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第81話:地下での冒険はつらいよ

 向かった先では商人ブルワリーが恭しく頭を垂れていた。


「わざわざお迎えご苦労様です。」

「いえ、旦那様の来城お待ちしておりました。」


 あれ?、最初の小屋と雰囲気が随分違うな、広くなってるし明るい。

 窓はガラスが無いが広めに取ってある。

 コンクリートむき出しの感じがマイナスだが、床にタイルを貼り壁を塗装すれば立派な部屋になるだろう。


 窓の外を眺める。

 何だコリャ。

 想像を絶する光景が繰り広げられていた。


「キャッシー、ブルワリー何だこれは。」

「城は、ほぼ完成しています。現在は城壁と家を作っています。」

「いやそうじゃなくて、どうやてここまで早く復興してるんだと聞いている。」

「それは私が説明します。」


 キャッシーの説明を聞くと、火竜山の火山灰と石灰で擬似コンクリートが作れると言った俺の説明を受けて次元リングから火竜山の火山灰を手に入れた。

 実験をするとコンクリートより早く固まりなかなか優秀なので大量に運び込んだとのことだ。

「どうやって?」と聞いたら『創造の竪琴』を使って運び込んだとか、最初は一輪車で運んでいたが火山灰自体に魔法の効果が及ぶ事を発見してからは水を流すかのように大量に運び込む事に成功したようだ。

