第八章~さぁ戦いの時~
第八章~さぁ戦いの時~
番人オディゴスの力、「記憶の回廊」により、青の頭に流れ込む断片的な記憶。
そこには、苦難を乗り越えてきたエレナとリィナの姿があった。
そして、衝撃の事実――エレナが自分の娘であり、リィナが孫であることを知る。
喜びと後悔が交錯し、青は崩れ落ちた。
自身が記憶を失っていた間、彼女たちが背負った痛みと孤独を思うと、言葉を失う。
エレナとリィナが優しく手を差し伸べ、彼を抱きしめる。
「パパ、無理しないでいいんだよ」
「おじいちゃん、大丈夫だよ」
その瞬間、青の頭に鋭い電流のような痛みが走った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
叫び声と共に青は地面に崩れ落ち、視界が暗転する。
記憶のフラッシュバック。
断片的だった記憶が繋がり、青の中でかつての自分が蘇る。
エレナとリィナの名を繰り返し呟きながら、彼は涙を流した。
「もしかして、、、?思い出したの?」
何かを察したリィナが青に駆け寄る。
「ああ」
「パパ、、、本当に、、、本当におかえりなさい」
声にならない声で喜び共に泣き崩れるエレナとリィナを抱き抱え青は誓う。
青は彼女たちを強く抱き締め、静かに誓う。
「もう二度とお前たちを悲しませない。すべてを終わらせるぞ」
エレナの丘は、記憶にある通りの草原が広がっていた。
どこまでも続く青空と、風に揺れる草たち。
その美しさは、青の胸に温かい懐かしさを呼び起こす。
リィナが頂上へ駆け出し、元気に声を張り上げる。
「おじいちゃん!ママー!こっちだよ!」
しかし次の瞬間――
「きゃあ!」
リィナの姿が視界から消えた。
僕とエレナは慌てて走り寄る。
頂上には深いくぼみがあり、リィナはそこに落ちていた。
「リィナ、大丈夫か!?」
「いてて…でも平気だよ!」
エレナがくぼみの中でリィナを抱きしめ、優しく頭を撫でる。
母親としての彼女の姿を見て、青は心の中で静かに彼女を誇らしく思った。
くぼみの中央には、一体のフクロウの石像が立っている。
どことなくオディゴスに似ているが………それ以外には何もない。
「ここに首飾りがあるはずなのに…」
僕が呟いたその時、頭の中に響く声がした。
「青様…私に触れてください…そして目を閉じて…」
僕たちは声の指示に従い、石像に触れて目を閉じた。
すると次の瞬間、周囲が真っ白な光に包まれた。
目の前に現れたのは、眩い光を纏う一羽の白いフクロウ。
羽ばたくたびに静寂が訪れ、彼らの前に優雅に降り立つ。
「青様、久しぶりですね。」
「エレナ、リィナ、初めまして」
その声は穏やかで、どこか慈愛に満ちていた。
「私はオディゴスの母「アジェリィ」です」
リィナが目を輝かせて叫ぶ。
「オディちゃんのママ!?すごい!」
アジェリィは柔らかく微笑みながら話を続ける。
「私たちの家系は代々「月影家」に仕える神獣なのです」
「ああ知ってる。」
「だから僕は狭間を作るときにオディゴスを召喚したんだ」
「信用できる人に番人をしてもらうために」
「はい。青様の特別な力によりオディゴスは狭間の番人となりました」
「わが息子がお役に立てて光栄です」
「さて、、、、、、」
「これから皆様は大きな戦いの渦に巻き込まれていきます」
「敵は非常に強大です」
「今のあなた方ではおそらく勝てないでしょう」
「まって!それはやってみなと、、、、、」
エレナの言葉を遮りアジェリィが続ける。
「これから皆様には、避けられぬ試練が待っています。」
「しかし、希望を失わないでください。」
「道は、必ず切り開かれます。」
彼女は一人ひとりに目を向けながら言葉を紡ぐ。
「青様。まずは力のコントロールを取り戻してください」
「記憶が戻り、力も戻っています」
「狭間の世界に戻り、力を正確にコントロールできるようにしてください」
