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ここは人類最前線8 ~攫われた勇者様を救え!~  作者: 小林晴幸
勇者様を助けに村娘と魔王が出動です
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4.勇者様が人間をやめる日

 今回は勇者様の状況説明というか、今こんな感じだぞっというお話です。 

 客観的に勇者様を書こうと思っていたはずが、何故かリアンカちゃんの解説風になってしまいました。

 気付いた時にはだいぶ書き進めていた上に、直すのが勿体なかったのでそのままにしてあります。

 読み難いというご意見が出たら直します。

 あ、幸い、まだ勇者様の貞操は無事のようなのでご安心ください。


 今回はちょっと作中、人によってはショッキングな内容が飛び出します。

 肉体改造とか、むしろ人体改造とか、クリーチャー化とか……そういうアレです。

 受け付けない方もいるかもしれません。ご注意を!




 なんとなく装備を整えた自分の姿に違和感ありまくりですが。

 それでも命の保証に代えることは出来ないので、仕方ありません。

 いつもの村娘風の格好に合わせるのはちょっと似合わない。

 なので画伯の指導の下、魔王城にある服をちょっとお借りしたのですが……

「スカート短くね?」

「陛下、このくらいが丁度良いんですよ! あの装飾性の高いブーツに合わせるんなら、せめて膝が出るくらいにはミニじゃないと!!」

「熱く語るな、鬱陶しい。リアンカ、せめて生足は止めろ。太腿がチラチラ見えてっから!」

「うーんと、まぁちゃんが少年時代に使っていたスパッツとかないかなー。黒いヤツ」

「黒で良いのか?」

「膨張色はちょっと……黒系の色だと引き締まって見えるかなって。流石に私も足を常時曝すのは辛い物があるんですよ、画伯」

「えー……」

「なんで残念そうなんだよ、てめえ」

 最終的にまぁちゃんの監修が入ったので、画伯お薦めの『絶対領域』とやらを露出することは避けられました。

 いつもスカートに仕舞いっぱなしの足を不特定多数の目に晒すのは、私だって恥ずかしいんです!


 ようやっと準備が整った頃には、太陽さんも西に傾いて沈みそう。

 既に勇者様が攫われてから五時間くらい経過していました。

 ……勇者様、まだ大丈夫かな?

 何か取り返しのつかない心の傷を増産していないと良いんですが……。




 ~その頃、天界~


 私達から遠く、手の届かない天上の世界で。

 助けが向かっていることも知る由のない勇者様は……


 美の女神にあっさりと捕獲された勇者様は、天上の世界で死んだ魚のような目をしていました。

 抵抗して暴れても、体に自由が戻らない。

 全身に纏わりつく光に、押さえつけられたまま歩くことを強制されていた。

 周囲にはまさにこの世のものとは思えない美しい景色が広がっている。

 だがそんなものを目に入れている余裕など、彼にある筈もない。

「……俺を、どこに連れて行く気なんだ」

「まずは新参者として、我らを束ねる王にご挨拶させていただく必要がありますれば」

 澄ました顔で勇者様の疑問にお答えしたのは、半裸の美青年でした。

 

 半裸の美青年でした。


 勇者様の公序良俗に基づく良識的に、必要もないのに衆人環視のただ中で実行すること自体が驚愕の格好でした。

 半透明のちらちら肌色が透ける布をメインに、青年の碧の目と同色の薄絹を組み合わせた……服というより布と形容する以外に言葉が見つからないブツが、腰回りに巻かれているだけ。

