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第68話:決戦2

 オーク陣営ではどよめきが起こった、誰もが知るオークの英雄達が成す術もなく倒れたからだ。


「あいつらこっちに来るぞ。」「まさか、7人で3000人と戦う気なのか。」「逃げた方がいいんじゃないか。」


 オークキングは一般兵では被害が大きいと判断してオークの英雄7名と騎兵の猛者を送り出したのだ。

 伏兵の罠を疑っていたが結果はガチの戦い。しかも、精鋭を30人近くを一瞬で失ったのだ、本来なら警戒するべきだろうが頭に血が昇り判断を鈍らせた。


「相手は立ったの7人だ全軍直ちに戦闘準備、準備出来次第突撃をしろ。」


 オークキングが吼える。


 武器を個人管理するオーク軍の初動は早かった、直ぐに全員オーク軍が動き出す。

 後衛の支援部隊を除く2500体ほどが押し寄せる圧倒的な数だ。



 リクは思ったより行動の早いオーク軍に驚く、500mを切った所で指示を出す。


「黒い津波のようだな、向え討つ準備をするぞ。」


 象のフィギアを24体並べる、並べた端から順に合言葉で起動していく。

 角笛を吹き25人の英雄が召還される。

 皆象に乗り込む、俺は象を操る事が出来ないのでメルカバの操る象に乗り込む。

 象の籠の中にスカーレットとメルカバ俺の3人だ。

 他のメンバーはボニーとビッキーが動物に乗れるため騎手を勤め(ボニーが騎手をした。)残りのメンバーはその象に乗り込む。


「馬とはだいぶ乗り心地も操作も違いますね。」

「俺に言われても分からんけどな。全軍攻撃開始。」


 象はゆっくりと歩き出す。

 ゆっくりに感じたが大きいためスピードは早い、リク達は象の上から弓を射る。 焼け石に水だった、オーク軍のスピードを止める事はなかった。


 メルカバはクロスボウ(ガス式)を取り出す、矢には小さな顔や口が付いていて恐ろしい声や泣き声を上げている『ア゛ァー』『ヴァー』『シクシク』


「主よ、これ呪われてないよな。」

「大丈夫、呪いのアイテムじゃないから。」


 圧縮空気で弦を引き発射していく『シュコー、パス、シュコー、パス』小気味よい音が聞こえる。

 しかし、発射された矢からは恐ろしい叫び声が放たれる。


『ギィヤァァーーー』『ア゛ア゛ァーー』『くそ上司ィー』


 よく分からん叫び声も混じっているが矢がオーク軍に吸い込まれていった。

 叫び声には恐怖や混乱の精神効果が付与されていたので隊列が乱れていく。


「ぎゃー怖えーよ。」「戦象が来る。」「あはははー。」

「気をしっかりと持て、隊列を乱すな。象とて生物足を止めて囲えば勝てる。『ボグシャ』ぐえー。」


 隊列を乱した所に象が突撃する、隊列を維持しようとしていたオーク隊長をひき殺し象はどんどん進む。

 進みながら、『火玉の数珠』『ライトニングジャベリン』を使い攻撃するとオーク達は火玉や稲妻で焼かれていった。

 遠くからは黒い絨毯が酷く鈍いハサミで切られたように見えた。

 オーク軍が真っ二つに別れ、リク達は反転して追撃を行う。


「3時の方向に隊長がいる撃て、次はその横の術者を狙え。」


 マップより高レベルの兵士や術者を見つけて集中して倒す、的確な指示に隊長クラスの兵を次々失い烏合の衆と化すオーク軍、いやもはやオークの集団に過ぎない。

 英雄達の乗る象はオーク軍を派手に蹂躙しているため軍の中枢に大きなダメージが与えられているのに誰も気がつかない。

 オークキングが始めて気がついた時には既に遅かった。

 英雄達をその場に残しリク達は動き出したオークキングに向かった。


「敵は象2体だ散開して突撃を避けろ。止まった所を斧で足を攻撃しろ。」


 100体ほどの精鋭達、どれも3レベル以上の冒険者レベルを持っていた。

 リク達は突撃しながら袋を取り出す。


「散開したのでフィギアを取り出せ。」


 『魔法のフィギア袋』から取り出された精巧な動物の人形が投げられる、地面に着くと人形は本物そっくりの動物に変化した。

 あっという間にライオン、サイ、熊、雄牛など30体以上の大型動物が現れる。

 同じ袋からは同時に取り出せる人形は1体だが、リクは予め1人に10袋も持たせていたのだ。


「動物の数はこれでいい、突撃しながらオークキングを狙撃しろ。」


