第72話:アーティファクト
朝一番風呂に入っていると、『ガラガラ』カンザキが入って来た。
「一番風呂だと思ったのに何でいるんだ。」
「俺の店でもあるんだしいいじゃないですか。」
カンザキはレバーを開けて獅子の口から出ているお湯を増やす。
「熱いじゃないですか。」
「俺は熱い方が好きだ。」
まあいいか、お客さんだし。
「なあリク、お湯の出るマジックアイテムとか便利すぎないか。」
「そうですね。」
「大量の矢や槍が収納できる矢筒とか便利だよな。」
「そうですね、・・・何が言いたいんですか。」
「日本に帰れたらの話だが、これ持って帰れるかな。」
「銃とか持って来れたので出来るんしゃないですか。地球には魔力がないので使用できない落ちが付くかもしれませんが。」
これ以上湯に入るとのぼせる、お先にと出て行くと後から「日本に帰る手伝いを頼む。」と言われる。
「こちらこそお願いします。」
手を挙げて出て行く。
朝飯を食べてから、史跡調査学会に出かける。
カンザキ達と、ビッキーとメルカバを連れて行く。
史跡調査学会の建物は魔法ギルドの建物と同じぐらいの規模でドーム球場ぐらいの大きさだ、この世界ではかなり大きな建物の部類に入る。
門の前に背の低い男と法衣を着た男がいた、1人はドワーフの種族の戦士だ、とげ付き鎖のを持っているので非常に怖い。
ステータスを確認すると戦士レベル2、レンジャーレベル7、鎖使いレベル2の総合レベル11だった。
もう1人は人間で僧侶レベル11だ。
「リクです、サウザンドさんの友人ですかね。」
「ビショップです。」
「ダストンだ、やつとは利害が一致したからパーティを組んでいただけだ、人間は直ぐにおっ死ぬ、ひ弱だし寿命が短いからな。」
ちょっと悲しい目をした、恐ろしい姿をしていても優しいのかな。
ダストンの後に続き建物の中に入る。
中は博物館のような作りだった、昔のアイテムがひしめいている、忙しそうにドワーフ達が右往左往と行き交っている。
ハーフエルフの白衣を着た男、ブルカニロ博士を紹介される。
「君達がライセンを救った英雄さんかな。」
やさしいチェロのような声で話しかけられる、吟遊詩人レベル9だ出来れば歌声も聞いてみたいところだ。
アーティファクトを見せて欲しいとお願いすると了承された。
ダストンが睨むが、彼は優しく微笑み「英雄さんには失礼がないようにしないとね。」とダストンをたしなめた。
アーティファクトの展示されているスペースまでを歩く、幾重にも警護のドワーフ達がいる。
「ドワーフは気難しいが悪いやつらじゃない。
友になれば死ぬまで友人として付き合ってくれる気のいいやつらさ。
この史跡調査学会はドワーフの氏族がランスに住み着いたときに作られた組織だ、ミスリル鉱山を追われたドワーフは『ドワーフの7つの秘法』を希望に各地を調査してきた。」
ビッキーが補足してくれる。
「アルトシュタインとランスとドワーフ氏族の混成部隊がミスラル鉱山を50年ぶりに奪還しました。
あと、史跡調査学会は知識の神の僧侶が多数所属しています。」
「そうだね、知識の神が史跡調査学会を設立してドワーフと共に歩んできたんだ。」
ブルカニロ博士が補足する。
展示スペースに入ると2人のエルフがたたずんでいた、見た目も神々しい。
ステータスを確認するとセイントレベル8となっている。
「待っていた強力な異能者がきましたね、ザネリ。」
「ああ、2人も特異点がきたね、カムパネルラ。」
「ようこそ「待っていたよ」異能者よ。」
ブルカニロ博士は驚いたように確認する。
「一体どうゆうことですか。」
「彼らは、この世界が招き入れた特異点、ここから物語の歯車が回り出す。」
「悪に傾いた世界を正常に戻す楔、この地に眠るアーティファクトを集めよ。」
「意味が分からん、まともに説明してくれ。」
カンザキが言う事ももっともだ、俺でも訳が分からん。
「1つの人間の宝、3つのエルフの宝、7つのドワーフの宝、9つの生ける生命全ての宝を集めてください。」
「全ての生命のためにお願いします、すでに、この場には5つの宝があります。」
ドワーフの宝3つと2人のエルフが光輝いた。
「セイント・・・ひょっとしてエルフの宝とは貴方達の事ですか。」
頷く2人。
こんなやり取りがあり史跡調査学会は上を下への大騒ぎとなった。
アーティファクトの護り手がアーティファクトと分かり、一体アーティファクトって何って事になった。
セイントの2人いわく、概念的な物で、アイテムの形を取るとは限らないそうだ。
セイントを発現するエルフを1人探す事がステータスを見る事が出来る俺に課せられた指名となった。