 わあ、なんて刺激的な格好でしょうね。

 神々はこのお姿が普通なのでしょうか。

 勇者様には基準がわかりません。

 ただわかることは、この青年が美の女神の可愛がる従僕らしいということと、自分の世話係を担当してくれるらしいということ。

 そして……この青年の格好が、未来の自分の姿かも知れないということだけで。

 勇者様の目には光がありません。

「まったく、いつまで待たせるつもりなのかしら……もう妾の神殿に戻りましょう? 挨拶など、改めて後日にすれば良いわ」

「いけません、姫様。まずは何よりも王にご挨拶すべきです。規則を守らねば、姫様がお叱りを受けてしまいます。私はそのような悲しいことを目にしたくありません」

 おっとりと、落ち着いた口調で女神を諭す青年。

 どうやら上下関係はきっちりとしていながらも、この青年には女神に意見を述べるだけの権限があるようです。

 単に女神のお気に入りで、大目に見てもらっているだけかもしれませんが。

「それに王にお許しを得てからでなければ、この者を正式に天界に属す身へと転じさせることが叶いませんでしょう? 神と人との間にはただでさえ開きがあるもの。大きな種族差を無視して無理を通せば、この者の身体にはすぐさま限界が訪れることでしょう」

 おや? いま何かさりげなく恐ろしいことが聞こえてきましたね?

 勇者様は不自由な体で精一杯に自由を求めています。

 やめて、私を大空に放してあげて!……と、今にも叫びそうな感じです。

 しかし叫ぶ代わりに、勇者様のお口は一心不乱に念仏を唱え始めました。

 恐らく無意識です。

 無意識ですが、救いを求めてのことか、それとも某『光の結界』を張ろうとしているのか……わかりませんが、哀れを催す姿であることだけは確かです。

 心なしか、従僕の彼が勇者様を見る目にも憐れみが宿り始めました。

 ええ、どう見ても勇者様は待ち受ける未来に納得がいっていないというか、全力で拒否していますからね。

 これが「照れ隠し」や「恥じらい」に見える某女神様は早めに眼科で診てもらうか、リアンカちゃんに新しくて良く見える頑丈な目玉を生やしてもらった方が良いでしょう。ちなみに後者がおススメです。

「でもこの子は頑丈だから、ちょっとくらい無理したって……」

 従僕の言葉にちょっとまずいかな、と思いはしたようですが。

 未だに納得がいっていないようで、女神様は不満げに恐ろしいことを零します。

 そんなご主人様に困ったような目線を向けて、従僕の彼は抑えた声で言いました。

「姫様、ジュリオのことをお忘れですか」

「……仕方がないわね」

 おや? 女神様が一言で黙りましたよ?

 過去に何かあったんですかね、苦い失敗談的な何かが。

 何か規則を破って無理やりなことをしてしまったんだろうなぁと。

 そんなことだけが察せられます。

 ところでそのジュリオさんとやらには何があったんでしょうね?


 結局、その日は彼女達の王様とやらには謁見が叶わないようでした。

 どうやら天の神々は群れに分かれて独自の文化や観念やらを育ててきたようですが、丁度王様とやらは他地方の神王さん達との寄り合いで遅くなるようです。きっと宴会でドンチャン騒ぎでも繰り広げているのでしょう。神様って大概お酒好きな印象ありますからね。

 女神様はそれを知って不愉快そうです。

 半ばキレ気味に自分の神殿へと勇者様や従僕を引連れてお戻りになりました。

 今すぐに好きなように弄べない勇者様を見ていると苛々が募るからと、従僕に世話を任せて自分はどこかに行ってしまいます。

 勇者様としては勿論、万々歳の展開でした。

 悲しい未来の実現に猶予が付いただけでしたが。

 それでも今までずっと心の休まらない中で、僅かながらも一息つけると。

 順応力に富んだ青年は、こんな状況でも驚異的な適応能力を発揮しました。

 いつまでも闇雲に行動していたって、状況は打開しない。

 彼はそのことを知っています。

 なので。

 いざという時の為に力を蓄えつつ、情報収集を試みることとしたようです。

 情報収集といっても手段は限られる。

 情報源の心当たりは、目の前の青年従僕くらいでしょうか。

 まずは気になっていることを、自分が訊ねてもおかしくないことから質問してみます。

「なあ……ジュリオ、というのは……」

「私の弟ですが」

 おっと、さらっと難関が現れました。

 どう考えても気持ちの良い話にはならないことが確かな状況で、話を聞き出せる相手が推定犠牲者の身内と来ました。

 さて、勇者様には彼から話を聞き出せるでしょうか。

「先ほど、貴方の前で名前を出しましたからね。気になるのは当然でしょう」

 勇者様が先を言いあぐねていると、青年の方が気を遣って話を切り出してくれました。

 空気の読める方で良かったですね、勇者様!

