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第52話:エルフの貴族

 朝日が昇る前、紫がかった空が段々青に変わっていく。

 夜の喧騒が次第に静かになって町は静まり返る。

 朝日が昇るにつれ少しずつ活動する人が増えていった、夜行性の住人との入れ替わりが行われる。

 昼の活気が町にみなぎる頃、一羽の大きな翼が町に影を作る。


 その影が村長の家に舞い降りた。

 兵士はその人物の顔を見ると中に入って行く。

 出てきたのはサウザンド卿だった。


「どうした、かなり急いでいるように思うが。」

「家の前にいきなりすまない、あとこいつに水をやってくれ、殆ど休まずに飛んできた。」


 グリフォンを撫でながら話すのは1人の青年、耳が長い事からエルフだろう。

 派手ではないが豪華な刺繍がされ上流貴族を伺わせる。

 グリフォンは首を下げて気持ちよさそうに撫でられている。

 サウザンドの指示で、直ぐに兵士が水場に案内する。

 ヒョコヒョコと兵士の後ろを付いて行くグリフォンは少し滑稽だ。


「ありがとう定命短き友よ。」

「ザナドゥと俺の仲じゃないか。」


 サウザンドとザナドゥは堅く握手を交わすとドアを開けて中に入るのを促す。




 飲み物を出され優雅に飲むザナドゥは同じように優雅にコップを置くと話し始める。


「コボルトの大群が村に迫っている。」

「確か、コボルトは森を挟んだ向こうに居るんじゃないのか。」

「最近坑道が作成されていた。村から近い場所だ。」


 目を閉じ考えるサウザンドに話を続ける。 


「放置するとこの町も脅威になるぞ。」


 サウザンドは目を開き警備所長に声をかける。


「すまんゾ・ルガを呼んできてくれ。大至急だ。」

「はっ。」


 兵士長急いで出て行った。


「ところで大群の見立てはどのくらいの規模だ。」

「群れの規模は800、戦闘員は半分として400だ。」

「嘘だろ。」


 椅子にもたれ天を仰ぐ。


「そういえば最近エルフの村に人間を迎えたそうじゃないか。」

「相変わらず地獄耳だな。」

「まあそれが本職でね、どのくらい使えそうか。」

「残念ながら未知数だ。」

「そうか、なら計算できる大きな戦力はドルイドとレンジャー達だけだな。」


 ゾ・ルガが来た所で出兵の話をする。

 民兵団員の召集をして35人、警備兵5人の40人をドラッデンヘイルから出そう。


「ゾ・ルガ領主の名で緊急依頼をかける。リザード兵を5人出してくれ。」

「分かった報酬を期待するゾ。」


 エルフの顔が曇っている。


「これだけでは心細いな。」

「バイオレットが居ないので俺はいけないが、パーティメンバーのサロックに声を掛けてみよう。最近研究所に引篭もりで望みは薄いけれどな。」


 ポンと手を打つ。


「俺も面白い人物を見つけた、声を掛けてみよう。」



・・・町外れ・・・


 帰る準備をして町を出かかった時に呼び止められた。


「すまないが領主様が呼んでいるので来てくれ。」

「俺達もう帰る所なのですが。」


 結局は領主の元に行く事になった。

 中では、サウザンドと金持ちそうなエルフ、警備所長、ノームのサロック、リザードマンのゾ・ルガがいた。


 ステータスを確認すると皆強い、特にレベルが高いのは、領主のサウザンドとエルフとサロックだ。

 特に気になるのはエルフで上級職の魔弾の射手レベル3を持ってる、レベルが高いやつらは上級職を持っていることが多い流行なのか。


「強そうな人が勢ぞろいですね。」


 呼ばれた理由を聞くとコボルトが大量に出現したので助力を求められた。


「うーん、助けたいのは山々ですが、ランスにも残した事が多いので勘弁して欲しいですね。」

「助ける力があるのに自分の事が一番大事か、人間らしいな。」


 エルフが鋭い眼光で睨む。


「人に頼む前に自分の手を汚さないのですか、この町は1500人以上住んでいるんでしょ。」

「エルフの村が抜かれたときにこの町で戦いをする。その為の人数も必要だ。」


 サロックがさらに説明を付け加える。


「確かに1500人居るけど老人や子供もいるので実際の最大動員数は3割かな。」

「周りの村落にも声をかけ兵の準備をしてもらっている。時間が稼げれば出兵できる訓練した兵は500人ぐらいだ。」


 サウザンドは続ける。


