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第43話:ダークエルフ

「なんだか城の中が騒がしいですね。」

「戦争準備中だからじゃな。」


 応接室のような所で待つ、紅茶のような飲み物が出る美味いなこれ。

 少し待たされてから王の間に通される。

 皆膝を付き頭を垂れる、俺もそれに倣う。


「そなたが、オークの一団を壊滅したリクか。」

「は、囚われた人達の救出に向かったところ成り行きでオークと戦闘になりました。」

「我はオーク150体を全滅させたなど信じていないのだが、証明できるか。」


 まあ普通はそうですよね、6人で150体を相手にできるわけ無いもんね。


「俺達は卑怯にも寝込みを襲いました。」


 副将軍が助け舟を出してくれる。


「彼は、驚くほど素晴らしい魔法のアイテムを作成しております。」

「そうか、我を驚かせることが出来たなら褒美を取らせよう。」

「は、では近いうちに何かご用意させていただきます。」

「オークの一団を退けた褒美を取らせよう、金貨を受け取るが良い。」

「有難き幸せ。」


 オークの撃退はちゃんと報酬を貰えるのね。

 ステータスの確認をして分かったのだが、こいつ王様の影武者なんだよな適当に話を合わせておこう。

 お姫様は本物なんだよな。


 ちょっと挨拶しておこう。


「お願いがございます、我が製作所で作った品を美しい姫に謙譲させてください。」


 預けていたバックより短剣を取り出し副将軍に渡す。

 神聖・鋭刃・防御・触霊・ダガー+5のアイテムだ。


 副将軍は瞬時に短剣の価値に気がつき一瞬止まった。

 副将軍は姫に短剣を差し出す。


「この短剣が悪を打ち払い姫の身を守ることになればと思い贈ります。」

「心遣い感謝します。」


 どうせ売れないなら誰かに贈っても問題ないだろう。

 あとで王様がアイテムの価値に悔しがればそれでいい。


 王との面会は終わり将軍の掛け声で会議室に移動になる、これからが本番で実務会談ですとキャッシーが助言してくる。


「キャッシー俺関係なくない。」

「このメンバーに加われるだけでも名誉な事なので居てください。」


 そのあと、小さく「私のためにも」と付け加えられたので従った。

 キャッシーは一族を復興するコネが欲しいのだろう。

 長い会議の内容はぶっちゃけ、オークの動向だった。


 俺は関係ないと思って半分聞いていなかった。

 暇なのと、マップが広がった事もありオークを検索していた。

 お、エネミーマークここ多いな、範囲選択、数オークと、3000体と標示される。


「リク殿はどう思いますか。」


 急に聞かれたので何を答えればいいか分からなかった、キャッシーが小声で教えてくれる。


「オークについてです。」

「えーと、3000体のオークの食料は何処から出るんでしょうね。」

「何を言っている?」


 オークが3000体集団で集まっている事をポロと言ってしまった。


「そのぐらい集まると補給はどうなるのかなと。」

「続けてくれ。」

「オークの集団は戦闘要員の比率が多すぎます、普段は自分達で食料を採るのでしょう。」

「ふむ。」

「大量の兵が集まり戦闘になったときは何処で食料を手に入れるのでしょうか。」

「現地調達だろうな。」

「では、戦争が起こる前に農村の人を避難させて食料などを全部撤収してはどうですか。」

「2万の人々を避難させるのか。」

「確実に効果があると思いますよ、戦争が終わってから食料や資金の援助を行えば損害はぐっと減ると思います。」

「そんなに上手くいくのか。」

「それは、将軍のお仕事です。敵が攻めて来たら抵抗しながらどんどん引けばいいんです。後は突出した部隊と、兵站を破壊しまくればライセンの町に来るまでにだいぶ弱るか離反者が出ると思います。」


