ウォシュレット
始めて猫耳美女から甘露を飲ませてもらって、その後時間が経過している。
あのあと、俺はずっと同じ公衆便所で便器形態となって過ごしていた。
だが、どうにも思ったように美味しい食事が得られていない。
そう、俺も転生してからの生活で、今の肉体にとっての味の善し悪しが分かるようになってきたのだ。
基本的には男はダメだ。
生理的に受け付けないし、味もまずい。
臭いし苦いしで吐き気をもよおす味であると言って差し支えないだろう。
それに対して女性の肉体から生み出されるものは小でも大でも味がいい。
さらに言えば、健康そうな人のほうがおいしいし、なぜか美人さんのほうが美味に感じる。
年齢も関係している。
まず年を取っていると味がガクッと落ちてしまう。
その為、若いほどいいといえるのだが、あまりに若すぎると味が薄くなってしまう。
おおよそ十歳代後半から二十歳代前半くらいが一番芳醇で味のあるものとなるようだ。
ようするに女子高生から女子大生すぎくらいの若く健康で見目麗しい女性の出すものが美味いということになる。
なぜだという理由はわからないが、そういうものだと考えるようになった。
そして、そこで問題が出てくる。
公衆便所でトイレに篭って待ち構えるだけでは、どんな女性が便所にやってくるのかということがわからないのだ。
おばさんやおばあさんと言った人や、健康状態の悪い人、美人でない人などが使うことのほうが多いくらいだ。
さらに言えば、何度か来た美人さんが俺のいる個室ではなく他の個室へと入って用を足して帰っていく事もあった。
話し声や足音などでそれが分かってしまうと、まさに大物を釣り逃したような気分になってしまう。
何とかして、狙い通りの人が俺を便器として使ってもらえないだろうか。
そんなことを毎日考えていた。
どうすればよいか。
美人・美少女にたくさん使ってもらうにはそれ以外の人を追い返しても増えることはないだろう。
とにかく重要なのは、俺という便器をまた使いたいと思わせる必要がある。
そう考えた俺は、とりあえず思いついたことを試してみた。
まずはトイレの清掃をしてみたのだ。
俺の体である便器を自分で洗うことはできなかったが、人化してから井戸水で体を洗うと汚れも落ちるらしい。
毎日夜になると公衆便所から抜け出して、せっせと身を清めることにした。
さらに俺がいる公衆便所の一番奥の個室だけを徹底的に、入念に、磨き上げるように掃除を行うことにした。
転生する前の日本でこれほど本気になって掃除をしたことはなかったはずだ。
それくらい気合をこめて掃除をしたお陰で、いつでもピカピカで気分良く使える個室へと変わったのではないかと思う。
結果的にはこの公衆便所に来た人は俺という便所を使いたがる利用客が増えることになった。
だがしかし、最初の狙いであった美人美少女だけではなく、ほぼ全員が俺を使いたがったのは狙いから少しハズレていると言わざるを得ない。
公衆便所に始めて来たときと比べれば美女が使う回数は増えたのは間違いないが、全体の利用客から見ると美女の割合はあまり変わっていないのではないか。
できれば、俺を使うのは全員が美女や美少女であって欲しい。
何とかして、もっと割合を増やすことはできないものか。
それだけを考えるようになっていた。
狙った対象者だけをリピーターに変えていく。
そのためには、利用客の中でサービスに差をつけていくしかない。
そう考えるようになってきた。
では具体的にどうすればいいのだろうか。
というか、人によって何か違うことをできるような機能は俺にはない。
だが、何かを見つけなければならない。
毎日頭を悩ませ続けた。
そこでふと気になったのが、トイレで用を足したあとの処理についてだ。
この世界にはわら半紙よりも荒いものだが、紙が存在している。
公衆便所でも秘部を拭くのにも使われるが、トイレットペーパーのように用意されているわけではない。
おそらくどこかの店で売っているトイレ用の紙というのがあり、それを購入しカバンなどに入れておいて、トイレで各自が使うのだろう。
だが、日本のトイレットペーパーのように柔らかく皮膚を刺激しにくくきれいに拭き取れる割に破けにくい紙というわけではない。
ならば俺がトイレのあとの拭き取りを手伝ってあげて、よりきれいに清潔な状態を保てるようにすれば気に入ってもらえるのではないだろうか。
しかし、俺はそのようなトイレットペーパーの持ち合わせはない。
ならば、ウォシュレットのように水で洗い流してみてはどうだろう。
来る日も来る日も考え抜いて俺はそう結論を出した。
どうやって和式便所の俺がウォシュレットのように水を出すのか、そもそもそんなことが可能なのかはわからなかった。
だが、便器の俺が人化して動き回れる事自体が異常であるとも言える。
ならばやってやれないことはないだろう。
そう思い込むことにした。
それからは、とにかく水を出せないかの研究をすることになった。
俺に用を足していく女性たちが出すものを出したあと、俺はそこを狙って水を飛ばすイメージを繰り返した。
最初は当然、そんなことはできず、何も起こらない日々が続いた。
毎日女性のあそこを見つめて、そこに狙いをつけて水を出そうとする。
言葉にするとあれだが、俺は必死にだった。
あまりの必死さによっていやらしさはかけらもないと断言できる。
そしてその努力はついに実を結んだ。
割れ目に対してビシャっと水をかけることに成功したのだ。
まるで一日中我慢していた小便を放出したかのような開放感が俺を襲う。
溜まりに溜まったものをすべて出しきるように、女性へと水をかけ続けた。
「えっ…………なにこれ。いやああぁぁぁ」
泣き叫ぶ十代中頃のおさげの女の子。
ズボンをずらしてしゃがみこんでいたため、何が起こったのか全く分かっていなかったようだ。
なぜか用を足してホッとした瞬間に、股間に液体をぶっかけられる。
しかも、乙女の大事な部位に対してだからその驚きは大きかったかもしれない。
しばらく呆然としたあと、慌ててズボンが下がったままの状態で飛び退ったため、ズボンや服が水で濡れてしまった。
俺はそれを見ながら、そういえば乾かすための送風も必要だな、などと考えていた。
だが、事態はそんな悠長なことを言っていられなくなってしまった。
女の子の悲鳴を聞いて公衆便所にいた他の人も何事かと集まってくる。
そして、俺はそれまでのきれいな便器から、謎の液体をぶちまけてくるモンスター便器として認識されてしまうことになってしまった。