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異世界連邦の売れっ子作家  作者: 東雲青橙
妖精の街 ピクシーランド
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第11話 妖精王子と戯れる

 氷の魔城に到着した。


「早いでしょ、もう着いたんだ。ユニ丸ありがとう」


「ヒンヒヒーン」


 ユニマルは思い切り前足を立ち上げる。


 ノームはぴょーんと得意げに無事に着地ができたが、ニッピとハルトはお尻から見事に着地し、振り落とされた。


『「イテテ」』


 ユニマルこと神聖獣ユニコーンは鼻息を荒げながら、そんな二人が痛がるのをしり目に通ってきた異次元をバックで戻っていった。異次元はユニマルの鼻差ですぐに消えた。


「今日はユニマル、めちゃ機嫌悪いね」


「いくら機嫌が悪くても、振り落とさなくても」


「オイラも、咄嗟だから、飛ぶの忘れちゃった」


 眼前には氷の城がたたずんでいた。


「昨日ここに来たときは、裏口から地下に潜らされたからね。こう前から見ると、初めて見るくらいに立派なお城だなあ。こんなに透明なガラスでできた、お城は初めて見たよ」


「ピクシー城はママの魔法でできた本物の氷のお城なんだ」


 この立派なガラスのお城は、どうやら氷の城らしい。あの昨日、謁見した恐ろしくも儚く美しい氷の女王は偉大な魔女のようだ。


「おいらたちのママは偉大な魔女なんだ。父さんが死んだあともこの国を治めていて、みんなから尊敬されるすごい魔女なんだ」


「昨日ノームのママにあったけど、おっかないな、もう少しで地下牢に永住するところだった」


「ママは気が短いところがあるからね」


 気が短いだけで、牢屋にぶち込まれては身が持ったもんじゃない。


 城にはいると、先ほどの広場にあった氷の女王の聖像より二回りも大きい聖像があった。


「ノームのママはいつ見てもおっかないが綺麗だな」


「そうだろ、それにふとした優しさもあるんだ。たとえば誕生日には必ず氷のバラの花束を魔法で作ってくれるとか」


 我が子に対する愛情はあるらしく、心まで冷徹ではないらしい。城に入ると、見慣れた小爆発が迎えた。


「執筆は、順調に進んでいるかい?」


 白く長い髭をさすりながら、妖精大臣が現れた。


「大臣は爆発がお好きなんですね、謁見の時も、子供たちを呼び寄せるときに使っていましたし」


「そりゃ、ワシの専門は発破魔法じゃからの。君たちは今から妖精たちに会いに行くのかな」


 落ち着いた雰囲気からは想像ができないが、爆発暴発が大好きらしい。


「それじゃあ、女王の仰せの通り、執筆に必要な妖精たちのことを教えてやろう、ほれ」


 黒紫色の空間が出現し、妖精の王子たちが現れた。たしか名前はそれぞれ、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、だろうか、いや違うか。


しかし、登場したというより、引っ張り出されたのは三人だった。見ると、ブルー、イエロー、レッド、信号機の色をそのまま持ってきたようだったけど、グリーンがいない。


「いててて、大臣テメェ、いつかぶっ飛ばす、マジで!」


 そうだ、赤い妖精はサラマンドラだった。それで、青はウンディーレ、黄色はシーフだったはずだよな。


 神話に登場する妖精と名前が一致しているから、憶えていた。

それにキャラクターも際立っていたのだから、憶えるのでしょう。


「私はノーコメント!もう何も知らない、くそジジイめ」


 ウンディーレは新体操の練習でもしていたのか、三人の体にからみついて、すぐには、ほどけはしなさそう。


「…………」


 相変わらずシーフという妖精は、無口だな。これはこれで逆に、キャラクターが成立してしまっている。


「そういえば、アルヘイムがいないんじゃないかな」


「ハルト、もう妖精たちの名前を覚えちゃったの!?それも能力なのかい」


 ニッピは僕に憧れて出る言葉じゃなく、もしかしたら、ただ僕を困らせたいだけなのかもしれない。


「いやいや、大袈裟な、憶えやすい名前だからすぐ覚えちゃっただ//(ブフーン)」


 大風が吹いた。僕が女の子だったら、スカートがめくりあがっているところだよ。


「最高だ!気持ちいいもんだぜ!大臣、そろそろ解いてくれよ、この魔法」


 アルヘイムは疾風の妖精、というよりこれじゃあ、強風の妖精だろ。


「こら!アルヘイム!大人しく捕まるのじゃ」


 アルヘイムの後ろからは黒紫色の空間から、マジックハンドを巨大化したような白い大手が追いかけまわしていた。


「やなこった」


「n1ga4teta3a60uka」


 妖精大臣は、不可解な呪文を口ずさんだ。


 唱え終わると、マジックハンドは赤く染まり、先ほどよりスピードが増し、ついにアルヘイムを捕まえた。


 そのまま、黒紫色の空間に引きずり込み、それとついでにと、言わんばかりにノームまで引きずり込み、妖精王子たちは一地点にわざわざ集められた。


「本当に、大臣は一度五人でとっちめないとダメだね、こんな老体には、たまには鞭でも打ってあげないと」


「イテテ、おいらもそれには賛成だよ」


「王子たち、そんなことより、君らの神話を書いてくださる、高峰ハルトさんだ」


 大臣は自分に向いたヘイトをハルトに投げたので、ハルトは大臣の方を向き、嫌な顔をした。


「お前は確か執行猶予中の犯罪者!犯罪者予備軍だ!」


 相変わらずこの赤い妖精は口が悪いな、おっとメモメモ。


「おい、今メモしただろう。俺の悪口を神話にする気だな、バカ」


「冗談だよ、振りだけだって。」


 文字通りの悪口だな。


「みんなこいつは見た目以上に悪い奴じゃないよ、だっておいらの泥棒を許してくれたし」


 意外だな、ノームがかばってくれた。意外といい妖精なんじゃないか。


「そんなの関係ないよ、だってそれはノームのお父さんのケツの皮でしょ」


 あれケツの皮だったのか、道理でノームはわざわざケツに貼っていたのか


「た、たしかに、それにこいつは、おいらにくっついたこれを引っぺがそうとしたし」


 もう、こいつ呼ばわりかよ、裏切り早くないか?


「それじゃあ、妖精の国に伝わる、“信頼の儀式”をやるのはどうかな、王子様たち?」


 ニッピが突飛な提案をする。


「それはいい提案だな。やるなピクシーの妖精」


「えへ、褒められたよハルト」


 俺のいないところで話が進んでいる。


「なんだよ、その“信頼の儀式”って?」


「簡単だよ、ハルトが今までで一番、リョーシキある行動をみんなに話してそれが受け入れられたらオッケーだよ」


「それって妖精の国と関係なくないか?!」


 僕は何か武勇伝を妖精たちに発表しなくては、ならなくなってしまったようだ。

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