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第82話:ダークエルフと精霊召還

 召還のスクロールを使ってアイテムを作成する。

 精霊を召還できるアイテムを作った。



―――数日後―――

 今はマジックアイテムの試験を行っている。

 召還よりも具現化に近い、周囲の精霊の力を消費するらしく同種の精霊を何体も召還できなかった。


「ダメだなそんなに甘くなかった。」


 今はレンジャー達と一緒にゴブリン退治をしたところだ。

 バード領に進入したゴブリンにこのアイテムを使用してゴブリンの集団を今焼き払った。


「いやぁー、この威力なら十分でしょ。」


 1人のエルフのレンジャーが俺に言う。


 魔法の火鉢から火の精霊、魔法の香炉から風の精霊を召還してゴブリンと戦わせたのだが俺としてはもっと多くの精霊を同時に召還したかったのだ。

 ゴブリンは成すすべもなく蹂躙されたが予想より時間がかかった。


 あとは召還する精霊の大きさだ、レアアイテムが有れば大きな精霊が呼べるが条件が厳しい。

 火鉢なら、焼けた炭を入れれば大型の精霊が召還され、硫黄を燃やせば超大型の精霊、火薬を使えば巨大精霊といった具合に大きくなるが火薬を手に入れるのがなかなか難しい、管理にも気を使う。

