【第1話:なぜか怒られた】
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リアルの諸事情でWeb作家としての活動を休止しておりましたが復帰いたしました。
まずはこの『槍使いのドラゴンテイマー』の改訂版を公開&更新していく予定です。
下記に全文改稿&数万字加筆した改訂版を公開しております。
更新は順をおってになりますが、こちらをお読み頂けますようお願いいたします。
https://ncode.syosetu.com/n5238jw/
尚、運営様から旧版を残しても基本問題ないとは確認をしていますが、
読者様が混同する場合は旧版の削除を求める場合があるとも伺っております。
その場合、こちらは削除することになりますのでご了承ください。
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オレの名前は紅雅 穿輝。
子供の頃はカッコいい名前だと思っていたが、今はちょっと厨二っぽいと少し恥ずかしい……。
先日誕生日を迎え28歳になったばかりで、今は運送会社でトラックの運転手をしている。
その日もようやく仕事が終わり、一度物流拠点に戻る帰り道だった。
そしてもう少しで物流拠点につく最後の曲がり角。
急に飛び出してきたネコに驚きブレーキを踏んだのだが、ちょっと間に合いそうもない! そう思った時だった。
今度はそのネコを助けようとして、少年までもが道路に飛び出してきたではないか!?
「危ない!?」
まだ若い。高校生ぐらいだろうか?
オレはブレーキは間に合わないと判断すると咄嗟に避けようと急ハンドルを切ったのだが、それが仇となってトラックが横転して電柱に突っ込んでしまう。
「ぐはっ!?」
激しい衝撃の後、すぐに意識は戻ったのだが、全身を強く打ったようで体が動かない。
視界も赤く染まっていく。
朦朧とする意識の中、横転したトラックの窓からふと少年と猫が無事な姿が見えた。
何か必至に叫んでいるようだが、残念ながらもう何も聞こえなかった。
何もない人生だった。
彼女がいた事もあったが、仕事が忙しくて長くは続かなかった。
稼ぎはそこそこあったけれど、趣味はMMORPGぐらい。
友達と呼べる者はMMORPGの中だけだった。
でも、人生の最後に人の命を奪わないですんで良かった。
オレはそう思いながら、ひっそりと最期の時を迎えたのだった。
~
『……きなさい……』
眩い光の中で意識を覚醒したオレは、何か遠くで透き通るような綺麗な声が聞こえた気がした。
『起きなさい。紅雅 穿輝よ』
あれ? 気のせいじゃない?
しかし、オレの意識は覚醒したのだが、どうにも体が思うように動かせない。
え!? 体が存在しない!?
オレは軽いパニックに陥るが……、
『起きろって言ってるでしょ!? な~に一人でパニックおこしてるのよ!』
パシンッ!!
……痛い……体は存在しないようなのに、思いっきり頭を叩かれたような強烈な痛みが走る。
『意識の中で言葉を発してみなさい。そうすればこの世界で言葉になるわ。わかる?』
まだ混乱していて何かよくわからないが……やってみるか?
『わかったのなら返事!!』
『は、はい!!??』
あ。出来た……。
でも、この人すごい怖いんだけど……。
そして私は女神よと名乗ったあと、いきなりこちらをジト目で見つめて、
『全く! あなたが余計な事したから本当に大変な事になってるんだから!』
と愚痴が始まる……。
何のことだかわからないが、オレは怖いのでとりあえず謝っておく。
『す、すみません!!』
謝りつつも声を発している人物を見ようと意識を集中すると、そこには眩い後光が差す、完ぺきと言って良いほどの美貌の女性が佇んでいた。
『あなたがあの子を轢き殺さなかったせいで、また勇者候補を探さないといけないじゃない! 勇者の適正を持つ子は少ないのよ! あのまま死んじゃっていれば、あの子を勇者として転生出来たのに!』
何か物騒な問題発言が聞こえた気がするが、指摘したら怖いのでスルーしておこう……。
話を要約すると、どうやら本当ならトラックにはねられて勇者に転生する予定だった運命の少年を、オレがすんでの所でかわして救ってしまったらしい。
でも、それで怒られるのは理不尽すぎる……。
『まぁ起こってしまった事は仕方ないわ。勇者候補はまた探すとして、とりあえず穿輝は世界のバランスを取る為に異世界に転生させるわ』
そして『これ決定だから』と言い出す。
オレは展開についていけずに ぽけーっ と聞いていると、
『じゃぁさっそく転生させるわね。異世界を渡ったものには何か強めのギフトを授ける事になっているから楽しみにしていなさい。どんなギフトがつくかはあなたの運次第だけど、何か役に立つギフトが付与されることを祈っておくわ。あ! それと後に勇者が現れたら少しは手助けしてあげなさい。それがあなたの使命よ』
『え? あの? ちょっと、もうちょっと詳しい説明を……』
オレは最後まで言わせてもらえず、女神様の『じゃぁね』の言葉を最後に、そのまま新たな生を受けて転生させられるのだった。