「わが息子、オディゴスが青様を導くでしょう、、、」
「わかった」
「次にエレナ」
「あなたはまだまだ弱すぎます」
「ですがあなたにも「月影」の血が流れています」
「なので私の力を少し分け与えます」
「時渡りの眼」
「この力を使えば2秒先の未来を感じることができます」
「これからの戦いに必ず役に立つはずです」
「狭間に帰り精進してください」
「はい。わかりました」
「そして、小さな戦士リィナ」
「今までよく一人で戦い、狭間の世界を守りましたね」
「ですがこれ以上あなたは力を使ってはいけません」
「これ以上使うとあなたは精神を保てなくなります」
「これは約束です」
「あなたの身体の負担がかからない力を渡します」
「心音共鳴」
「この力でリィナは皆様と心の中で会話ができます」
「しっかりサポートしてあげてください」
「お願いしますよ、小さな戦士」
「うん!ありがとう!!リィナ頑張る!!!」
最後に、白いフクロウは真剣な眼差しで青に告げた。
「組織の最上階にいる最高責任者」
「それは………月影玄様です」
!?
青は息を呑む。
「親父が…?どうして?」
白いフクロウは答えず、ただ静かに語った。
「真実を確かめるのは、青様自身です。」
「皆様にこの世界を託しました。ご武運を…」
そう言い残し、白いフクロウは光の中に消えた。
青たちは石像の前に戻っていた。
そこには、オディゴスの瞳の色をした首飾りが置かれている。
「これだ…!」
僕は首飾りを掴み、決意を新たにした。
「さあ、狭間に戻ろう。」
「そして、全てを終わらせる準備を始めるんだ」
エレナとリィナが頷き、三人は草原を駆け下りる。
エレナとリィナもそれぞれの力を胸に………
だがその背中には、希望と覚悟が刻まれていた。
「父・月影玄」というBOSSの正体。
アジェリィのさらなる導きにより新たな力を得た三人の戦い。
物語は一気に加速していく。
ーーー組織 研究所内ーーー
そこにはボロボロになったヴォルケンの姿があった。
ヴォルケンはトライデントのリーダー、元師匠との戦いに敗れ研究所に戻ってきていたのだ。
座り込む彼にレイダーナンバー2の夜叉が話しかける。
「ヴォルケン、、、派手にやられたね」
「大丈夫かい?」
「あ”、、、うるせーよ」
ヴォルケンは元師匠に負けたことに腹立っていた。
いまさら負けるはずないと思っていたから、、、
そんなヴォルケンに夜叉は冷たい目で言う。
「もう大丈夫だよ。君は休んでててよ」
「後は僕が処理するから」
「ゆっくり休みな」
夜叉のその言葉は優しさではない。
むしろ彼を愚弄したような口ぶりだ。
ヴォルケンは今ある力で夜叉につかみかかる。
「うるせーんだよっ」
しかし力の差は圧倒的だ。
赤子をひねるかのように夜叉はヴォルケンを床に寝かす。
そして自慢の刃をヴォルケンの首筋にあてた。
「君、、、僕に勝てると思ってるの?」
「今すぐ刻んであげてもいいけど、、、」
「夜叉!!!!!やめろ!!!!」
ジョシュが夜叉に怒鳴りつける。
ヴォルケンはジョシュの一言で一命をとりとめた。
「ジョシュ、、、止めないでよ」
「ダメだ。刀をしまえ」
「俺のゆうことが聞けないのか」
「わかったよ、、、」
少し不貞腐れて夜叉は刀を鞘に納め立ち去った。
ヴォルケンは悔しそうに床をたたいている。
ジョシュはヴォルケンに諭すように話しかける。
「ヴォルケン、、、いまは休め」
「わかったよ。ジョシュ兄」
この二人もまた苦楽を共にした仲だ。
向かう先は違えどその絆はそうそう消えない。
ヴォルケンは身体を引きずりながらある場所にむかった。
レイダー四天王の一人「リカ」のところだ。
リカは研究者としては随一の能力がある。
そしてこの組織は秘密裏に人体改造の研究をしている。
その責任者がリカだ。
「ヴォルケン、、、生きていたのね」
