第68-1話:挿入話
ライセンの滞在中の15日間は英雄として扱われた。
実際は戦後の処理が沢山残っているはずだが、人的被害が少なく何処に行っても人々の顔は明るかった。
『真夜中の焚き火』のメンバーと俺達+キャッシー、ランスから来た騎兵とレンジャーズは勲章を授与されるとか。
どこに行っても騒ぎになるので大人しく領主の所で大人しくしていた。
「リク、外に出ようぜ。」
タルトとスプモーニが迎えに来る。
「外に出ると騒ぎになるので嫌です。」
「もうそろそろ外に出ても大丈夫だ、戦後の処理で皆忙しくてそんなに相手にされないよ。」
それならと外に出る事にした。
結果は嘘だった、何処に行っても、もみくちゃにされた。
逃げるように市場の広場に行くと人だかりが出来ていた、避難しているライセンの民はまだ戻って来ている人も少い、しかし、多くの人が年齢性別問わず集まっていた。
「ビッキーとライアの演奏だよ。」
スプモーニが教えてくれた。
「人気があるんだな。」
「ランスの広場や、孤児院でも演奏してるんだぜ、超人気があるの知らなかったのか。」
どうやら俺は、パーティメンバーの休日の過ごし方を知らないようだった。
演奏の内容は英雄物語、サーガってやつだな『真夜中の焚き火』の活躍や俺達の活躍を歌にしている。
千のアイテムを次々取り出しオークを倒す話は聞いてて面白い、途中で活躍する中心人物が自分と気がついて焦る、俺の活躍が誇張され過ぎている。
俺はアイテムを作ったが自分で使用はしてないし、象の魔法人形でオーク軍を蹴散らすシーンも本当は象に乗っていただけだ。
「なあ、リク俺達レベル7になったんだぜ。」
「リクのおかげだな。」
「良かったな。俺のパーティも皆、レベル7かレベル8になったぞ。俺はレベル10になった。」
「俺達抜かされてんじゃねえか。」
「レベル10って、マスタークラスじゃん。」
2人に、レベル9になったらレベルが上がり難くなった事とマスタークラスについて聞くと、職業によってはレベル打ち止めになったり上がらなくなるそうだ。
たぶん今回レベル1の魔物を倒した分の経験値が入ってないので弱いモンスターではレベルが上がらなくなるのだろう。
レベル打ち止めについては、基本職以外の上級職はレベル10でカンストのようだ、レベル5でカンストの職業もあるとか。
マスタークラスと言っても基本職はレベル20まで上がるので「何故マスターななの?」と聞いたら、ギルドなどの組織に所属するとレベル16の者はレベル8の弟子を2人取り、レベル8の弟子はレベル4の弟子の面倒を見る、レベル4の弟子は・・・というように鼠算方式で師弟関係を結ぶようだ。
レベル16の者は30人の弟子がいる事になる。
レベル10になると直属の師匠がいなくなるのでマスタークラスとか。
「レベル20がいるだろ。」
「世なのかレベル20の者など殆ど見ることが無い。」
「レベル20なんて伝説級だよ。」
という事らしい。
演奏を聴きながらそんな話をしていると、周りがザワザワしてきた。
「あ、リクじゃない。」
演奏を終えたビッキーが手を振る、モーゼのように群集が割れた、どうしろというんだビッキーの所に行けと言うのか。
ゆっくり歩いてビッキーの所まで行くと歓声が沸き起こる。
「ビッキーここからどうやって抜け出せばいいんだ。」
「当分無理なんじゃない。」
バニラが通りかかり、アンドレと騎士団を呼んでもらい交通整理をしてやっと開放された。
「バニラ助かったよ。」
「馬鹿男達よりは役に立つでしょ。」
バニラと並んで歩きながら話をする。
ワインをラッパ飲みしながら上機嫌な馬鹿男達タルトとスプモーニは「馬鹿男達だって。」と馬鹿笑いをしながら付いてくる、ちょっとムカついてきた無視だ無視。
情報通のバニラに色々聞く、この世界にある7つのアーティファクト『ドワーフの七つの秘法』の事だ。
バニラの町、通称『はぐれバニラ』の町に『支配の王笏』が眠っているのを知っているか聞く、かなり有名なアーティファクトでちょっとした物知りなら誰でも知っていた。
バニラに『支配の王笏』について聞いてみた。
「知ってるも何も私そこ出身よ、今の通名もそこの町の名前を使ってるのよ。」
バニラの町は過去何度もアルトシュタイン、ランス、アクシヴィルと転々と所属を変えていた、現在の所属はランスの国。
どの国に所属していても遠く実際の運営は自治に近い。
この地方で最も力のある太陽神の教会が管理をしている。
『支配の王笏』も教会が管理しているようだ、強大なレッドドラゴンと共に、何処の国に序属しても地図上だけで実際は何処にも所属していない、よって通称『はぐれバニラ』。
「ぜひ見に行きたいんだけど。」
「えー、行ってもいいけど何も面白くない所よ。」
「俺の世界に帰るのに、七つの秘法を集めなければならない。」
「ドワーブンセブンアイテムを集めるのね、でも止めた方がいいわよ。」
バニラの町の案内をお願いする事にした。
15日後ランスに帰る道を大回りして帰る事になった。




