第74話:地下迷宮に行く為の準備
バード領跡地に新しい建物を建てるための資材を購入する。
この領地はオークの襲撃により現在は廃墟と成っている。
領主と一族が全滅したため復興の目処が立っていなかった。
元々この地は邪悪な怪物が地下迷宮から出てくるのを監視する為に作られた砦に人が集まり町となった。
領主となったバード家の紋章は伝書鳩である白い鳩がモチーフとして使用されている。
近年は地下から怪物の襲撃も無くバード家跡地をわざわざ復興する声は起こらなかったが、キャッシーことキャサリン・ド・バードが生存していたため復興許可が下りた。
復興許可と言っても復興資金が全て支払われる事はなく半分以上は貴族や商人からの借金をする必要があった。
キャッシーは最近ランスとライセンを忙しく動き回り資金の提供者を探していたのだった。
幸いな事にグラバー商会が手を挙げて復興資金を提供してもらう事となり猫背の商人ブルワリーが『鋼鉄の拳亭』に常駐する事となったのだ。
「ブルワリー資材の調達は順調か。」
「はい、旦那様の言われた部材を揃えています。ただ・・・。」
ブルワリーは呼ばれると走ってやって来て低い背をさらに丸めて上目遣いで手を蝿のように揉みながら答える。
「ただ、どうした。」
「戦争の影響で物資が不足しているのと、運ぶのに馬やロバも不足しております。」
物資の不足はどうしようもないが運ぶ方法は少し考えている、金の輪をブルワリーに見せる。
「これは、次元リングですね。」
ブルワリーは手揉みのスピードを上げながら答える。
こいつは興奮すると手揉みのスピードが上がるので面白い。
「そうだ、ドラ○もんの『通り○けフープ』だ。」
「は?ドラなんですか?」
「いや気にするな。」
こいつは2つの輪で1セットのアイテムで片方の輪に物を入れると、もう片方から取り出す事が出来るマジックアイテムだ。
こいつを使えば資材を運ぶ手間が激減できる、輪をブルワリーに渡す。
問題は大人が通るには輪の大きさが小さすぎる事だ、子供なら通れるが大人はちょっと無理かも、スレンダーなマリーヌならいけるかな。
「こんな高価なアイテムを私に渡してもいいのですか。」
「四の五言ってないでさっさと設置してきてくれ。」
ブルワリーは逃げるように出ていった。
次元リングはまだ9個作成したから1~2個渡しても問題ない。
メルカバを呼び、地図を渡して説明する。
「メルカバ、このリングを設置しにいってくれ。」
「ここは、火竜の火山だな。了解した。」
地図にはバニラの町の近くの古代竜が住んでいた火山に丸が付けられている、ここはレッドドラゴンが住んでいた火山だ。
レッドドラゴンは今は何処に居るかって、それはバニラの町に封じられている、よって竜に遭遇する事はない、しかし、硫化水素などのガスが発生するので入山する人は少なかった。
猫背の男ブルワリーが3本目のスクロールを置いていったのでアイテムの作成をする。
そう、待ちに待った奇跡のスクロールが3個揃ったのだ、3個あれば『奇跡の指輪』を最も効率よく増やす事ができる。
スロットマシーンに座り呪文を発動、2列リールを成功に1列リールを大成功に変える。
スロットをまわすと全て7が回っている、適当に止める。
『チャラリー♪チャラリー♪ピ♪ピ♪ピ♪』『チャラリーリー♪』当然成功する。
15個の『奇跡の指輪』を作成した。
『奇跡の指輪』を3つベットし 同じように呪文を発動しスロットをスタート。
『チャラリー♪チャラリー♪ピ♪ピ♪ピ♪』『チャラリーリー♪』『奇跡の指輪×2』が15個出来る。
高いレベルの呪文が切れたので呪文Lv0、Lv1も使用して『奇跡の指輪×3』を15個作成した。
思ったとおりだ、『奇跡の指輪』は最大3つ奇跡が封じられている物が存在していたので、鼠算式に奇跡の指輪を増やせそうだ。
4つ奇跡が発動できる指輪を作る事も出来るが、過去の例から爆発する可能性が高い、まあ1個なら壊しても大丈夫か。
『奇跡の指輪×3』を1個ベットし、リールを回す再リールの呪文を使い『奇跡の指輪×4』を1個作成する。
指輪を取り出すと光りだす、しかも、いつもよりも激しく。
「ヤバイ」
『ボボッボンボン』
ベットにダイブして布団を被る。
バットで殴られたような衝撃が4度、ただ破片が飛んでこなかったため死ぬ事はなかった、陶器の瓶にでも入っていたらやばかったかも、打ち身で体中が痛いのでポーションを飲む。
バタバタ下の階から足音がする。
「何ですかこれ。」
吹き飛んだ扉から数人が部屋に入り込んだ。
