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第36話:救出

 朝になり、新しい武器を作成する。


 Lv0呪文を使いリール全部を成功にしてライトニングジャベリンを15本作成した。

 こいつは使い捨てのアイテムで投射すると雷に変化し敵を貫く。

 ボニーは両手持ちのスキルがあるので、2度投射できるので作った。


 魔法の矢筒の中に収納して渡す。

 この矢筒は、矢を60本とジャベリン程度の物は20本、弓は3本入れることが出来る。

 好きなものを念じるだけで取り出すことが出来るので、便利なアイテムだ。


 金貨1800枚と魔法のアイテムにしては安いので人気商品だった。

 この魔法の矢筒は数多く作ったので売れ残りも多かった。

 安いと言っても家が建つ値段なので一般人には手が出ない商品だけれど。


「この矢筒欲しかったんだありがとう。」


 ボニーは満面の笑みで俺を見る、いやいや照れる、惚れてまうやろ。

 火玉の数珠をベルトに通しながら。


「この玉を投げると爆発する自分の近くでは絶対使うな。」

「はい。」

「炎の呪文を食らうと暴発する可能性があるので、魔術師が居たら異次元バックに直ぐしまえ。」

「はい。」

「基本的に不可視の指輪を常時使うこと。」

「はい。」


 なんか父親になった気分だ。

 よし、出発しよう。


 一番太陽が高い所で、オークの集団に近づく事が出来た。

 魔法の絨毯を丸めてリュックに入れる、このリュックは某猫型ロボットの4次元ポケットみたいに40Kgまで物が入るので本当に便利だ。

 うちのパーティは全員このリュックを装備させている。


 不可視の指輪を起動してオークの集落に入る。

 作戦開始前に決めていた地点に合流する。


 夜行性のオーク達は寝ているようで、外には兵士が20人見回りを行っている。


『ボニーいるか。』

『はい、ここにいます。』

『鍵を開けてくれ。』

『はい・・・・失敗しました。』

『まあいいちょっと離れて。』


 ダガー+5を取り出し錠前を切ると真っ二つになった。

 凄い切れ味だな。


 中に入ると女性が9人いた、種族は8人がヒューマンで、残り1人はハーフオークだった。

 しかし、衛生状態が悪いな掃除もしてないようだ、不可視の効果を解除する。


「助けに来ました、静かにお願いします。」

「本当に助けに来てくれたの。」

「この指輪を使えば見えなくなります、オーク達は寝ているので、脱出はそんなに難しく無いです。」


 指輪を渡しながら使用方法を1人1人教えていく。

 1人貴族の職業レベルを持っている女性が話かけてくる。

 歳は20代前半、少々キツメの顔つきに金髪だが、容姿はお世辞にも良くはない。

 ステータスを見ると知力8と魅力8以外は実に優秀だった。


「なぜ危険を冒して助けに来た。それにここから先は逃げ切れるのか。」

「魔法の絨毯がありますので、飛んで逃げられます。」

「感謝する。」

「女性達の脱出を貴方に頼んで良いですか、俺達は馬など移動手段をつぶしてから合流します。」

「良いだろう、武器は無いか。」

「ロングソードかダガーどちらでも使ってください。あと、攻撃すると不可視の効果が切れるので戦闘行為は最後の手段ですからね。」


 女性はロングソードを選んだので、炎の効果を使用する合言葉を教える。


「魔法の武器なのか。」


 驚いた顔をしたが直ぐに女性達に指示を出して移動する。


「あれ、ハーフオークは。」

「歩く事が出来ないので、私では連れて行けないと判断した、1人では運べないから申し訳ないが。」


 歩けない?このハーフオークをスカウトしに来たので問題大有りです。

 奥にいるハーフオークを見ると酷い。

 これが人間のやる事か(オークだけど)と沸々と怒りが込み上げてきた。


