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第73話:最後の夜

 史跡調査学会を出て現在は『鋼鉄の拳亭』で会議をしている。


 黒板の前ではマリーヌが情報を整理している。


「リクは1つの宝を求めるマックス王子の応援とエルフのセイントの捜査ですね。

 カンザキさんは、『ドワーフの7つの宝の秘法』の残りを探索以上でしょうか。」


 手がブンブンと挙げられる、バニラだった。


「『真夜中の焚き火』団を雇うってアーティファクトの捜索のためなのね。」

「そう、俺達だけでは迷宮を捜索しきれないので手伝ってください。」


 会議の内容はこうだ、マックス王子の手助けをしたいが、アルトシュタイン城の近くからは地下迷宮に潜る手段が少ない、というか今はない。

 アルトシュタイン城や、都市を地下迷宮の上に作るときに入口を潰してしまっているからだ、無い事もないが、今の地下迷宮の入口は下水を処理する穴と成っている、探索するには汚物の川を進む必要があるのだ。

 汚い川の探索は足場が悪いだけでなく、怪物の住みかと成っていて危険だ。

 地下は栄養が少ないため本来は怪物のエンカウントが低い、しかし、汚物の流入は下級の怪物の増加をまねき、それを食料に強い怪物が増えているのだった。

 そこで、アルトシュタイン周囲の入口から地下迷宮を目指し出来るだけ安全に深い地点を目指す。

 

「長期に職場を離れるなんて私のボスが許すかしら。」


 教会所属の僧侶のエステルも同意見のようだ。


「大丈夫です、ワルザーには『奇跡の指輪』3個で話がしてあります。大司教にもライセンの近くの町を復興するときに教会の建設をする事で話は通してあります。」

「「私達売られたの!!」」


 2人とも少し涙目だ。


「でも、町を興すときの盗賊ギルドの長や、教会の司教の地位を約束してるけど。」


 パーと顔が明るくなる2人、分かり易いな。

 タルトとスプモーニは「「リク、他のメンバーにも報酬はあるんだよな。」」とハモる。


「ギーには、地下迷宮に先代の聖戦士の使っていた剣が眠っています、手に入れるためのサポートを全力でします。

 残り3人には特に何も考えていませんが、それ相応金銭での報酬でいいですか。」


 クリームはOKのサインを出した。

 スプモーニは、道場建設と運営資金を報酬として望んだ。

 問題はタルトだったがライセンの騎士団長の口利きって、俺は貴族じゃないと断ったがリクの後ろ盾があれば大丈夫って空約束になっても良いので約束された。


 城塞都市ランスの大河を挟んだ町シェルにも迷宮の入口が有るが怪人蛸男が、ミスラル鉱山からはダークエルフと交戦する可能性を示唆すると両方とも地下では最悪の敵だと言われた。