 同じように、香炉なら香の種類、水の精錬を呼ぶボールなら水、海水、海洋深層水、土の精霊を呼ぶクリスタルなら、砂や石、岩、レアアースなどが必要である。


「同種類の精霊は1体しか呼べないので思ったより使い勝手が悪いし、最大級の精霊を呼ぶ必要な触媒が手に入り難い。」

「安い触媒の精霊でも十分脅威だから大丈夫だって。」


 俺は「そうかなぁ。」と思いながらも町に帰る。

 町の風景は刻一刻と変わっている、最近はランスから呼んだドワーフ達の施工する風景が加わった、建物の内装工事をしている。


 指揮をしているキャッシーが大きく手を振っている。

 軽く手を振り城に戻る、出来た城は西洋風の城じゃなく何故か日本のお城って感じだ、俺は見慣れているがキャッシー達はどうしてこんな奇怪な城になったか疑問のようだ。

 推測だが、自動演奏の竪琴ライア達に追加したアニソンなどの曲のデータに日本の知識も入っているのだろう。



 夜になり部屋で休む、ボーとしているが本当に何も考えていない。


『コンコン』

「入っているぞ。」

「知ってるわよ、入っていい。」


 入口から現れたのはキャッシーだった、それも寝巻き姿だ。


「まだドア自体が無いんだ勝手に入ればいいじゃないか。」

「勝手に入れるわけないでしょ。」


 急ピッチに建物だけ建てられ建具が全部屋についていない、それでもベットがあるだけ俺の部屋はましだ、他の者は冷たい石に木の板を引きその上に寝ている。


「なんだか元気が無い見たいね。」

「なんか急にやることが無くなってね。俺自身は必要ない人間なのかな。」

「そんな事ないわよ、世界の平和とか元の世界に帰るとかあなたに必要なの?」


 キャッシーがスルスルっと上着を脱ぐ、ライト越しからも解る薄い寝巻きだけだ。


「おい、風邪引くぞ。」

「あなたが良いならここで暮らしてもいいのよ、1代貴族の称号を持っているし私が養うわよ。」

「言っている意味が分からんが。」

「私と結婚して子供を作ってよ、あなたが作ったこの城や町があるから一生遊んで暮らしてもいいのよ。」


 俺を押し倒し上に乗りかかる。


「風邪引く前に暖めて。」

「不許可だ。」


 急にキャッシーが空中に浮いた、「ほげっ」変な声を出すキャッシーの後を見ると鬼の形相をしたメルカバがキャッシーを吊り上げていた。

 ベニーやマリーヌもいる。


「あれ、皆さんおそろいで何時からいたんですか。」

「「知っているわよ、入っていい」からだ。」

「殆ど全部聞いて居たのね。」

「「居たのね」じゃない。」


 『ゴッ』メルカバの頭突きで二回転して壁に激突する。

 さっと避ける辺りベニーとマリーヌも怒っているのだろう。


「主よ何をやっているか。」

「いやいや、俺何もやってないし。」

「主が導いてくれなければ、我々は何処に行くのだ。」

「お前らだけで十分なんだろ。」

「違いますわ。」


 影からスカーレットが出てくる。


「あなたが我々を助けてくれたから、あなたの役に立ちたいのよ。」

「あなたが望まないなら元の世界に戻る必要なんて無いわよ。」


 その後にはボニーが居た。


「でも望むなら全員あなたの剣となり盾となって進みます。」


 ビッキーが後から抱きつく。


「俺も別に元の世界に戻るのをそこまで望んでないけど・・・出来れば皆に見せたいと思っていただけなんだ。」

「「じゃあアーティファクト集めるの辞めます?」」


「ちょっと待ったぁー。」


 全員ビックとなる。

 見ると次元リングから顔だけ出しているマックス王子。


「何だよビックリするじゃないか。」

「定期連絡の時間なんだよ。勝手に今回の冒険辞めますってなんだよ。」


「そんな事言っても元の世界の戻る事を望まなければこんな危険な冒険しなくてもいいんだよな俺達。」

「それは違うぞ、いいかよく聞けよ、俺が神剣を探し始めた理由は・・・」


 ちょっと長くなるので端折ると、悪の神すら滅ぼすことが出来る『神殺しの剣』は悪を滅ぼすための切り札だが異種族を統一して平和を築くも効果もあるらしい。

 よく分からんがマックス王子は太陽神のような神よりももっと原始的な大いなる神による信託を受けて剣の捜索を始めたようだ。

 現在この世界は他の次元も含めて悪の軍団に侵食されているようで、このまま放置すれば全ての世界は悪に染まり幸せに暮らす事は出来ないと断言した。

 神のお告げは、1つの宝を探せば他の宝も集まるだろうと告げているようで、1つの宝である『神殺しの剣』を手に入れるために冒険を始めたようだ。


「非常に怪しくないかその話。」

「真っ白い空間に人と言うかエネルギーと言うか、何故か神だと俺は分かったんだが。」

「あれ、それってこんな感じの、とても理解不能でえーっと。」


 俺はこの世界に蘇生される時に会った人型の神を身振り手振りで伝えた。


「それだ。お前も会ってるじゃないか。やはり神のお導きによりこのクエストは進んでいるんだ。」


 アーティファクトを集めるために俺をこの世界に呼び寄せたなら、マックスの会った神と同一である可能性は高い。

 うーん、よく分からんが手伝う方がいい気がするな。


「まあ元の世界に絶対帰りたいって訳じゃないけど平和には暮らしたい、それに皆に俺の故郷を見せる約束を守りたいから協力するよ。これじゃあ動機が軽いか。」

「いや、協力してくれるならありがたい。」

「でもさ、首だけ出して話すのは止めろよ全然威厳が無いからな。」


 周りから笑い声が聞こえる。

 苦しそうに出したマックスの手を強く握った。



 定期連絡の内容を確認すると、ダークエルフの斥候と遭遇した直ぐに撤退したようだが、大規模な戦闘が発生しそうなだ。

 現地に移動しマップを確認するとダークエルフが多数こちらに向かっていた、中には蛸男が1体居る。

 それを聞いてマックス王子のダークエルフの従者の顔色が変わった。


「第一マトリックスの三位家系の当主の従者です。たぶん当主かそれに近い人物も参戦しています。」

「強いのか。」

「相当強いと思います。」

「分けたチームを集めて戦うか。」


 俺はうーんと考える、この狭い空間で4チームで戦っても邪魔なだけな気がする。

 向こうも10人前後、敵対反応していない者は見ることが出来ないので正確な数は解らないが確実に敵対しているクリーチャは10体だ。


「作戦さえたてれば俺は十分2組のパーティでいける気がするが、みんなの意見を聞きたい。」

「これぐらいでやられているようじゃ先が思いやられるし、いいんじゃないか。」

「戦闘前に連絡をくれ、次元リングで何時でも駆けつけられるようにする。」


 探索は2チームのままで行う事にした。

 距離にして10Km歩くだけで2時間かかる距離だが、ここは地下で足場も悪く普段の2倍は時間がかかる。

 しかし、俺達は俊足と壁歩きの効果が付いたブーツを使用しているので平地と同じぐらいの速さで進行できる。



―――1時間以上経過した頃―――

 俺のマップ上ではダークエルフが接近して来ている、手信号で2体の接近を告げバニラとボニーが姿を消して音も無く確認に行く。


 程なくして、ダークエルフの斥候が2人と犬2匹を確認したと戻ってきた。

 犬は口から火の粉を吐いている事から、何かしらの魔物のようだ。


(斥候を排除して本体の奇襲をかけよう。)


