1/14
「 序 」
これはわたしが、今より少しだけ若かった頃の話しだ。
若いといっても、三十二。それほどでもない。
あの当時。わたしは何となく暮らしていた。
お給料をもらう為に、朝になると職場へ行き、五時半になると仕事を終えた。
恋人とよべるひとは、もう長い間いなかった。そうなると、男のひとと親密な関係を結ぶのはなんだか面倒になってきて、このまま暫くひとりでもいいなと感じていた。
家族からは独立し、腹を割って話せる友人もちかくにはいなかった。
そんな頃。
わたしはひとりの河童に出会ったのだった。