第55話:盗賊ギルド
昼ご飯を食べながら話を聞く。
女性の話は聞き手になるのが一番だ、それに俺はそれほど上手く語れない。
食事を終えて自分の買い物をする、素材やスクロールを補充するためだ。
何時ものコースで何件か店を回るとある店の主人が違っていた。
「何時もの主人はどうしたのですか。」
「すいませんね、今日は貸切です。」
「何を言っている。」
気配を感じて後を見ると出入り口に複数の黒服がいる。
あれ、エネミー反応が無い、敵対はしてないのか今の所は。
「ドン・ワルザー様が中でお待ちだ。」
「ちょとリク、ワルザーってシーフギルドのボスじゃない。」
ベニーがびびっている、ワルザーって分かり易い名前だな。
中に入ろうとすると、ベニーは止められる。
「人質ですか、乱暴するなら俺は敵対しますよ。」
「私が責任を持ってベニーの安全を保障するから行って。」
中からバニラが出てきてベニーの手を引く。
うーん、この中では一番信頼がおける人物か。
「ではお願いします、裏切ったら命の保障はしませんよ。」
「対丈夫よ、ボスは堅気に手を出さない主義だから。」
中に入る、薄暗い部屋だな。
部屋に腰掛けている人物がワルザーだな、ステータスを確認する。
ドン・ワルザー
秩序にして悪
盗賊Lv16
その横にいる人物は、名前に何か書いてあるな。
パルフェ・タムール(ドン・ワルザーの腹心)
秩序にして中立
盗賊Lv11
タムールが話しかけてくる。
「私はタムール、こちらはシーフギルドを束ねるワルザー様です。」
ワルザーを見ると超怖えー、そのまんまヤクザの親分だった。
「タムールは俺の右腕だ何か困ったときはやつに相談しろ。」
「あ、ありがとうございます、いきなり襲ってきた人はいないのですね。」
ギロッと睨まれる、怖いよマジで。
「やつは解雇だ。」
目をかけてやったのに増長して一般人にまで手を出したので解雇したと教えられる。
現在はタムールが歓楽街のボスなので時間があるときには遊びに来てくれと言われた。
「しがない堅気の商人を捕まえてどうする気ですか。」
無言で睨まれる。
「すいません。」
なぜかとっさに謝罪が出たのは俺がびびりだからだ。
「驚かすつもりはない、取引をしたいと言ったら。」
「悪い話で無ければ良いですが。」
商談だった、内容を聞くと魔法の装備の購入と指輪の作成だった。
装備は対価を払ってくれればお売りしますと答えた。
商業ギルドを通さず裏で取引をしたい事と、 大量購入するので値引きを要求された事、2割安く売ることで話が付いた。
ただ、武器は神聖の属性を無料で付けるので、それが気に入らなければ武器の購入はご遠慮お願いした。
神聖属性の武器は悪の者が装備をするとレベルが1下がってしまう。
「どうしても神聖を付ける気か。」
「自分の作った武器で人が殺害されれば自分が殺したも同じと思っています。」
元いた世界では、ウィンチェスター製の銃で射殺された犠牲者の怨念がウィンチェスター家に呪いをかけて事故が続いた。
たとえ1%の犠牲者が呪ったとしても相当の数になるだろう。
俺はそんな風になりたくないので悪い事に使われないように神聖の属性を自分の店の武器には付けるようにしていた。
「分かった。」
あとは奇跡の指輪の作成を依頼される。
神の奇跡を体現する指輪だ、装備をした者は自分の望みをなんでも実現できるとんでもない指輪だ。
「その指輪を作るスクロールが不足しています。」
「奇跡のスクロールか、願望のスクロールです。」
「それは手に入れろと言う事だな。」
「話が早くて助かります。」
「もし良ければ教えてください。何で私の店の魔法のアイテムなんですか。」
「良いだろう。」
話の内容とは、盗賊団の内部に派閥があり1人の男が頭領の座を狙っている。
自分の直属の部下の装備を整えたいが強力な武器は防具は量と質の両方とも揃えるのは難しいらしい。
そういえば後の黒服のステータスを見るとタムールと同じように(ドン・ワルザーの従者)と表記がある。
人数を聞くと秘密だが武器防具は30組用意してくれと言われた、それで推測してくれと言う事らしい。
奇跡の指輪を手に入れる理由は若返りを望んでいるからだった。
