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第60話:異世界探索-祝福の地-

 戦争準備中のため教会の修繕を宮廷建築家のカザードにお願いしているがなかなか進んでいない。

 ビッキーに『創造の竪琴』で修繕を依頼する。


「リク殿もう建物の修復を始めて頂いているのか。」

「早くやる事も大事ですから。修復が終わったら他の次元に連れて行ってもらえませんか。」

「危険じゃが良いのか。」


 話を聞くと、今までで行った事のある次元界は瞬時に行くことが出来るようだが、それなりに危険が伴うようだ。

 光の神殿や太陽神の領土まで一気に行くことが出来るが、ここでも危険が伴う。

 この究極の善の次元界は傷ついたり老齢で死ぬ前の英雄達が最後にやってくる所であり究極の善の対価として永遠の時間この世界の住人に成る事を許される。

 逆に永遠に住む事を強要する事もあるそうだ。

 大司教は過去に僧侶団を引き連れて光の神殿に来訪した事があったが半数の人は永久に神殿に留まる事になったと教えられる。

 何それ恐ろしい。

 余りの居心地の良さに帰れなくなるそうだ地味に怖い。


「短い間なら問題は無かろう。幽体投射の呪文が有ればもっと安全に次元の旅が出来るんだがな。」


 魂だけ他の次元に送り危なくなったら戻る事の出来る呪文が有るようだが、僧侶呪文の中でも最高レベル呪文のようだ。


「商業ギルドか魔術師ギルドに行ってスクロールを探しておきます。」

「朝の瞑想で次元移動の呪文を用意するので明日来るがよい。」

「ではお願いします。」


 宿に帰ると、明日行く人の人選を行う。

 ビッキーにベニー、メルカバの三人を選ぶ。

 

