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シナリオ進めよ

 











「はー」

 ユラからの連絡はまだない。

 マスターとの戦闘後、街の探索を続けていた…

「広いな」

 戦闘位置から北に歩いていたが一向に地図に載っていた街を囲う北の壁にはたどり着かない。

 道すがら見つけた広場のベンチに座り連絡を待つことにした。

「それにしても…」

 街の北西に位置するこの広場の周りにある建物は正直綺麗なものではなかった。扉が外れかけている宿屋に怪しい雰囲気を漂わせている露店の数々、街の中心に比べたらこの区画は寂れているように感じる。



「なんだ?またマスターの手先じゃないよな」

 この区画に入った辺りから俺についてきてる者がいた、最初に気づいた時に後ろを振り返ると耳と尻尾を生やした子供と視線が合い子供はあわてたのか転んだ、すると路地から出てきた同じような耳と尻尾を生やした子供に路地に引きづられていたが俺が歩き出すと店の看板や建物に身を隠しながらついてきていた。



 そして今も俺の目の前に立っている木の陰に隠れている。隠れているつもりだろうが目の前の木に隠れちゃまるわかりだ。

 最初に転んでいた方の子供がちょこちょこ顔を出しては視線が合い何かに引っ張られるように木の陰に戻る。。

「なんなんだ?」


 よくよく顔を出す子供を見ると茶色の長い髪は腰まで届いていて、犬耳に太い尻尾、おそらく犬人族という種族の5才くらいの女の子のようだ。


 もう1人はおそらく顔を出す子が顔を出した瞬間、木の陰に何かに引っ張られるように戻っているので一緒に木の陰にいるのだろう。

 さてどうしたものか。ユラに称号のことを責められても大丈夫なように言い訳でも考えるか…言い訳考える必要ないよな?俺悪くないし、マスターにいきなり襲われた被害者だし。