最近盗賊団で命が狙われだした。ワルザーが70歳を超えてから高齢で能力が落ちてからだ。
「若返る事も出来るのですか。」
「上手く望みを引き出せばできる可能性はある、失敗すれば時間の進まない檻に閉じ込められたり、魂だけの存在になったり、不死の怪物になるかもしれん。」
「めちゃくちゃ怖いわ。」
いろいろ研究している最中のようだ。
「ここまで色々と話を聞いたからには裏切れなくなりましたね。」
ワルザーは怖い顔でニヤリと笑う。
「ですが、こうしてはどうでしょう、今の情報の対価に今朝作った武器と交換をしませんか、当然情報は誰にも喋りません。」
武器を渡す代わりに今回の話を断る道を残したかった。
フレイムタンダガー+5を机の上に置く。
ワルダーはピクッと一瞬動いた、確かに動いた。
「このダガーは合言葉を唱えると炎の光線を発射する事ができます、まだ改造中でして神聖の効果は付いてません。」
「見せてもらっていいか。」
ワルダーは手に取り鞘から抜くと、『ゴォー』と青い炎が立ち上る。
金貨を指で弾いて真っ二つにする。
「良い切れ味だ、販売価格を教えてくれ。」
「金貨100,000枚です。」
2秒ほど止まった後にダガーを鞘に戻して名残惜しそうに突き返してくる。
「このような武器は正式な対価で購入する。」
なかなか頑固な爺だ。
注文を受ける事を約束して開放された。
ベニーを返してもらいバニラに嫌味を言う。
「バニラに裏切られるとは思わなかったよ。」
「ちょっと待ってよ、裏切ってないわよ、荒っぽい事に成りそうだったから仲介役をしたのよ、良い商談だったでしょ。」
「仲介役なら先にこちらに話を通せよ。」
「何処か旅に出てたじゃない、それに他の派閥に目を付けられていて動けなかったのよ。」
「もうどうでもいいよ。」
シッシと追い払う。
「うっう扱いが酷い、ワルザー様の名前があればこの都市の何処に行っても怖くはないのに。」
とぼとぼと付いてくるバニラが少し可哀想になってきた。
なかなか会えない要人と縁を結ぶ事ができ、識別のマーキングもこっそり出来た。
何処にいてもマップで確認できるようになった、今でもワルザーと、タムールの位置がよく分かる。
「まあ、良い商談でした。」
「でしょでよ、もうスラム区を裸で歩いても誰もちょっかい出さないよ。」
切り替えが早すぎる、こいつを可哀想と思う事は今後無いな。
マップを確認すると、敵マーカが集まってくる。
一般人で混雑しているこんな所で戦うのか?
「ベニー、バニラこの先のスラム区まで全力で走れ。」
「えっ何、げっ囲まれそう。」
バニラはこの一瞬で敵の居場所を確認したようだ。
「何が誰もちょっかい出さないだ、いきなり敵襲じゃないか。」
「ごめん、元バカ上司みたい、向こうの派閥に鞍替えして手柄を探しているみたい。」
敵は一般人を巻き込む心算でこの場所を選んだのだろう。
こちらは人混みでは強力な飛び道具は使えない、接近されれば数で圧倒される。
飛んで逃げるにしても、狙撃部隊まで配置している念のいれようだ。
スラム区に突入する。
「これからどうするのよ、一番開けた場所まで移動すればいいのかしら。」
「それで行こう、「おーい、ここで商人様が貨幣をお恵み下さるぞ。早い者勝ちだ。」」
銅貨、銀貨をぶちまけながら走る。
何処からともなく大量の人が集まってきた、この騒ぎを利用して逃げる。
「くっそー、この乞食達どこから沸いて出やがった。」
大量の貨幣が道にぶちまけられて拾う人達でごった返していた、道をふさがれた盗賊集団はただでさえ狭い道を通るのもやっとだ。
「ボス、銀貨も落ちてますぜ。」
「お前らも拾ってんじゃねぇ。」
逃げられた事を確信したが追う事は辞められなかった。
ワルザーに解雇されたLv8盗賊は、向こうの派閥に鞍替えしたが何か大きな成果が欲しかった。
最近急速に売り上げを伸ばしたリク製作所の主人を拉致して時期頭領の所に連れて行こうと思っていた。
自分勝手な内容だが、リク個人にも恨みが有りこの機会を利用して憂さを晴らそうとも思っていたのだった。
飛行対策で弩兵を用意したのは無駄に終わった。
喧騒がだいぶ遠ざかる、広い広場に出たときには目標は見る影も無なかった。