「訓練してない人まで集めると最大2000人は集めらると思うが被害や、補償が大変なのでそのカードは今回は切らない。」


 領主としては、まずはエルフ村で食い止めて時間を稼ぎ周りの村から兵を集めて準備をしてからコボルトを殲滅させる作戦らしい。

 それでも町が戦場に成ったときは、町人を戦闘に参加させて町を守ろうとしている。


「すいません、浅学で失礼な事を言いました。」

「リク私はバイオレット師匠の町を守りたいです。参加の許可をください。」


 ビッキーは俺に言う。


「私もビッキー手伝う。」

「メルカバはダメだ。まだレベルが低い。」


 メルカバの提案を切って捨てる。


「領主様、1人、2人増えても戦況が変わるとは思えません。」

「そうだな。」

「なので、ビッキーだけを参加させます。」


 皆の視線が痛い。


「ただし、俺はアイテムを一時的にお貸する事で助力をさせていただきます。」

「ふざけるな人間、自分は安全な所から高みの見物か。」

「黙れよエルフ、俺の店でも売ってない高レベルの魔法のアイテムを貸してやるって言ってるんだ。」


 後ろでゴゴゴゴーと音がするぐらい睨みあう両者にサウザンドが割って入る。


「見下した発言を止めろサナドゥ、リクも相当品に自信がある発言と取っても良いのだな。」

「もちろん、ただ危なくなった時はビッキーを優先的に逃がしてもらえませんか。」

「実際コボルトが最大数で押し寄せて来るなら、エルフ村は破棄して逃げる事になる。危なくなったら彼女を村人の護衛として優先的に逃がす約束をしよう。」


 ザナドゥも全員が死ぬまで戦う心算は無いのだろう。

 話がついた所でアイテムを取り出す。


耐雷自律付与ミスリルの大盾+4

神聖・爆冷・鋭刃付与の薙刀+5 


 をゾ・ルガに渡す。


耐雷自律付与ミスリルの大盾+4

弓上達付与の敏捷の手袋+6


 をエルフに渡す。


鎧の鉄甲+8

呪文反射・着陸付与の防御の指輪+5


 をサロックに渡す。


 サウザンドは俺にはという顔をするけど戦闘に行かない人には無いよ。

 サロックは嬉々としてアイテムを受け取っている。

 エルフとゾ・ルガは、ぽかんとしているが付与している効果の起動方法を聞いてから青くなる。


 サウザンドとサロックは鑑定のスキルを持っているようで大体のアイテムの価値を見抜いていた。


「見た目や装飾はシンプルだがこれかなり強力な魔法のアイテムだよな。」

「シンプル?そうかな。」

「リクの作るアイテムはシンプルすぎて装飾としては人気がありません。高価な魔法のアイテムは見た目も派手な装飾が施されている事が多いです。」


 マリーヌが横で補足してくれる。


 日本刀とかシンプルでもカッコいいと思っているのだがね。

 もう1つの理由は、最低でも3個同じ装備が出来るので同じ凝った装飾のアイテムが沢山並んだら有り難みが無いので出来るだけシンプルにしていた。

 今度から刃物だけ作って柄や鞘は外注に出すとするか。


 エルフも驚く。


「+5の武器って初めて見たぞ、何となく強い強化が掛けられているのは分かるが。」

「まあ、うちのメンバーの装備を揃えたときの余りですけど終わったら返してくださいね。」

「「余らんだろ。」」


 盛大な突込みを受けたが無視してビッキーに。


追加攻撃・遠距離・誘導・神聖・火・雷付与コンパウンドボウ+1

鋭刃付与矢+5

魔法の絨毯


 を渡す。


 ビッキーに付与効果の起動の合言葉を教えるとエルフから物言いが付いた。


「何だこの機械仕掛けの弓は、それにどんだけ付与効果が付いているんだ。」


 ガシッとビッキーの腕を掴んでいる手を払い退けながら。


「ペッペッ、気軽く俺のビッキーに触らないでください。コンパウントボウってやつですよ、滑車の効果で少ない筋力で強い弓が引けるんです。」

「私の分もないのか。」

「もう装備2つ渡してるでしょ、それに貴方魔法の弓必要ないんじゃない。」


 サウザンドが割って入る。


「リクって人のスキルとか分かるよな。」


 あれ?何処で間違えた俺のステータスを見る能力を推測された。

 適当に誤魔化す事にしよう。


「職業柄見た物品の能力ぐらいなら見えますが。」

「それだけではないよな。」


 こいつ鋭いな。


「まあ、職業とかも分かります。」

「僕はそんな特殊な職業は聞いたことがないね。」


 サロックは言う。


「錬金術士の上級職ですよ。」

「下位職は専門職の錬金術士か。」