 それより目の前の子供をどうするかと思案していたら広場の隅にある焼き鳥屋を見つけた。

 ベンチから腰を上げ焼き鳥屋に歩いていくと広場の木の陰から木の陰に隠れながら子供もついてくる。

 1本が300G(ゴールド)か。



「おじさん焼き鳥3本」

「あいよ、焼いたばかりのあるから…900G(ゴールド)だ」

 おじさんはG(ゴールド)を渡すと串焼きを3本渡してくれる。

 裸かよ、包みはないんだな。

 受け取った串焼きを手にベンチに戻るため身体を反転すると、子供は慌てながら後退し木の陰から木の陰に移っていく。丸見えだよ。



「いただきまーす」

 ベンチに座り串焼きを1本口に含むと、目の前にステータスSTR+3、効果時間5分と出た。

 なるほど料理で一時的にステータスが上昇するのか。串焼きの香りはあるのに味はしないので味気ない。

 1本食べ終わると俺の左手に残る2本の串焼きを見つめながら犬耳の女の子が目の前まできた。試しに左手を右にずらすと涎を垂らしながら女の子は串焼きと同じ動きをする。

 釣れるかと思って買ったが本当に釣れたよ。

「…食べるか?」

 女の子が頷いたので1本渡すと女の子は勢いよく串焼きにかぶりつく。

 もう1人は木の陰に隠れたまま顔だけ出し女の子の姿を羨ましそうに見ていた。

 ユラから手紙が届く。

『召集:鍛冶終わった戻るべし。』

 召集って…べしって…

 とりあえず戻るとだけ返信。

「兄ちゃん用事が出来たからもういかなきゃ、あそこにいる子にも食べさせてあげて」

 食べ終わった女の子に残り1本を手渡すと女の子は頷き、木の陰の子供の所まで戻っていった。







 子供と別れてギルドルームに帰ってきた。

「じゃああにぃよろしくね工房にアイアンボウがあるから手紙で送ってね、私のバック容量増えたから50本ずつ」

「わかったよ、終わったらユラに伝えておきたいことあるから」

 称号の話をしておこう。

「ん?今聞こうか?」

「いや先に売買終わらせよう」

「はーい」

 ユラはギルドルームから出ていった。



『送ってね』

 ギルドルームで待機しているとユラからの手紙を受け取りアイアンボウを50本ずつを送ること5回、工房が空になった。

「ありがとあにぃ」

 ギルドルームにユラが戻ってくる。

「それで私に話したいことって?」

「サブシナリオが発生してクリアした」

「…え?ほんと?どんな内容の?報酬は?」

 椅子に座っていた対面の椅子にユラは座る。

「サブシナリオはマスターとの手合わせってイベントだった」

「マスターってあの筋肉マスター?」

 そうだけど筋肉呼びは変わらないんだな。

「あぁ、ユラと別れたあとに街を散策しようとしてたらマスターが現れていきなり斬りかかってきたから対処したらクリアした」

「えっ?マスター殺したの!?」

 いろいろはしょりすぎた。



「いや殺してない、勝負には俺が負けたよ」

「負けたのにクリアしたのなんで?」

「俺が聴きたい」

「んー?わかんないけど、サブシナリオをクリアしたってことは報酬出たよね?どんなアイテム?」

「……称号」

「ん、もう1回言って」

 ユラの顔が怖いです。

「称号:剣豪に認められた者が報酬です」

「…………」

 沈黙程怖い物はないな。

「あのユラ?」

「なんであにぃだけ…」

「…ユラ」

「なんであにぃだけそんなに称号手にはいるの!ずるいずるいずるいー!」

 ユラは床に寝転がりじたばた手足を動かす。

「悪い!悪かった…」

「効果は?」

 手足の動きが止まるユラ。

「はい?」

「どうせ称号に効果が付いてるでしょ?効果は?」

「…AGIとDEX1.3倍補正です」

「ずるい!私も欲しい!筋肉マスターだね筋肉マスターをやればいいんだね?」

「いやわかんないけど…」

 やればは殺ればじゃないよね?戦闘をすればで止まる意味だよね?

「あっおい!どこにいくんだ?」

 ユラは出入り口のドアに手をかけていた。

「ちょっとやってくる」

 …もう止められないな。





 少しして戻ってきたユラは椅子に座りテーブルに顔を突っ伏した。

「…ダメだったのか?」

「シズカさんの話じゃ、この街の領主の護衛として国の王都に行ったって…」

 いなかったのか良かった気がする。それよりも…

「領主に国の王都ってなに?」

「この街を治める人にこの街が属する国の首都…」

 落ち込んでるから説明雑だな。

 ゲームの街だけど治める人もいて、街があるってことは街と街を合わせた国もあるってことか?

「もう、シナリオ進めて発散しよ!あにぃも行くよね?」

「シナリオ?」

「朝、調べたんだポルダの森から東に行くとナシシ草原ってフィールドがあってナシシ草原に入るとメインシナリオが始まるらしいんだ」

「おう行こう行こう!」

 ユラの機嫌が治るなら。







 ナシシ草原

 メインシナリオ解放:行商人を襲う魔物(モンスター)の殲滅

「冒険者様ですか?」

「はっはい」

 あれ?ユラが隣にいたはずなのに誰だこのおじいさん、シナリオも解放されたみたいだ。

「実は始まりの街ポルダに向かう途中に魔物(モンスター)が私達の荷物を狙っているんです、お力添えを頂けませんか?」

 えーとこれはシナリオか?

「あやっ!?冒険者様あいつらです!あのゴブリンどもを」

 ゴブリン:Lv5、━━━

 ゴブリン:Lv5、━━━

 ゴブリン:Lv5、━━━

 ゴブリン:Lv5、━━━

 ゴブリン:Lv5、━━━

 いきなり目の前に小さな短刀を持ったゴブリンが現れた、シナリオって強制なんだ。

『ソードスラッシュ』『ソードスラッシュ』

 ギャウっと悲鳴を上げてゴブリン達は倒れて消えていった。


「いやー素晴らしい、助かりました。これはお礼になります」

 おじいさんは読めない文字が書かれた青色の丸い形のレリーフを手に持っている。

「これは?」

「わかりません、ただゴブリン達はこれを狙っていました。冒険者様がいなければ取られていた物です。これを冒険者様に」

 おいおい、ただ厄介な物を押し付けてるだけじゃねぇか。

「では私は失礼します」

 おじいさんはレリーフを俺に押し付けてポルダの森に入って行った。

 メインシナリオ:行商人を襲う魔物(モンスター)の殲滅クリア

 報酬:EXP+2000、キーアイテム、碧輪(へきりん)

「えっちょっと…」



「ちょっとなに?あにぃ」

 目の前にユラが現れた。

「あれ?ユラどこに行ってたんだ?」

「シナリオクリアしたとこ、たぶん今のシナリオはプレイヤー1人1人のシナリオみたいだね。ソロ専用のシナリオで違うフィールドに飛ばされるんだね共闘できないように。だからあにぃがいなくなったんだ。あにぃもシナリオ?行商人を襲う魔物(モンスター)の殲滅ってやつ?」

