第五話
ライトとの生活にも少しずつ慣れ始めた。が、これには未だに慣れることができない。
「ライト今日もか...」
食べる物がない。
正確には食べるために必要な物。スプーンとフォークがない。これはライトが昼食を一緒に食べるための口実として、わざと入れ忘れているものと思っている。自惚れかもしれないが、実際わざとらしい。それに今まで一緒に過ごしてみて、ここまで出来る人がこんな凡ミスを週3以上のペースで起こすわけがない。とりあえず廊下にいれば来るだろうから待ってよう。
「ん?」
廊下に出たらフィーナとフィーナに絡んでいる2人の男子生徒がカイルの目に入った。
「も、申し訳ございません。私はこれから用事があるので。」
「どうせあの落ちこぼれのことだろ?」
「いいよそんな奴の事ほっといて、俺たちと行こうぜ。そっちのほうが絶対楽しいって。」
ライトが絡まれている。男子生徒が自分のことをいろいろ言っているが、ライトも困ってるみたいだし早くしないと。
と思いカイルはフィーナとその場を抜け出すために3人によって行くとフィーナと2人の男子生徒もこちらに気が付いた。
「あ、エワイト様」
「...チッ、落ちこぼれか。」
「何の用だ。」
フィーナに絡んでいた男子生徒が、態度を変えてこちらを睨んでくる。
「あー...自分の部屋担当の使用人が絡まれてたら気になるし、えっと、うちの使用人に何かありましたか?」
とカイルが訪ねると男子生徒の片方、アーリアがニヤリと顔を歪ませた。
「ふん、貴様のような落ちこぼれよりも私のような将来有望な生徒の担当のほうがいいと話を持ち掛けていたのだ。」
「あの、そういうのは出来れば自分を通して頂けると」
とカイルが答えようとすると、言い終わる前にアーリアが食い気味に返してきた。
「貴様はカービス家の長男である俺に、お前ごときにそんな面倒な事をさせる気か!」
「あぁ、いや私は」
「それにお前のような落ちこぼれに、こんな優秀な使用人が配属したのが気に食わん!」
「それはただ私と彼女が番号が同じだったという偶然で」
「俺に口答えするな!それにこいつは貴様と番号は違うことぐらいわかっている。そんな嘘は通じんぞ。」
アーリアの言葉にカイルは驚いた。カイルは彼女から同じ番号だったからという理由で選ばれたことを聞いていた。カイルがフィーナのほうを見ると彼女は少し気まずそうに目をそらした。
「ふん、とにかくだ落ちこぼれ。お前、俺と勝負しろ。」
「は?」
唐突な勝負の申し出にカイルは驚いた。
「俺が勝てばこの使用人は俺の部屋の担当にする。いいな。」
「さ、流石にそれは横暴すぎます。それに私にメリットが」
「俺はカービス家の長男だ!貴様の意見など聞いていない!」
「それでは私からも条件を出させてください。」
カイルがそう言うと、アーリアが勝ちを確信したかのように笑った。
「いいだろう。まぁお前が勝てるとは思わないが。」
「二度と私たちに関わらない、そしてそのように貴族などの出自等を出して脅すことを二度としないでください。出自等を出して交渉することなどはこの学院の決まりで禁止されています。」
この学院では自分の出生等を出して交渉で脅しをかけることを禁止している。しかし実際のところこのように教師がいない場で行われたり、貴族の教師などは見て見ぬふりをすることが多い。
「ふん、まぁいいだろう。まぁ、お前が勝てればの話だがな。行くぞ。」
そう言うと、アーリアは高笑いしながら取り巻きの一人を連れて歩いて行った。