「リカ、、、俺をもっと強く改造しろ」
「お前の研究にも役立ってサイコーだろ?」
「いいわ。改造してあげる。」
「人間らしさはなくなるけどそれでいいの?」
「ああ。かまわない」
「あの、オカマやろーをぶっ殺せるならなんでもいい」
薄暗い実験室の中、蛍光灯が不規則に点滅していた。
空気は湿り気を帯び、どこか金属的な血の匂いが漂う。
ヴォルケンはボロボロの体を引きずりながら、巨大な金属台へと歩み寄った。
実験台の上に横たわると、全身の痛みに眉をひそめる。
「始めろ……俺には時間がない。」
ヴォルケンの声はかすれ、焦燥感がにじみ出ている。
リカの指示で研究員は無言で動き出した。
【対象の麻酔濃度を調整】
【準備完了】
無機質な声が飛び交う中、ヴォルケンの腕に太い注射器が刺さる。
血管をなぞるように針が奥へと進むたび、彼の顔が一瞬ゆがむが、声は上げない。
「ヴォルケン様……。これ以上は本当に……」
「黙れ。」
問いかけた研究員を遮るように、ヴォルケンは冷たい目を向けた。
その瞳の奥には復讐への執念と、決して折れることのない意志が宿っている。
「いいわ。続けなさい」
リカが冷たい声で研究員にさらなる指示を出す。
彼の両腕と足首が冷たい金属の拘束具でがっちりと固定された。
途端に機械音が鳴り響き、天井からアーム状のロボットがゆっくりと降りてくる。
その先端にはメスや電極、ドリルのような器具が並んでいた。
【フェーズ1、骨格強化を開始。】
アームがヴォルケンの胸部へと降りる。
肉をえぐる音が響き、彼の胸板が切り裂かれる。
「ぐっ……!」
ヴォルケンは歯を食いしばり、声を漏らすまいと耐える。
肉が切り裂かれ、金属プレートがその下に埋め込まれていく音が部屋に響く。
赤い血が金属台の縁から滴り落ち、床に作業員の足音が混ざった。
【内臓システム、インターフェース接続中】
研究員の一人が無感情に操作を続ける。
細いチューブがヴォルケンの体内へ挿入され、黒い液体が注入されていく。
血液と反応したその液体は、まるで生き物のように血管を這い回るように広がった。
【心拍数上昇。耐性確認中】
ヴォルケンの体が痙攣する。黒い液体が心臓に達した瞬間、胸郭全体が激しく膨張した。
金属プレートが骨格に埋め込まれるたび、鈍い衝撃音が響く。
【フェーズ2、筋力増強プロセスを開始】
彼の両腕にアームが近づき、筋繊維を切り裂きながら、強化された人工筋肉を埋め込んでいく。
作業のたびに火花が散り、焦げた肉の匂いが漂う。
「ぐあああああっ!!!」
ついにヴォルケンは叫び声を上げた。
痛みが限界を超え、全身が痙攣する。
だが、その叫び声には弱さではなく、血まみれの口元からこぼれた叫びは復讐の念そのものだった。
【最終プロセス、神経接続を開始】
最後の工程が始まる。頭部の骨が削られ、脳に直接神経チップが埋め込まれる。
「ぐあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
電極が接続されるたびに、ヴォルケンの意識が遠のき、そして激しく戻る。
その繰り返しの中で、彼は自らの存在を保ち続けた。
【すべてのプロセス完了】
【これより覚醒プロトコルを起動します】
「はぁ……はぁ……」
「これで……これで……俺は……あいつを超えられる……!」
金属拘束が外れると同時に、ヴォルケンは力強く立ち上がった。
全身は金属と肉が融合した異形の姿へと変貌を遂げていた。
「ハハ…ハ…ハハッー」
「これ……が……俺の正………義だ。」
彼は静かに呟きながら、冷たい瞳で自分の血塗られた手を見る。
そして、マスターへの復讐を果たすべく「hazama」へ向かった。
ーーー現代 BAR「hazama」ーーー
僕はまた2時間かけて車を飛ばし、BAR「hazama」に向かった。
まずは空いたままの扉から狭間の世界へ戻るために。
