【第106話:史上最年少】
「ちょ!? 待ってください! 領地だなんてオレ……私には荷が重すぎます!」
その後、もう少し話を聞いてみたが、トリアデン王国に貴族が統治していないような空き領地があるわけもなく、新たに街を興せと言う話だった。
無理だ……そんなの一冒険者でしかないオレに出来るわけがない!
ここは何とか王様を説得して、名誉貴族のままの昇爵ぐらいで手を打ってもらうしかない!
「新しい領地って言っても場所はどうするんですか!? それに移民だってそう簡単に集まらないですよ?」
ちゃんと無理な話だと説明すれば王様だってわかってくれるはずだ!
……そう思っていた時がオレにもありました……。
「コウガよ。お主の出身の村は確か直轄地ではないがトリアデン王国の庇護下にありながら、統治者不在だったはずだな? 『静かなる森』の名も無き村だったか? あの周辺なら開拓しても誰も文句はないはずだ」
まさかの故郷の村ですか!?
「で、でも、オレ、じゃなくて私は冒険者としての知識しかありません。領地運営などとてもじゃないですが無理です!」
≪妖精族としては全面的に使徒様の領地運営に協力させてもらいますよ~! あと、わからない事があったら女王様が何でも調べて教えてくれるって!≫
いろいろ報告する上で必要そうだったから、妖精族の代表としてセイルに姿を現して貰っていたが失敗した……。
「領地運営の執政官は俺の方で用意してやろう」
側に控えていた文官に、さっそく指示をだすアレン様……。
不味い……ここで折れたら話がこのまま進んでしまう!?
「も、もし仮に領地運営できたとしても、うちの村は自給自足をしている村です。税金を納めることもままならないですし、かといって移民を募ったところで『静かなる森』の中にある辺境の村です! 皆、魔物を恐れて移住なんて……」
オレは必死に断る理由を積み上げ、これで何とか断れるのではないかと思い始めた時だった。
「実はコウガさん! 非常に言いにくいのですけど……竜人は一族あげてコウガさんに仕えたいと。どこかコウガさんの活動している街の近くに移住できないかって、お父さんから相談が……」
くっ!? 恐るべし竜神信仰!?
「そ、そうなのか……えっと……だけど……」
考えろオレ! 今断れなかったらずっと領地運営しないといけなくなるぞ!?
オレが大粒の汗を額に噴きだして窮地に立たされていると、横からうちのパーティーの良心であるリリーとルルーが声をかけてきた。
両隣からオレの服の袖をクイクイっと引っ張ると、お互い見つめあって一度頷いて援護射撃を放ってくれた!
「コウガ……このあいだ族長会議があったそうなんだけど、神獣様がいる所が我々獣人族のいる場所だって話があがってた……にゃ」
「神獣様は私たちについてくる。そして私たちのいる場所はコウガの隣……にゃ」
まさかの四面楚歌!? 王様側の援護射撃だった!!
「えっと……」
オレが白く燃え尽きそうになっていると、ジルから声をかけられる。
≪主よ。良いではないか。我も少しのびのびと暮らせる街が欲しいと思っておったのだ≫
「「「ジルがのびのび暮らしたら滅ぶから!? 色々滅ぶから!?」」」
そこはパーティーメンバーの意見が一致したのだが、もう観念するしかなさそうだった。
「わ、わかりました……謹んでお受け致します……」
そう言ってうな垂れるオレ。
「まったく……正式な貴族に昇爵した上に新領地を起こせるとなったら、普通は大喜びするものなのだぞ?」
そうは言われても、オレは自由な冒険者生活を送りたかったのだ。
「コウガ……そんな落ち込まないでよ。領地を起こす場所があの『静かなる森』の中なんでしょ? 冒険者ギルドの支部を作ったら、ドアラの街に負けないぐらいの冒険者の街になるんじゃない? しかも領主だったら依頼だって自由に出せるし、依頼だした上で自分で受けてサクッとこなしても良いわけだし、好きなように出来るわよ?」
おぉ……そう考えると領主って言うのも悪くないかもしれない。
おまけに戦闘力の高い獣人に、戦闘民族と言ってもいい竜人たちが移住してくるかもしれないのだ。
ちょっと何だか楽しいかもしれない。
「そ、そうだな。ビアンカありがとう」
うっかりビアンカと呼んでしまったのだが、
「そそ、そんなの気にしなくていいのよ! 私たち、とと、友達でしょ!」
友達と言われて嬉しかったようで、顔を真っ赤にして喜んでいた。
意外と言ってはビアンカに失礼だが、彼女のお陰で幾分気が楽になった気がした。
しかし、そこに元気よく手をあげて飛び回りだした者がいた。
≪はいはーい! 王様! ネギさん! ちょっと良いですか~?≫
「んふぁっ!? 妖精族の嬢ちゃんか。儂に何かようかの?」
王様たちに丸投げする事に成功して、すっかり他人事とあくびをしていたネギさん。
「小さきものよ。人族の王に出来るような事なら協力するぞ?」
今回の魔王の対応は、裏で結構な数の妖精族が動いていた事が報告されている。
今まで神秘の存在だった妖精族だが、その予想外に巨大な勢力と妖精界という別次元にある国の存在。
その上で個々の妖精が伝承に聞く以上に強力な魔法の使い手である事から、王としては和平を結ぶなどして良好な関係を築きたいという話だった。
≪妖精族の意向として伝えるね。ドアラの街の冒険者ギルド『恒久の転生竜』担当の受付嬢見習いカリンちゃん。彼女を新しい領地のギルドマスターにしてあげて~これ、ぜ~ったいだから~≫
恒久の転生竜以外は「誰それ?」とキョトンとした顔をしていたが、オレやリリーとルルーは驚きを隠せなかった。
「え? なんでここでカリンの名が……?」
「「なんでカリンちゃんが……にゃ?」」
それはネギさんも同じだった。
この国の冒険者ギルドの中で一番偉いとはいえ、王都のギルドマスターが地方のギルドの受付嬢見習いを知っているわけもなく、
「なんじゃ? その娘は? さすがに受付嬢の、しかも見習いを……」
≪あ。そうそう。これ女王様から伝言ね。『カリンちゃんが新領地のギルマスになれなかったら、この国と冒険者ギルドの秘密ぜ~んぶばらしちゃうね(てへぺろ)』だそうです~≫
セイルが少しクイの真似をしながらそう言ったかと思うと、空中に何やら色々な記録映像が映し出される。
「へ……? あかん……これきっと見たらあかん奴や……」
思わず前世の記憶にあったどこかの方言が出てしまった。
「ネギ!? そのカリンとか言う娘をギルドマスターに任命するのだ!」
「は、はいっ!? わ、儂の全権限を駆使してでも任命してみせますのじゃ!!」
それは……トリアデン王国史上最年少のギルドマスター誕生の瞬間だった。
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色々急展開の中、いよいよカリン嬢が表舞台に出てきそうです(/ω\)
あと、もうすぐ第一部である
「~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~」
編が終わる予定です。
新たな展開に突入しますのでお楽しみに☆(。-`ω-)b
※第二部はサブタイトルを変えたいのでシリーズ化しようか検討中
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