 残りはライア庄とバード家跡の入口が残っていた。

 ライア庄には目玉の化物が巣くっているので、消去法でバード家跡の入口からの侵入になった。


「なあリク、なんでこんな詳しく地図と敵の種類が分かるんだよ。」


 カンザキが聞いてきた、当然疑問に思うだろう。


「有料ソフトをダウンロードしたからだよ。」


 タッチパネルを見せる。


「これ俺も使用できないかな。」

「自分しか反応しないので無理だと思います、あと、ソフトの値段が・・・。」


 地下迷宮の地図は全部で9つの区域に分かれていた、全部で金貨20000枚もダウンロードに必要だった事を告げる。

 エネミーサーチ機能や、敵の種類を判別する機能も同じように有料だった事を告げる。


「つまり、金持ちしか使いこなせないって事だよな。」

「そうですね、超が付く金持ちじゃないと使いこなせません。

 それよりも使用した金貨の先が気になります。俺の力では突き止める手段が無いんですが。」


 カンザキ達は明日にランスを発つことを告げて部屋に戻っていった。

 『真夜中の焚き火』団には準備したらバード家跡に行きますと告げ解散する。




 夕飯後に極上の酒を持ってカンザキの部屋に行く、久々に日本語を話すためと今生の別れに成るかもしれないからだ。

 バニラの町に封じられている三階建てアパートほどの大きさの竜の話や、日本に戻ったら何をするか聞いた。


 ほろ酔いに成ったころアラームが鳴る、マップを確認すると盗賊達が多数この宿を包囲していた。


「すいません、俺の客のようです旧『鋼鉄の拳亭』に戻ります。」


 液晶画面を見せると、カンザキは「この赤帽子は俺の客だ、こっちの建物の盗賊は始末してやるよ。」と風呂桶と手拭い片手に出かけていった。


「何で風呂に行くんですか。」

「多少隙を見せんと攻めてこないだろ最後の露天風呂を楽しんでくる。お前はお前の仕事をしろ。」

「お気をつけて。」


 毒消しポーションを飲んで走る。


「スカーレットは受付で戦闘準備できるだけ普段着と変わらないような装備で、他のメンバーはフル装備で各部屋で待機、合図があるまで出てくるな。

 メルカバはこいつを着けて俺の部屋に来てくれ。」


 マップを確認する、表には盗賊が5人、特に役職も付いてないシーフなのでスカーレットに任せて大丈夫だろう。


「おい、リクってやつをだせ。」

「何ですかあなた達は。」


 1階から大きな声が聞こえる、さて問題は裏から入ってくる元シーフボス(元が付いているのが悲しいが。)と暗殺者だな、暗殺者は明らかに上級職っぽい、実際見てみないとレベルは分からないが騒ぎに紛れて窓から入り込んでいる、明らかに手練れだ。

 裏口の鍵が開けられたようだ、シーフチーフや、シーフがぞろぞろ入ってくる。


「主よ何者かが二階に来るぞ。」

「耳がいいな、ちょっと静かにしていてくれ。」


 ゴーグルを起動させる、しばらくすると部屋の前に元シーフボスと暗殺者5人が扉を挟んで潜む、突入するようだ。

 ステータスを確認すると元シーフボスは盗賊レベル7、暗殺者は盗賊レベル4、暗殺者4レベルの総合レベル8だった。

 何故分かるかって、それは透視ゴーグルを装備しているからだ、手で合図をする。


 メルカバは音も無くグレートソードを振り抜く、非実体の刃が壁に吸い込まれる。

 2度振り回した所で3人の暗殺者が崩れ落ちる。


 完全に不意を付いたようで襲撃者は驚愕の顔をするが遅い、メルカバは一歩踏み出し扉の反対側の3人を切りつける、1人は反応して壁から離れるが元シーフボスと暗殺者はメルカバの斬撃で既に致命傷を受けていた。

 メルカバが扉を開けて飛び出す、暗殺者は毒の塗ってあるダガーをメルカバに投げて逃げだしたが、メルカバは剣の柄で弾くと風のような速さで接近して暗殺者に切りかかる。

 上段に切りかかると暗殺者はショートソードで受けるが、光の刃は何も無かったかのようにすり抜ける。


「Vの字切り。」


 暗殺者は切り上げられると派手に吹っ飛んで絶命した、死体にはVの字に切られた跡がある。


「すさまじい威力だな。」

「この武器の性能もあります、でもこの武器には欠点があります、敵の武器を刃で受ける事ができません。主よ、出来れば新しい武器を作っていただけないですか。」

「この戦いが終わったら時間が許す限り武器を作るのを付き合うよ。」

「かたじけない、皆出てきてくれ残りの賊を撃退するぞ。」


 パーティメンバーが下に降りて行く、まもなく侵入者は鎮圧されるだろう。


「貴様のせいで俺の人生は台無しだ。」


 唸るような声で1人の男が俺を睨んでいる、元シーフボスだ。


「俺は、2度も助けました、3度目も許すほどお人好しじゃ無いですよ。」

「なら殺せ。」

「これ以上住居を汚されても困りますのでワルザーさんに引き取ってもらいます。」

「ふざけんな、殺された方がましだ。」


 根性で起き上がりふらつく足取りで外に出て行く、服の上からでも分かるが致命傷だ助ける気も無いが殺すのも後味が悪く見送る。

 下の階も直ぐに静かになった、マップを見るとエネミーマーカーが無くなっている。

 元シーフボスも含めて捕らえられていた。


 カンザキの方も片付いたようだ。

 こちらは容赦なく全員の息の根を止めている。




 盗賊ギルドのメンバーなのでバニラを呼んで引き取ってもらう。


「盗賊ギルドメンバー以外の者が混じっているわね。赤帽子が居るじゃない、これ暗殺ギルドのメンバーよ。」

「また敵が増えたかな、暗殺者ギルドと事を構えるのは勘弁して欲しいな。」

「お金で雇われたのなら大丈夫なんじゃない、他の暗殺者メンバーからは弱かったから死んだと笑われるだけよ。」



 次の日の朝にカンザキ達は出かけて言った。

 俺達もバード領跡地に行く準備をする。


異世界冒険 155日目

取得経験点


経験値:1942を得た。


総計経験値:48498

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