ヴァーシティー作戦のとある部隊長の物語
最近ハメルーンで活動しているのでなろうで書いてみました。
ルリちゃんも登場するよ。
なんでアメリカ陸軍の第82空挺師団なんだろう・・・好きだからかな・・・?(PAM
次からはユーザー名通りにドイツ軍を・・・
それと駄文だったらすみません・・・
1945年3月25日。
この日、西と東から攻めてくる連合軍に対し、ドイツ軍は為す術もなく各地で撃退され、ドイツ第三帝国は徐々に追い詰められていった。
ライン川渡河作戦とルール工業地帯への包囲の一環として、再び英米共同の空挺部隊による降下作戦が実行された。
前回オランダでのマーケット・ガーデン作戦では、現場の情報不足により、対戦車装備不足で英軍の多くの空挺兵が犠牲になり、その犠牲も虚しく作戦は失敗した。
その連合国に取って悪夢な大失敗から六ヶ月後、再び大規模な降下作戦が実行される。
作戦名はヴァーシティー、マーケット・ガーデンと同じくアメリカ軍とイギリス軍の共同降下作戦だ。
まずは友軍の機甲部隊の進攻の妨げとなる航空機での防衛陣地の爆撃、次は英米共同の空挺降下、最後は機甲部隊で進撃し、ルール工業地帯を包囲する。
作戦に参加した第82空挺師団属する一人の大隊長に視点を当てよう。
護衛のP-51マスタング戦闘機付きで現地に向かう多数のC-47スカイトレイン(一部ワコグライダー付き)中で内一機の機内でずっと立っているのが彼だ。
彼の名前はジェイソン・ジーパー、階級は少佐、年齢は30歳丁度。
人種はロシア系白人、身長は178㎝、座っている兵士達と同じ空挺部隊専用戦闘服の上から降下用装備を纏って後部ハッチで立っている男が彼。
自身の恋人とも言える銃は、腰のガンホルスターに差し込んである45口径自動拳銃コルト・ガバメントの軍用モデル、コルトM1911A1。
メインは、手に持った兵士達からグリーズ・ガンやケーキデコレーターと呼ばれているM3A1短機関銃。
初陣は1943年7月のハスキー作戦、当時彼は一小隊の指揮官だった。
初の実戦で、味方の海軍の誤射に合い、降下した地点で待ち伏せに遭い、多くの部下が敵の機銃掃射で倒れる等、様々なトラブルに見舞われたジェイソンであったが、それでもなんとか潜り抜けた。
その二ヶ月後にはイタリア本土でドイツ軍の後方に空挺降下。
降下直後タイミングを誤り、足を骨折、部隊の足を引っ張ってしまう。
陸軍病院を退院後、史上最大の作戦、オーバーロード作戦が決行された1944年6月のフランス、ノルマンディー地方における戦いにも参加。
作戦前夜における降下作戦で名誉を挽回、その甲斐あってか中尉に昇進した。
悪夢の結果となったマーケット・ガーデン作戦にも参加、皮肉にも大尉に昇進し、中隊長に成ってしまう。
バルジにて包囲された友軍救出作戦に参加、所属していた大隊長が戦火の中で戦死し、彼以外階級の高い者と指揮能力の高い者が居らず大隊長代理に。
後に英雄的行動で少佐に昇進し、本物の大隊長となった。
佐官クラスになった彼は後方勤務を進められたが、今まで共に戦ってきた戦友と部下をほうっておくことが出来ず、上層部の申し出を断り、この作戦に参加したのだ。
「レッドランプ!大隊長、もうすぐ予定降下地点です!」
操縦室に居る操縦士が、ジェイソンに伝えた。
機内には20人乗っている。
ジェイソンに操縦士と副操縦士、降下するジェイソンの部下17名を合わせてだ。
離陸してからずっと立ちぱっなしだった彼に、疲れた表情は全く見えない。
こう見えて彼の軍歴は長い、初めは予備兵扱いの州兵、それから陸軍の士官学校に入り、無事に卒業。
空挺部隊の募集があった為に志願、訓練を受け、現在に至る。
大隊の指揮官であるジェイソンは、部下に大声で立つように命じた。
「降下用意!フックを掛けろ!」
立ち上がった部下達は、手に持っていたフックを天井の棒に引っ掛ける。