はずだった。
「遅かったね。」
「おおっ。」
広場の真ん中で3人が待っていた。
待ち合わせ場所に待っている恋人を発見したような声を出してしまった。
広い所で待つとは素人め、思わず笑みがこぼれる。
「ドン・ワルザーの取引相手と分かっても剣を抜くのかな。」
「馬鹿め、あんな老いぼれ側に付いた事を後悔しろ、こちらの頭は時期シーフギルドの頭領だ。」
人混みを抜けたガラの悪い連中がどんどん集まってくる。
「抵抗しなければ痛い目に合わずに済むぞ。」
「降りかかる火の粉は振り払わなければ火傷をするわ。」
「バニラたまには良いこと言うね。」
「たまにって何よ。」
「俺を無視するな、野郎どもやっちまえ、殺さなければ骨の2、3本折っても構わない。」
こちらが動かないのでじりじりと距離を詰めてくる盗賊達、弩兵も構えたままこちらを狙っている。
10m以上近づいた所で3人は袋から人形を取り出し投げた。
サイ、熊、ライオンが現れる。
いきなり目の前にサイが現れた可哀想な盗賊は、昔俺が火炎瓶や酸をを当てたやつだ顔に火傷の傷が残っている。
サイの一突きで空中高く舞い上がり地面に落ちた、ピクリとも動かない。
熊とライオンは走って行き弩兵に飛び掛る。
ライオンに弓が当たるがそのまま押し倒され首根っこを乱暴に噛まれ絶命した。
熊は厚い毛皮に守られてダメージ無し、走る勢いのまま弩兵を強打すると半回転ほど回って動かなくなった。
2頭の獣は飛び道具を持つ兵士と、逃げ道を潰した。
「まだやるの。」
「五月蝿い。」
Lv8盗賊はリクに飛び掛るがいくら攻撃しても、見えない力場と飛んでいる盾に阻まれて攻撃が当たらない。
リクはフレイムタンダガーを抜いて切り付ける。
素人同然の攻撃をバックラーで受け止めると、そのまま左手が切り落とされた。
傷口から炎を吹き上げる盗賊を見ながら驚愕する。
「盾がバターにナイフを入れるように切れた。」
Lv8盗賊は傷口の火を消すために転げまわるそして。
「ぎゃわわ、あちーよ、いてーよ、待ってくれ、命だけは助けてくれ。」
周りを見ると9人いた盗賊は、バニラと3頭の獣によって6人が戦闘不能、弩兵は2人もピクリとも動かない。
残り3人は武器を捨てて同じように命乞いをしている。
「もう、倒れている人を連れて帰ってください。」
盗賊達の逃げる後姿を見ながらバニラがあきれた顔で俺に確認してくる。
「リク甘いんじゃない。」
「いいんですよ。」
「また狙われるわよ。」
「流石に3度目は許さないけどね、あんな人間でも何人も部下を連れています。きっと何か素晴らしい物を持ってるんだと思います。」
「そうかしら。」
「前の世界では色々な職人を相手に仕事をしてきました、お金に汚い人、借金まみれの人、何度も遅刻する人、忘れ物をして仕事が終わらない人達もいました。」
「そんなの周りにごろごろ居るわよ。」
「でも、何か良い所を1つは持ってました、だから一緒に仕事ができました。」
バニラは身に覚えがあるのか黙っている、少ししてから。
「まあ、リクがいいならいいわ。」
バニラは、フィギア袋をポケットに入れる。
「それ返してください。」
「いいじゃない、さっきのダガーも私に頂戴よ、くれたら私の体好きにしていいから。」
「ベニーが居るのに、誰がそんな痩せたつるぺたの体を欲しがるんだ。」
ベニーを後から抱きつき揉む、あんな所やこんな所を。
「あん、ちょっとリクこんな所で止めて。」
「リクの馬鹿、泣いてやる。」
泣きながら走っていった、嘘泣きだろあれは、だってフィギア袋を持ち逃げしやがった。
「ベニー、今日は豪華な所に泊まろう。」
「ごめん、あれ来ちゃったから。それでもいいかな。」
全然よくない、豪華な所に止まるのは中止、俺は宿に帰ってとっても不機嫌だったと誰もが証言した。
男なんてそんなもんだよね。
異世界冒険 69日目
取得経験点
経験値:1300を得た。
総計経験値:30546
ベニー Lv0→Lv2
― 次回 ―
次の日バニラとベニーが駆け込んでくる叩き起こされた。
「「ねえ、レベルが上がってるの。」」
「なんだそんな事か、もっと寝かせろよ。」




