【第14話:名前に罪はない】
オレは今、ギルドの食事スペースで猫獣人の『リリー』と『ルルー』の2人の女の子と一緒に食事をしていた。
ここは軽食しかないようだが、このローストビーフサンドは中々ボリュームがある上に安くて美味い!
「それで……私たちとパーティー組むの嫌? ……にゃ」
初めて接する獣人と言う事に目がいっていたが、2人ともボーイッシュな超がつく美少女で、スタイリッシュな革鎧からは引き締まったスタイルの良さも見てとれた。
そんな2人に上目遣いに「ダメ? ……にゃ」って聞かれて断れる男の子がいるんだろうか?
「えっと……嫌ってわけじゃないし、ダメってわけでもないんだけど……パーティー組もうか……」
いや! いないと断言しておこう!
「「じゃぁ決まりだね! あらためてよろしく! ……にゃ」」
なんか、あれよあれよと言う間にパーティー組む事に決まってしまった。
ただ、このパーティーはオレにとってもかなり良い話だった。
双子の猫耳獣人の美少女という容姿は置いておいても、さっきの訓練での動きを見る限り、その辺にいる冒険者よりずっと強そうだったからだ。
おまけに話をしてみると、彼女たちはシーフや狩人としても優秀なようで、これからの冒険で頼りになりそうだった。
~
「良し。これでオレたちは同じパーティーの仲間だね。これから頑張って行こう!」
「「はい。これから頑張ってランクをあげましょう! ……にゃ」」
パーティーの組み方は冊子にも載っていたし、母さんや村の自警団でも組んだ事があったので魔力を交わしてサクッと結成を終える。
「ところでこの後どうする? オレはさっそく依頼を受けてみたいって思ってるんだけど?」
オレはリリーとルルーに午後からの予定を聞いてみる。
予定があるならソロの依頼でも受けてみようと思っている。
「私たちは午後からも空いているから大丈夫。一緒に依頼を受けましょ……にゃ」
「それと、連絡とか取りやすくしておきたいから宿の場所とか教えて欲しい……にゃ」
「わかった。じゃぁ食べ終わったらこの後初依頼を受けてみよう。あと……宿は『妖精の呼子亭』ってとこなんだけど……」
「「あれ? 私たちもその宿だよ……にゃ」」
まさかの同じ宿だった。
安いし部屋は綺麗だし料理は美味いから、あのセンスさえ許せるのなら良い宿なのか。
~
今、オレは何かの引力に引き寄せられるようにカリンに予備の受付カウンターに連れて行かれ、そこで依頼の斡旋を受けている。
冒険者ギルドの依頼は基本的に担当受付嬢から受けるルールになっている。
常時依頼と呼ばれるいつでも受け付けている依頼はボードに張り出されているが、通常の依頼はボードなどに張り出されたりはせず、担当受付嬢から斡旋してもらうしか受ける事ができない。
これは依頼主や依頼内容の秘匿、依頼のバッティングや依頼を巡っての冒険者同士のトラブルを防ぐためであり、まぁ考えてみれば妥当な運用方法だ。
「それじゃぁもうパーティー組んだんですね! じゃぁ、リリーさん、ルルーさんも私が担当になりますのでよろしくお願いしましゅ!」
そして噛み噛みなのも平常運転で、顔をまた真っ赤にしている。
「リリーよ。よろしくお願いしましゅ……にゃ」
「ルルー。よろしくお願いしましゅ……にゃ」
2人は容赦ない感じだけど、カリンも恥ずかしくて手をワタワタ振り回しながらも嬉しそうだから、案外ウマが合うのかもしれない。
「それでギルドに登録しておくパーティー名はどうされますか?」
そう言えばさっき話題にはあげたけど、まだ決めてなかったな。
「どうしよう? リリー、ルルー何か良い名前ある?」
オレは両隣に座る2人に聞いてみるのだが、帰ってきたのは、
「コウガと素敵な仲間達? ……にゃ」
「コウガwithニャー? ……にゃ」
却下しておく……。
「とりあえず却下という事で……」
「じゃぁ、コウガと……「オレの名前をパーティー名に入れるの禁止で!!」」
困ったな。良い名前が思いつかない。
みんなどうやって決めてるんだろ?
「あの……『恒久の転生竜』とかどうでしゅか……ですか?」
「え……?」
転生も竜もオレにちなんだ言葉だし、恒久は確か永久不変って意味でパーティーがずっと続いていく感じで良いかも?
カリンの案なのがちょっとアレだけど……。
「転生竜ってね。私の大好きな英雄譚に出てくる伝説上の竜なんですけど、強さもカッコ良さもコウガさん達のパーティーにぴったりかなぁって思って」
照れながら言ってくる姿は凄い破壊力のある可愛さなんだけど、カリンの案だからなぁ……。
「凄くカッコいいです! コウガはどうですか? ……にゃ」
でも、カリンの……。
「私も気に入った。コウガはどう? ……にゃ」
うん。名前に罪はない。
「そうだな。2人とも気に入ってるみたいだし、オレも結構しっくりきてるからそれにするか」
「やった! 私の案が通った♪じゃぁ『恒久の転生竜』で登録しておきますね!」
こうしてオレ達のパーティー名は『恒久の転生竜』に決まった。
ちょっと駆け出し冒険者にはすぎる名前だけど、これから頑張って名前に負けないパーティーになろうと決意するのだった。