 タルトの提案を承諾して、斥候の排除を開始する。


 先発を編成する。

 隠密に優れた盗賊職と武道家を選びスカーレットにサイレンスをかけて作戦決行した。

 俺達は後詰で後に続く。




 ボニーは魔具の効果で天井に張り付いて走っていた、同じように前を走る武道家の脚力はこの洞窟内でも恐ろしく早い。

 全員不可視のマントを装備しているので見えないが、サイレンスの効果から時々抜けるのは遅れている証拠だ、全力で走り追いつく。

 後ではバニラの「ちょっと早すぎよ。」という小言も聞こえる、笑いをこらえるが少し気が緩んでいるのかもしれない自分の気を引き締める。

 敵は馬鹿だ、位置は暗視ゴーグルが無くても四足の魔物の口から赤黒い吐息で丸分かりだった。


 しきりに臭いを嗅いでいた犬の魔物が顔を上げる、気がついたのかも知れないが少し遅い。

 吼える前に呪文の効果範囲に入り音がかき消される。


 次の瞬間、武道家2人の姿が現れ犬を撲殺する、いや1匹は生き残った。

 私は体制を低くしてそのままダークエルフの上を駆け抜ける。

 天井から飛び降り後から急襲する。

 鈍く青炎を発しているダガーはあっさりとダークエルフの鎧を貫き急所を捕らえた。

 バニラも一瞬遅れてダークエルフの上方から現れる。

 彼女は降りると同時に左肩から短剣を心臓に突き刺した、私もまだまだ修行が足りない。


 残りの1匹の犬は、スプモーニに襲い掛かるが軽くいなされ全員の攻撃を受けて絶命した。




 リクはボニー達が走って行った後を追いかける、一瞬ヘルハウンドのエネミーマーカが増えたが一瞬で消える、ダークエルフのマーカも消えていた。


「終わったみたいだぞ。」

「もう終わったのか。って言うかお前のその索敵能力に戦慄するわ。」

「本当は敵索する能力じゃないんですけどね。」


 戦闘が早終わったことに驚いているのは『真夜中の焚き火』団のメンバー、しかし歴戦の勇者だけ有って気持ちを直ぐに切り替える。

 誰もダメージを受けていないのを確認して作戦を続行する、サイレンスが効いているうちに本体を急襲す為だ。


 最初に決めた作戦通り再度不可視化した4人は敵の背後へ、俺達は後に続く。


 俺達も後に続く、少しして敵の本体に接近する。

 約40mぐらいで不可視の効果を使用しさらに接近する。


 もう敵の背後では始まっているようだ。

 不可視の呪文は攻撃すると解除されるが逆に言えば攻撃しなければ解除される事はない。

 魔法のフィギアから4頭の猛獣を呼び出しても消えたままだ。

 犀、ライオン、虎、熊とバラエティ豊かに後方の空間を占拠した。


 魔法の火鉢と香炉、クリスタルを起動する、合言葉での起動なのでサイレンス空間では使用できないのが欠点か。

 火と風、土、の精霊が召還される。


 敵の魔法使いがディスペルマジックを使用する。

 サイレンスが解除され消えていた4人が視認できるようになった、それと同時に敵の前衛に精霊達が到達する。

 犬の魔物が放たれ、大盾を持った兵士が通路を埋めるここで食い止めるようだ。

 後の術者2人から氷の呪文と線光が発射され風の精霊を襲う、風の精霊が立ち消える。


 蛸男が何か呪文を使っている。


「いけない。」


 とボニーがキーリングからブランクキーを外し地面に差し込んだ、回すと同時に七色の光が空間に広がり消える。


「空間移動を封じたわ。」


 蛸男は呪文失敗で何も起こらず正面かの地面から湧き出るように移動してきた土の精霊に殴られる。

 混乱の極みにある戦況だが敵の魔術師は冷静だった、前衛の前に力場の壁を作り、水と火の精霊を食い止める。

 その間に、蛸男と女僧侶が土の精霊を解呪する、かなり良い連携だ。


 俺達は最初の予定通りに、魔法の水差しを使い大量の水を流す、壁や天井に張り付いている俺達は水浸しでも余り影響は無い。

 力場の壁は想定内、少し勿体無いが奇跡の指輪の効果で解呪する。

 せき止められた水が一気に流れ込みダークエルフ達の足元を濡らす。