 最初は堀と土塁の補助にコンクリートを使っていたが、日干し煉瓦の間に石を投げ込みコンクリートで固める方法を編み出した。

 その後、石とセメントを混ぜ『創造の竪琴』で空中に保持させて固める方法へと進化させたと語った。


「すごいな、『創造の竪琴』を使うと型枠を使わずに構造物を作れるのか。」

「『創造の竪琴』は物質を動かす事、保持する事にかけてはかなり有能です。」

「アイテムを使う発想に関してはキャッシーは天才だな。」

「ありがとうございます。初めて褒められた気がします。」


 他の皆も窓から顔を出して驚いている。

 間違いなくライセンの町よりも大きいなこれ、今も城壁が凄い速さで作られている。


 急にタルトが俺に詰め寄った。


「なあリク、俺の報酬だがここの警備長の斡旋に変更してくれ。」

「ライセンの騎士団長への口利きは無しでいいのかな。」

「いらん。」

「キャッシーが領主だから彼女に聞けばいいじゃないか、なあキャッシーどうだ。」

「私は優秀な戦士が警備長に成ってくれるのに文句は無いわ。」

「よし、決まりだな。」

「ちょっと待ったー。」


 今度はスプモーニが俺に詰め寄る。


「なんだよ。」

「俺の道場をここに作ってくれ。」

「まだ人が誰も住んでないけどいいのか。」

「ああ、問題ない。この国で一番でかい道場を作ってくれ。」


 キャッシーを見るとOKの合図を出している。


「まあ、後は立てる場所とかはそっちで話合ってくれ。」


 2人の就職先?が決まった所で現状を確認する。

 特に魔物の襲撃はなく工事も順調との事、これなら直ぐにでもダンジョンに突入できると思っていたところ周囲がざわつく。


「敵襲3です。」


 ボニーの声で緊張が走る、外を見ると遠くに竜のようなシルエットが3体見える。

 スプモーニが「あれはワイバーンだな。」と言う、俺にはそこまで見えないがアフリカ原住民並の視力を持つスプモーニが言うなら間違いないのだろう。

 ライフル銃を取り出し狙いを定める、距離は800m射程倍増の効果が付いているこの銃なら何とか届くだろう。


「待てリク。あれは敵じゃない。」


 双眼鏡を覗いていたサウザンドが俺を止める。

 言われてマップを確認するがエネミーマークは無かった。

 みるみる飛竜が近づいてきた、人間の何倍もある巨大な飛竜だ。


 3体のワイバーンが地響きを立てて着地すると背中から1人の男が降りてきた、筋肉隆々の体にはち切れそうな革鎧を着た男だった。


「祭りには間に合ったようだな。」

「ドライク。」


 サウザンドが声をかけると嬉しそうに白い歯をみせて笑った。


 ドライク確かどこかで聞いた名前だ、そうだアルトシュタインの最高警備責任者、つまり将軍だ。


 軍最高責任者がこんな所で油売ってていいのかと思ったが彼の話では北のコボルトのリーダを討ち取り自由になったとのこと。

 アルトシュタインに帰ったらサウザンドの手紙で神剣の捜索に行く事を知り急いでバード領まで飛ばして来たとか。

 王からは、マックス王子を頼むと言われたようだ。



 彼に余った装備を渡して、(余った装備でも背骨が折れるほど抱きしめられたが)再度地下の地図を見ていると、ドライクは敵の集まる箇所を指差し


「王を襲った蛸男やダークエルフを叩けるなら叩きたい。」


 と言った、ただの戦闘狂かと思っていたら、地図に印をつけながら


「地下道には地上に出るための重要な道がある。何本か破壊すればここバード領の今後の警備が易しくなるはずだ。」


と割とましな事を言った。

 その後に子供のようなな笑みを浮かべて「印の地点は敵も強力なのが居るからな。腕が鳴るぜ。」と呟いたのを俺は聞き漏らしていない、やっぱり戦闘狂だ認識は正しかった。


 その後、再度準備を整え地下に潜入する。

 途中で二手に別れて別々の道へ、こちらの道はダークエルフの集団の近くを通る必要がある。

 今は『真夜中の焚き火』団が先頭になって歩いている。

 2時間ほど歩いて小休止、4時間ごとに大休止して先頭を交代する、ただ罠や敵索で歩くスピードは遅く3歳児の歩く早さかと思うほど。

 俺は地下での経験が少ないため緊張の糸が切れて途中でだれてしまう。


「スカーレットなんか暇です。」

「し、音が聞こえません。」


 こんな感じでだれも会話せずに永遠と暗い道を歩き続けている。

 こんな生活が何日か過ぎ今は休憩中、俺はストレスで死にそうだ。寝るときはメルカバやベニーに抱きついて寝ている。

 別にエロい事をするためじゃない、赤ちゃんみたいに心臓の音を聞きながら小さな囁き声で会話するためだ。


 ごく稀に戦闘も発生した、多くはスライムのような地下の掃除モンスターだった。

 もっと深度が深くなれば敵の構成も変わるとか、とにかく永遠と暗闇の進行が続いた。

 一日に4回、向こうのチームと定期連絡をするが向こうも同じような状態だった。


 その後、俺はストレスで閉所と暗闇の恐怖症になった。。

 マップを確認するが進行速度から単純に予定場所に行くだけで1ヶ月はかかりそうだった。


 時間感覚が狂ってよく分からないが、時計上では7日が過ぎた頃にダークエルフの集団に接近した。

 マックス王子の従者のダークエルフの言う事には地下防衛地点のようだ。


 200m付近まで近寄る。

 ダークエルフは40mぐらいの暗視能力がある、俺達の暗視ゴーグルは20mぐらいしか見えない基本性能でだいぶ違いがあるので本来ならば明かりを付けて戦うのが良いのだろう。

 しかし俺は銃を持っている先頭から順に狙撃していこう、なに見えなくても良いさ弾をばら撒けば当たるだろう。


「先制攻撃をします。」

「ちょっと待てって。」


 後からタルト達の声が掛かるが既に引き金を引いてしまった。


『ダダダッダ』


 豪快な音と共にエネミーマークが1つ消える。

 残り5、マガジンを交換する。


 何かが通り過ぎる音、結界に弾かれる音、見るとボルト矢が転がっている。

  