 リクに指示でオークキングを狙撃するがタワーシールドとプレートアーマの近衛兵士が集まり前で攻撃を受ける。


「なかなか硬くて倒せません。」

「非実体の矢の使用を許可する撃て。」


 光輝く矢を取り出す。

 物質を貫通して生きている物のみに作用する矢が豪華なプレートメイルを着たオーク達に吸い込まれる。

 どんなに厚い鎧も効果が無い、次々倒れる近衛兵達、しかし彼らはキングを守りきった。


「主よ、やばい、オークキングを倒しきれなかった、象の止まった所を狙われるぞ。」

「「そのまま突撃して。」」

「いいんだな。」「いいのね。」


 声を発したのは象の頭に立つスカーレットとボニー、確認するのはメルカバとビッキー。


「「すれ違いざまにオークキングの首を取ってきます。」」

「まじかよ。」


 リクは思わず呟いた、冷や汗が出る思いだがこのままではジリ貧になるので彼女ら親子に託した。

 オーク軍も突撃しているので相対速度は40Km/h以上ある。


 大型動物とオークの精鋭が激突する。

 リク達の乗った象はオークキングを挟む形で突撃した。

 オークキングは斧を振りかぶり、すれ違いざまに象の足を狙ったが上から降ってくる人影からの攻撃を斧で防いだので攻撃出来なくなった。


「他の領土を脅かして私服を肥やす行為はゆるせません。」

「戦争の捕虜で奴隷を作り、そして虐待する行為は万死に値します。」


 スカーレットの空中1回転ひねりからの蹴りと、ボニーの地を這うような低い攻撃は、ほぼ同時だったが攻撃を避けられる。


「女は子供を産んでいればよい、戦争に出てくるなど身の程をわきまえろ。」


 オークキングは斧を振り回すがスカーレットもボニーも難なく避ける。

 スカーレットの敵を動けなくする必殺攻撃もプレートメイルに阻まれ伝わらない。

 ボニーの攻撃を盾でボニーごと弾き飛ばし、スカーレットに斧が振られる。

 完全に積んだタイミングの攻撃を『防御の指輪』の障壁が僅かに軌道をずらし空いた空間に体をねじり込み避ける。


 体勢を崩した所に3段攻撃を叩き込むプレートメイルの上からでもオークの体が浮くほどのボディーアッパーに体がくの字に折れ曲がる。

 ボニーはオークキングの死角に回り込み急所に短剣を突き刺す。


 怒りに身を任せてオークキングは雄たけびを上げると、体が一回り大きくなりボニーを斧で殴りつけた。

 ボニーは吹き飛び二度ほど地面にバウンドした、普通の人間ならば真っ二つになる一撃だったが外皮強化の護符がボニーを死から救った。

 血を流しながら立ち上がるボニーに追い討ちをかけるオークキング。

 ボニーは合言葉を唱えると盾が空中を舞い自動でオークの斧を防ぐ。


 取り出した大回復ポーションを飲む、飲む動作の隙に斧で肩を深く抉られるがそのダメージも含めて全快した。


「グォー、高価な回復アイテムまで所持しておるのか。」

「そんなダメージでは私を倒せないわ。」


 巻物を取り出し広げる、魔法使いを真似て呪文を発動する。

 発動中の隙に攻撃されるが浮遊している盾に防がれる、その間に呪文が完成する。

 オークキングはボニーの指から発生した光線に当たると斧が重さを増した様に感じた。


「筋力低下の呪文か、だが今の状態なら関係ない。」


 オークキングは狂戦士の能力で筋力を底上げしているので問題は無かった。


「後がガラ空きですわよ。」


 スカーレットの蹴りと膝がオークキングの脊骨と腰骨を強打する。

 ボニーは再度巻物を取り出し呪文を唱える。オークキングは隙を見て攻撃するが防がれスカーレットの攻撃を受ける事を繰り返す。

 ボニーは計5回巻物を使用した、4回発動させ3回光線を当てることが出来た。

 オークキングは光線が当たるたびに筋肉が収縮して斧が重くなり当てることが出来なくなる。

 筋力を底上げする特殊能力の時間が限界を迎えるとオークキングの体が一回り小さくなるように萎む。

 特殊効果の後の筋力低下も相乗して斧を振り上げる事が出来なくなった。


 近衛兵はオークキングに加勢に行きたいが、大型動物が雪崩のように攻めて来るのを守るだけが限界だった。


「3人1組で対処しろ、キングが戻るまでなんとしても戦線を維持するんだ。」

「おぉー。」

『ゴトッ』


 大型の動物を2人または3人で防ぎ戦列を死守しているオーク近衛兵達、しかし、そこにオークキングの頭が投込まれ鈍い音を立てて転がり落ちる。

