惑な奴だ……」


 かなり離れたにもかかわらず、尻尾で薙ぎ払った大木がすぐ横を吹っ飛んでいくのに冷や汗をたらす。


「そうだ。今のうちに『クルトの実』を……」


 オレは村の皆に餞別でもらったクルトの実を懐から一粒取り出すと一気に噛み砕く。

 すると先ほどまでの全身の痛みが、まるで嘘のようにみるみるひいていく。


「ほんとに村の皆に感謝しないとだな。でも、痺れまでは取れないか……」


 全身を襲っていた焼けるような痛みは亡くなったが、麻痺効果まではクルトの実は治してくれなかった。

 あと麻痺さえ取れれば逃げるだけなら何とかなると思うのだが、贅沢は言ってられない。

 オレは少しでもアシッドワイバーンから距離を取る為、既に痺れ始めた足に無理やり力を入れ、槍を杖代わりに歩き出す。


「諦めの悪い奴だな。さっさとどっかいけよ」


 オレは悪態をつきながらも身を低くかがめながら歩を進める。


 それから5分、麻痺に耐えながらも何とか見つからずにかなりの距離を取る事が出来た。

 だが、目の前には深い遺構の穴が、道を塞ぐように口を開けていた。


「くそっ! ついてない……」


 100m以上迂回しなければ、横に長く伸びる穴は迂回できそうにない。

 それでも文句を言っていても何も好転しないので、オレはまた麻痺に耐えつつ歩き出した。


 ~


 ようやく穴を迂回し、少し希望の光が見えたその時、光は絶望に塗り替えられた。


 目の前に舞い下りる巨躯。

 獰猛な瞳はオレを捉え、大きく開いた口には見覚えのある鋭い歯が並んでいた。


 もう奥義を繰り出す力は残っていない。


 頼みの槍も先ほど受けたアシッドブレスで腐食し、恐らくあと一撃でも攻撃を受ければ砕け散るだろう。


 それでも……あの地獄の特訓の日々がオレに生きろと強制してくる。


「お前になんて食われてやるもんか。逃げ切ってぜってーリベンジしてやる!」


 勝ち誇り見下すその眼を睨み返す。

 この状況じゃ絶対に勝てないだろう。100回戦っても100回負ける。

 でも、逃げ切るぐらいはしてみせるさ。


 オレは懐にしまってあった残りのクルトの実を口に突っ込むと、槍を棒高跳びの棒のようにつかって深い遺構の穴に飛び降りた。



「痛っって!? ぐあっ! がはっ! げっ! ぐほっ! ぐがっ!?」


 オレは左右の壁に何度も何度もぶつかりながら底の見えない穴に落ちていく。


 そして痛みが我慢できなくなるたびに、腕や脚など骨が折れるたびに、口の中のクルトの実を噛み砕く。


「いっそ死にてぇ……ぐがっ!? ぶほっ!?」


 そして口に含んだクルトの実が最後の一粒になった直後、


 ドガッ!!??


 ようやく穴の底に叩きつけられた(辿り着いた)


 ~


 オレは口に残った最後のクルトの実を噛み砕く。


「ははは……」


 思わず笑いがこぼれた。

 骨折などは治っているようだが、もう体はボロボロだ。麻痺も残っているので体も動かない。


 でも……。


 それでも……生きてる。


「ははは……ははははは……生きてる……生きてるぞ」


 そこからはもう何かとにかく可笑しくて、笑いが止まらなかった。


「はは、ははは、笑いすぎて腹いてぇ……」


 オレはアシッドワイバーンから逃げ切ってやった。


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逃げるが勝ち!(キリッ)(; ・`д・´)


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