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【第11話:どこ村?】

 オレは今、冒険者ギルド2階にある広い会議室で講義が始まるのを待っていた。


 カリンとはもう別れたのだが、さっき一緒に冒険者ギルドに着くと、いきなり上司と思われるギルド職員にゲンコツを貰って引きずられていった……。オレを待っていたので遅刻したようなのだが、いったい何をしてるんだか……。

 しかも、どうも昨日オレが頼んだ初心者講習の申し込みがちゃんと出来ていなかったようで、お説教をコンコンとされていた。


 別れ際、その上司と思われるギルド職員から「カリンをよろしくお願いします」と頭を下げられたのだが、普通よろしくお願いするのは冒険者のオレの方なのでは?

 どうも、受付担当はこれで決定したようだが、まだ一つも依頼を受けていないのに不安な未来しか見えないのは何故だろう……。


 そんなとりとめもない事を考えていると、いつの間にかギルド職員が入ってきていて講義が始まる。

 オレ以外には同郷っぽい3人組の少し年上の男たちがいるだけだ。

 初心者講習は5日に1回行われているようなので、参加人数はこんなものなのだろう。


 しかし、ギルド職員が話し始めてすぐに講義は中断される。扉が勢いよく開かれたのだ。


「「すみません! 遅れちゃいました! ……にゃ」」


 そう言って部屋に飛び込んできたのは、二人の女の子。


「まったく……冒険者にとって時間を守ると言うことは凄く大事な事なんですよ? 今後このような事は許されませんので気をつけるように」


「「はい! わかりました! ……にゃ」」


 可愛いと言うより綺麗と言った方が似合う、切れ長の目をしたそっくりな2人だった。

 間違いなく双子だろう。


 その双子は、もう一度すみませんと謝ると、少し恥ずかしそうにしながらオレの前の席に座る。


 そして……オレの目の前には綺麗な純白の髪にネコミミがちょこんと2セット並んでいた。


 若干取ってつけたような「……にゃ」って言葉が引っかかるが、転生して初めて見る他種族。

 この地方都市ドアラは辺境の都市なので獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人はあまりいないと聞いていたので、猫耳をつけた獣人にちょっと興奮するオレだった。


 ~


 講義の内容は、昨日読んだ冊子そのままだった。

 きっと冊子渡しただけだと読まない奴が多いのだろう。


「それでは鍛錬場に移動してください。すぐに実技訓練が始まりますので自前の装備などがある人は用意してから向かってください」


 講師の職員はそう告げると、さっさと先に鍛錬場に向かってしまう。


 オレも同じく鍛錬場に行くために席を立ったのだが、3人組の男達が寄ってきて双子の獣人に声をかけていた。


「なぁなぁ。お前ら獣人だろ? 獣人は戦闘能力高いってのは本当か?」


「どうだ? 俺たちとパーティー組まないか? 俺たちは村じゃ結構鳴らしてたんだ。損はさせないぜ?」


「ちょうど5人だしいいだろ? お前ら美人だしオレらがいろいろと面倒をみてやってもいいぜ?」


 もう下心丸見えだ。ただでさえチンピラのような風貌なのにニタニタして小悪党感がハンパない。


「結構よ。どうせパーティー組むなら後ろの強そうな男の子の方が100万倍マシよ……にゃ」


 最後に「……にゃ」つけるのはなんなのだ? ポリシーか?

 それよりなんか飛び火してきたぞ……。


「まぁなんだ。断られたんなら諦めなよ」


 オレがそう言うと、今度は矛先をオレに変えて恫喝してくる。


「なんだーお前はぁ? おちょくってんのか!」


「ああぁん!? どこ村のもんだよ!?」


 どこ村ってなんだ……中学生かよ!?


「喧嘩なら買ってやんぞ!」


 売ってんのそっちだから。こっち売ってないから……。


「あぁ、面倒くさいなぁ……」


 なにか昨日から色々とストレスが溜まっていたようで、気付けばそう呟いてしまっていた。


 もういいや。ちょっとだけ痛い目にあってもらおう。

 そう思った時だった。


「君たち~元気有り余ってるみたいだねぇ? 俺さぁ、今日約束あるからさっさと実技訓練終わらせたいんだよ。さっさと鍛錬場移動しないと()()()()連れてっちゃうよ?」


 いつの間にか扉にもたれるように立っていた男がそう言うと、尋常じゃない殺気を放ってきた。


「「「ひぃっ!?」」」


「「くっ!? ……にゃ」」


 男達が情けなく短い悲鳴をあげて蹲り、双子は何とか耐えるが苦悶の声をあげる。

 内心、双子の語尾を徹底するその姿に若干の感動を覚えつつ、オレも母さんに迫る殺気にちょっとビックリしていた。


 その強烈な殺気に感心してよく見てみると、男の胸元にゴールドのギルドカードがぶら下がっていた。

 どうやらA級冒険者のようだ。


「すみません。すぐに移動しますのでー」


 オレは頭をさげて謝ると、逃げるが勝ちと先に鍛錬場に移動する事にする。

 逃げるが勝ち。君子危うきに近寄らずだ。


「いったい何者だ? ……ちょっと軽く試して見るか」


 背後から何かいや~な言葉が聞こえた気がしたが、オレは気のせいであって欲しいと切に願うのだった。


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