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異世界連邦の売れっ子作家  作者: 東雲青橙
序章
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第1話 神と悪魔はいるらしいです

「……」


 真っ暗だ。 目を閉じているからだ。


 僕がコールドスリープをしたのは未来を生きてみたかったから、母親はいつも正直でいい子にしてたら神様がいつもハルトを守ってくれると教えてくれた。


 仕事は小説家で本も売れていて、充実していたけれど、神様に会いたい一心でそのまま眠りについた。


“現在の現代技術は革新的に進化を続け、数百年で臨界点を迎え、神の領域に達します。”


 著名で信頼できる科学者が発表した論文には驚くことに神と悪魔の存在について論じられていた。


 神も悪魔も存在する、それらを観測する技術を人類が持ち合わせていないだけ、あと数百年で神の領域に到達する。


 信じられなかった。それでも神様や悪魔にとにかく会ってみたかったから、コールドスリープに迷いはなかったよ。


 コールドスリープは既に確立されていて、ポピュラーであった。時を憂いた老人が未来に希望を託し、私財をつぎ込む。


 コールドスリープで死にはしない。肉体凍結により肉体の老化が数千分の一に抑えることで未来にいき、本人の求める時代まで眠らせる。安全性も確立されていたため、一部ではとにかく流行った。


 もちろん苦痛は少しも感じない。


 だから迷いなくカプセルに入った。だからといって僕は信心深い、どこかの信徒なんかじゃない。僕は、ただ……


 この話をするほど、僕が眠ってもいい時間はないみたいだ。


 深く、凍った意識は柔和な声に呼応して醒める。


「はじめましてイヴと申します、おはようございます。コールドスリープに入り体感で3年が経ちました。科学技術は脳内伝達の確立に成功する段階に突入しました。私があなたの脳内シナプスに伝達する使命を授かりました。よろしくお願いします」


 脳内シナプスの解析がすみ、ついに情報伝達を脳内で行えるまでに科学技術が到達したのだ。


「はじめましてイヴ、僕は高峰ハルト。君が長い眠りの旅が終わりに近づいたときに現れる神話の女性だね、こちらこそよろしく」


イヴはにっこりと頷いた。


「私が登場したことでご存知の通り、現代の科学技術は急速な発展を遂げることに成功し、より爆発的に発展を続け、神と悪魔を観測することに成功しました」


「神と悪魔に会えるんだね!」


「もちろん私が存在しているんですもの、私自身が証明です」


 もう一度イヴは微笑んで小さく頷いた。少し表情を曇らせ、外の世界の状況を伝えてくれる。


「目覚めたなら、ハルト様が望む世界があります。しかし、今のハルト様は目覚めても無職で無一文です」


 イヴは何故か自分の財政事情と小説家でなくなったのかを知っているらしい。えっ?小説家じゃなくなったの?


「残念ながら、ハルト様の小説は50年を過ぎましたのでその著作権は失権されました。小説家としても職務放棄で出版社から戦力外通告を通達されています」


「無一文ということは印税も貯金も残ってない!?」


「…はい、コールドスリープの維持費用にあてられ、残っておりません」


 望んだ世界に来たものの、まるで絶望的な状況だった、神と悪魔に会いたい願望ばかりで考えが甘かったのか。


そんな僕にイヴが提案する。

「捨てる神あれば、拾う神ありですよハルト様、実は小説家として執筆された“ユグドラシルの樹の下で”がとある神さまが大変気に入ったそうで。彼が目覚めたとき、職に困るはずだからうちの職場でよかったら歓迎する、とのことです」


 異世界で放浪する最悪の展開は免れそうで安心した。しかも神様が自分が書いた小説を気に入ってくれたそうで凄く嬉しかった。


「本当かい、嬉しいな、作家として冥利に尽きるよ。是非とも働きたいな」


 神様からの御加護、断る理由がなかった。


「わかりました、では彼女にそう伝えておきます。目覚めましたら、こちらの募集要項を持っているはずです。裏面に書いてある場所と時間に面接を受けてください。あなたなら大丈夫です、ハルト様」


 ヴァーチャルに写し出した映像に“異世界連邦にんじん課 人事募集要項”とか書かれている。


 これによれば本当に人間と悪魔と神は共存しているらしい。しかも異世界連邦という組織になんだか凄まじい魅力を感じた。


「外の世界は以前とは違う世界だと思ってください。困惑するかも知れませんが、必ず神は貴方を見捨てません、ハルト様が行く道に神の御加護があらんことを祈ります。では…」


「イブありがとう、初めて会った神様が君で良かった」


「ふふふ、わたしは神様じゃないですよ、あなたと同じ人間です」


 イブは僕の瞼を撫で下ろし僕はゆっくり瞼を閉じた、優しい温もりが体を包んでいく。体が暖まっていくようだ。

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