次に彼は装備の点検を行うように命ずる。
「装備確認!」
言われたとおり装備を確認し始めた部下達。
背中に背負った背嚢を手探りで触り、異常が見あたり無いか確認する。
異常がなかったらしく、後ろから番号でジェイソンに伝えた。
「17番OK!」
「16番OK!」
「15番OK!」
「14番OK!」
「13番OK!」
「12番OK!」
「11番OK!」
「10番OK!」
「9番OK!」
「8番OK!」
「7番OK!」
「6番OK!」
「5番OK!」
「4番OK!」
「3番OK!」
「2番OK!」
「1番OK!」
全員が装備確認を終えた後に、自分の装備の確認を始めた。
自身の装備も異常が無いと分かると、後部ハッチの上に付けられたライトが赤から緑に成るのを待った。
先行したB-17大型爆撃機が爆撃を終え、帰ってきたB-17がこちらの隣を通り過ぎると同時にライトが緑に変わった。
「降下地点に着いた。降下せよ」という意味だ。
変化音が耳に入った彼は、直ぐ部下に降下を命じた。
「グリーンランプ、行け行け行け!」
フックを握りながら後部ハッチに次から次へと向かっていく第82空挺師団の兵士達。
全員が跳び終えると、ジェイソンも機内の外へと飛び降りた。
外を出れば雨のように地上に降り注ぐ落下傘の数。
彼もその中に居た。
見通しの良い空から地上にいるドイツ国防軍防空部隊の対空砲火は一切見えない。
そのまま地上に近付き、なんとか着地に成功した。
「なんとか無事に着陸できたな。イタリアの様なことにならなくて良かった」
無事に着地したジェイソンは、絡まりそうな落下傘の紐を外し、先に降下した部下達と合流し、目的地への進路を確認するために、傘下の中隊長を集めて、ミーティングを開く。
ちなみにジェイソンが率いる大隊は、歩兵四個中隊分の戦力だ。
「我々が降下地点はライン川に近い場所だ。付近にグライダー部隊とイギリス軍の空挺部隊が展開しているが、敵が何処で待ち伏せているか分からんから合流はまず不可能だろう」
地図とコンパスを見ながら現在地を特定し、口を動かしつつ、指でライン川を指す。
「丁度近くに防衛網がある。おそらく装甲部隊にとって進撃の妨げになる対戦車砲や榴弾砲がたんまり配置されているハズだ、そこは一番近い距離に降下した英軍の部隊が片付けるだろう」
次に地図に描かれている森林地帯に指を向ける。
「我々は森林地帯に居る敵部隊の駆逐に当たる。降下している時にヘッツァーを見つけた、おそらく進撃ルートを計算しての配置だろう。パーシー、斥候をジープに乗せて偵察に向かわせろ」
「了解!」
「デビット、お前は近くの村に居るドイツ兵を鎮圧」
「イエッサー!」
「スティッチはグライダーとこの降下地点の防衛だ。俺は二個中隊で向かう、パーシーも一緒だ。我々に気付いた近い距離に居る敵軍のパトロール隊が来るはずだろう、スティッチ、俺達が森で狩りをしている間に歓迎でもしてやれ」
「サー、喜んで!」
「よし、それでは、段取り通りにやるぞ!」
「「「サー、イエッサー!」」」
短い作戦会議を終えたジェイソン達は、それぞれの目標へと向かっていった。
当部隊長のジェイソンは、傘下の中隊長で、部下の一人であるパーシーの中隊と自身の指揮下に入れている中隊も含めて、アメリカ軍の機甲部隊の進撃路を確保のために、進路上にある森林地帯の完全鎮圧を担当する。
傘下の中隊を率いるもう一人の中隊長、デイビットは、降下地点の近くにある村を鎮圧。
そして最後のスティッチの中隊は、一緒に来た同師団に属する友軍のグライダー部隊の防衛に当たる。
斥候が乗ったジープが、森の中へ消えていくと、ジェイソン率いる二個中隊も、それに続いた。
「すげぇ・・・旅行で行ったレッドウッド公園みてぇだ・・・」
「あそこには巨木はねぇだろう・・・」
