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第1話 知恵の火は、誰が灯したか

転移してから、三ヶ月が経った。


 


名前は佐藤翔。元・高校生。目が覚めたら、森の中だった。

ありがちな異世界転移──剣と魔法、魔物に怯える人々、そして、現代知識が万能に通用する世界。


 


最初は戸惑ったが、すぐに順応した。俺には“武器”がある。情報だ。


 


ナイロン袋を水に浮かべて冷却する方法を教えたら「水精霊の奇跡」と呼ばれた。

石鹸を作ってやったら「白き宝石」と称賛され、紙とペンを与えれば、村人は「言葉の神」と崇めた。


 


──全部、中学理科とスマホに入ってたWikipediaの知識だ。


 


笑えるだろ?


 


村の長は俺に頭を下げ、娘は赤い実の酒をくれ、子供たちは「知恵者さま!」と駆け寄ってきた。


 


でも──それは、長く続かなかった。


 



 


「……それ、どうせまた“サトウさま”の知恵なんだろ?」


 


村の少年の呟きが耳に残っていた。


 


最初は気にしなかった。でも、わかっていた。

俺は尊敬されているようで、どこか“遠ざけられて”いた。


 


尊敬はされている。けれど、信頼されていない。


感謝はされている。けれど、好かれていない。


 


俺はただの、“便利な余所者”になっていた。


 


それでも、必要とされている限りは――そう思っていた。


 


 



 


だが、それは音を立てて崩れた。


 


その日、彼が現れたのだ。


 


 


──高橋潤。


 


俺と同じ制服を着た、もう一人の転移者。


 


濡れた地面に倒れていた彼は、目を覚ますなり笑った。


 


「はじめまして。高橋潤です。こっちの言葉、ちょっと難しいですね……」


 


その笑顔は、まっすぐだった。


 


村の者たちは、その笑顔にあっという間に引き寄せられていった。


 


あの夜、俺は火の気のない鍛冶小屋で、ひとり呟いた。


 


「この世界に、余所者は……一人でいいんだよ」

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