第60-2話:挿入話
「まさか俺達だけで戦う事に成るとは夢にも思って無かったよな。」
「遅延だけの任務なので少数精鋭なのでしょう。」
クリームとギー、エステルの3名はオークの軍勢を足止めするための準備をしている。
「ここの場所はもういいから退避してくれ。」
村の若者を避難させる、もう既に若者以外の村人は避難している。
そこにライセンの騎士がやってくる、斥候だ、騎士を斥候に使うとは他の軍なら考えられないが今は人手不足で誰も文句を言わない。
避難に人手を割いているので斥候が不足しているのと、魔法の蹄鉄の効果で風のように走る事が出来る為に斥候に任命している。
騎士はアンドレだった、故郷の危機に今回の作戦に協力を惜しむ気は無かった。
魔法の蹄鉄や馬の防具を受け取ると見事な指揮を発揮して10人の騎士の采配をしたのだった。
「オーク達がこちらにやって来たぞ。」
「予定より早いな、タルト達はしくじったのか。」
「どうやら、騎兵と軽装兵が別れて先に進軍しているようだ。」
「2面戦闘しなきゃならんだろうが、こちらは数が少ないんだぞ。」
「すまん逃げ切ってない、オーク騎兵10体の対応をお願いする。」
「ああ、次の情報よろしく。」
土煙が上がっている、双眼鏡で確認すると確かにオークの騎兵が10体いる。
アンドレは馬の手綱を引いて次の場所に向かう。
「ギー大丈夫か。」
「我輩に任せておけば大丈夫だ。」
「気を抜くなよ。」
ギーはヤギのフィギアを投げると馬の大きさになるそれに跨り角笛を取り出す。
魔法のアイテムの英雄の角笛を吹くと8体の戦士が現れる。
この角笛は英霊を呼び寄せて共に戦う事ができるアイテムだ。
週に1度しか使えないが一人に7つ渡されているローテーションすれば毎日1回呼び出せる。
「英霊達よ、今一度悪を討つ機会を与えられた、我と共に戦え。」
「「ウォー!」」
英霊達はときの声を上げるとギーと共に敵に突っ込んで行く。
「メ゛ェルメ゛ェルメ゛ヴェー」
ギーの騎乗したヤギは、恐ろしい鳴き声を響かせるとオークの騎獣達の足並みが乱れる。
ギーはヤギの角を取外しランスの様に構えて突っ込む、リーダらしき体格の良いオークが前を塞ぐ。
交差する大きい影と小さい影、ダメージを受けたのはオークだった。
深いダメージを受けるが応戦するオークリーダ、ギーは攻撃を器用に受け流しヤギのもう一方の角を外す、もう一方の角を外すと剣のように鋭く長く変化する。
右の角はランス+3相当、左の角は剣+5相当の魔法の武器として使用できるのだった。
「小さい種族の癖にちょこまかと死ね。」
ギーは斧を振りかぶるオークに素早く接近する。
「体格だけが勝敗を決める要因ではない。」
ギーの剣が光だす、悪を打ち負かす力を剣に乗せて斬撃を放つ。
オークの鎧ごと胸の半分まで切り裂く、オークは落馬してそのまま絶命した。
「見たかこれが善と秩序の力、人々の思いだ。」
「アイテムの力だろ。」
「ギーにそれ言っちゃ駄目だからね。」
ツッコミを入れるクリームにエステルはシーとポーズをしながら答える。
浮き足立った上にリーダを失ったオーク達は英雄達の突撃とクリームの精密な射撃にみるみる数を減らして開戦から5分もしないうちに撤退した。
「「ウォー、ウォー、ウォー!」」
ギーと英雄達の雄たけびが村に響き渡った。
「ミッションとしては敵を逃がしてるから失敗だよな。」
「それもギーに言っちゃ駄目だからね。」
「聞こえているぞ、損害ゼロでオークを撃退できれば及第点である。クリームは手厳しい。」
「これからの戦いを考えると満点でなければ厳しいという事さ。」
ギー達はこれからの戦いの厳しさが分かっているが今は純粋に勝利を喜んだ。
夜になると、オークの騎兵が250体ほど村を囲む。
「村1つに250体か予想以上に多いな。」
「準備できたわよ。」
暗視ゴーグルを付けたエステルが走って来た。
見るとサッカーボールほどの大きさの象のフィギアが並んでいた。
使い捨てのアイテムで、起動すると実物大の象となる魔法のアイテムだった。
先ほどの角笛を吹く3人の元に13体の英雄が現れる。
クリームはフィギアを起動させる。
「「パオーン」」
「英雄達よ象に騎乗してオーク達を殲滅せよ。」
英雄達は象に乗り込む、ギー達は3人で1頭の象に乗り込む。
「ギー、今回は突っ込むなよ。」
「我輩もアホではない。」
太鼓が鳴らされてオークが押し寄せて来る。
「オーク接近50、40、30」
エステルのカウントダウンが始まる。
「今だ引け。」
象が綱を引くと、地中から木の柵が斜めに起き上がる丁度騎獣の胸の高さで先は鋭く加工されている。
飛び越える者、串刺しにされる者、落馬する者、辺りは混乱を極める。
「突撃。」
象は群れをなして馬に突撃する。
オーク達は踏まれる者や押しつぶされる者が続出した。
「貴君らの奮闘を祈る。」
英雄達は武器を掲げて返事をする。
ギーは敬礼をしてその場を離れる。
幾らか追っ手が来ると思ったがこちらに追っ手が来る事は無く、ギー達は無事脱出する。
戦闘が終わった村では、オーク達が苦い顔をしていた。
「食料どころか村人1人いません。」
「どうなっている、この村は完全に捨てられたのか。」
「大変です、倒した兵士が全て消えて何処にもいません。」
「死体が無いだと。」
「壊れた象の置物が転がっているのみです。」
「俺達は何と戦っていたんだ。」
50体の騎兵を失い、さらに同数の50体が負傷して手に入れた勝利は戦利品も無く徒労に終わったのだった。
数日後、ギー達は別の村でもオークの兵と開戦するのだが途中で退却される。
「おい、やつら撤退が早くないか。」
「どうやら、こちらの意図を察知した様だな。」
「今度はこちらから攻撃を仕掛けよう。」
それからは毎日1度英雄を呼び出しては攻撃をして進軍スピードを落とす事にギー達は成功した。