 手には穴が直接あけてあり、鎖が通されて吊るされている。

 足は枷が嵌めてあり、こちらも直接足に留めてあるので身動きが出来ない状態だ。

 ぐったりと動かない、気絶でもしているのか。

 体格は大柄で200cmを越しているし、筋肉の付き方やが凄い、ボディビルダー真っ青だな。

 顔も体も均整が取れていて美しい。

 前回見た男のハーフオークの容姿が酷かったから余りのギャップに驚いく。

 ステータスを確認すると、魅力15ってうちのパーティでもトップクラスだ。


「この子はメルカバて言うんだ。」

「これは酷いな何故助けない。」

「助けると、オークに同じことをされるからよ。それで感染症を罹り死んだ者もいる。」


 死んでしまったのはメルカバの母親らしい。

 そして、メルカバは反抗的なので、動けなくさせているようだ。


「ハーフオークは妊娠しにくいので、ここのオークボスに毎晩のように恥辱を受けているのよ。」

「なんだそれ、人権侵害も甚だしいじゃないか。」

「私達だって同じなのよ、無理やり連れてこられてボスの妾にされているの。」


 俺の中で何かが切れた。


「俺がこの子を運ぶし、オーク達は許さん。」


 鎖を切り足の枷も外す。

 お姫様抱っこをして運ぶと、メルカバの目が開く。


「お前、だれ。」

「助けに来た、ポーション飲んでおけ。」


 ポーションを無理やり口に突っ込むと足と手の傷が塞がり、少し元気が出たようだ、そして疲れからか眠ってしまった。

 全員が不可視の効果を起動してから外に出る。

 囚われた女性達の遠ざかる音が聞こえる。


「プランBでいくぞ。」

「はい。」


 プランAは不可視化して逃げるだけのプラン。

 プランBはオークの住居を爆破するプラン。


 オークの住居は大きなテントと、竪穴式住居だった。

 テントはモンゴルで持ち運びが出来るゲルに似ているな。


 二手に分かれて爆破する。

 火玉の数珠から玉を取り出してテントの中に投げるとテントが爆発した、少し離れた所でも爆発音が聞こえる。


 6個目を爆破した所で、大混乱が起こる。

 向こうでも火の手が上がっていた。

 マップのエネミーマークに多数の反応あり、オークメイジと戦士の一団が接近してくる。


「マリーヌ、オークの魔術師が来るぞ一旦消えろ。」


 指輪の効果で姿を消す。

 オークの魔術師が射程に入ったところで、稲妻の杖の効果を使用する。

 今回は1週間に1度使えるチェインライトニングを使用した。


 ライトニングが目標に当たると3本に拡散してオーク達を焼く。

 念を入れてマリーヌと2連続で使用したので前方のオークは全滅した。

 脅威となる魔術師も同時に排除したので強そうな敵の残りはオークのクレリックとボスだ。

 マップを見ると向こうのチームはオーククレリックを排除していた。


「私の王子様。」

「ん、起きたか歩けるか。」


 巨人の力+6の効果で左手だけで抱えてはいるが軽くは無いのだよ、重さで移動スピードも落ちているし。

 メルカバは、よろよろっと残念そうに立ち上がる。


「何か武器、貸して欲しい。」

「この数珠を使え、投げると爆発する。」


 予備の火玉の数珠を渡す。

 メルカバは、近づくオーク達に玉を投げてどんどん倒していく。


 明らかに装備が違う戦士達がこちらに向かって来ている。

 その中に一回り大きなオークがいる、オークボスだ。

 オークボスの矢がメルカバを狙う、俺はメルカバの前に立ち矢を防いだ。


「痛い痛い。」


 防御の指輪と天使の鎖帷子の防御力で貫通は無いが、矢が当たった所は内出血に成っているだろう。

 オークボスは弓を捨てて走ってきた全力ダッシュだ、魔法の靴を履いている俺並に早い。

 大きく雄たけびを上げると一回り体が大きくなった気がする。