 戦意を消失した近衛兵に、リク達がUターンして戻ってきた。

 大型の動物と戦象に挟まれ戦列は一気に崩壊した。


「そこの大きいのと、10時方向の神官をねらえ。」 


 リクの指示でレベルが高いオークが狙われる、時間が経過すると近衛兵は全滅した。

 リクは元オーク軍、今はオークの集団を見ながら


「メルカバ、オーク達まだやる気っぽいな。何故だろう。」

「加勢しに行っていいか。」


 矢筒を渡しながら送り出す。


「『ライトニングジャベリン』がフルで入っている、使い切って来い。」


 リクは、英雄が乗っている戦象と言っても多勢に無勢、5体ほど戦象が倒されている、このままではジリ貧なので許可を出した。

 2頭の戦象と大型の動物はオークの集団に駆けて行く。



 リクは残ったボニーとスカーレットに「ちょっと野暮用に付き合って」と言って、もう一頭戦象を作り出し、ボニーに騎手を勤めてもらう。

 後方支援部隊400人の所に歩を進める、驚かさないようにゆっくりと威圧しながら。

 オーク達は逃げることも戦う事もできずに動かない、矢などの補給物資を置いて逃げられないのだった。


「おい、そこのお前、上級仕官だろう。」


 びくっと震えて1人のオークが出てくる。

 リクは素早くステータスを確認し属性は中立こいつなら話が出来るかもと話し出した。


「なぜ撤退しない。」

「上級仕官と言っても後方部隊の将ですぜ。全軍の指揮などの役は回ってきません。」

「見たところこの戦場にお前以上のレベルの指揮官は見当たらないどな。」

「嘘でしょ。」


 きょろきょろ見渡しサーと青くなる。


「軍の規律からするとお前が指揮官じゃないのか。」

「はあ、その様ですね。」


 ガリガリ頭を掻きながら余り乗り気ではないオークと話をする。

 話を要約すると、オークには珍しい商人の出で、戦争に参加して箔を付けるため親に無理やり従軍させられたとか。

 現在オーク兵がここまで無理にも戦っているのは国に帰る食料が無く戦うしか選択肢がない為。

 後方の輜重兵まで撤退すれば食料を確保できるのではないかと提案する。


「輜重兵までの食料を保障してもらえば停戦協定を結びますぜ。」

「何で上から目線なんだよ。」

「いやぁ、今なら兵を纏めれば五分五分の戦局に持ち込める可能性もゼロじゃないのでふっかけてみました。」

「なかなか良い商売人になるよ。無限にパンが出てくる持って行け。」


 リクは、バスケットを投げ渡す。

 バスケットを受け取り驚くオーク。


「いいんですかい、こんな高価な物を貰っても。」

「さっさと兵を引け。」

「へい、では帰らせていただきます。あと、」


 この戦いを焚きつけたのはアクシヴィルの高官で食料や武器を裏で援助しているとか。

 今後アクシヴィルでのオークの支配力や発言力は減り支配している土地も激減するだろうと教えてくれた。

 アクシヴィルのオークの商人、『鋼の軸』と言えば有名とか、悪の国の商人なんかと取引しないといったら「へへ、世界は狭いので、何かの縁で会う時もありまさぁ。」と言って撤退の合図を出した。

 最後まで憎めないやつだった。


 ―――その後―――

 ライセンの領主とオーク軍は停戦協定を結ぶ。オーク軍2000人は15日の停戦のうちに完全撤退する事を約束した。

 アクシヴィルとの国境まで撤収を確認してこの戦争が完全に収拾してからリク達はランスに戻る事になった。


異世界冒険 138日目


取得経験点


経験値:4525を得た。


総計経験値:46556


Lv9→10

HP:55→63

命中:+6


筋力13(+1)

敏捷14(+2)

耐久力12(+1)

知力14(+2)

判断力6(-2)

魅力11(0)



取得スキル

錬金術

神秘学

建築術

地理

歴史

自然学

宗教

異次元

交渉術


特技

長弓習熟

接近射撃

精密射撃

回避

強行突破



呪文数

Lv0 4回

Lv1 5回

Lv2 5回

Lv3 4回

Lv4 4回

Lv5 3回


マリーヌ:Lv6→Lv7

ビッキー:Lv7→Lv8

スカーレト:Lv6→7Lv

ボニー:Lv7→Lv8

メルカバ:Lv8→Lv9

ベニー Lv6→Lv7

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