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瞬光  作者: 風華
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瞬光〜ひかりのしるし〜 第一話

こんにちは風華です!中学1年生です!本大好き!よろしおねがいします!

「校舎、広っ…!」

 愛真は思わず声を上げながら、案内の生徒について歩く。

 幼馴染の麗華が横で笑顔を向ける。

「まーくん、こっちの図書館も見てみる?」

「麗葉、ここの学校いいね」

 手を軽く握り返しながら、光愛音は胸のカメラを抱える。

 廊下の掲示物や窓から差し込む光、階段の影――すべてがシャッターチャンスに思えて目が離せない。


 校庭に出ると、運動場の光の反射や生徒たちの動きが面白く、思わずファインダーを覗き込む。

 遠くのグループを見ると、黒髪でショートの女の子が笑顔で誰かに手を振っている。

 そして別の場所には、柔らかい笑顔を見せてふわり体をひるがえし、歩きだした。

 愛音はちらりと目に入れたものの、何も考えずまた前を向く。

「よし…ここはいい光が入るな」

 カメラを構え、校舎や校庭の隅々をチェックしながら愛音は“瞬間”を探して歩きはじめた。


 千歳は少し離れた場所から、黒髪ショートの髪を揺らしながら歩く愛音を見つめていた。

「あの子…なかなかいい腕してるな」

 小さくつぶやき、胸の奥で静かに競争心が燃えた。


 蜜華はふわりと体を翻して歩きながら言った。

 愛音をちらりと見る。

 目が合ったわけではないのに、心臓がわずかに跳ねるのを感じた。

「絶対負けない...!」

 そう思いながら、隣にいる女の子へのライバル心と、ほんの少しのドキドキを胸に抱えた。


 愛音は校庭の隅々を歩きながら、光の入り方や影の落ち方を確かめる。

 立っているだけでも面白い瞬間が次々に目に入ってくる。

「ここは…影が少し柔らかいな」

 思わず独り言をつぶやき、シャッターチャンスを探す目は真剣そのものだ。


 運動場を一周しながら、遠くで千歳が同じ方向を歩いているのに気づく。

 千歳の視線が自分に向いた気がしたが、愛音は気にせず前を向く。

 千歳は思わず眉をひそめ、ライバル心がさらに強まるのを感じた。


 さらに少し先では、蜜華が軽やかに歩き、愛音の動きをちらりと確認している。

 体は自然に前を向いているが、胸の奥の競争心が小さく震える。

「絶対にあの子には負けられない」

 そう思いながら、愛音を意識しつつ、次の“瞬間”に備えて足を進めた。


 愛音はそんなことに気づくわけもなく、ただ光と影を追い、カメラに収める“瞬間”だけを探し続ける。

 校庭の隅々、廊下の掲示物、窓から差し込む光…どこを切り取っても面白い。

「ここは絶対にいい写真になる」

 心の中でつぶやき、愛音はまた一歩を踏み出した。


 愛音は廊下を進み、次は図書館に入った。

 木の香りと静かな空気に包まれ、窓から差し込む光が棚の隙間を照らしている。

「うわ…ここ、すごくいい光」

 思わず息を漏らし、愛音は胸のカメラを構えた。書架の間の光の入り方、窓辺に置かれた椅子、机の影――どれもがシャッターチャンスだ。


 千歳は図書館の奥の方で、愛音の動きを気にしながら、自分も自然にカメラを持つ手が緊張しているのを感じていた。

「あのタイミング、絶対に負けない…」

 小さな心の声を呟きつつ、彼女は自分の構図を探し始める。


 一方、蜜華は窓際の机に向かいながら、愛音の視線や動きをちらりと確認する。

「やっぱり…あの子はすぐにいい光を見つける」

 その事実に少し悔しさを覚えつつも、次のシャッターチャンスに向けて胸の奥のライバル心を高めた。


 愛音は全く気にせず、棚の間を歩きながら、光と影を探してシャッターを切る。

 何気ない机の角度、窓の光の反射、ちょっとした影の落ち方――すべてが“瞬間”となり、愛音のカメラに収まっていく。


「ここは…絶対にいい写真になる」

 心の中でつぶやき、愛音はまた一歩を踏み出した。

 千歳も蜜華も、その動きに気づきながら、静かに競争心を燃やす――だが、愛音はそれに全く気づかない。


 その言葉とともに、静かな部室の空気に、ほんのり緊張と期待が漂った。


 桜が咲く校庭を歩きながら、愛音の胸にふと、受験の日のことがよみがえった。

 あの日も、春の光はやさしく降り注いでいた。

 早朝から参考書を開き、問題集に向かい、机にかじりついた時間――すべてが思い出される。


「よし、絶対に合格する!」

 自分に言い聞かせながら、最後の模試の答案を確認したあの日。

 教室の隅で見守ってくれた麗華の笑顔、そして何気ない励ましの言葉。

 その小さな支えが、愛音をここまで押し上げてくれたのだ。


 結果通知が手元に届いた瞬間、信じられない気持ちでいっぱいになった。

「合格…したんだ」

 手にした紙をじっと見つめ、愛音は胸の奥に込み上げる喜びと安堵を感じた。


 そして今、こうして新しい学校に足を踏み入れ、胸にカメラを抱える自分――

 あの日の努力があったからこそ、今この瞬間を切り取れる。

「これから…いろんな瞬間を撮るぞ」

 愛音は独り言のようにつぶやき、足を踏み出した。


 入学式は想像以上に華やかで、壇上の校長先生や新入生の笑顔に、愛音の目も自然と輝く。

 式が終わり、案内された部活動見学では、真っ先に写真部の部室へ向かった。


 扉を開けると、壁に貼られた先輩たちの写真と、机の上のカメラやプリントが目に入る。

「こんにちは、入部希望です」

 愛音は胸のカメラを抱え、少し緊張しながら元気に挨拶した。


 千歳と蜜華も部室に現れる。

 二人は愛音の姿に自然と目を向け、互いに小さく目を合わせる。

 無言の競争心が、静かな部室の空気にそっと漂った。

「私たちも入りたいです」

 蜜華の声に千歳も頷き、三人は同時に部員としての一歩を踏み出した。


 愛音は鈍感で、二人のライバル心には全く気づかず、ただ写真を撮る“瞬間”への興奮だけに胸を躍らせる。

「ここで、もっと面白い瞬間を撮れるはず」

 心の中でつぶやき、カメラをしっかり抱えて部室の奥へ歩き出した。

これからも続けます!応援よろしくお願いします!

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