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第51-1話:おぼえていますか

 宿の女中に高い酒とつまみを作ってもらう。

 この宿は夜の方が従業員が多いみたいだな、嫌がらずに作ってくれたのでチップをはずんだ。


『コンコン』

「全員いるか。」

「何かありましたか。」


 マリーヌがドアを開けて顔を出す。

 酒とつまみを渡して去ろうと思ったが部屋に引き込まれた。


「女性の部屋に入っていいのかな。」

「リクなら別に問題ないわよ。」

「じゃあ俺も少し飲むか。」


 飲み始める。

 メルカバは酒が好きなようだな、上機嫌だ。

 マリーヌはちびちび飲んでいる。


「メルカバはまだ若いからそんなに飲んじゃダメだよ。」

「何を言う、普段は飲んでない。リクの警護が大事。」


 メルカバは普段から俺の警護のため気を配っているようだ。

 常住戦陣ってやつだ。


「いつもありがとなメルカバ」

「なら、私の子供を」

「却下、この世界に留まるかも分からないからそんな無責任な事はできない。」

「私の寿命は長くない。」

「おい、何を言っている?」


 よく話を聞くと、ハーフオークのメルカバは人より早く歳を取るので早く子供が欲しいと言われた。

 長くても50才でどんなに長生きでも70才以上生きている人を見たことは無いとか。

 人生50年か、昔の日本人みたいだな。


「もう1、2年待って欲しいかな。」


 話を濁しておいた。

 静かな曲を流していた竪琴のライアが。


「さっきまで、メルカバもマリーヌも一言も喋らないのよ何か言ってやってよ。」


 ナイスだライア、話題を変えよう。

 俺はメルカバの話を聞いていたマリーヌが少し嫌な顔をしたのを見逃さなかった。


「マリーヌはメルカバの事が嫌いなのか。」


 100%直球勝負だ、酔っているので気もまわらん。

 マリーヌはちょっと驚いた様だがポツリポツリと話をする。


「私も半分人間の血が入っています。」


 そして昔話を始めた。

 父は漁師です、母とは海で出会って一目惚れしたと聞いています。

 母はアクアエルフという水に住むエルフです、父の情熱に負けて結婚したと聞いています。

 結婚したといっても住む場所は陸と海と違い反対する者も多かったと聞きいています。

 私はエルフと人間の子供です、母の元では水中でも呼吸できる魔法のアイテムを常に身につけ暮らしていました。

 物心が付くまでは、父の元と母の元を行ったり来たりと楽しく暮らしていました。

 父も母も仲がよく一緒に居る事も多かったです。


 でも、私は段々自分が他の人と違う事に気が付き始めました、ここからは私だけの話です。


 人間の村では同い年の子供は成人に成り、成長の遅い私は新たな子供達と友達になりましたが寂しかったこと。


 エルフの村の子供は逆に全然大きくならなく私の体が大人に成長しても幼いままだったこと。

 エルフの同じ様な歳の若者達は仲間として接してくれたが自分だけが先に年老いる事が恐ろしかったこと。


 母を非難した事もあったが、母は「ごめんね。」と一言だけ謝ったこと。


 私が成人を迎えるとき父は老年でまだ若い母と幸せそうに寄り添っていたのを見て村を飛び出したこと。


 飛び出した先は小さな町、そこで旅の商人を見つけて護衛として雇ってもらったこと。

 魔法と鋭敏な感覚は旅に非常に役に立ち、それから各地を旅したあと様々な種族がいる城塞都市ランスに永住する事を決めたこと。


「父と母はきっと今でも幸せだと思います、でも私が母より先に老いて死んでしまうのがとても怖く飛び出したんです。」


 マリーヌは涙を流しながら


「メルカバの話を聞いてそれを思い出してしまったの、ごめんなさい。」

「私気にしない、マリーヌの事好きだ。」