「リク射撃止めろ、全員散開散開。」

「は?何か言いましたか。」


 良く聞こえなくて追加のマガジンが空になった所で物陰に引っ張り込まれる。


「射撃止めろって聞こえなかったか。」

「銃声でよく聞こえません。」


 エネミーマークが遠ざかって行く。

 4人が撤退して行く。


「追わないんですか。」

「暗闇の中のダークエルフを誰が追うんだよ。」


 2体の敵を倒した事を確認して一時撤退、現在は作戦会議をしている。


「リク、2パーティで戦ってるんだから勝手に動くなよ。」

「俺達のパーティが先頭だから攻撃して良いかと思ってさ。」

「瞬時に対応が必要なときはそれでいいが時間があるときは相談して欲しいな。

 あと、地下では銃の使用禁止な、五月蝿くてかなわん。」


 現在タルトに注意を受けている。

 特に地下での銃の使用、どうやら銃の発砲音は狭い空間では味方にも邪魔のようで指示が聞こえなくなる。

 そして、マズルフラッシュで位置が確認され反撃を受けたようだ。


「地下での戦闘は熟れてないんだから許してあげなよ。」

「ファイヤーボールで全滅って事態もあったんだ甘やかすなよ。」

「なあリク、提案なんだがお前地上に戻れよ。」

「な、何だよ急に」


 全員を見ると様々な表情だが皆が同じ事を考えているようだ。


「主よ、わざわざ一緒に潜る必要は無い、次元リングがあるから必要なときに来てくれれば問題はない。」

「そうだよな、地下での戦闘訓練を受けていない一般職が地下の探索に付いていく必要はないな。」


 俺は空気が読める男だ、地下でのストレスも有るが受け入れる事にした。


「お、おう、じゃあ甘えようかな。」


 こうして俺は地下の探索を止めてバード領の跡地で復興の手伝いをしている。

 手伝いと言っても、石灰の調達ぐらいでやることは無くひなたぼっこをしている。


「はー、何やってるんだろうな。」

「何辛気臭い顔をしてるのよ。」


 キャッシーが軽食を持ってやって来た。


「はー、顔の事はお前に言われたくないよ。」

「ひどい、心配して顔を見に来たのに。」

「俺なにやってんだろってな、俺の作るアイテム以外に俺を必要として無いのかな。」

「いいじゃない、モグラみたいに暗いとこの探索なんか人に任せてのんびりしていれば。私は助けられて嬉しかったわよ。」


 赤くなるキャッシーこれで美女なら可愛いのだが、5段階評価で2の一番上ぐらいだ、女性は本当に顔で損得が変わるよな。


「なあ、キャッシーこれからどうするんだよ。」

「とりあえず、昔いた住民や家臣が戻ってくるわ、その後は結婚して子供を作るわよ。」

「そうか、じゃあ少し早いけど餞別をやるよ。」


 両手を前に突き出す。


「指輪よキャッシーを絶世の美女にしてくれ。」


 あれ?反応が無い。


「ちょっと、なにするつもりなのよ。」

「おかしいな、もう一度、指輪よキャサリン・ド・バードを美女に魅力を上げられるだけ上げてくれ。」


 奇跡の指輪の宝石が5つ黒くなり光のエフェクトがキャッシー全体にかかる。

 光が消えるとキャッシーだった女性がいた、間違いなくキャッシーなのだが余りにも整っている。

 ヒラメの様に離れた目が正面を見ているし、乱杭歯が綺麗に直り、胸から腰のラインも魅力的な感じに成っている。


「私どうなったの?」

「奇跡の呪文の効果で美人にしたんだ。」


 声にも上品さが出ている気がする。

 鏡を渡して確認させる、鏡を見るとそのまま倒れてしまった。


 直ぐにブルワリーを呼んで2人でベットに運ぶ、しばらくしてからキャッシーが起きる。

 ブルワリーは目を覚ましたキャッシーを見て驚いていた、そりゃそうだよな、やった俺だって驚いているからな。


「リク、この効果は何時まで続くの。」

「永遠だけど。」

「マジマジ、嘘、あれ?でもなんで最初発動しなかったの。」


 そう言えば、最初指輪を使用したときには反応しなかった、名前が正確じゃなかったからか。

 ブルワリーに指輪を突き出しながら


「ブルを絶世の美男子にしてくれ。」


 反応なし。


「ブルの魅力を上げてくれ。」


 指輪の宝石が5つ黒くなり同じように光のエフェクトがかかった。

 猫背も直り、顔の作りも美男子とはいえないが目を逸らすほど醜かったのが一般レベルに成っている。


「これが私。」


 鏡を見ながらちょっと乙女チックな喋り方になっているのは、よほど衝撃が大きいのだろう。


「ねえこの指輪って、愛称や通称でも反応するけど、無理なお願いには反応しないのよね。」

「そうだな、キャッシーを絶世の美女にするのは無理だってことだな。」

「微妙に失礼ね。」


 端末機からステータスを確認するとキャッシーの魅力は8→13、ブルワリーの魅力は6→11になっていた。

 この世界の平均値が11なのを考えると、キャッシーは平均以上になったのは間違いない。

 そして、指輪の能力で上げられる値は+5までなのだろう。


「まあ後は綺麗な服や化粧で誤魔化せばアホな男がほいほいやってくるさ。」

「ありがとう。」


 もじもじして礼を言うキャッシ。

 やばい、可愛いなこいつ。


 なんだか気分がよくなったので、ブルワリーをつれて部屋を出る。

 女性の部屋に男が居るのもあれだろ。


「ブルワリー召還のスクロールを至急集めてくれ金に糸目はつけん。」

「解りました。」

「次元リングであちこち繋げてある広範囲に移動できるはずだ。」


 次元リングを越えていくブルワリーを見送る。

 地下で活躍できないなら俺は補助するだけだ。

 気分を切り替えてアイテムを作成する事にする。



 ブルワリーが戻って来たのは次の日。

 こいつ結構有能だよなと思っていると。


「『大谷の大樹』でスクロールを大量に買ってきました。」


 『大谷の大樹』?そんな所に次元リングを置いた覚えが無いけれどまあいいスクロールは手に入った。

 さあアイテムをしこしこ作ることにしよう。


 

異世界冒険 193日目

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