第79話:モンハンする
ドラッデンヘイル、またの名をライア庄この村の朝は早く活気が有る、朝市が行われるだけでなく夜行性の住人が寝る前の買出しをしている為に普段の倍近い数の人が朝市に存在している。
最も人が多いのは夕方なのだが、夕方の市場も昼型の住人と夜型の住人が混じり合い喧騒が飛び交うからだ。
地下ノーム達が夜食?を買い歩くのを見ながら自分達も適当に屋台で朝食を買う。
「もぐもぐ、相変わらずの人混みですね。くらくらします。」
「もぐもぐ、そうか買い食いを楽しんでいるようにしか見えんぞ。」
エルフ従者と俺は食べながら話しているとマリーヌに「行儀が悪いです。」と注意された。
この村で一番豪華な村長の屋敷に向う。
屋敷と言っても日本の庁舎に近い、中に入ると受付の女性が座っていた、少し眠そうな地下ノームだ。
「サウザンドいるかな。」
「旦那様はまだ眠っています。」
「じゃあ、少ししてまた来るよ。」
遠くから良く響く声で
「用件なら私がお聞きしますわ。」
ダークエルフのバイオレットだった。
バイオレットに村長室まで連れられる。
「リクさん何処見てるんですか。」
「そりゃ、小さいだけでなく肉付きのいいお尻さ、見事なプロポーションで徳が積めるってもんだ。」
バカタールの徳だけどな、女性陣に膝や肘を数度入れられるが気にしない。
「リクさん全部聞こえていますわよ。それにサウザンドは嫉妬深いので発言に気をつけてください。」
お尻を手で隠しながらバイオレットさんが部屋に入る、その仕草もいいグットだ。
豪華な机に座り「さて何でしょうか。」と手を組む、どんな格好をしても美人は様になるな。
エルフ従者が何か手紙を取り出して
「神剣の捜索を正式にお願いしに来ました。」
バイオレットは手紙を読むと難しい顔をして「仕方ないわね、これも妻の役目ね。」と俺に向って言う。
後で聞く話だが、昼はサウザンド夜はバイオレットが村を管理している、つまり村を治める仕事が倍になるって事だ。
しばらく話していると眠そうに「早いなお前ら。」とサウザンドがやって来た。
神剣の捜索の話をすると、バイオレットをちらちらと見ながら話を聞いている、何処の世界でも嫁は怖いのだろう。
「私は構いませんわ。」
それを聞くと嬉しそうに「サロックも誘うぞ。」と張り切りだした。
魔術師サロックは地下ノームの代表の1人でもあり最初は渋ったが、「ノームの長がいれば問題ない。」と言われ捜索メンバーに加わる事となった。
サロックとサウザンドは準備に数日必要なのでこの村で待つことになった。
庁舎もとい屋敷のロビーをぶらつくとふと掲示板に目が移る。
行方不明者の掲示板だ。
受付を見ると人間の女性に変わっていた。
「あれ、ノームの女の子は。」
「ほら衛兵も交代してるでしょ、昼と夜で働く人が変わるんです。夜は主にダークエルフや地下ノームなどの種族が昼は人間やリザードマンが受け持ちます。」
24時間体勢ってすげーなライア庄、日本なら冠婚ぐらいしか受け付けてくれないよな。
「あの掲示板の行方不明者ですが。」
「水辺に住む人々が行方不明になってます、殆どは怪物に襲われて亡くなっていると思いますが最後の望みで捜索依頼を出しているのでしょう。」
水辺での行方不明だけでなく、船の転覆など様々な状況が書かれている。
「これって、でっかいザリガニの化物の仕業ですよね。」
「それ以外にも竜亀などの怪物も住んでいます。」
「討伐依頼は出てないようですが。」
討伐依頼を渡される、害虫駆除見たいな感じで、チョッパー1体で金貨10枚(この辺りではザリガニの化物をこう呼ぶようだ。トナカイの化物ではないようだ。)と教えてくれた。
「チョッパーを専属で倒す人がいたけど、最近竜亀に船ごと沈められて休業状態なのよね。」
「外者だけど怪物討伐したら賞金出ますか。」
「出るわよ、命を賭けて賞金を稼ぐ気?貴方もそのくちなの。」
「いやいやただの時間つぶしとレベルアップですよ。」
?が沢山出ているお姉さんの話では、賞金稼ぎは何時死ぬか分からないので荒っぽい者が多いようだ、昔無理やり飲みに連れて行かれて嫌な目に合ったとか。