あちらこちらに立っている木々を見ながら思い出話をする兵士に対し、別の兵士の突っ込みが入る。
この話を耳に入れたM1A1カービン自動小銃を持った兵士が、古城がある方向を見ながら口を開く。
「古城がある方に降下したかった・・・あの城のベランダで、景色を見ながらウイスキーで一杯決めるんだ」
その兵士の言葉を聞いたM1A1トンプソン短機関銃を手に持つ兵士は、それに賛同する。
「それは良い。俺は本場のドイツビールで酒盛りをしたいな」
その言葉に行軍中の兵士達は、一斉に吹き出し、笑い始めた。
「HAHAHAHAHA」
だが、その笑いは士官と下士官によって終わらされる。
「煩いぞ!ドイツ兵が何処から出てくるか分からん。黙って歩け」
この言葉にさっきまで笑っていた兵士達は、皆口を固く閉ざした。
そして斥候と一緒に前進したジープも発見した。
その証拠にジープに乗っていた斥候が、ジェイソンに向けて手を振っている。
直ぐに合流し、この付近の情報を聞き出す。
「この付近に敵部隊は?」
「サー、対戦車砲が何門か。背の低い駆逐戦車が数量ほど、後は対戦車火器で装備した歩兵が三個中隊ほど・・・」
「おそらく国民擲弾兵だ。残りは国民突撃隊だろう・・・鎮圧は簡単そうに見えるが、中に国防兵や武装SSの兵士も居るハズ・・・油断するな!」
「イエッサー!敵はまだ気付いてない、側面に回るぞ」
ジェイソンの言葉に配下の兵士達は、奇襲できる位置に移動し始めた。
彼も、奇襲攻撃に適切な位置へ移動する。
移動途中に、敵の兵器と歩兵の兵装を確認した。
対戦車砲はPaK38が複数、戦車は短砲身と60㎝砲塔型のⅢ号戦車を合わせて2両、駆逐戦車はヘッツァーが3両ほど、歩兵の装備は急造品のライフルや短機関銃と生産省略型のkar98kにパンツァーファウスト。
良く目を凝らして見てみたが、かつての無敵を誇ったドイツ国防軍兵士や武装親衛隊などの軍服を着た者は見当たらなかった。
配置に着いた彼は、こちらに全く気付かない小銃を持った老人に対し、手に持つ短機関銃の照準器を向け、撃鉄を引いた。
「敵襲だ!」
45口径の短機関銃M3A1の発砲音と若いドイツ軍将校の叫び声の後に、ありとあらゆる方向からアメリカ軍の小火器が乱発する。
連続したM1919A4機関銃の発砲音も聞こえ、塹壕や掩蔽壕に逃げようとする年配の小火器を持った兵士達に容赦なく浴びせた。
突然の攻撃にドイツ軍の寄せ集めの兵力は次々と倒れていく。
それに対しアメリカ空挺部隊の兵士達は、躊躇いもなく撃鉄を引き、次の標的にサイトを合わせ、撃鉄を引いた。
戦車に対しては、M9A1バズーカで破壊する。
機銃で撃ち返しているが、装甲がやや薄い側面を撃たれているために何の反撃も出来ず、ただ破壊されるか、前面装甲を向けて、砲を撃ちながら後退するだけだ。
「5人、6人、7人!あいつ等禄に反撃もできねぇのか?」
M1ガーランド半自動小銃を撃ち続ける兵士が、隣で同じ小銃を撃つ兵士に話し掛ける。
「年配者と老人、それに子供も居た!寄せ集めってことさ!対戦車兵ダウン!」
ドイツ軍側もただ撃たれている訳ではなく、それぞれ手に持つ小火器で反撃するが、呆気なく林から来る銃弾で倒れていく。
その場に居た敵兵が全滅すると、逃げた敵兵士達を追撃するためにジェイソンは林から出て、敵兵が逃げた場所に向かう。
「Ⅲ号は全滅したな?」
バズーカを持った兵士等に質問するジェイソン、彼等が返答しようとした途端、敵兵が逃げた場所から砲声と銃声が無数に鳴り響いてきた。
ジェイソン達は直ぐに「これは友軍の機甲部隊が来た」と分かった。
「あいつ等、俺等の手柄を取る気だ!これ以上戦果は取らせるかよ!」
配下の小隊長が、部下を全員引き連れ、敵兵が逃げって行った方向へと向かっていった。
直ぐに制止したが、その小隊長は全く聞かず、無謀にも向かっていく。