 こんな感じで俺の発言は終わった。


 俺が礼儀作法を知らないので立食形式での食事を開いてくれるようだ。

 キャッシーが俺用に服を借りてきた。

 天使の鎖帷子は服の下に着れるほど薄いので便利だな。


 問題は女性用ドレスだな、冒険者装備を脱がなければいけないので、俺が細工しよう。

 魔道師のローブを作成する、形状のタブをタップすると、魔法少女風、ドレス風とか出てくる。

 ビッキーに魔法少女風の格好をさせたら可愛いだろうと思ったが怒られるので止める、緑を基準にしたドレスを選択する。


 Lv0呪文を使って成功率をあげる。スロットを回しドレスが3着できる。

 ビッキーに1着渡す。


「このドレスは魔法で強化している、使ってくれ。」

「ありがとうございます。」


 キャッシーには魅力+4の効果をドレスに付与して渡した。


「ブサイクだからこれでごまかそう。」

「面と向かって言われると殺意を覚えます。」

「ごめんごめんそこまでブサイクではないよ、ちょっと目が離れてるとかちょっと全体のバランスが悪いとか歯並びが残念とか。」

「もういいです、夜泣きます。」


 立食パーティは盛大に行われた。

 キャッシーはこれでも盛大では無いと言っているが俺にとっては盛大なパーティだ。

 ドレスを着て化粧をしたキャッシーは驚くほど綺麗になっていた。


「綺麗だな。」

「えへ、このドレスの効果ですね。」

「孫にも衣装か。」


 俺の足を踏んで何処か行ってしまった。


 その後、俺は来る人来る人と挨拶した。

 グラバー商会のグラバーさんもいたので少し話し込んだ。

 俺はダンスに誘われないように皿に食べ物を山盛りにして、グラスを常に放さず行動していた。


 ビッキーはすっごい綺麗な人と話し込んでいる。

 いいな、紹介して欲しいなと思っていると連れてくる、ナイスだビッキー。


「こちらの方は私の先生で、ノーマジーン女史です。バードの腕前が凄いだけでなく僧侶としても活躍して、貧しい人々を救っている凄い人です。」

「よろしく、アルトシュタインから招かれております。」


 エルフの洗練された動きでグラスを上げる。

 この人が借金で苦しんでいるベニーにバードの技術指導をしたようだ。

 マルチクラスのようだな、バード7Lv、僧侶1Lvか、あれちょっとおかしいな。


「バイオレット・フォスフォラスって名前じゃないの。」

『ぶっ』


 綺麗にワインを被った。白ワインでよかった。 

 えっえ何々と挙動不審のビッキー。


 ノーマジーンは俺とビッキーをテラスに連れて行く。


「参りました、初見で正体を見破られるなんて。」

「あと、エルフはエルフでもダークエルフですよね。」

「そこまで見破られているとは、確かにダークエルフです、ビッキー騙すつもりは無かったのよ。」


 ビッキーは身構える。


「どうゆう事ですか。」

「ここからは私が話をしよう。」


 後から副将軍が現われる。


「彼女はドラッデンヘイルまたの名をライア庄の村長だ。」


 ドラッデンヘイルとは、アルトシュタイン王から土地を貰った英雄が統治している領地の事だ。

 村の名が残っているのは名残で、現在は地下ノームやリザードマン、北の蛮族バーバリアン達が流入して小さな町に成っている。

 付け加えると、非常に珍しい人口構成をした町だ。


「領主の名前はサウザンド・サウンド卿、この女性はサウザンドの腹心で村長をしているバイオレット。」

「昔から潜入や調査など1つの場所に留まる事を知らない男だからほぼ村の統治は私に丸投げなのよ。」


 現在は仲間と何処かに冒険に出て帰って来ないと笑った。何故か耳が痛い。


「私の崇める神の名は『全ての解放者』ダークエルフの開放を目指す神官よ。」


 寂しそうに、


「ダークエルフが統治していたら皆どう思うかしら。」


 ビッキーが肩を落す。


「私もダークエルフという先入観だけで判断していました。」

「だからエルフとして姿を偽っているの、ごめんなさいビッキー。」

「この事を知っているのは一部の者だけだ。」


「その村長さんが何でいるんですか。」

「1つは、私を追って来た蜘蛛人の確認。」

「2つは、シェルの町周辺で頻発している行方不明者の調査。」

「3つは、虐げられた者に救いの手を伸ばすため教義的な理由よ。」


「蜘蛛人って、俺が倒した。」

「そうよ、確認させてもらったわ、幼馴染だったのよ。」


 ダークエルフの信仰する神『蜘蛛の女神』は悲劇的な信託を好む、今回は幼馴染に裏切者であるバイオレットの抹殺クエストを授けた。


「追手の彼女を倒して地上に出ることが出来たわ、クエスト失敗で蜘蛛人にされるなら私の手であの時殺せばよかった。バードの腕を比べあってお互いを高めた仲だったのよ。」


 ツーと涙を流す。

 幼馴染が持っていた竪琴を見せてくれた、蜘蛛の女神のクエストを受けるときに授けられたアイテムだろう。


「創造の竪琴よ、様々な物を作ることが出来るわ。」


 幼馴染は竪琴を使ってトンネルを掘進み逃げるバイオレットを追い詰めたようだ、それを返り討ちにして竪琴を奪って逃げた。

 その後は共に冒険をしたサウザンドを頼って現在に至る。


「行方不明者は現在捜査中よ、幅広い種族で行方不明者が出ているの。」

「屈強な種族や、美しい者が狙われる傾向にある。」

「敵は賢く手がかりを殆ど残してないのよ。」

「そうですか、我々も気をつけます。」


 マップを確認すると、地下道に3体のエネミーマークがある。

 かなり地下深くに居るのでもう脅威は無いだろうけど、連れている人のステータスを確認すると催眠状態や魅了と成っている。

 恐ろしいのは、地下深くに1000体以上の同じ種族がいる。


「何か心当たりがあるのか。」


 副将軍こいつ異常に鋭いな。


「奴隷を集めてるなら、目的を果たして帰った可能性も有るのでは、行方不明者は減ってませんか。」

「確かに最近は行方不明者が減ったんだよ何故知っている。」

「か、勘かな。」


 大丈夫かこの国、あちらこちらに大量の邪悪なモンスターが生息しているぞ。

 話題を変えよう。


「王を驚かせる事を一緒に考えてもらえませんか。」

「いいだろう。」

「議会派の副将軍も紹介してください。」


 パーティ会場に戻り議会派の副将軍を紹介され握手をする。


「ノーテン・ノートンだ。」

「リクですよろしくお願いします。」


 副将軍2人と話をする、途中で将軍も加わり誰も近づけない雰囲気を出している4人組、「ふ、ふ、ふ」と笑いが聞こえるようで、皆遠巻きに見ていた。


「では、明日早朝に伺います。」

「そんな早くに間に合うのか。」

「楽しみにしていてください。」


 馬車を用意してもらい宿に帰った。


「「どんな悪巧みしていたのよ。」」

「明日の昼には分かりますよ。」


 部屋に戻りスロットマシーンに座りチートアイテムを作る。




異世界冒険日37目

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