急いで扉を閉じなければ組織に知られてしまうかもしれない。
「ついた、、、」
「よし。急いで戻るぞ」
BARに着き僕らは店に入った。
「よぉ!」
「お、、、そかっ、、、、たな」
「お前は、、、」
「ヴォルケン!!!!」
そこにはヴォルケンが一人で待っていた。
しかし彼の身体は以前とは明らかに変わっている。
大きく肥大している筋肉。
ひと回り大きくなっている身体。
金属と肉が融合した異形の姿。
「お前、、、人体改造したのか?」
「だーかーらー、、、なん、、、だ、、、よ、、、」
かろうじて会話ができるくらいの言葉だ。
異様な殺気を身にまとったその男は余裕で椅子に座っている。
「はや、、、く、、、おか、、、ま、、、やろ、、、だせ」
ヴォルケンはマスターが一緒だと思っている。
やれるか?思い出すしかない。
記憶は戻ったんだ。過酷な訓練の日々を思い出して。
こいつと闘うしかない!
僕は小声でエレナに伝えた。
(エレナ、リィナを連れて扉に行け)
(狭間に戻ったらリィナに扉を閉めさせるんだ)
エレナは不安そうに答える。
(それじゃパパが戻ってこれないじゃない!)
(リィナの力はもう使えないんだよ?)
僕は自信をもってエレナに伝える。
(大丈夫。もう力は戻っている)
(タイミングをみて僕もそっちに行くから)
嘘だ。
力をちゃんと使える確証なんてない。
ましてや肉体改造したヴォルケンに勝てるなんて保証もない。
でも、嘘でもやるしかない。
「なにを、、、、ゴチャ、、ゴチャ、、、、」
ヴォルケンが立ち上がる。
「行け!!!!」
僕はエレナとリィナの背中を押しヴォルケンの前に立ちはだかる。
二人は言葉も発せずに地下二階の扉に向かった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ヴォルケンが襲い掛かってきた。
なぜか身体が動く。
意識ではない無意識だ。
ヴォルケンの攻撃一つ一つがまるでスローモーションのようによく見える。
そして一つ一つ丁寧にカウンターを当てていく。
「感覚」が研ぎ澄まされている気がした。
しかしもはや彼は改造人間だ。
並の攻撃ではひるまない。
体力も常人ではない。
獣のように襲い来るヴォルケンをただあしらうことしかできない。
なにか弱点を見つけなければ、、、、、
【おじいちゃん、聞こえる?】
突然リィナの声が頭に響いてきた。
【リィナ?無事に狭間についたのか?】
【うん。ママも私も大丈夫!】
【よかった。どうした?】
【今、オディちゃんの眼で見てるんだけど】
【その人の脇の部分だけ肌色なの】
【ママがもしかしたらそこは改造されてないんじゃないかって】
激しい攻撃のなか僕はそれをかわしつつリィナのアドバイスを聞いた。
確かにその部分だけはとても人間味のある色をしている。
感覚にもだいぶ慣れてきた僕は試しにその個所に拳を入れてみる。
「ぐわぁぁぁ」
今までとはちがう反応だ。
明らかにダメージをもらった反応をしている。
【リィナお手柄だ!】
突破口を見つけた僕は何度も何度もその個所に拳を畳み込む。
肌色だったその個所は次第に紫色になりヴォルケンは活動を停止した。
白目をむき泡を吹いてその場に倒れこんだ。
「危なかった、、、、」
【リィナ、ありがとう】
【やっぱりおじいちゃんは強い!!】
【どう?戻ってこれそう?】
【ああ。やってみる】
リィナとの会話を終え僕は精神を集中した。
目を閉じ、、、、狭間の扉を開ける、、、、
そこに開いた扉は紛れもなく僕が開いた扉だ。
僕はそっと扉を閉じみんなの元に歩いた。
「おじいちゃん!!」
「パパ!」
二人が笑顔で迎えてくれた。
「我が主。おかえりなさいませ」
なんだかオディゴスのこの言葉も懐かしく感じる。
僕はみんなに支えられいまココにいる。
みんなでつかむんだ…………勝利を!