女性中心パーティなので荒っぽい人はいないですよと説明して屋敷を後にした。
こうして、数日モンハンする事にした。
―――川沿い―――
川沿いと言ってもリザードマンの一団が点在している、この辺りの川沿いはライア庄で居住が自由に認められているからだ。
城塞都市ランスでは漁師との争いが発生していたので、一部の用心棒や傭兵で見かけるだけだった。
ライア庄は漁師に補助金と交易での職の転換を図り成功していた。
さらに、リザードマンの用心棒の斡旋、兵士の登用もあり仕事をして家族を養うスタイルも広まっていった、しかし、それでも多くのリザードマンは川での狩を行い生活しているのも事実だ。
それを狙うチョッパーも多く生息していた。
「ここら辺に大量にいるんだよな。」
「どのくらい居るんですか。」
「10匹ぐらいかな。」
行方不明者が多数出ているこの地点、最近は誰もが避けている。
そうすると遠くに顔が見える、手を挙げ合図をする。
銃の試し撃ちも兼ねている距離は250m十分届く距離だ、「安全装置解除、3・2・1撃て」5丁のライフルから弾が発射される。
弾丸には火・雷・神聖の効果が付与されている。
「10発中7発ヒット、敵沈黙です。」
ボニーが双眼鏡を覗きながら戦闘終了の合図を出した。
追加攻撃・遠距離・誘導・神聖・火・雷付与コンパウンドボウ+1を合成して作ったライフル銃と弾丸+5を使用した。
「どうだ、銃の使い勝手は。」
「見えない速さで物体を発射する火薬の力に驚きですわ。」
「かなり大きな音が出ますので隠密作戦には使えませんが、飛距離は申し分ないと思います。」
「でも弾丸が何処でも補充できない点と、弾が軽いため距離が離れるほど威力が下がるわね。」
「超大型の怪物には少々威力が不足するかもしれないわね。」
次々感想を述べるメンバー、こんな感じで銃での戦闘練習を行う。
音に驚いてチョッパーが隠れてしまったが1匹ずつ見つけて狩りつくした頃には夕方に成っていた。
4日後には辺り一帯のチョッパーを狩りつくした。
銃にも慣れ、戦闘の手順も出来上がったが、戦い方を忘れないように接近戦や弓での狩りも行った。
「チョッパーとの遭遇も減りましたわね。」
「狩りつくしたからな、竜亀でも狙うか。仮にもドラゴンの名前を冠している怪物に銃が効くか試したい。」
「前日も舟が転覆して漁師が亡くなったそうですね。」
「その場所を案内してくれ。」
舟が岸辺に沢山並んでいた。
普段は漁をしている者が多いが昨日舟が転覆させられたので誰も漁をしていない、水辺で釣りや蟹を取る程度だ。
リザードマンの子供達が小さな蟹を捕っている。
舟を借りてもいいが転覆させては申し訳が無いのでバリュックからトークンを取り出す。
日本で言う式神みたいな物だ、合言葉を唱えて水に浮かべると小型の帆船になった。
扇のトークンをだして風を操りどんどん離れていく、子供達が手を振っているのもどんどん小さくなる。
地球でも大河の川幅は様々だが向こう岸まで6kmぐらいある立派な川だ、中立の怪物はある程度近寄って敵対反応が出ないと分からないから不便だよなと考えていると丁度川の中心付近でエネミー反応あり亀竜だ。
「船の下からぶちかましが来るぞ。」
直後に船が大きく揺れ転覆する『バキバキ』とマストが折れる音がした。
周りを確認する大きな亀がいる、さながらジョウズの映画のようだ。
俺達は空中に飛んでいる。
竜亀は水の中を幾ら探しても誰もいないのに苛立ちを隠せないようだ、銃を構える。
『パンパン、タッタタ』
一斉放射をするが厚い甲羅に殆ど弾かれる、手足に当たった部分はダメージが通ったようだ。
水に潜られる前に倒したいと思っていると。
『まて人間話を聞け。』
共通語で話しかけられる。
「喋れるんですね。」
『長い年月を生きているのだ、竜の名が付いているのだ、高い知性もあるのだ。』
「何故急に話をしようと思ったんですか。」
『最近強い人間が現れたので興味を持ったのだ。』
少し話をすると、ランス行きの船を襲った所、槍を投射されて自慢の甲羅を貫かれたようだ。