「今から二百年……いえ三百年? どれほど前かは忘れてしまいましたが、私と弟は下界に、人間の世界に住まう者でした」

「それじゃあ君は、人間……?」

「かつてはそうでしたね。今は違います。この天上の世界に連れて来られた者は、肉体が変質してしまいますから」

「今何かさらっと恐ろしいことをー!?」

「貴方も既に変質が始まっている筈ですよ」

「しかも追撃までしてくるだと!? 駄目だ、続きを聞くのが怖くなってきた……!」

「聞いておいた方がよろしいですよ。自分に関することですから」

「……」

「この世界に合わせる、と言いますか……天界で生きる者の身体に作り変ってしまうのです。天界という世界そのものが入って来た生物を『この世界に属する者』と認識して受け入れてしまうからだ、と私は聞いています。初めは実感などありませんが、貴方も次第に自覚していくことでしょう。……自分が最早人間ではなくなってしまったのだと」

 勇者様にそれは今更のような気がします。

 ご本人は頑なに認めていませんが、現時点でも既に真っ当な人間とは一線を画す存在になってしまっておいでですよね?

「現に私も、既に何百年とこの世界で生きております。若いまま。……人間の体であれば、とうに朽ちている筈でしょう」

「神々の肉体は……不変の力を持つという」

「ええ。今の私は美の女神様にお仕えする、下級の神といったところでしょうか。元が人間で誰の信仰も得ていない身では、端くれの端くれも良いところですが」

 おっとりと微笑む、青年の顔。

 あまりに美しい笑顔は、どことなく作り物めいて不自然だ。

 笑っているのに感情を感じない、と。

 青年の笑みを見ていて勇者様は気付いた。

「気付きましたか? 何百年と生きていたせいでしょうか……感情が希薄になっていくのを感じるのです。この世界はまさに『不変』。変わることが無さ過ぎて……肉体は瑞々しくとも何かが摩耗していきます。きっとそれが、『人間の心』というものなのでしょう」

「……ぞっとする話だ、それは。君は、それなのにどうして笑う。どうして、笑っていられるんだ」

「……今の私はこの世界に来たばかりの頃の不安も恐怖も戸惑いも怒りも、悲しみも忘れてしまいました。あるのはただ、何事であろうと『受け入れるだけだ』、と。そのように思うばかりです」

 この青年と、そして弟であったというジュリオ。

 恐らくはその両名を天界へと連れてきたのは美の女神だったのだろう。

 勇者様が遭遇した事態から想像するに、きっと彼らも強引に掻っ攫われてきた口に違いない。

 何しろこの青年も、昔は怒りだの悲しみだの感じていたようなので。

 だが今は全てを受け入れるのだと笑っている。

 感情の感じられない中、表情筋が定められた動きをなぞっているだけのような……青年が浮かべる笑み。

 それはまさにアルカイック・スマイルだった。

 あれです、感情表現が限りなく抑えられた顔の中、口元だけは笑っているという……現実に目の前に、生身の体でされると勇者様の恐怖感が無駄に倍増した。


 活きの良い怪談に遭遇してしまったかのような怖気。

 全力で、今。

 勇者様は生まれて初めて、魔境に帰りたいと思った。

 あの場所、あの日々、あの生活。

 冷静に考えると苦難の連続だった筈なのに、今はただただ無性に恋しく懐かしい。

 誰か助けて、と誰にともなく救いを求める心の中に。

 不意に思い浮かんだのは、リアンカちゃんやまぁちゃんの笑顔だった。


 二人の笑顔を思い出したら、無駄に心強くなった。


 己の心理作用がわからない……思わず頭を抱えた勇者様は、きっと一度自分の心を静かに見つめ直した方が良い。

 自己分析の結果、思わぬ自分を発見するかもしれませんよ?