「オディゴス」
「聞きたいことがたくさんある」
「はい。我が主。なんなりと」
アジェリィの事。
エレナとリィナがアジェリィからもらった能力。
そして、月影玄のこと。
僕の力のコントロール。
首飾りの事。
オディゴスに色々聞かなくてはならない。
と、その前にオディゴスが何かを提案しようとする。
僕はそれを察し口をだす。
「ティータイムだろ?」
「ちゃんとお菓子もつけてくれよ!」
「姫が二人もいるんだから」
「さすが、我が主でございます」
オディゴスは嬉しそうに飛びたつと、ティーセットを持って降り立った。
僕たちは香りのよい紅茶を飲みながら話をはじめた。
「そうですか、、、母上にお会いになられましたか、、、」
「わたくしも母上にはしばらくあっておりません」
「ですがあの丘は我らの誕生の地」
「もしやと思い、青様にいっていただきました」
続けて二人の能力についても聞いた。
「エレナ様の力はこれから修練が必要です」
「今後はリーダー、青様と共に修練をしてその力を使いこなしていただきます」
「リィナの能力は先ほども使った通りわたくしがサポートしますのでご安心を」
その後もゆったりとした雰囲気で話は続く。
「月影 玄」についてはアジェリィと同じ回答だった。
首飾りについてはオディゴスもよくはわかっていなかった。
ただオディゴスの家に伝わる伝承では、、、
〈主が窮地に立たされた時、首飾りが窮地をすくうだろう〉
と言われているらしい。
なにが起こるかはオディゴスも知りえないところだという。
「青様の力のコントールについてですが、、、、」
「これから毎日、精神統一をしていただきます」
「いまはおそらくリィナと同等レベルの力しかありません」
「未来の扉を開けるまで精神を鍛えていただきます」
一通り話を終え、各自のやるべきことを明確にした僕たちはしばしの休息を取る。
やはりそこに入ってくるのはこの男だ、、、
「みんなぁーたのしそうじゃなーい」
「あたしもいれてちょうだいよー」
マスターが元気に起きてきた。
「macoto。無事でなによりだ」
きょとんとするマスターにリィナが飛びつく。
「macotoおじさん!!おじいちゃん、記憶が戻ったんだよー!!」
リィナを抱きかかえながら涙するマスター。
「青、、、よかった。おかえり、、、」
「ああ、macoto。待たせたな」
トライデントのリーダー、、、BAR「hazama」のマスター、、、
そして僕の幼少期の頃からの親友「macoto」。
僕を組織に捕らわれたまま逃げた自分を責め続け、名前を捨て、性別を捨てずっと苦しんできた。
いつか反旗を覆すことを夢見て準備を進め、己自身も鍛錬を休むことはなかった。
いつか僕が戻ってきたときにいつでも戦えるようにと、、、
「まぁ、、、でもオカマのあたしも嫌いじゃないからこのままでいくわね!」
トライデントのオカマリーダーの誕生だ。
「戻る途中に人体改造したヴォルケンと闘った」
「あいつ大丈夫か?」
「macotoにそうとう恨みがありそうだったぞ?」
「あの子は真面目なのよ」
「あたしがちゃんと教育してあげないとね」
こんな時にいつも流れを正してくれるのはオディゴスだ。
「さぁ皆様。それぞれのすべきことをしましょう」
「戦いの日は目の前ですぞ!」
僕たちは互いの希望を見つめ修練に向き合っていった。
ここは狭間の世界、、、、、
この世界では時間は動かない。