良く見ると折れた槍が3本刺さっていた。
ライフル銃を弾く甲羅を容易く貫けるやつがいるとはこの世の中には凄いやつがいる、しかも魔法の槍でなく普通兵士が持つ海用の槍だ。
『この槍を抜いてくれればこの地から去る事を約束するのだ。』
「移動するならランスよりも下流にしてください。」
『約束するのだ。』
水から浮上した甲羅は島のようだった、上に乗り槍を引き抜くが抜ける気配も無い。
スカーレットが降りてきて一緒に抜く、ぐぐぐと力を入れると巨人のベルトが光り出す「ウリャャー」盛大に後にひっくり返るが抜けた、槍が1.2mほど突き刺さっていた。
こうして残りも引き抜くと冬なのに汗だくになった。
『素晴らしい力だ人間、もし良ければ名前を聞かせくれ褒美を与えたいのだ。』
「ああ俺の名はリクだ、褒美なんて気を使わなくても」
頭の近くに行き話をしていると突然暗くなり気が付いたら水の中にいた。
やばい、呼吸ができない。
『ふはは、命短い人間には相応しい褒美、死を与えてやるのだ。』
水の中で喋れるとは器用だなこいつ、幸い両手は動くリュックに手を伸ばし真珠を取り出す。
強く握りアイテムの力を発動する。
自分に薄い空気の膜が出来たような感覚に包まれる、当然息も出来るし会話も出来るようになる。
「てめえ、騙しやがったな。」
『人魚の真珠まで持っているとは驚きなのだ、だが水中ではどうする事もできないのだ。』
物凄い速さで川底に進んでどんどん暗くなる、地底に叩き付けられた。
「がはっ」
鎧や護符の効果でダメージは無いがこいつの口から脱出しない事には反撃できない。
真珠を口の中に入れて拳銃を2丁取り出す、『スミス&ウェッソンM5906』水中での使用を想定してないがゼロ距離射撃なら関係ないだろう。
二丁拳銃スタイルで鼻先に撃つが硬くて通らない、なら、口の中に銃口をねじ込み引き金を引く。
『グルルー』
急に口が開き排出されたと同時に高熱の泡のブレスが放たれる。
(ぐわ熱っちー)
直ぐにブレスの範囲外に逃げる、対丈夫『人魚の宝珠』の効果で魚のように泳ぐ事ができている、何とか水中戦闘も出来そうだ。
問題は俺の持っている武器で倒せるかって事だ。
拳銃を収納し、フレイムタンダガー+5を取り出す、薄暗い水中の底がほのかに青い光で照らされる。
マップからエネミー反応もう1体の竜亀が現れるメスだ、でもオスよりもかなり大きいって詰んだんじゃないかこれ。
1匹は頭上を周る攻撃してこない、チャンスとばかりに水上を目指したがメス亀のぶちかましを受けて川底に押しの戻される。
どうやら俺を水上に逃がす気はないようだ、でかいので小さな的に同時攻撃できないのもあるのだろう。
オスに集中する事にした。
竜亀の攻撃をかわし、前足に攻撃を加える、攻撃を盾でいなして前足に攻撃する・・・永遠と思われるような作業は実際は1分も経ってなかった。
腕が上がらないし、息も切れてきた、地上で1分の組み手すら普通の人間には辛いのにさらに水中での戦闘は耐力気力を奪っていった。
実は竜亀の両前足はボロボロでかなり嫌がっているがリクは気が付くほど余裕がない。
(ヤバイまじゲロる。)と思った所に上が急に明るくなり同時に一筋の泡の塊が竜亀の頭に突き刺さった。
驚く竜亀の前に立つのはスカーレットだった。
女なら「キャー素敵抱いて」となるところだ。
トンファーを構えて突っ込む、『ガッ、ゴッ、バキッ』三連打を顔に叩きこみ顔が仰け反る。
俺も腹をくくり、ライフル銃を2丁バックから取り出し大きな口に頭から突っ込む。
盾と鎧だけでなく、守りの指輪と外皮強化の護符の防御力に賭ける。
バクッと咥えられたが指輪の結界が押し戻している。
「俺の勝ちだくそ亀。」
口の中で銃を乱射する、『キュッボ、キュっボ』と鈍い音が口の中で広がる。
やはり口の中は柔らかいようだ、ビクビクと痙攣をして動かなくなった。
水上に上がる途中で大きな船が沈んでいる、何だこれ?と思いながら地上に出ると鎖で引き上げられているメスの竜亀がいた。
代わりに船が沈んでいる?