「いやそれしか持ってないですよ。」

「おいふざけるな、上級だけを取得とか不可能だし。」

「たまたま取得条件を満たしてたんですよ。」

「大体専門職の上級職なんて聞いたことが無い。」

「それは、製作だけではレベルがなかなか上がらないからでしょ。」

「リク分かるように説明してくれないか。」


 これまでの経験から『経験値保存の法則』を持論で考察していた。

 この世界の生物は肉体や精神の強化に経験値を使い強くなり、敵を倒したときに経験値の一部が得られるのではないかと思っていた。

 この事を説明して、物を作ったり研究する事でレベルを上げるより怪物と戦い経験を積んだほうが早くレベルが上がると教えた。

 皆身に覚えがあるようでぶつぶつ呟いている。


「どのぐらいでレベルが上がるか分かるか。」

「ゴブリンや、巨大ラットなら1人で10匹ぐらい倒せば上がるんじゃないですか。」

「レベル1でそれだけ倒すのは難しいか。たぶん5人に4人は死ぬな。」



 話が逸れたので元に戻す。

 エルフの説明では、魔弾の射手という職業は矢に強化ボーナスを付けたり呪文を載せたりできる。

 あともっとレベルが上がると遮蔽の後敵や、壁抜けの矢を放つ事が出来る。


「俺の中では必要のない上級職な気がします。」

「この上級職を手に入れてから初めて言われたな。」

「だってそうでしょ、貴方の持っている弓すでに+2の強化ボーナス持ってますから、いま魔弾の強化ボーナスは幾つですか。」

「矢に+2相当の強化ボーナスを付けられる。」

「でしょ無駄にダブっている、俺なら防具にお金をかけるね。」

「レベルが上がれば障害物の後も狙えるが。」

「付与効果で代用が出来ます。」

「壁抜けの矢もあるけど。」

「それも付与効果で代用が出来ますね。」

「うっ、矢に呪文を載せて飛ばせる。」

「あんた魔術師レベル1でしょ何の呪文を矢に乗せるの?ひょっとしてスリープですか、俺なら寝た仲間を起こしてお終いですよ。」


 俺の思うに魔弾の射手は罠職なんだ。

 レベルが上がると自然とお金も稼げるようになる、良い装備を揃えるので矢に強化ボーナスを自力で付ける必要は無くなる。

 呪文を矢に乗せて届かせる能力も魔術師レベルを上げないと強力な呪文が無いので必要ない。

 強力な呪文を得るために魔術師レベルを上げると戦士としての能力が上がらないので中途半端になる。


 ちょっと耳が下がり涙目に見える、少し可哀想になってきたかも。

 同じ弓を取り出しエルフの顔に叩きつける、反射的に弓を掴んだ。


「貸すだけですからね返してくださいよ。」

「この装備は売っているのか。」


 宣伝文を指しながら。


「欲しくなったらこの弓に書かれた店に居ますので尋ねて来て下さい。」

「宝石やなど物納でもいいのか。」

「それだけの価値がある物なら良いですよ。」


 エルフはぐっとガッツポウズする物納する宛があるのか。


 喧嘩になると嫌なので、サロックに

隠身・飛行・抵抗+5付与の魅力のマント+6


 ゾ・ルガに

呪文反射・着陸付与の防御の指輪+5


 を渡した。


 あと、兵士達にロングソード+1、チェインシャツ+1、木製大盾+1を45セット作る。

 回復薬は全員1本ずつ渡るように50本ほど作成し机に山積みした。

 今回はそこそこ装飾にも凝った作りにした。


「用意が良いな。」

「今作りましたから。」

「四角い光るの見てただけだろ。」

「俺が作るんのではなく俺の能力で出現させた錬金機器が作るんですよ。それを起動させて今作ったんですよ。」


 サロックが楽しそうに笑いながらサウザンドの背中をバンバン叩く。


「研究より面白そうだろ。」

「兵士の装備だけでドラッデンヘイルの3か月分の予算になるんだが。」


 暗くなったので次の日にエルフの村を目指す事となった。

 次の日ビッキーを見送る。

 魔法の絨毯でビッキーとサロック、ゾ・ルガ、グリフォンにザナドゥが乗り出発する。

 兵士達は4日後にエルフ村に合流する事になった。


「ビッキー俺達は先に帰るから終わったら寄り道せず帰って来いよ。」

「はい出来るだけ早く帰れるように尽力します。」


 俺達は結局ランスに着くのに6日必要になり大幅に当初の予定より大幅に遅れてしまった。



異世界冒険日67目

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