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【第15話:試したいけど試さない】

 パーティー名が『恒久(こうきゅう)転生竜(てんせいりゅう)』に決まったオレ達は、カリンにはじめての依頼を斡旋してもらっていた。


「それじゃぁ、こんな依頼はドウデスか?」


 そう言って依頼書をオレ達に広げて見せてくれる。


「フォレストウルフの群れの討伐? ……にゃ」


「ハイ。ドウデスか?コウガさん達のさっきの動きみる限り余裕かと思いマスよ」


 何かカリンの様子がおかしい……。


「カリン~? なんか依頼書の上に変な姿勢で手を置いて、一部見えなくしてるのは何故だ?」


「ギクっ!?」


 口に出してギクって言う奴はじめて見るな。

 そしてギクってしてる隙をついて手を払いのけると、そこには冒険者ランクC級以上の文字が……。


「アハハハ。だ、大丈夫ですって。こっそり依頼達成しちゃえばわかりませんよ」


 受付嬢が言うセリフじゃない。でも……。


「まぁカリンが良いのなら受けてみようか」


「え? 意外ですね。良いんですか? ……にゃ」


「あぁ。フォレストウルフの群れなら村で何度か一人で倒している」


 一瞬リリーとルルーは驚くが、それなら異論はありませんと言うので受けてしまう事にした。


「そうこなくちゃ! じゃぁ依頼受託状態にしておきますので、よろしくお願いしますね。あ! これ目撃報告のあった場所の地図です!」


 こうしてオレ達の初依頼は「フォレストウルフの群れ討伐」を受ける事になった。

 そしてこの後、難解な宝の地図の解読が一番苦労したのは言うまでもなかった。


 ~


「ようやく群れを見つけた……にゃ」


「獣人なのに地図を見ながら探していたら危うく森で迷う所だった……にゃ」


 オレ以上に森に慣れ親しんでいる獣人の二人を惑わす地図とは中々凄いと思うんだ。

 オレ達は南門から出たのだが、まさか地図が西を上にして描かれているとは想定外だった。

 実際にはそのトリックに気付いたら、東門付近から森に入って南下した辺りで何とかフォレストウルフの群れを発見出来た。


「数は15匹って所か?」


「そうですね。ところでコウガ。私達の実力をお見せしたいので、ここは任せて貰っても良いですか? ……にゃ」


「ん~わかった。何かあればすぐにオレも加わるから」


 さっきの訓練での動きを見る限り、二人でなら問題ないだろうと判断してオレは了承する。


「ルルー、じゃぁ行きますよ……にゃ」


「リリー、わかった……にゃ」


 2人に視線をやると、体を薄く発光させて凄い速度で駆け出していく。


「おぉ、中々の速さだな」


 2人は瞬く間にフォレストウルフの群れに接近すると、二刀の短剣でまるで舞でも踊るように次々とフォレストウルフの急所を斬り裂き、黒い霧に変えていく。


 その動きの基本は円。


 クルクルと舞うような足運びで、二人の立ち位置を絶えずスイッチしながらフォレストウルフまで近寄り、一撃を加えると、またクルリと回って追撃を避け、そして新たな獲物に近づき首を搔き切る。


 結局オレの出る幕はなく、15匹のフォレストウルフは一矢も報いる事叶わず、5分ほどで全て黒い霧となって霧散したのだった。


「凄い! とても鮮やかな手並みだったよ」


 フォレストウルフは1匹だけだとEランクの魔物だ。

 それが群れると高度な連携をとって襲ってくるので、Cランクとされている。

 だからリリーとルルーの2人はさらに高度な連携で上回り、それによって常に1対1の状況を作り出す事で単なるEランクの魔物として葬ったのだ。


 オレのように力技で圧倒するのとはまた違うベクトルの強さだった。


「「お粗末さまでした……にゃ」」


「舞をみているようで本当に魅了されるような戦い方だったよ。お疲れ様」


 ちょっと褒められて嬉しいのか、少し頬を赤く染め、尻尾がゆっさゆっさと揺れている。

 尻尾も気になるが、それよりも気になる事がある。

 さっきのはやっぱりギフトだろうか?


「どうしました? ……にゃ」


「答えたくなければ答えなくて構わないんだが、さっきのはギフトを使ったのか?」


「はい。コウガなら教えても構いませんよ。あれは【共鳴の舞】と言うギフトです」


 話を聞くとこのような効果のギフトらしい。


【ギフト:共鳴の舞】

 同じギフトを持つものと共闘すると、あらゆる能力を共鳴させて増幅し、五感を共有出来る。


 中々ユニークなギフトだ。単体では何の能力もないが、上手く使いこなせばかなり強力だろう。


「このギフトを使えば身体能力があがるだけでなく、五感を共有させる事で連携を強化し、全ての死角を無くす事ができます……にゃ」


「五感が共有出来ますので、夜の戦いでも使えると思いますよ? 試してみます? ……にゃ」


「へ? ……いやいやいや!? 試さないです!」


 試したいけど試さないです!


「か、からかうんじゃない……村に同世代の女の子いなかったからそういうの苦手なんだ……」


 こういう話は苦手だ。普段は平気なのに意識するとついぎこちなくなってしまう。


「ふふふ。強い姿も良いけど、困ってる姿も良いですね。ますますコウガの事が気に入りました……にゃ」


「ふふふ。同世代で私達より強い人と初めて会った。獣人族は本能のままに強い人に惹かれる……にゃ」


 なんか話がどんどん苦手な方に行きそうなので、オレは脈絡もなく違う話題を振って逃げるようにギルドに報告に向かったのだった。


 ~


 ギルドに着いて報告に向かうと、まさか半日で終わらせてくるとは思ってなかったみたいで、カリンは声をあげて驚いていた。

 でもって、驚いた勢いそのままに、


「半日もかけずにフォレストウルフの群れ討伐してきたんですか!?」


 とか大声で言うものだから、オレ達にCランクの依頼を斡旋したのが上司にバレて怒られていた。

 でも、こっそりこっちにピースサインしてるからきっと大丈夫だろう……。


 ~待つこと10分~


「はい。達成完了の確認が出来ましたのでギルドカードをお返しします。それとこれが今回の達成報酬です」


 そう言ってギルドカードと報酬の金貨1枚と銀貨5枚を渡してくる。

 達成報酬だけで1人5万円ほどの稼ぎで、これに魔石も売ればもうすこしお金になる。

 半日で1人5万と思えば美味しいが、命がかかっているのでこんなものだろうか。


 ちなみに討伐確認は、ギルドカードに倒した魔物の魔力紋が記録される仕組みがあるので、それでチェックしている。

 魔物を倒すと魔力の一部が吸収されてステータスに反映されるのだが、ギルドカードはそれを記録しているそうだ。


「あれ? ギルドカード変わってないか?」


「「ほんとだ……にゃ」」


 返して貰ったギルドカードは、さっきまで持ってた鉄製のものから銅製のものに変えられていた。


「はい。さすがにCランクの依頼をたった3人で半日かからず終わらせる人達を、このままE級冒険者のままにしておく事は出来ないと。上司がギルドマスターに相談してギルマス権限でD級にしてくれました!」


 こうしてオレ達『恒久(こうきゅう)転生竜(てんせいりゅう)』は、はじめての依頼で一人前の冒険者と言われるD級冒険者になったのだった。


 何か色々展開が早すぎないだろうか……。


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