第57話:帰郷
空がしらやむに頃、ビッキーは甲板に出て外を眺める。
ドラッデンヘイル、またの名をライア庄から6日間かけて川を下っている。
この川は、アルトシュタイン、ドラッデンヘイル、ランスを繋ぐ重要な航路であった。
定期便としての船の需要は高く簡単には乗せてもらえないが、ライア庄のサウザンド卿の計らいで乗せてもらった。
部屋は、個室を与えられ船員としては最高の待遇といえる。
「姉さん風邪引きますぜ。」
マントを持ってやって来る戦士風の人物の肌はうろこ状で普通の人ではなかった。
ライア庄から3人の戦士が護衛に乗り込んでいた。
大きな船と言っても賊や魔物の襲撃に対抗するためだ。
今回は、ビッキーの護衛も兼ねてリザードマンの護衛を付けられた。
実はリザードマンは人間よりも屈強で護衛の人気が高いそれを3人も付けられたのには訳がある。
リク製作所の主人がライア庄に魔法のアイテムを貸し与えて今も貸したままにしているからだ。
本来なら貸したアイテムは返すべきだが、女の一人旅で50人近い人数の装備を運べるわけも無く。
船に乗せようにも日本円にして22億円相当のアイテムを運ぶのを船長が拒んだ事と、ランスに入るときに装備品では無く商品として税金がかかる可能性が高く装備をライア庄に置いてきたのでVIP扱いされていた。
「そうね、ありがとう。」
髪を掻き上げながら遠くを見るとランスの名物である巨大橋が見えてきた。
港に着くと様々な荷物が降ろされる中をビッキーは歩く。
非常に活気のある風景で何時ものランスだ。
リクから離れて行動すると決めたときには、この地に帰って来られない覚悟もしていたがあっさりと帰ることが出来て拍子抜けしてしまった。だがランスの地を踏みしめると感慨深い。
そう思っていると後から。
「姉さん、リク製作所まで同行します。」
「護衛は必要ないわよ、それにお仕事はいいのかしら。」
「次の出発は7日後ですので、リク殿に挨拶をさせて頂きたいのです。」
いくら流れが穏やかな川でも船で登るのは難しい、ただこの世界には魔法が存在する。
風を起こす羽扇子を使用して船を遡上させる。
1ヶ月に使える回数も決まっているので都市に停留期間を設けて調整しているのだ。
当然高価なアイテムで、船に乗る事が出来る者や、運ぶ物資も制限されている。
ビッキーはそんな事を知らずにVIP待遇を受けていた。
港から宿までの帰り道、リザードマン達は市場の大きさと繁栄に驚き田舎者まる出しで歩いていたのをビッキーはほほえましく見ていた。
城塞都市ランスでは珍しいリザードマンを3人も連れて歩けば嫌でも人目につく、宿の近くまで歩いて行くと宿からベニーが出迎えてくれた。
「ビッキー無事だったの。」
「無事帰りました。いろいろ話す事が有りますので中に入りましょ。」
少し時間が過ぎビッキー達は食堂でささやかな帰還を祝うパーティが開かれた。
リザードマン達は、
「女性や子供を助けていただき感謝します。」
「魔法の武器を貸し与えられてお礼の言葉を。」
など、リクに挨拶をしていた。
「まあ、贈与したわけではありませんが今は自由にお使いください。」
話はイエローウッドのエルフ村の事になった。
「コボルトの大群は嘘だったのか。」
「いいえ、400匹以上いたようですが、既に戦いは終わっていました。」
「まさか村は全滅していたのか。」
村人が既に全滅していてもおかしくない数の話だが、リクの予想とは逆だった。
「いいえ、コボルトは3人の人間によって撃退され敗走、残りをドルイドやレンジャー達と追撃しただけで勝負が決まりました。」
「信じられんな。」
「リクは、ジュウやライフルという武器を知っていますか。」
「火薬で玉を飛ばす武器だろ。」
「じゃあ、超能力は知っていますか。」
「スプーン曲げたりするやつかな。」
「ニホンの戦士がライフルと超能力を使ってコボルトを退けました。」
リクは一瞬理解できない顔をした。
そう、同じように日本人がこの世界にもいるのだ、理解すると思わず立ち上がってしまった。
「エルフの村にいるのか。」
「近々リクを尋ねて来ます。」
そうかと答えて椅子に座り直すリク。
「ただ、彼らも帰る方法を探しています。」
「どうやってこの世界に来たんだ。」
「言葉が不自由でしたのでそこまで話せていません。彼らは、魔法やアイテムの効果を受け付けないようでした。ただ、彼らの言葉、日本語はサークレットの翻訳効果で理解できました。あと、彼らにサークレットを貸しても翻訳効果は発生しませんでした。」
この異世界に蘇生するとき裸で蘇生された事を思えば、武器を持ってこの世界に来れた事は大きい、つまり生きてまま帰る事が出来る証明だからだ。
リクは異世界を移動するには肉体を捨てて魂だけで移動するしか手段が無いと考えていたが、そのままの姿で帰ることができる希望が出来たことは大きい。
「じゃあ、彼らが来るまでにこちらも色々やれる事をやろう。忙しくなるぞ。」
「「はい。」」
ビッキーもこれから忙しくなるのを肌で感じたのだった。
ちょっとだけもう1つ書いている小説の登場人物が混じっています。




