第3話 異世界のスライム
ニッピの住む妖精の街はピクシーランドといって、とても神秘的な妖精の楽園らしい
「ピクシーランドまでは歩いていけるから、羽根のないハルトでもそのうち着くよ、途中で厄介事に巻き込まれなければ、丸裸のハルトでも大丈夫だよ」
丸裸といってもワイシャツに黒のズボンをはいている、ニッピの言う丸裸は装備が無い状態を指すのだろう。そんなに危ないことがおこるのか?妖精が現れたのだから、化け物も現れてもおかしくはないのだろうか
「そんなに危ないやつが襲ってくるの?」
「攻撃はしてこないけど、まじんはイタズラをするやつもいるから、たまに凄く厄介な事になるんだ。」
未来の世界で魔人はとてもマイルドな生き物になっているようだ。イタズラ程度の悪意ということなら我慢はできそうだ。
「ハルトはどうしてこの世界に来たの?」
「神様に会ってみたかったんだ。僕の住んでた世界には妖精も神様もいなくて、人ばかりだったから」
「長老がいってた、何百年も前におっきな災害があって、いろんな生き物がしんじゃったけど、新しいのも生まれたんだって。神様もそのときからいるんだって」
「僕の世界にも神様はいたよ、けれど姿を見た人は誰もいないんた」
「みえなくて、いるかわからないのに、会うために長い時間我慢してこれたなんてハルトはやっぱり勇者だ!」
ニッピはどこか嬉しそうに羽音が高鳴った。
ちょっと待って、神様や悪魔が今存在しているのは、科学技術の発展から観測することが出来たからじゃないのか?ニッピの話を聞くとまるで、天災があってから、新たに“神様や悪魔が生まれた”みたいじゃないか
「どうしたのハルト、また難しい顔をして」
「いいや、考えごとをしていただけ」
考え事ばかりしても仕方ない、もう過去には戻れないから。コールドスリープをした会社もどこかわからない、それにもう過去に未練はない。
大事なのは未来を明るくすることだ
「ほら、ハルトは初めてかもだけど、あれがこの世界で一番いるまじん、スライムだよ」
「あれが、スライムか、って顔!?」
そこにいたスライムは、目はキリッと、鼻はスラッと高く、口からは白く輝く歯がちらりと覗かせる。
「い、イケメンだ」
なんと言うか、スライムだからおかしいけれど、絶妙だった。
『君を絶対に幸せにする、笑顔にして見せる』
しかも、意味もなくイケメンなセリフを言い出した!?
「この世界のスライムはすべてあんなのか?!」
「カッコいいよね、あれはイケメンスライムだね、“スライムコレクション”のためにスライムがイケメンを磨き続けた結果らしいよ。すごいよね」
「磨いたらあんなになるの?スライムの想像をはるかに越えちゃってるよ、あっ、なんか強そうな顔もきた!?」
身体が茶色く黒光りしているスライムが現れた、表面をビキッ、ビキッ、と突っ張っている
『我が肉体美こそが他を圧倒する!まさに完全無欠』
「それはムキムキスライムだね、スライムビルしてるのが野生でいるのは珍しいな」
こちらは、意味ありげに肉体美を自画自賛しはじめた。
「とりあえずほっといて、ピクシーランドにいこう」
今は相手にしている場合じゃない、少しでも早くこのルーン文字が読みたい
『どこにいくんだい、君を守るのは僕しかいない』
『我が肉体美、まさに天下無双、敵なし』
着いてくるが、無視
『どこにも行かさないよ、君は僕のものだ』
『我が肉体美、天上天下唯我独尊、不滅なり』
「このスライムどこまでも着いてくるぞ!どうすんの?」
スライムのしつこさに呆れてニッピに尋ねると
「話にのってあげると喜んでどこか他のとこにいくよ、ほらオイラの身体もムッキムキだよ、ふーん!」
ニッピは身体の前で手と足を組んで、力みながらムキムキスライムと向かい合った。
『お主もムキムキを愛する同志か、ムキムキは永遠に輝き続ける宿命!』
「はっはっは!ムキムキはすごいぞっ」
『では、さらばだ、ムキムキの同志よ』
そういうとムキムキのはどこかへ帰っていった。
「って、このイケメンの方を俺が相手するのか?!」
『やっとコッチを向いてくれたんだね、ハニー』
ハルトはどうやらこのイケメンの相手をしないといけないらしい
「仕方ないよ、ハルトの事が気に入ったみたいだからさっ、あいてが望むことを言えばいいよ」
イケメンは何かを待っているようだ、仕方ない、初めての敵とおもって、好奇心をだして相手をしよう。
「わ、私もイケメンスライムさんの事が実は好きだったのっ//」
自分で言って、ものすごく恥ずかしくなった。あーっ、またどこか異世界に行きたい気分だ。
隣でニッピが腹を抱えて笑っている。
『ごめんよ、ハニー、僕は追われるよりも追うほうがいいんだ。君を大事にしてくれるスライムは他にいるから』
とんだゲススライムだった。そう言い放つとスライムは向こうに行ってしまった。
「こっちから願い下げだー!!」
「ハハハハ!フラれちゃったねハルト、そういうときもあるよ。」
一台の荷馬車が二人の場所で停まった。
「どうした、お主らそこでうちのイケメン君と何を騒いでおるのじゃ。」
荷馬車に乗ったとても小柄で鼻の大きな、とんがり帽子のおじいさんが道で止まり、話しかけてきた。
『マイダディー、僕を追ってきたのかい?』
スライムはピョーンとおじいさんの膝の上に飛び乗った。どうやらスライムの主人らしい。
「どうもこうも、おじいさんのスライムに口説かれて困ってたんです!」
「おっ、ムキムキさんもいる!」
『同志よ、また会うとは!鍛練しとるか?』
よく見ると、おじいさんの後ろにさっきのムキムキスライムが荷馬車の上にいた、どうやら腹筋をしていたようだ。
「ふぉふぉふぉ、こやつらが迷惑をかけたようじゃな、すまんすまん」
髭を撫でながら、おじいさんは笑った。
「はて、にんじんと妖精とで歩いてどこにいくつもりなのじゃ?」
「オイラたちはピクシーランドにいくんだよ!」
「ピクシーランドか、ちょうどワシらもそこにいくところじゃ、詫びとしてそこまで馬車の後ろにのせてやろう」
長く歩いたし、スライムの相手もして疲れてきたところだった。
「はい、是非お願いします」
『やあ、ハニーまたあったね、やはり君は美しい』
このスライム男好きなのか、そんなことを考えるとスライム相手でも寒気がした。