第一話
テストが嫌すぎて現実逃避しまくってできた話です。
更新はかなりゆっくりになるかもしれません。
それとあらすじに追いつくのはしばらく先です。
「水精の魔力よ、束なりて舞え!」「雷精の光よ、ほとばしれ!」
大型闘技場の中の二人の生徒がそれぞれ、アクアランスとスピアボルトを放ちながら戦っている。闘技場内には結界が張ってあり、生き物の思考を読み取ることができる。対象の生き物が自分が致命傷を受けたと認識、または、結界がこれ以上の損傷は対象の命に係わると判断した場合に、結界が発動し対象を闘技場入口に転移させ、治癒魔法をかける。なので生徒達も互いに遠慮がない。
「赤降伏、そこまで!次の生徒は速やかに準備を。」
「おいおいまた降参かよ。」「いい加減最後までやれよ。」
赤側が攻撃を受ける前に降参したらしく、審判の教師が戦闘終了を宣言。最後までなどとヤジが飛んでいるが結界も万能ではないらしく、感覚、つまり痛覚などは軽減出来ないらしい。
致命傷になる攻撃を受けたら痛いに決まってる。
当たり前だが、基本的にどの試合も新入生はそれにビビッて降参している生徒が多い。
そして今の試合で286位と356位の順位が入れ替わったらしい。この順位は学生証書いてあり、順位が変われば書いてある数字が勝手に更新される。
今行われているのは戦闘実技試験のその最終日、これを学年ごとに分かれ1週間行う。新入生は入学して1ヶ月の初めての実戦試験ということもあり、張り切って取り組んでいるものがいるものが多い。しかし、新入生は全員で1358人と言っていたが1週間で全部捌くことができるのが謎だ。学院内での順位はこの試験の結果で決まる。生徒はこの1週間で3回まで他の生徒と戦闘を行う事ができ、手続きを行い申請が通れば、どの順位の生徒にでも挑戦することができるが、申請限度は基本的に200位差程になっている。順位が一気に上がったり、下がったりする生徒もいれば、3回とも勝てなかった、申請が来ない、申請も行わないなどで、全く変わらない生徒もいる。入学すぐの順位は魔力量と運動能力の総合値になっていただけなので、この試験でかなり順位が変わると担任の教師も言っていた。
そしてこの学院では学年の上位10人には特殊な面が持たされる。この上位10人を皆はそのまま面持ちと呼んでいる。基本的に学院内での正式な戦闘では魔道具の持ち込み、又は使用が禁じられているが、この面だけは学院内で戦闘を行う際に着けることが義務付けられている。他にもいくつか決まりがあるらしく、着けている間は無駄にしゃべってはいけないだとか、面を11位以下の生徒に戦闘以外で見せないとか、その他もろもろ。
とりあえず簡単に面持ちが誰か分かるようなことが基本的に禁止にされている感じらしい。また、面持ちの試合はかなり危ないらしく、観戦者を守るための魔力障壁を普通に貫いてくることもあるらしい。なので審判は校長、副校長、教頭、主任教員のみで、戦闘場所も面持ちの本人達以外には公開されていない。録画魔石を使い記録しているが、面持ちが関わる試合は閲覧に大金貨5枚が要求される。これも相まって面持ちが誰かを特定し辛くなっているが、例外として、校長、副校長、教頭、主任教員や面持ちは、面持ちの関わる記録を自由に閲覧できる。
この試験は一応一般にも公開しているらしく、数はあまりいないが街の人達も暇つぶしに見に来ている。貴族も稀に来ており、卒業したときに私兵として引き抜くため、あたりを付けに来ているらしい。
「そいえばお前どう思う?あの噂。」
「噂?ハーフが入学してるってやつ?」
「それそれ、戦闘見てればそのうち出てくるかと思ったけど、結局いなかったけどさ。」
近くの生徒が入学してすぐに広まった噂のことを小声で話している。この手の噂は本当だろうが嘘だろうが、広まるのが早い。ほとんどの生徒はこの学校にハーフが入学できるわけないと思っているが、残りは面白半分で居るんじゃないかと噂をまだ広めてるらしい。
「学校側がハーフなんて入学させるわけないと思うんだけど。あ、そいえばさ、来週とうとうあれだろ?それぞれの部屋に使用人着くんだろ?」
「そうそう、やっと面倒な家事とか辞めることができるよ。なんで始めっから居ないのか。」
ここの学院は全寮制となっているが、ここにいる生徒の半分以上は貴族の生徒らしい。なので寮に使用人がいないことをかなりぼやいていた。毎年この試験の後に使用人が就くことを知ってなぜもっと早くから就いていないなどの文句が出ていたが、金に物を言わせて、自分の家の使用人を無理やり連れてきている奴もいる。自分の部屋にはどんな使用人が来るんだろうかと喋るほど仲がいい相手も居ないので一人で考えていると、とうとう試験最後の試合が終わったらしい。
「皆初めての実技戦闘試験お疲れ様。これで初めての試験は終了だ、明日からまたクラスに戻って試験結果の確認、授業などを始める。学生証の順位などはあらかじめ確認しておいてくれ。それでは明日に備えて今日はこれで解散だ。」
先生の明日の話が終了したことを合図に、生徒たちは各々解散し始めた。
とあるグループは学生証に書いてある順位を確かめ合いながら帰って行ったり
とある生徒はそそくさと帰って行ったり
自分の順位を自慢しながら帰って行っているのもいる
自分も部屋に帰ることにした。
入学して1ヶ月。
一番忙しい1週間がやっと幕を閉じた。