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異世界連邦の売れっ子作家  作者: 東雲青橙
エルフの街 リザ=トワイライト
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第25話 リザとの約束

 エイミは本棚から一冊の本を取り出した。


「この本は私たちの世界では、バイブルとされているものよ。伝説の勇者エルダが晩年に書いたもので、“リザとの約束”の一節を読むわ。」


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 私の命はリザと比べるとあまりにも短い事がとても悲しい。あなたが結婚する頃には、私はもうこの世には居ないほど。私が世界樹になったとき、世界樹の加護はあなたたちと私の時間はどんどん遠くなる。私の光はリザにはあまりよくないみたい。あの月には、淡い光しか届かないところがあるんだって、リザ、あなたはいつか行ってみたいって言ってたね。もし私がちゃんと世界樹になったとしたら、大きな私がリザをあそこまで連れて行ってあげる。勇者になった私を助けてくれたリザにお願いがあるの、またいずれ出会う勇者を祝福してあげてください。そうすれば、あなたたちもまた救われるはず。その勇者は私自身なのだから。

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「世界樹が誕生したとき、その光がこの月面まで届いた。私たちエルフの先祖はその道をたどって、この地に着き文明を築いたの。それが私たち、エルフと勇者エルダとの約束。そして君は、エルフ族が待ち望んだ予言の勇者よ」


 エイミはハルトの手を握り、涙を一粒ながす。淡い星光が涙を照らす。確かに青い涙だった。


 涙が僕の右手に落ちたとき、瞳孔が開くのを感じると、ハルトは意識がはっきりするのを感じた。エイミのチャームが解けたのだ。


「あのときの草原で僕に、催眠したんだな。だけど、なぜわざわざ解いたんだ。そのまま術をかけていたままの方が君にとっても都合がよかったんじゃないのか」


 エイミは握った手を離して、ハルトに背を向けた。


「エルフの一族には勇者エルダとの約束がある、私はそのことを守る熱心な信徒だもの」


 もし、僕がエイミの助けになれたなら、彼女は喜んでくれるだろうか、それに、そうすれば、彼女は僕をリバイバルマウンテンにつれていってくれるかもしれない。とにかく今はエイミを頼るしかないし。


「僕はリバイバルマウンテンに行かなくちゃならないんだ。だけど、君が言うには、人助けをすれば、何でも願いを聞いてくれるんだろう? 」 


 エイミは少し不機嫌な様子になる。


「あなた、人助けするのに対価をもらえるかどうか、先に聞いておくタイプなの?」


 しまったな。言い方が悪かったみたいだ。彼女の気を損ねてしまった。


「君も僕を利用しようとしていたし、今回の事で、お互い様にしないかい? 」


「そうね、いいわ、私もあなたを利用しようとしていたし、今回はあなたに助けてもらうわ」


 エイミはクローゼットから衣服を取り出してハルトに投げた。広げると、白いタキシードだった。


「これを着てちょうだい」


 ハルトはタキシードを着た。鏡を見ると、案外似合っているじゃないか。


「案外に合っているわねトロルにも衣装かしら」


 エイミは腕を組み、ほっぺを膨らませて、そっぽを向く。


「勘違いはしないでよね、式は挙げるけど、あなたとするわけじゃないから」


 エイミは指を鳴らして、ハルトの頭頂からつま先まで、体をなぞった。驚くことに、ハルトの体は縮んでいた。


 顔を触ると、ごつごつしており、鼻は三角錐に長く伸びていた。あわてて鏡を覗くと、ピクシーランドの近くで出会ったトロルのおじさんそっくりだった。 


「僕と結婚するんじゃなかったのかい?」


「あら、期待しちゃった? 文字通り、婚約相手は、トロル様よ。でも大丈夫よ、誓いのキスはちゃんとしてあげるから」


 トロルの背丈は120センチほどしかないので、視界の低さのギャップで酔いそうだ。


「何で、トロルの姿なんかに」


「私はトロルと結婚するのがどうしても嫌で地球に逃げたの。それでも、追いかけてきた王子を私が魔法で、もっとかわいいウサギに変えようとしたら、間違えて、豚とトンビのキメラになっちゃって、そのまま飛んでどっかにいっちゃったわ」


 なるほど、彼女は失敗のツケを僕に取らせようという魂胆だったのか。とんだ小悪魔だ。


「結婚だけしてもらえれば、後はすぐにリバイバルマウンテンに飛ばしてあげる」


 エイダは僕の腕を引っ張った。


「式場まで案内するわ」


 天真爛漫な彼女に頼って、最後はトロルと人のキメラにされないことを祈るハルトだった。

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