「――ああ、そうそう。ジュリオの話でしたね」

「ハッ……本来の主題を忘れていた!」

 うっかりさんな勇者様が顔をバッと上げると、青年は勇者様に弟の末路を快く教えてくれた。

「体が変質していく、と申しましたね。ですがこの変質は、勝手には終わらないのです」

「どういう意味だ? 終わらない、ということは……変わり続ける?」

「やはり元々下界の者である我々の肉体を歪める行為になりますので、何かしらの無理があるらしく……何の対策も取らずに変わりゆくに任せて放置していると、得体の知れない怪物になったり、望まぬ変貌を遂げたり……ジュリオは可愛らしい美少年だったのですが…………美の女神が対策を後回しにして御自身の欲望を優先してしまわれた結果、対処が遅れてしまい……私の『弟』は、いなくなりました」

「おい、ちょっと待て」

 どう考えても碌な未来の待ち受けていない勇者様の現状に、更に身体が変形していくかもしれないという可能性が加わりました。

 ジュリオさんは一体どうなってしまったのでしょう。

「それを免れる為には、元から神であられた方に『後見』となっていただき、肉体の変質具合を調整していただかねばなりません。天界に馴染まない内は『後見』の方を間に挟んで所属する、という形になります。より天界に適応できるよう、経過を見ながら調整を重ね、変なところのどこにもない神の肉体へと作り変えていくのです」

「つまり、失敗して変なところのどこかにある肉体になった元人間の神がいるんだな……?」


 ジュリオさんはどうなってしまわれたのでしょう。


「…………それで、ですね。人間と神との間に『後見』の契約を結ぶ儀式は神王様にのみ許された権限となります。彼の御方以外には執行できないものですから、まずは謁見させていただいてお許しを得ねば……と」

「その時が、ある意味で俺の最期なんだな……」

 謁見してもしなくても勇者様は進退極っているような気がしますが、どちらにせよ勇者様の『人生』は終わってしまいそうです。

 ちなみに女神様が勇者様への手出しを一時停止したのは、どうやら勇者様を弄び始めたが最後、『謁見』のことを忘れてしまうという危険性を女神様がご自分でわかっていたからでしょう。

 つまりは後顧の憂いを失くしてから、心おきなく弄びたい……と。

 既に前科があるので、その辺りは慎重なようです。

「お許しをいただけたら即座に儀式が執り行える、という訳ではありません。神王様より、貴方がこの世界の住民に相応しいかの審査が執り行われます。その審査期間も、相手によって長さが違いますから」

「そうなのか? すぐに終わらないものを、よくあの女神が納得したな……」

「私とジュリオは天界に来てから三ヶ月後に『謁見』のお許しを得ることが叶いましたが……その時には、ジュリオの体に危険な兆候が表れ始めていたのです」

 つまり女神様は、少なくとも一度は三ヶ月間『謁見』を忘れて遊び呆けた前科がある訳ですね。

 それでお気に入りを一人失くしてしまったのなら、それは慎重にもなるでしょう。

 この青年は三ヶ月放置されても大丈夫だったようですが、そのジュリオさんの末路が気遣われます。

「問題が発生して、ジュリオは更に儀式を行うまでに一か月を要しました。そして、その時には既に手遅れだったのです」

「なあ……そろそろ教えてくれないか?」

 滔々と遠い目をしてかつての弟のことを語る、青年に。

 勇者様もまた遠くを眺めるような目で。

 しかしはっきりと覚悟を決めた様子で。

 声を掠れさせながら、とうとう尋ねました。

「ジュリオは……君の弟には、一体何があったんだ」

 とうとう尋ねちゃった、その質問に。

 兄であるところの青年は、正直に答えました。


「私の弟は、もういません。…………『妹』に、なってしまいましたから」


 リアル女体化。

 その言葉が脳裏に浮かび、勇者様が戦慄しました。

 確実に、某鳥魔族の影響が勇者様の語彙を侵食しています。


 さあ、画伯が喜びそうな案件がやって来ましたよ!