 火玉を3人で投げてボスの取り巻きを吹き飛ばすが、ボスだけは全部をレジストして俺の前に立ち塞がる。

 俺はレベル10をなめてました。


「2人とも下がれ。」

「人間殺す。」


『ゴバァッ』と音とともに大きな斧が横なぎに迫ってくる。

 魔法の力場を易々と砕き俺のわき腹を薙ぐ。


『ボキボキ』鎖帷子のおかげで、胴体が真っ二つに成る事は無かったが、アバラが折れた。


 息が出来ない、1歩下がって袋からフィギアを取り出す。

 熊のフィギアを前に放ると大型の熊が出現した。


「オークボスを止めろ。」


 熊はオークボスに両手を上げて威嚇する。

 オークボスは一瞬うろたえるが、熊を無視して俺に向かって来た。

 熊はオークが横を抜けるときに攻撃を加えそのまま組み付く。


 グリズリークラスの熊に組み付かれてはオークと言えど大人と子供の相撲のようだった。

 マリーヌもフィギア袋から取り出したサイを前面に出し威嚇させている。


 メルカバは押し寄せるオーク達に火玉を投げて爆破する。

 俺は、ポーションを飲んで一息ついた。


「グオーォー。」


 げっ、熊の組み付きを振り外しやがった。

 俺に突っ込んでくるのは、執念なのか一矢報いるつもりなのか。

 だが、攻撃が直線的過ぎるので余裕で斧をかわす。


 斧を再度振り上げるときに、サイの突撃を横からまともに受ける。

 車に跳ねられた様に空中を舞った。

 ゲッまだ生きている、立ち上がり向かってくる。 

 こいつ頑丈だな不死身なんじゃねえか。

 稲妻の杖に雷を帯電させて殴る、バッチと電気がオークボスの肌を焦がすがまだ向かってくる。


「人間死ね。」


 息も絶え絶えのオークボスの攻撃を指輪の力場でいなす、だいぶ弱っているようだ。

 オークボスは2匹の獣の突撃に潰されて倒れた。


 こちらに向かってきたオーク戦士の集団は横側からライトニングジャベリンをバンバン投げるボニーによって数が減る。

 ビッキーとスカーレットさんの稲妻の杖からチェインライトニングが戦士を焼き尽くすと戦闘は終わった。


 奴隷にされていた男達も開放した。

 問題は非戦闘員なんだよな。

 後方支援部隊でもあるので、戦闘に巻き込まれるなら流れ弾で死んだとしても良心が痛まないが、降伏してくると扱いに困る。

 1/3が戦死、残り1/3が逃げ出している。

 最後の1/3の50人前後は目の前にいる。

 ステータスを確認すると属性が悪なので将来の禍根になっても嫌だ、しかし、ここで虐殺するのも気が引ける。

 捕虜として連れて帰るのも難しい。


 1箇所に集まり不安そうな顔を見ると、酷い事も出来ないな、このまま帰らそうかな。

 貴族の女性がスカーレットさんと話している。

 貴族の女性はスカーレットさんから火玉の数珠を受け取ると火玉を非戦闘員にどんどん投げる。


「おい、非戦闘員で女や子供もいる・・・。」


 泣きながら火玉を投げる横顔を見たら何も言えなくなった。

 流石にこのまま放置は出来ないので、死体を1箇所に集めて油をかけて燃やした。


 戻ってきた男達4人のうち2人は女性と抱き合ってる所を見ると夫婦だったのだろう。

 虐殺に加担した事で心に余裕が無く感動できる状況では無いので放っておこう。


 今日はとても疲れたが、この場所で休むほど肝が据わって無いので逃げるようにこの場所を離れて、暗くなるまで移動してからキャンプをした。

 ビッキーの竪琴が悲しく音色を奏でていたのを全員が無言で聞いた。

 


異世界冒険日32目


取得経験点


経験値:3941を得た。



総計経験値:25031


マリーヌ:Lv4→Lv5

ビッキー:Lv3→Lv4

スカーレト:Lv3→Lv4

ボニー:Lv0→Lv2

メルカバ:Lv1→Lv2


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