船の沈む速度で引き上げられる竜亀、最初の転覆した船を重りにして竜亀を吊り上げている。
「何だこれ。」
「主よ待たせたな助けに来た。」
メルカバとビッキーが新しい船の上で竜亀と戦っていた。
ボニーとマリーヌは竜亀の後からロープが切られないように牽制して他のメンバーは弓で援護している。
竜亀はロープや鎖が邪魔らしく水の中に潜れない、船に体当たりしてきた。
『ミシミシ』
「やばい、船が壊れるぞ。」
「一斉に攻撃をして、水の中に逃げられたら倒せないわ。」
俺達が空中に飛び上がると同時に稲妻が亀を襲う。
稲妻の杖だ、水中戦だったため使い勝手が悪かったが全員が水から出ていればこれほど有効な攻撃はない。
黒焦げになりながらも竜亀は高温スチームブレスを浴びせる、ブレスを浴びたメンバーが水に飛び込む。
いや、一人だけメルカバは飛び込まなかった、マントを翻すと、鎖を振り回し竜亀の頭に叩き付ける。
棘付鎖の先が鱗に刺さると思いっきり引き千切る。
「うぉーー」
『ギィァオー』
表面の鱗が剥がれる。
暴れる竜亀をけん制しながら鎖で何度も打撃を与える。
「鱗が剥がれたところを狙え。」
銃弾と矢が一斉に放たれる。
最後に鎖を伝ってスカーレットが、ロープを伝ってボニーが竜亀に接近して攻撃を加えると竜亀は動かなくなった。
「とうとう鎖の武器をマスターしたんだな。」
「ああ、苦労したが習得した。」
にやりと笑うメルカバに他のメンバーが抱き付く。
俺も抱き付いて良いかなと思っていたら、メルカバが全員を抱きかかえながら俺に抱き付いて来た。
やめて、気持ち良いけど窒息するから。
パーティメンバー全員と再会を喜び、パーティとのスキンシップを喜び(俺だけ)合った。
船でライア庄まで竜亀の死骸を運ぶとサウザンドを先頭に人だかりが出来ている。
「お前達が倒したのか。」
「ああ、死骸運んできたけどいるか。」
「いるいる安く買い取るぜ。」
「なんで安くなんだよ。」
腐っても竜と名が付くこの怪物の甲羅はプレートメイルの素材になるそうだ。
わざわざ甲羅でプレートメイルを作る必要があるか疑問に思うが金属鎧にタブーがある職業には涎が垂れるほどの高級素材なのだとか。
肉は美味くはないが、市場に流せるとか、油が取れるとかいろいろ使い道があるようで日本でのクジラみたいな物らしい。
処分に困るのでサウザンドに一任する事にした。
この日から港ではどこに行っても声をかけられるようになった。
後になって聞いた事だが2頭で金貨800枚相当のお金をライア庄に寄付したも同然でかなり有名になった。
ちなみにチョッパーの討伐賞金は竜亀の売り上げから支払われた。
もっと支払われてもいいんじゃないかと聞いたら「マジお金ないんだわ勘弁してくれ。」と泣き付かれた、村が早く大きくなりすぎて財政が厳しいらしい。
―――出発日―――
影使いサウザンドと魔術師のサロック、リーザドマン戦士のゾ・ルガが出発準備を終えて領主の館で待っていた。
「リク待たせたな、ランス行きの船が今日出るのでそれに乗って行こう。」
「ひょっとして船の出港を待っていたのか。」
「ああ、陸路より半分以上早く着けるぞ。」
誰だ、移動方法を伝えなかったやつは、俺か。
「あのさ、次元リング設置すれば直ぐにランスに行けるんだけど。」
「?そうなのか早く言えよ。」
「アルトシュタインや、イエローウッド村にも設置してあるんだ。」
「暗殺者が使い放題ってことは無いよな。」
「小人ポーションがいるし、合言葉はネイティブクラスの日本語の発音が必要なようにしてある。」
現在このリングの使用に必要な合言葉は『開けゴマ』しかし発音に厳しい制約をつけて使用できるのは日本人か、日本語を習い中のビッキーだけ、どうやら日本語の発音は独特のようで難しいようだ。
俺達は瞬時にランスの『鋼鉄の拳亭』に移動した。
異世界冒険 183日目
取得経験点
経験値:4571を得た。
総計経験値:55819
Lv10→11
HP:63→??
命中:+6
筋力13(+1)
敏捷14(+2)
耐久力12(+1)
知力14(+2)
判断力6(-2)
魅力11(0)
取得スキル
錬金術
神秘学
建築術
地理
歴史
自然学
宗教
異次元
交渉術
特技
長弓習熟
接近射撃
精密射撃
回避
強行突破
銃器習熟
呪文数
Lv0 4回
Lv1 5回
Lv2 5回
Lv3 4回
Lv4 4回
Lv5 3回
マリーヌ:Lv8
ビッキー:Lv8→9Lv
スカーレト:Lv8
ボニー:Lv8→9Lv
メルカバ:Lv9→10Lv
ベニー:Lv8




