第8話:教える事は難しい
スカーレットさんに自分の店が出せるまで、間借出来ないか聞くとあっさりOKが出た。
場所代は売り上げの1割で話がついた。
部屋に戻りスロットマシーンを確認、あれ?呪文が回復していない。
タッチパネルからヘルプをタッチする。
8時間睡眠を取る必要があるようだ、夜にフィ師匠の所に行くのは無しだな。
気を取り直して弓の的、おっ、あるじゃん巻藁。
『チャラリー♪チャラリー♪ピ♪ピ♪ピ♪』『チャラリーリー♪』
成功した。
練習用の返しの無い矢も10本作る。
的の案山子も作った。
昼間まで1時間あるので和弓の練習をする。
腕の筋力が現役に戻ったらもっと強い弓を作ろう。
地味に何が大変だったかというと、巻藁を外に運ぶのが一番大変だったな。
練習をしているとボニーが呼びに来た。
「リクお昼ですよって、これ何ですか。」
「これは巻藁と言って、場所が狭いところでも弓の練習が出来る物です。」
「的に当てる練習はしないんですか。」
「するけど射法八節と言って弓の基本的な動きを練習するものかな。」
ボニーはぐるぐる回りながら俺の弓を見て、いいなー、かっこいいなーとつぶやいている。
「暇なときに教えようか。」
「本当、教えてくれるの。」
「いいと言うまで型の練習しかさせないのと、あと兄弟子として練習中は指示に従うこと。」
まあ弓は作り直しの予定なので、ボニーにプレゼントしても問題ないだろう。
昼飯後にスロットマシーンで作った黒板をボニーと運び計算を教えることにした。
これが難しかった。足し算はまだ良いが、引き算が難しいようだ。
2桁の足し算まではまだまだ程遠い。
ボニーだけで教えるのは無理だな、人を増やし人の間違いを見ることが出来るようにしよう。
「生徒を増やして何人かでやれないかな。」
机でダリの絵みたいになってるボニーに提案する。
「裕福な家は家庭教師や、習いに行っているけど、お金を出してまで来るかな。」
スカーレットさんの提案で、通常価格の1/10銀貨3枚で、商業ギルドの子供限定でということにした。
余り割引をするるとダンピングでギルド契約違反になるので、商業ギルドの子供限定(ボランティア扱い)を付けた。
使用機材代だけ請求する形式にした。
ボニーはまだ時間があるようだ。
「弓も教えてください。」
やる気があるな、射法八節を説明する。
「普通の弓は引くだけですが、その射法の動きは重要なんでしょうか。」
「力で引くわけじゃない、骨で引くんだ。ロングボウよりも長く引くから筋肉の負担を減らすために必要な動作だ。」
10回見せて、弓懸を巻いてやる。ちょっと汗で湿っててごめんと思う。
大きいので良い大きさの懸を作ると言ったら喜んでいた。
矢を使わず声に合わせて反復練習をさせる。
弓を引くと胸が強調されて福眼、福眼、合掌。
BカップかCカップか、美乳神に感謝だな。
正座をして礼、明日は右腕筋肉痛だろうから今日はゆっくり休むように言って終わる。
気がつくとタルトがニヤニヤ近づいてくる。
「リク先生かっこいいな。」
「先生を名乗れるほどの腕はありません、兄弟子です。」
「そうか、でっかい弓だな。」
28歩先に的の案山子を建てる。
このぐらいが高校時代に練習していた距離だな。
外して矢を壊すのが嫌だったのだが、せっかく作った弓で矢を射って見たくなった。
甲矢と乙矢を確認、1本をつがえる。(離れ)(残心)うーん外れた。
小指と薬指で挟んでいた矢をつがえる。だいたい軌道は分かったので、もう1本射る。
(離れ)『ドス!!』(残心)中心に当たった。
「こんな感じです。」
矢を拾いに行きながら。
「威力ありそうだな。」
「鏃を戦闘用の物に換えれば威力はかなりのものですよ。」
タルトは弓を借りて案山子に射るが上手く引けないようだ。
「うーん、自分のコンポジットボウの方が連射も出来るし威力もあるな。」
夕飯までに時間があるので、スカーレットさんに許可をもらってカウンターの隅にショーケースを置く。
タルトに酒を1杯奢る事で手伝ってもらった。
「このショーケース凄いな、いくらするんだ。」
「自分で作ったんで原価ですよ。」
「ガラスだけでも高いだろ、こんな平らなガラスなかなか見かけないぞ。」
実際はスロットマシンで作っただけなのだが実際買うと高いらしい。
布を敷き低級ポーション(金貨50枚)を置く。高品質アロー(金貨7枚)を10本置く。
「高級品ばっかだな。」
「売れないですかね。」
「使い捨てのアローに金貨7枚は出せないな。」
キルドの契約で、適正価格から大きく値引けないんだよな。
夕飯まで座って待ったが誰も買ってくれなかった。
興味を示す人もいるんだけどね、売り方は今後の課題だな。
スプモーニが来たので、ショーケースの販売をボニーに任せて夕食を食べる。
「歓楽街へ行くぞー。」
「おうー。」
足取り軽く三人の男は宿を出て行った。