「ごめんごめん、指輪の作成をミスった。」
「ミスったって部屋が半壊してるじゃない。」
ポーションを飲んで傷を回復した事は秘密にしておこう。
「この部屋どうするんですか。」
「綺麗に半壊したからな、このまま新築に渡り廊下を作って合体させようか。」
「『創造の竪琴』を使うのね。」
「いや、今回はこれを試してみる。」
ボニーに絵の具と図面を渡す、ボニーは何これ?って顔をしている。
「魔法の絵の具だ、俺は絵心が全然無いからさ、部屋の絵を描いてくれ。」
マップをプリントアウトしているせいで殆ど見ることはないが、ボニーの地図作成の能力は師匠のバニラとクリームが太鼓判を押すほど綺麗で繊細だったのを知っている、これだけでも食っていけると言われたほどだ。
「絵ですか?」
「ああ、頼むよ。」
ボニーは恐る恐る筆を取る、壊れた壁に絵の具を付けるとみるみる壁が描かれていく、精神を集中して絵を起動させると半壊だった部屋が絵に上書きされた。
「上手い上手い、でも部屋が可愛すぎる。」
ピンクを基調としたメルヘンチックな部屋に成ってしまった。
「駄目ですか。」
「いや大丈夫だ。」
スロットマシーンに手を置いて念じるとスロットマシンが消える、皆は驚くが無理も無いこの機器を今までこの部屋から動かす事が出来なかったからだ。
「レベル10になって錬金機器を出し入れできるようになった。そして、好きな所に設置する事ができる。
この部屋はボニーが使えばいいんじゃないか、前から自分の部屋が欲しかっただろ。」
「本当ですか。」
飛び上がって喜んでいる。
「俺は、新築の方に移動するよ。」
あっちの方が部屋も広くて部屋にシャワーもあるし露天風呂にも近い、俺の護衛に遠くなるという意見も新旧の渡り廊下を作る事で解決できる。
ボニーは外に出てご機嫌で地面に絵を書く、6個絵の具を使いきった所で絵が完成した。
起動すると絵が持ち上がり立派な渡り廊下が出来上がった、従業員が揃って皆拍手をする。
「凄い、この絵の具凄いじゃないですか。」
「そうだな、1個金貨4000枚するの差し引けば凄い絵の具だな。」
金額を知っているマリーヌ以外は驚きの表情で絵の具の空瓶を眺めている、丁稚として働く者なら1個で生涯給料ぐらいの金額である。
誰もツッコミを入れてこないので、新築の部屋に移動する、護衛のためにも渡り廊下から一番近い所がいいだろう。
まだ皆は動かない、うちの店のアイテムの値段にそろそろ慣れてほしいものだ。
錬金機器を設置しなおす。
設置しますか。Y/N
Yes と念じる。
《ズズズーン》地響きと共に錬金機器が設置される。
今までの3畳ほどの部屋と比べると新しい部屋は快適だった。
2DKで風呂トイレ付き、風呂は1階の露天風呂と大浴場があるのでそちらを使うのもいい。
3階のスイートルームと比べると貧相だが、俺には十分な広さと設備だ。
気分も一転したので、メルカバの武器を作る。
メルカバの武器は、ダストンとかいうドワーフが装備していたスパイクチェーンてやつだ、毎日暇を見ては武器の扱いについて教えを乞うているが頑固なドワーフは首を縦に振ることはなく、こっそり裏で頼み込み渋々了承してもらった。
汚いオークに教える事は無いと言っていたが、教えだすと熱心に教えている所は生真面目なドワーフらしい。
付与の棘付き鎖に+5のダガーを合成する、普通に作ると大量の+1から+4が作成されるので不良在庫を避けるためだ。
最終的に神聖、鋭刃、対悪魔、付与の棘付き鎖+5を3つ作った。
1つはダストンに、もう1つは免許皆伝(彼が認めたら)したらメルカバに渡すよう預けておこう。
最後の1つは不良在庫として永久保存だ、マリーヌを呼ぶ。
「デッドストックだ。」
「作った瞬間不良在庫って、・・・確かに売れませんね。」
マリーヌがニヤニヤしている。
「何だよ気持ち悪い。」
「メルカバには甘いんですね。」
「作るの約束したからな。」
実際にメルカバは可愛がっている、決して一度エッチしたからではない彼女はかなり頑張っているからだ、喋るのが苦手ならビッキーに言葉を習いついでに文字も習い、剣の腕が未熟だと感じたら何処へでも習いに行く。
まあちょっと俺の護衛には過保護過ぎるが常に俺の周りの安全に時間を使っている。
「ちょとワルザーの所に行ってくる。メルカバを、今いないんだったな。」
「私が護衛で行きますわ。」
珍しくマリーヌに護衛を勤めてもらう。
ワルザーに会いに行くと伝えると正装のタムールが馬車で迎えに来た。
馬車にて出かける事になった。




