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異世界連邦の売れっ子作家  作者: 東雲青橙
妖精の街 ピクシーランド
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第8話 長老のキノコの家で

 太陽が昇りてっぺんに近い、お昼頃だろう。


 ニッピに城であったことを報告した。


 妖精の剣のこと、神話の執筆のこと、妖精たちのこと。


「とりあえず、ピクシーランドを案内しながら長老のところにいこう」


 ニッピの提案に乗ろう。この街のこと、この世界のこともわからないから、誰かに頼るしかない。


「そうだね、長老にお礼も言いたいしね。お願いするよ」


 ハルトとニッピはピクシーランドを歩きながら長老の住む家に向かった。


 城内より街はキラキラとしていた。それは妖精たちの鱗粉が辺りにこぼれているのだろう。


「ここはピクシーガーデンだよ、妖精の鱗粉を栄養にして育った花たちが咲いたキレイな名所!夜だともっとキレイだよ」


「キラキラ光る花なんて、初めて見た。とてもキレイで気に入っちゃった」


 花は根本から光輝き、花畑一面が光の絨毯のようだった。


「オイラの住むピクシーランドはこの世界で一番美しい街なんだ。だけど、それは妖精たちの鱗粉のおかげで成り立ってるから、妖精を誘拐しようとする悪い奴らもいるんだ。それくらい妖精たちは貴重な存在なんだ」