「「私も行きます。」」


 マリーヌとボニーが言うが、今回は断った。


「マリーヌは、市場の動向を見て小麦など買収をお願いしたい。これはマリーヌしかお願いできない。」

「ボニーには、新しい宿の運営を軌道に乗せて欲しい。」


 あと、マリーヌには幽体投射のスクロールを探してもらう。

 翌日の朝までに色々準備をする事にした。

 異世界ではどんな事があるか分からないので空気を出すアイテムや、水や食料を出すアイテムをそれぞれに渡す。


 翌日の朝にフル装備で教会を訪れる。


「物々しい装備じゃの。」

「今日はよろしくお願いします。」

「では早速出発しよう。」

「あ、その前に抵抗のマントをつけてください。」


 次元の誘惑に負けないように抵抗のマント+5をプレゼントした。

 大司教は抵抗のマント+5を嬉しそうに装備すると呪文を唱える。

 魔方陣が浮かび上がり光が全員を包み込むと、頭の上にある糸を引っ張る様な感覚を覚える、淡い光のトンネルを潜り抜け大地に降り立つ。

 太陽は出ていないがぽかぽかして草むらに寝転ぶとそのまま寝そうな陽気だ、この地にずっと住むのも悪くないと思い始める。

 空に太陽が無いのは何故かと尋ねると、「光の神殿に太陽神がいるからじゃ。」と言われた、どうやら俺の常識は通じないらしい。

 他のメンバーも良い所ですねと言っている。


「ここが光の神殿ですか。」

「知らない島じゃの、ただ光の教会の位置は向こうじゃ。」

「なんか遠くないですか。」


 遥か彼方上空に光の柱が見える。

 マップを確認しようとした所、地図情報なしと出る。

 地図のダウンロードをしようとしたら錬金機器から遠いためダウンロードできません。

 錬金機器から離れるとソフトのダンロードが出来ないのか、生死に関わる重要事項は早めに教えて欲しい。

 錬金機器でアイテムを作成したり取り出す事は出来るので最悪の事態は回避されている。


「とりあえず進みましょう。」


 魔法の絨毯を広げて乗り込む、半日ほど移動すると人に出会った、天使の英雄だと?声をかけるとフードを取り答えてくれる。

 犬の顔の天使で、聖騎士レベル11を持つ凄いなこいつ総合レベル16相当だった。

 ビッキーと大司教が天使の言葉エノク語で会話をしている、サークレットの言語理解の能力で会話は分かるが喋れないのでここはビッキーに任せた。


「おいメルカバ凄いねこの人、聖騎士レベル11だって。」

「マスターも見ただけで能力が分かるのが凄い。」

「それは凄い能力だな。」

「いやそれほどでも、え!」


 犬天使が俺に話しかけてくる。


「あれ、言葉が話せるんですか。」

「リク、天使は誰にでも神の教えを広めるために言語理解の能力を持っているのよ。」

「え、そうなの、ごめんなさい勝手に能力を覗くまねをして。」


 深々と頭を下げると許してもらえた、少しほっとする16レベルとの戦闘は勘弁して欲しい。

 話を整理すると光の神殿まで距離が500Km以上あることが分かった。

 魔法の絨毯で飛んでいたら1週間以上必要な距離だ。

 すぐにタッチパネルを操作して魔法のアイテムを作成する。


「抵抗のマントに飛行の能力を付けましたのでこれで飛んでいきましょう。」

「天使さん、ありがとうございました。ステータス覗いたお詫びです。」


 抵抗のマント+5を渡した。


「名前はハウンドだ出来ればそっちの飛行付が良いな。」

「うーん流石にそれは(マリーヌに怒られるな)、飛行の効果の差額を頂ければお売りしますよ。」

「よし、商談成立だ。」


 白金貨と大きな宝石をゴロゴロ渡される、天使ってすげー金持ちだな。

 合言葉を唱えて空中に浮かぶと天使は手を振って飛んでいった。


「天使と事を構えるのは勘弁してほしいのじゃ。」

「肝が冷えました。」

「不用意な発言をしてすまない。」


 それから島から島に飛びながら4日ほどして、エンジェル3体と遭遇してさらに2日した所で光輝く神殿に着いた。

 全てが光輝く神殿に入ると、僧侶が出迎えてくれる。


「おー、久しぶりだな、変わっていないな。」

「久しぶりだ、お前は老けたな。」


 大司教の知り合いのようで再会を喜んでいる。

 紹介をされる、20年ほど前に一緒にこの神殿に訪れたがそのままこの世界に残る事を選択した僧侶達だった。


 次の日ベニーに異変が起きる、ボーとしている。


「ベニーどうした。」

「朝から変なんです。」

「なんだかこの素晴らしい世界が気に入ってしまいました。」

「おいそれって、この次元に囚われているんじゃないのか。」


 大司教に話すと、


「このぐらいならまだ抜け出せるがこのまま居ると抜け出せなくなるな。」


 申し訳ないが早めに元の世界に帰る事にした。

 元の世界に戻る方法を探そうと思ったが早めに帰ることにする。

 珍しい金属で出来た武器を少し購入して次元移動の呪文で帰る事にした。

 見送る僧侶達の屈託の無い笑みに寒気を覚えるのは気のせいだろうか。


 

 魔方陣が浮かび上がり光が包み込むと、頭の上にある糸を引っ張ってどこかに飛ばされるような感覚で周囲の景色が変わる。

 淡い光のトンネルを潜り抜け大地に降り立つと見慣れた風景だった。

 マップも見ることができる、ライセンの町にかなり近い所に出現した。


 ライセンに向かう事にした。

 ライセンに泊まると「真夜中の焚き火」のメンバーに会う。

 僧侶のエステルが、


「大司教様が何故ここにいるのですか。」

「祝福の地の光の神殿に行ってきたのじゃが戻る時にランスから外れてたまたまライセンの町の近くに出現したのじゃ。」

「この呪文目標地点から結構ずれますね。」

「それがこの呪文の問題点じゃな。」

「神の住む神殿に行ったのですか。羨ましいです。」

「でも、危うくベニーがあの世界の住人になりそうになったよ。観光もせずにさっさと帰ってきた。」


 席に座っているベニーを見るとまだポーとして反応が無い。


「そ、そうですか。」


 エステルも異世界の恐ろしさを少し感じたようだ。



 次の日に領主の元に訪れる。


「おお、リク殿と大司教殿わざわざライセンまでご足労感謝します。」

「特にたいした用はないのじゃ。」


 軽く挨拶を済ます心算がこれからの戦いを励ます為の慰問と間違われてしまった。

 バツが悪いのか大司教は挨拶を終えると、ライセンの教会に顔を出してくると行ってしまった。

 アンドレの用事を済まそう。


「アンドレ、『真夜中の焚き火』の人から騎兵の装備を受け取りましたか。」

「ああ、全馬に装備完了だ。」

「ランスチャージの効果を倍にする『突撃の革鎧』どうしてます。」

「俺以外の兵は喜んで装備しているよ俺は、『加速甲冑』を使用するさ。」

「鎧をバージョンアップします。」


 『加速甲冑』と『突撃の革鎧』を持って来させる、2領の能力を合成する。

 失敗すると面倒なので、100%成功にしてから合成した。


「ほい、『加速甲冑』突撃ラブハートバージョンだ。」

「突撃ラブなんだって。」

「気にするな、突撃時に攻撃力が倍になる能力が付いただけだ。」

「マジか、もう払える金持ってないぞ。」

「そこはサービスでいいよ。でも、オークとの戦いで斥候をお願いするよ。情報戦の要なので最重要ポジションだと思って任務に当たって下さい。」

「いいぜ、今からでも出撃するぜ。」

「では、よろしくお願いします。」


 大司教を迎えに行くと教会で説教が行われていた、大勢の人が集まっている。


「すげー人気だな。」

「当たり前でしょ、ランスで3位の僧侶よ、太陽神の教会では2番目の実力者よ。」


 エステルが横に居た。

 大司教の説教を終えた後ライセンを出る。

 魔法の絨毯に乗りながら皆と話をする。


「メルカバ今回は静かだったな。」

「今の実力では天使には勝てない事を知った。」

「戦う必要ないじゃん。」

「いや、悪魔と双璧をなす者の強さを知ったので目標が出来た。悪魔との戦いに備えて精進する。」

「そうか、頑張れ。ビッキーは面白くなかったよな。」

「いいえ、完全な善の世界は素晴らしかったですわ、いい詞が書けると思います。」


 ベニーが手を握ってきた。


「私も、目指す善を知る事ができました。」

「ベニーもう大丈夫なのか。」

「ええ、もう大丈夫です。リク、貴方と出会ってなければ戻ってこれなかったでしょう。」


 大司教も古い友人に会えて嬉しそうだったので初めての異世界冒険は成功としよう。

 4日ほどして何事も無くランスに着いた。




異世界冒険 106日目

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