第22話 妖精の儚さ
妖精の国の冬は短い。春こそ長くて、冬は短い。けれども妖精たちは冬が耐えられないが、この国の風土と季節が妖精たちの体をいたわり、安住を気遣っていた。
ピクシーガーデンはこれから長い冬になるだろう、つらいこともたくさん押し寄せるかもしれない、復興の努力が実らなかったら?
「辛いことは、暖炉に薪をくべるように、楽しいことで笑い合っていくさ。道のりを気にすることはまだまだ先のことだと思うよ。やればいいさ」
ハルトたちは妖精王子たちと初めて会った中庭で、王子たちとニッピと話をしている。
「あまりこの街に長居はできないかもしれないのう」
隣にいた妖精大臣はハルトのもっていた募集要項の写し紙を読むなりそう言った。
「それじゃあ、別れの場所はこの中庭がいい」ウンディーネがそういってくれた。
僕たちは、これからをどうするかを決めている。
「とにかく一度、あの大樹の根元に行きたい。行って、この世界のことをもっと知りたい。そして、みんなのことを物語にしていきたい」
僕は、初めて見る世界と生き物に興奮している。君たちを物語の一ページにしてもいいんだったら、させてもらうよ。
「長居ができないと言うよりも、この世界に長居しすぎたのかもしれないのう、おぬし」
ニッピは、体をのけぞり、はっとしていた。
「そうだよ、オイラたち妖精って、とっても長生きだと言われているんだ。しかも病気にもかからない。そうだけど、何もちっとも良いことなんてないんだ。」
長生きで病気にもならないなんて、この世のすべての人たちが望みそうなことなのに。
「見ての通り、オイラたちは、ハルトなら何でもないような瘴気にはとっても弱いし、それだけじゃなく、たばことかの、空気の悪さにも弱いんだ。だけど死なないけどとってもつらい。だから神様はそんな僕たちのために、この街を作ってくれたんだ」
僕はあまりぴんときていなかった。
「この街は時間の流れが速いのよ、だから空気は淀まずにいられるの」
ウンディーネの解説でやっと、状況を理解した。つまり、時間は過ぎている。
「ほほ、とっくに時間が過ぎているが、焦る事ではない。この世界に時間が速く進む街があれば、その逆ももちろん」
大臣は髭をなで下ろす。
「よし、ここからはオイラが案内するよ!」
ニッピは妖精の剣を振り上げた。
「だけどニッピたち妖精は、そんな時間が逆行するようなところに行ったら駄目じゃないか」
「大丈夫だよ、オイラにはこの剣があるから、ねえ大臣少しの間だけ、この剣を借りてもいいかい?おねが~い」
「言い伝えでは、剣は主を選ぶというからのう、その剣に揺蕩うオーラにわしが口出すこともないじゃろう。よかろう。それなら、お主を妖精外交員として任命する」
「やったー!」
ニッピは高く飛び上がって喜んだ。
「それじゃいこう、すぐいこう、驚いちゃ駄目だよ、オイラたちが今から行くのは地獄の一丁目、リバイバルマウンテン」
体から青い火花を放つ、アルヘイムは身震いをした。
「あそこはまずいって、すんげえ恐ろしい閻魔の根城だぜ」
「そうじゃ、またの名を死と再生の活火山、魂の還元処。お主はそこで魂を洗うとよいぞ」
大臣は僕の胸に指を刺す。戦争の次は、地獄の沙汰とは、この世界はとんでも末恐ろしくなってしまったものだ。