「そうなんだ、ところでニッピの両親はどんな人なの?心配してるんじゃないかな?」


「両親はオイラが物心つく前から居ないんだ。だからオイラは長老の家で一緒に住んでいて、長老が親代わりなんだ」


 気まずいことを聞いてしまったようだ。ピクシーガーデンを抜けると、妖精たちの楽しそうな光景が広がった。


「ここは噴水公園だよ、真ん中の像は妖精女神像でこの街のシンボルさ」


「女王とまるで大きさも姿も同じだ、周りに飛んで、女王のスカートの裾を引っ張りあげているのは5人の子供たちかな?」


 けれど、不思議なことに子供妖精たちはみんな同じあのツギハギ妖精だった。


「今、ツギハギばかりだと思ったでしょ、ハルト。そうなんだ、妖精は最初はみんなツギハギなんだ」


 妖精たちはみな子供の頃、あのにっくき紙泥棒の姿なのだ。


「ニッピもツギハギなのか?」


「オイラも初めはツギハギだよ、だけど二週間だけだった」


「じゃあ、あのツギハギ王子はまだ幼いのか?」


「あの王子は違うと思う。恐らく、ツギハギの期間が長いのか、それともそのままなのか。だけど、ツギハギの期間が長ければ、それだけ魔力を溜め込んでるんだよ」


「なるほど、確かに冥府の門を開けるほどなら魔力は強そうだ」


「だから、あのツギハギ王子は期待も大きいんじゃないかな」


「ツギハギはとれないこともまぁあるのか?」


「魔力を溜め込みすぎると、圧力がまして、ツギハギが抜けにくくなるんだ、穴があけば魔力は漏れてしぼんでしまうよ」


「あのツギハギ追いかけるとき大量の鱗粉を撒いてたぞ」


「たぶん、もれはじめているから脱皮の前ぶれだね。しぼみ過ぎるとダメだけど、しぼまないと脱皮出来ないしね」


 話込んでいるうちに長老の家に着いた、キノコの笠の屋根の家、どこかメルヘンチックだ。


「長老ただいま!ハルトを連れてきたよ!」


 ニッピはキノコの家に入り、ピューンと中に入っていった。


「おーう、ニッピ君おかえり、ハルト君も入ってらっしゃい、歓迎しよう」


 お言葉に甘えて、おじゃまする。


「おじゃまします」


 中に入るとニッピと長老が部屋にいた。床にはなんと、三つ首の小型犬がいた。


「ケルベロチュ、会いたかったよ」


 ニッピは三つ首のケルベロチュの背中に抱きつきじゃれあっている。


「僕は初めてケルベロスを見ました、しかも小型犬だとは、、、」


『ガルルルル』


 ケルベロチュはハルトに唸っている。


「ケルベロチュは人見知りだから、そうだ長老、まだエサの時間はまだだよね?ハルトにあげてもらおうよ」


「そうじゃの」


 長老はの大きな冷蔵庫から生肉だして、三等分にして持ってきた。


「ほれ、このお肉を同時にケルベロチュにあげるのだよ。ホッホッホッ」


 同時にあげるって言っても手は両手しかないぞ、それを見かねた長老は歯でカチカチ鳴らした。


 これをくわえるのか?そういいたげだけど。ケルベロチュの唸り声は早くエサをくれと言わんばかりに大きくなる。


 ええい、やってやる。


 ハルトは肉を両手に口にもくわえて、ケルベロチュの前に立つ。


「ガワーーーウ!!」


 ケルベロチュが 飛びかかって肉にかぶり付いた。


 ハルトは後ろにふんぞり返り、尻餅を着いた


 ケルベロチュはハルトから肉を奪ってむしゃむしゃと食べている。


「ハッハッハッ、本当にやるとは、ケルベロチュもご機嫌だ!」


「ハルトはやっぱり凄いや、あれは冥府の王が罪人への処刑法だよ。普通は怖くて出来ないのに」


 なんともニッピは恐ろしいことを言っている。それを知っていたら絶対に出来やしない。


「なんてことさせんだよ、トラウマだよ!」


「心配せんでもケルベロチュは子供だから食ったりはせん、お遊びじゃ」


(…それって、犬の躾に良くないんじゃないですか?!)


「お遊びは置いといて、君は妖精の剣が抜けたのか?」


「抜けるわけないじゃないですか?あれは鉄の棒でしょ?巨人が折ってしまったと言ってました」


「その話は本当じゃ、しかし妖精の剣は抜ける、必ず」


「どういうことですか?」


「妖精の剣を女王が抜いたところを見ておるのだから、それはキレイなオリハルコンじゃった。巨人が豪腕で折ったのは柄と刃の繋ぎ目の鉄目じゃろう」


「では、どうして抜けなかったのですか?」


「おそらく、あの剣は女王に忠誠を誓っとる、つまり女王にしか抜かせたくないのじゃろう」


「無理じゃないですか!」


「せやな」


 いや、せやなっていわれても。


「だけど、君がここにいるのだから、何か別の試練を渡されたんだろう、何だね?」


 長老には全てお見通しのようだ。


「7日間で妖精の王子たちの神話を書くことをまかされました」


「本当か!!それは大事じゃの」


「はい、自分でも薄々思ってました」


「なるほどな。女王の気も知れるのぉ」


 長老は何か思うところがあるようだ。


「では、ハルト君、そしてピクシーランドの一世一代の大仕事へ、君にプレゼントをあげよう」


 長老は机の引き出しからペンを取り出した。


 白い天使の羽ペンで七センチのブルーのボディと先端は輝いていた。


「オリハルコン製の羽ペンじゃ、大気の魔力を吸って紙に字を落とす。まさに君にうってつけだと思わんか」


「いいんですか、こんなに、高そうな物をもらっても?」


「高いぞ、驚くほど。だけど、ワシのおさがりじゃ、大事に使え。いい仕事をすること間違いなしじゃ」


「ありがとうございます!大事にします!」


 ハルトが長老のペンを持つと輝きが少し増した。


「何だか嬉しそうだね。ハルトにぴったりかも」


「ハルト君、ためしに振ってみなさい」


 ハルトは筆ペンを振り、筆記体を書いてみる。


「書けている!」


 空気にキラキラと文字が浮き出した!これにはハルトは驚いたようだ。


「そうじゃ、このペン空気に字が書ける、ハルト君が何を書いたかはななめ横から見たワシにはわかりづらい。だけど、正面のニッピ君にはわかる。このことは大事だから覚えておきなさい」


 これは何かに使える、そう確信するほどに、夢みたいな機能にハルトはワクワクする。


 一分ほどで字はだんだんと薄くなる。


「字は長くは持たん、持って3分じゃ」


「長老さん、いろいろ教えてくださりありがとうございます。このペンで立派な作品を書かせていただきます」


「期待してるよ。ではケルベロチュも食べ終わって、ワシらもごはんにしよう」


「わーい、オイラお腹ペコペコ」


『グゥーーー』


 ハルトはお腹がなってしまった。


「決まりじゃな、待っておれい」


 長老はキッチンに向かっていった。


 この世界に来てから丸一日何も食べていない、ここはお呼ばれさせていただくとしよう。


 寝ているケルベロチュはなんとも穏やかだ。それだけに恐ろしいやつだ。

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