「クソッ、全員行くぞ!」
ジェイソンは直ぐに、小隊長の後を追った。
森の開けた場所まで到達すると、アメリカ軍の機甲部隊がドイツ軍の二級戦部隊と交戦していた。
多数のM4A1シャーマン76㎜砲塔型が、ドイツ軍を圧倒しており、確実に数や火力で勝るアメリカ軍が優勢である。
それでもドイツ軍は粘り強く抵抗していた。
突っ込んでいった部下の小隊長は、敵軍に気付かれ、MG08重機関銃の掃射で撃ち殺され、残った兵力がジェイソン達に合流し、戦況を報告した。
「大隊長・・・ドイツ野郎共は根強く抵抗しております・・・小隊長があの餓鬼共に蜂の巣にされました。あの塹壕と掩蔽壕を後ろからやれば、機甲部隊の被害は最小限に抑えられます」
利き腕を撃たれた兵士から、敵陣地の情報を仕入れたジェイソン。
その兵士が言った通り、何両か友軍の戦車が撃破されている。
「お前達は衛生兵から治療を受けろ。これ以上M4を潰されたら作戦に支障が出るな・・・よし、塹壕と掩蔽壕を鎮圧するぞ!」
ジェイソンの指示で、二個中隊がドイツ軍の鎮圧に向かった。
MG08に着いている少年兵達は、向かってくるジェイソンに撃ち続けたが、横からやって来た傘下の小隊の攻撃を受け、少年兵達は倒れた。
塹壕内に入ったジェイソン達は、塹壕で抵抗するドイツ兵を銃で撃ち倒して行き、塹壕を徐々に鎮圧していく。
掩蔽壕に対しては、手榴弾を投げ入れ、中にいた敵兵等を排除し、残った敵兵等に対しては内部に入り、小火器で鎮圧する。
友軍の歩兵部隊も交わり、一気に鎮圧速度が上がり、ドイツ軍は全滅の恐れがあるためか、撤退をし始める。
その頃のジェイソンは、塹壕で出会す敵兵等を次々と倒していく内に驚くべき光景が目に入る。
それはまだ16にも達してない小さな少女が居たからだ。
長い綺麗なブロンドの髪を持ち、整った顔立ちと綺麗な水色の瞳を持つ美少女にジェイソンは見取れてしまう。
美少女は、自分の身長くらいはあろう英軍からの鹵獲品であるリーエンフィールドNo4小銃を持って塹壕を飛び出そうとしている。
一方のジェイソンはというと、余りの衝撃に銃を構えることさえ忘れていた。
「あ、待って!ハルト、ハルトッ!」
我に戻ったジェイソンは、自分を撃たなかった美少女にM3A1グリーズ・ガンを構え、止まるように覚え仕立てのドイツ語で叫んだが、美少女は既に塹壕を抜け出し、逃げるドイツ兵達の元へ去っていった。
戦闘後、機甲部隊と合流したジェイソン大隊は、そのまま機甲部隊と共に前進。
傘下の二個中隊と合流後、機甲部隊の工兵隊によって建てられたキャンプで休息を取ることに。
士官用のテントの中で組み立て式のテーブルに付いた椅子に腰を掛けながらジェイソンは、淹れ立ての珈琲を机の上に置き、あの美少女のことについて頭を抱えて悩んでいた。
何故、ナチス・ドイツはあの様な年の少女を徴兵してまで戦争を続けるのかと。
オランダに入ってからは、老人や少年兵と出会すことが多くなってきた。
老人を撃つのに躊躇いはないが、未来ある少年を撃つことに流石に心は痛む。
ましてやあんな少女まで戦場に出てきたのだから、これから同じ年の少女を撃たなければならないのか。
「気が狂いそうだ・・・」
ジェイソンは独り言をしながら、珈琲を飲む。
暫く悩んでいると、書類を持った副官がテントに入ってきた。
「失礼します、ジーパー少佐。我が部隊に出動要請です。至急、大隊本部へ」
「そうか。直ぐに準備するから待ってくれ」
副官からの報告を聞いたジェイソンは、珈琲を一気に飲み干し、ジャンバーを羽織ってから、机の上に置いているM1ヘルメットを被り、副官の後へ付いていった。
この後、ライン川渡河が円滑に進み、ヴァーシティー作戦は成功した。
第82空挺師団はヴァーシティーに参加したっけ?
間違えてたら感想にて報告を・・・できれば誤字報告も・・・
完全修正完了!