 ボールに海水を注ぎ水の精霊を召還する、瞬時に水の精霊が竜巻、いや渦巻きに変わり敵の集団を飲み込んだ。


 これで戦局は決まり、消えた風の精霊と土の精霊を追加して残りの敵を圧殺した。

 その時間約1分。


「まじか、すげー威力だな。」


 タルトは火の精霊を見上げながら言う。


「そんに近づいてたら危ないですよ。」

「リクの呼び出した精霊だろ。」

「いやいやそうじゃなく、俺が渡した水中でも呼吸出来るの魔法道具のスイッチ入れてないでしょ。」

「今は水中じゃないからな。」

「地下で酸素が少なくって気絶する事ってないんですか。酸欠って言葉知ってます。」


 首をひねるタルト。

 よく聞くと、狭い空間に閉じ込められるとダメージを受ける事があるとか、そしてHPを越えると気絶する、うーん、この世界の窒息はダメージ制なのか。

 タルトが言うには、息を止めても2分は大丈夫なようだ、俺もプールでは1分は潜水できるからな。


「まあ、動かなければそのぐらいはいけますか。」

「何言ってるんだ、水中戦闘しながらでも2分はいけるって言ってるんだ。」

「流石です脳筋は違いますね。」

「脳筋ってあのな、この世界の平均的な潜水時間を言ってるんだ、俺なら1.5倍、いや装備で耐久力が上がっているから2倍はいけるぞ。」

「4分も息を止めながら戦えるって嘘ですよね。」

「ここのメンバーなら殆ど同じことが出来るぞ。」


 嘘だろ、他のメンバーを見ると誰もが頷いている、出来るってことか。


「お前だって出来るだろ。」


 俺は、フルフルと否定する、「あ?」とタルトの顔が怖い、ヤンキーかお前は「俺にたかるとメルカバが黙ってないわよ。」と余計な事を考えていると。


「リク、ちょっと剣を構えろよ、息を止めて打ち込んで来い。」

「何言ってんのよ。」

「・・・なぜ女言葉なんだよ、自分の身体能力把握しないと作戦を考える事が出来ないだろ。」


 周りに敵はいない、しょうがないのでタルトに付き合うことにした。

 結果は、驚く事に3分以上息を止めて乱取りができた。


「はあ、はあ、結構いけるもんですね。」

「ちょっと焦って戦い過ぎだ、もっと落ち着いて戦えばもっと長く息を止めて戦える。」

「ありがとうございました。」


 どうやらここの世界の住人は酸素が少なくても生きていける体になっているようだ。

 俺も蘇生されたときにこの世界の基準で体が構成されているようだ。


 地下に入るときに「酸素濃度18%以下の所ってヤバクね。」と思っていたが酸素が少なくても生きていけるように進化しているのかもしれない、それとも魔力を吸収して酸素の代わりにしているかもしれない、よくわからんが。

 空気を作り出す魔法の道具が高いのが今わかった気だする、あまり必要ないのだ。

 この世界まだ知らないことが多い。


「あのさ、取り込み中も仕分けないけど。」


 マックス王子が顔だけ出してる。


「あっはい、どうしたんですか。」

「こっちも敵と遭遇だ、蛸男が多数テレポートしてきた。」

「大丈夫ですか。」

「ああ大丈夫だ、でもその精霊のアイテムを貸してくれ。」


 連戦が始まる。

パーティメンバー紹介

『リクと愉快な仲間達』

リク:この物語の主人公、アイテムを作成の能力があり。

ボニー・バトラー:盗賊とレンジャーのマルチ職業、次元の鍵師のジョブも手に入れる。

スカーレット・バトラー:武道家、ボニーの母でもある。

マリーヌ:ハーフエルフで妖術師

ベニー:僧侶

ビッキー:バード、ベニーの妹

メルカバ:ハーフオークで戦士、上級職も手に入れる


『真夜中の焚き火』

ギー:ちっこい種族のパラディン、先祖代々伝わる聖剣を探している。

バニラ:盗賊

エステル:僧侶

クリーム:エルフのレンジャー

タルトゥフォ(通称タルト):戦士

ジェラート(通称ジェラ):魔法使い

スプモーニ:武道家、タルトと腐れ縁で仲がいい。

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