「実は『後見』というものは、変質していく下界の民と繋がりを持つ全ての神が担当せねばならないのです。その者に『加護』を与えるなどしていた神がいれば、その方々全てで」

「それは、何故……」

「その者に強い影響力を持っていることは元より、その者の身の内に加護を与えた神の力が入り混じっているからです。神は他の神の職分を侵すことが出来ません。他の神の力が影響している肉体は、影響を及ぼしている神全てが協力せねば調整できないのです」

 そしてジュリオさんは、下界にいた頃から美の女神様じゃない神様の加護を受けちゃっていたようです。

 ただその神様も、ジュリオさんが攫われた当時はお忙しくしていたとかで、見守ることを怠っていたらしく……美の女神様は美の女神様で、その神に断りなく勝手に攫ったことを往生際悪く限界まで隠そうとしちゃっていたようです。そんなことをしても悪い結果しか生まないことはわかりきっていたでしょうに。

 その神様がジュリオさんの拉致監禁に気付いた時には、既に色々と手遅れだったようです。

 慌ててジュリオさんの後見として名乗り出た時には、ジュリオさんの男としての人生は終わりを告げていました。

 しかも女体化という変化が定着しちゃっていて、戻ることはなかったという……

 これも全て美の女神様のせいです。

 彼女の言い訳によると、気まずくて言い出せなかったそうですが。

 他者への気遣いが足りない女神様ですが、その神様の心象を悪くしたくないという思いがあったのでしょう。

 仕方がありません。

 ……相手は、女神様の愛息だったのですから。

「……待て。愛息?」

「はい。地上にも神話に伝わっていますが……愛の神様です」

「滅べ天界」

「は?」

「あ……いや、なんでもない」

 思わず、と。

 勇者様のお口から呪詛がポロリと零れ落ちました。

 彼に過酷な運命を課してきた元凶その二なので仕方がありません。

 ちなみにその一が美の女神で、その二が愛の神です。

「ジュリオは女になってしまった自分が受け入れられず……私のことも、自分の本来の名も忘れ、記憶を封じて『新しい自分』に生まれ変わってしまいました。今は自身を根っからの神だと信じて生活しています」

「その、ジュリオさんは……お元気なのか?」

「ええ。記憶を失くしてからは、かつての憔悴が見違える程に。ただ……本来の優しかった心根も歪んでしまったようで」

「いや、歪むだろ。それは歪むだろう」

 むしろ歪まずにいられたら凄い。

「愛の神様に引き取られ、その下位眷属として充実した毎日を送っているようです。心根は歪みましたが」

「そうか、充実しているのか……愛の神の、眷属? いや、愛の使者が歪んでいたら大変なことにならないか? 主に人間が」

「美の女神様も、ジュリオを前にすると少しは悪いと思われるようで……他の女神様方に接する時よりも、随分と棘も少なく。きっと気遣って下さっているのでしょう」

「つまり他の女神には棘が常備仕様なんだな……って、自分のせいで女になった神にまで少しは棘があるのか!?」

「もしかすると、自身をただの女神だと信じるようになって以来、ジュリオが奇妙な着ぐるみを着用して過ごすようになったので戸惑っていらっしゃるだけかもしれませんが」

「そりゃ戸惑うだろう。奇妙な着ぐるみってなんだy………………待て、着ぐるみ?」

 その瞬間。

 勇者様は知りたくなかった事実に触れた。


 天上の世界から、彼を迎えにきた着ぐるみがいる。

 常に気色悪い兎の着ぐるみを着ていた、彼女。

 愛の神の眷属だと言っていなかっただろうか。


 過去を、真実の自分を忘れ果てた愛の神の下位眷属。

 目の前の青年の弟だった(ややこしい)は、常に着ぐるみを着ているそうだが……――果たして、その正体は?


 → 勇者様の苦悩がすごく深まった!

 

 




 ジュリオさん自身は既に「自分は元々こういうもの」として今の姿形で人格形成を完了させています。

 過去の記憶をなくして受け入れているので、今の中身は完全なる「女の子」です。肉体も女の子です。

 そしてそっちの方が幸せなのかもしれません。

 …………って、あれ?

 話がもしかして重く……?


 これはコメディですので、あまり深く考えずに軽く受け止めていただければ幸いです。


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