第52-1話:ザナドゥの手記より抜粋
最近書き始めた「異世界モンスターvs超能力者」の人物が少しだけ出てきていますが、大勢に影響が有りませんので刑事コロンボの「うちのカミさん」程度の存在として読み飛ばしてください。
ザナドゥ手記より
ライア庄を訪れてからは驚きの連続であった。
少し前に訪れた村は町に発展していて、夜と朝とで全く別の顔を見せるも双方活気に満ち溢れていた。
創造の竪琴を完全に使いこなして強引に工事を進めているダークエルフがいる。
だがそれだけではこの発展は無い事はザナドゥには分かっていた。
『全ての解放者』の僧侶達が寝ずの秩序維持と、それを受け入れる地下住人の下地が出来つつある。
もう直ぐにでも夜の市場には自治という名の中枢が出来るだろう。
そして高価なアイテムを惜しげもなく貸す人物より強力な武器防具を借受けた。
魔法の品をそれまでの常識を覆る速さで作成する人物を最初は好きになれなかったが、今では歯に衣着せぬ物言いは心地よく深い洞察力には尊敬の念を感じるようになった。
定命の者は総じて短慮で刹那的だが、サウザンドやリクと同じ時間を過ごすのはエネルギッシュで胸が躍る。
エルフ達と過ごす何も変わらない日々は無限の時間の檻の中で少しずつ体が腐り落ちていくイメージを持って親に反発して旅に出た事を、そして出会った人々との別れはエルフの故郷に戻る理由になったことを思い出す。
チクリとした痛みを胸に抱えてエルフ村に戻るのだった。
行きと違い十分に休憩を取りながらの移動は2日の工程となった。
初日の夜の休息でも驚かされる。
見張りの順番を提案すると人間の女性は小さな模型を地面に置き大きな要塞を一瞬で作った。
ノームの魔術士は携帯要塞と教えてくれた。
合言葉を知らない者は中に入る事が出来ないので安全だと、女性は毛布を渡しながら教えてくれた。
瞑想をしながら今日の出来事を反芻していく。
次の日の工程も何も無く夕方を迎える、森は普段もよりも静けさを増して不気味だった、エルフのドルイドやレンジャーすら見かける事は無い。
空を飛ぶ魔法の絨毯は高性能で疲れ知らずだ、グリフォンの休憩が進行の足枷になっているぐらいだ。
高価な魔法の絨毯を一枚貸してもらうのを辞退したが借りれば良かったか。
いや、飛翔騎獣を飛行アイテムで運ぶなんて馬鹿な事をするのはいくらなんでもできない。
夜になり火を起こす。
干し肉を食べようと思っているとパンと手渡された、とても柔らかいパンで逃げ出した故郷を思い出す。
魔法の籠で食べ物を無限に取り出す事ができるようだ。
パンを食べながら焚き火を通して人間の女性を見る、美しい女性だった。
女性は魔法のアイテム『銀の匙』を出す、器からお粥のような温かい食料が湧き出てきた、肉食や草食と関係なく食べられるらしい。
その食料をグリフォンに与えていた。
生肉を用意してなく狩りもしていないのでグリフォンに与える餌が無い。
いくらなんでもこんな高級アイテムを使うのは勿体無い気がする。
聞くとわざわざグリフォン用に借りてきたと言う。
魔法のアイテムが便利品程度に使われる時代が来るならこの女性のような使い方になるのだろうなと思う。
遠くで何か音が聞こえる、急いで要塞の外に出る。
これはエルフの村の来訪者の人間が持っていた武器銃の音だ。
急いで出発をするがまだまだ遠かった。
しばらくすると村から火の手が上がるのが分かり内心焦りが生じる。
戦いの音が村に近づくにつれ大きくなる。
こちらに何か向かってきていた。
全員に注意を促し準備をすると6匹のコボルトがこちらに走ってきていた。
弓の付与効果を起動し3本の矢を素早く放つ。
3本の矢はコボルトに吸い込まれ爆発した。
正確には火と電気と聖なる光の効果が発動しただけだ、しかし、ここから見ると爆発したように見える。
女性も同じように矢を放ちコボルト2体を倒した。
止まった残り1匹をリザードマンが文字通り真っ二つに切り伏せた。
あまりの威力の高い武器の性能に驚く。
奥からまだ何か迫ってくるのを感じたがエルフのレンジャー達と分かり説明を聞いてさらに驚いた。
村の戦いは圧勝に終わり、レンジャー達はすでにコボルトの殲滅戦に入っていると言う。
しかも、レンジャーもドルイドも村での戦いに参加していないと言っているではないか。
サイキックという珍しい能力を操る女性が殆どコボルトを焼きつくしたと言う。
追撃に加わりコボルトのボスを屠り村に戻る。
一夜明けた村を見るが被害の少なさに驚きを隠せなかった。
本日はここで筆を置く事にする。
お読み下さいましてありがとうございます。
ふと気がつけば今年最終日でした。
それでは皆様、どうぞ良い年をお迎えください。