「ありがとう、私も私の父の様に力強く生きている貴方が好きよ。」


 竪琴のライアはハラハラ泣いている。

 俺はビッキーの腕を取り外に連れ出す。


「ちょっと夜のデートをしようか。」


 ビッキーをお姫様抱っこして飛行のマントの効果を発動する。

 夜の街の明かりが小さく小さく見える、宝石箱の宝石の様だった。

 離れた所から見ると、この町は活気がある事がよく分かる。


「おぼえていますか。私を助けてくれた時もこの格好でしたね。」


 目と目が会う。


「ああ、そうだったな。」『ゴー』「風が吹いてきたな少し寒いかな。」

「おぼえていますか。手を手を取り合い逃げた時を。それは私にとって始めて愛の・・・少し寒いです私を暖めてください。」


 握ってくる手を握り返し強く抱きしめる。


「私は貴方を愛しています。」

「助けたからって俺に囚われなくていいよ、好きに生きてくれ。」


 ビッキーの目から大粒の涙が流れる。


「えっ、ちょっと待って泣かないで、話を聞いてくれるか。」


 こくんと頷く。


「俺がこの世界に来たときの話だが、文字通り裸一貫だったんだ。」


 綺麗な目が俺を見ている、近いどきどきする。


「そのときに助けてくれたのがスプモーニや、スカーレットだったんだ。」

「もしスプモーニが服をくれなかったら門をくぐることも出来なかっただろうし、彼は俺の身元も保障してくれた。」

「スカーレットにしても色々くれたし店の一角を貸して商売もさせてくれた。」


 美しい瞳に吸い込まれそうだ、くらくらする。


「ビッキーもし裸の男がいきなり現われたら助けてくれたか。」

「俺もビッキーを助けたのは自分に余裕が有った時だし、スプモーニの様に助けられるか自信がない。」


 お互い無言で見つめ合う、一瞬だが俺には長い時間に感じられた。


「だから、ビッキーにはもっと相応しい人が現われるかもしれない。」

「そんなことは・・・。」

「ビッキーに相応しい人が現われたら俺は祝福するし、現われ無かったらそのときは美味しく頂きます。」


 お尻をもみもみする。


「きゃ、いつもスケベなんだから。」

「メルカバじゃないが人間の人生は短い、色々試して悔いの無い様に生きよう。」

「リクありがとう、あなたがいるから私・・・。」


 あれ?、唇が近づく。

 軽く唇が当たる。


「ヒョーょーぉぉぉ。」


 理性を保てなくなりそうなので手を離した。

 凄い勢いで落ちていくビッキーまさか異世界でもドップラー効果を聞けるとは思わなかった。

 でも女の子の悲鳴が「ひょー」は無いわ。

 着陸の指輪の効果で死なないと思うが大丈夫かな。

 とりあえず何も見えないので戻ろう。


 宿に戻ると、体中に枝や葉を絡ませたビッキーが待っていて殴られたしかもグーで。


「死ぬかと思ったわ。」

「着陸の指輪の効果で死なないでしょ。」

「初めての時も落とされたのを今思い出したわ。」


 マリーヌやメルカバ、ラントまで見にきた。


「ひっく、どうした。」

「ちょっと聞いて、リクが上空から私を落としたのよ。木に突っ込んでこの姿よ。」

「あれ、リクさん口紅ついてますよ。」

「え、どこに?」

「えーと・・・唇です。」


 少しの沈黙の後、皆の視線が俺とビッキーに注がれる。


「メルカバ、ビッキーを確保。」

「ラジャー。」

「ちょっと何よ急に2人共仲良くなって、きゃ、離しなさいよ。」


 ビッキーはメルカバの肩に担がれてマリーヌと部屋に戻っていった。 


「俺達はゆっくり寝よう。」

「そうですね。」


 隣の部屋では遅くまでビッキー達の話し声が聞こえてきたとラントに言われたが、俺は熟睡して知らなかった。

 呪文職は呪文の使用回数を戻すため寝るのも仕事だ。

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