びわ湖誕生
平成28年8月の大津市の打出の浜は微風の風が吹き.この夏を
象徴するかのようなムシムシとした暑い夕暮れ.
この小説が始まろうとしている.
第1回 里沙のふるさと
いつものように.白いドレスに.クラリオネットの楽器を片手に
一人の少女が.びわ湖畔の打出の浜にやって来た.
少女の名前は里沙.14歳.
しばらくして少女の吹く楽器の音が.波音を残す浜辺に響きわた
る.
何人もの群衆か゛少女を取り囲み.メロディに酔いしおれている.
いつしか.微風の風が強くなり.びわ湖は白波がたち.暗雲が空
を覆い稲光が四方に走る.
少女の腰まである長い髪が.左へ大きく流れる.
薄暮になるとともに.少女 の吹く楽器の音は空まで届くかのよう
であり.白い波は霧となる.
大きな雷鳴の音と共に.びわ湖の水は竜巻のように空へ舞い上が
る.
里沙の姿が消え.大きな竜神の背に乗っている.
びわ湖の水は.吸い上げられ.近代的だった大津の街は.一面.
草原と小高い山と森林.さらに.周囲の山々は1000メートル
以上の山々が連となる.
紀元前.びわ湖が誕生する前の姿である.
その頃の湖は.現代のびわ湖の地底.湖北から信楽と三重県の境
あたりまでのこうだいな面積と思われ.地形は盆地.大小の池が
無数にあり.川の存在も見られる.
川と池の辺に住居があり.集落となっている.
その頃の住居は.ヨシや木の枝で壁と屋根が作られた簡単なもの
であったと考えられる.
里沙は.長老の計らいで.池の辺の小高い場所にあった.
横笛の響きが周囲に届き.里沙は鹿や兎や色々な小動物に囲まれ
空には.大きな羽の鳥が群れをなして飛ぶ.
里沙の一番の友達である.動物たちとの幸せに思える日々であっ
た.
突然.鹿のクロベが大声で叫び.他の動物も一斉に叫ぶ.
空には低く黒い雲がたち込み.不穏な空気が流れる.黒い雲は竜
巻のようになり風が強くなり雨となる.
里沙と動物たちは森のある高台に着くと共に.先ほどまで居た場
所が大きく光.雷が落ちる.
不穏な空気は.不安がつのる.