「うん、ゴブリン5体を倒したよ。あとキーアイテムをもらった」

「やっぱり、なんだろうねこれ?それにしても手応えないシナリオだったな」

「5体出てきたけどLv5だったからな」

「よし次行こう」

「次のシナリオも知ってるんだ?」

「どこで発生するのかはね、発生場所以外のネタバレは見なかったから。次は草原の中心にある小さな村だね」

「了解」




 ナシシ村:廃村

「どうなってんだ?」

「地面がえぐれてる…うわっ虫いた」

 魔物(モンスター)にビビらないのに小さな虫には驚くんだな。

 シナリオが発生するという村にやってきたが村の建物はぼろぼろに壊れているようで煙も上がっていた。

「村人もいないし、襲われたみたいだな。ユラ?」

 隣にいたユラはまたいなくなっていた。

 メインシナリオ解放:凶悪との出会い

「まだ生きてる者がいたか…」

 シナリオが始まり低い声が聴こえてきた。村の監視台の上に黒マントを着て顔が見えない誰かがいる。

「畏れよ、『アンデット・マリオネッテッタ』」

 叫ぶと地面が盛り上がり中から骸骨が這い出てきた。

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 スカルアンデット:Lv15、━━━━

 …

 おいおい、数が多くないかい囲まれたよ。まだ地面も動いてるから増えるのだろう。ユラもこれを相手にしてるのか、大丈夫かな?

「まとめて一気に『ソードスラッシュ』」

 バラバラと音を立てながらスキルの範囲内にいたスカルアンデットが消える。

「あぁ!我が畏れがぁ!」

 なんなんだあいつは。

「まだまだ『ソードスラッシュ』『ソードスラッシュ』」

 地面から出てきた全てのスカルアンデットを倒しきる。

「あぁぁぁ!許さぬ許さぬぞー!」

 また叫んだ。

 スカルアンデットを召喚した奴はマントから手を出して俺に向ける。なにかするのか?

「ぐう!…」

 突然黒マントの奴の後ろに同じ黒マントを着た者が現れたと思ったらスカルアンデットを召喚した奴を掴んで消してしまった。

「…」

「…」

 こちらを見ているようだが…なんか喋れ。

「今の持ち主はお前か、まぁいい。いずれは我らの物」

 そう言い残して消えてしまう。

 メインシナリオ:凶悪との出会いクリア

 報酬:EXP+5000




 今の持ち主?もしかしてキーアイテムのこれか?

「あっあにぃ見つけた」

 ユラが村の出入り口の方から走ってきた。

「お?なんでそっちから?」

「スカルアンデットが多かったから囲まれないように逃げながらファイアーボールを撃ちまくったからね。ちゃんとシナリオクリアしたよ」

「おめでとう、またユラと離れたからユラを心配してたんだ」

「…あにぃ、あまり素でそんなこと現実で言っちゃダメだよ」

「は?」

「なんでもないよー。この後のシナリオは知らないから街に戻ろうか」

「あぁ」

 あれだけの数のスカルアンデットを相手にしてもユラのHPはほとんど減ってない。ちゃんと強くなってるんだな。

 成長してるのかどうかは俺のステータスってわかんないんだよな…ユラにチートって言われるのは当然か。

























 コウ:人族Lv29

 職業:剣聖(ソードマスター)Lv4:聖職者(クレリック)Lv2:冒険者Lv22

 HP:10660

 MP:4110

 STR:525

 INT:401

 VIT:508

 AGI:596

 DEX:435

 LUC:797

 スキル:光の剣Lv1(2/100)、聖なる光Lv1(1/100)、剣匠Lv1(11/100)神速Lv1(9/100)ヒールLv1(2/10)キュールLv1(2/10)瞑想Lv3(6/10)ソードスラッシュLv8(4/10)ファイアーエッジLv1(1/10)ウォーターエッジLv1(1/10)

 称号:創造の女神リアルの加護:剣豪に認められた者


 装備

 頭:

 右手:ロングソード

 左手:

 上半身:駆け出し冒険者の服

 下半身:駆け出し冒険者のズボン

 足:シューズ

 装飾品:羽飾り

 装飾品:

 所持金80G







 ユラ:ドワーフ族Lv31

 職業:魔法使いLv2:商人Lv11:冒険者Lv24

 HP:3240

 MP:2760

 STR:126

 INT:266

 VIT:142

 AGI:223

 DEX:163

 LUC:113

 スキル:ファイアーボールLv13(1/10)、ウォールLv1(7/10)、瞑想Lv9(7/10)、ヒールLv1(1/10)商品配送Lv8(1/10)目利きLv3(2/10)商人の資質Lv6(6/10)鍛冶Lv21(1/10)鑑定Lv1(2/10)生産強化Lv7(5/10)フライLv1(1/10)解体Lv3(4/10)マジックウィップLv1(1/20)ウォータースライサーLv1(1/20)マジックアップLv1(1/20)

 称号:

 装備

 頭:

 右手:魔法使いの腕輪

 左手:火伝の指輪

 上半身:魔法使いのマント

 下半身:魔法使いのスカート

 足:シューズ

 装飾品:羽飾り

 装飾品:商人バッチ

 所持金154624G




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