だからと言って時間が止まっているわけでもない。
未来も、、、、現代も、、、、、時間は動いている。
だが僕たちが年を取ることはない。
現にリィナは現在9歳のはずなのに見た目は4歳くらいだ。
この世界にいれば老いることもなく時間が過ぎていく。
ただ僕には焦りがある。
組織の連中はそんな悠長なことを言わないからだ。
奴らの科学力は未知数だ。
それは未来人のリカが指揮をとっているから。
そして、一番トップは僕の親父の月影 玄。
「月影」家の一族。
いつ、この能力を解明しここに押し寄せてくるかわからない。
そんな不安を持ちつつ僕はいまできることに集中した。
もちろん。エレナもリィナも、、、、
「エレナ。次は本気で打ち込むわよ!いい?」
「うん。マスターかかってきて」
エレナがアジェリィから授かった力は
「時渡りの眼」
二秒先を予見できるという力だ。
つまり相手が攻撃する前にそれがわかる。
どんなに早い攻撃でも予見できれば当たらない。
それを自分のものにするためエレナは特訓中だ。
そしてリィナが授かった力
「心音共鳴」
リィナが認識した相手ならば心の会話ができる。
ま、正直なところリィナにとってはこの能力は朝飯前といったところだ。
ただ先の戦いでこの能力に助けられたのも事実。
なんとも頼もしい孫だ。
さて僕は、、、ひたすら精神統一をしている。
毎日何時間も、、、、
今はただオディゴスに従うしかない。
そんな中僕は色んなことを思い出す。
親父の事、、、リカの事、、、ジョシュの事、、、
なぜか思い出すのは良い思い出ばかり。
そんな中、急にオディゴスが話し出す。
「我が主」
「未来の扉を開いてはみませぬか?」
「未来の扉か、、、、」
「よし。やってみるか!」
僕は今までにない緊張感と共に全神経を集中した。
両手を天にかざし、深く願いを込める。
………すると、ゆっくりと未来の扉が開き始めた!
「よし!」
扉の向こうには、懐かしい風景が広がっていた。
テントのような建物があちらこちらにある。
組み手をしているような人も何人か見える
中央の建物に立っていたフラッグが目に飛び込んでくる
「トライデント 未来支部」
ここはトライデントのかつての訓練場か!!
中心に立つ一人の男がこちらを見て微笑んでいる。
「青さーーーーーん!」
「この時を待っていました!!」
その声を聞いた瞬間、僕は彼が誰なのかすぐに分かった。
「レオ……お前か!」
「はい!」
レオは力強くうなずく。
青い戦闘服に身を包み、きりッとした目。
やる気に満ち溢れているオーラ。
その姿はかつての「弱虫レオ」とはまるで別人だった。
「全隊員!!集まれ!!!」
その時、四方八方から足音が響き渡った。
振り返ると、数百人の戦闘員たちが姿を現した。
整然とした列を組んでレオのもとへ集まってくる。
その動きは訓練された部隊そのものだった。
皆が青い戦闘服に身を包み綺麗に整列している。
圧巻の光景だ。
エレナが驚いたように前に出る。
「ちょっと……レオ!?嘘でしょ、あのレオが……!?」
「そうだよ、エレナ。」
「久しぶり」
その姿は、確かにかつてのレオの面影を残していた。
だが、背後に控える部隊の精鋭たちが、彼の成長を何よりも雄弁に物語っていた。
「青さん、狭間の戦争で命を救っていただいた恩を返したくて、必死に訓練しました。」
「最初は仲間もいなくて、みんな僕を笑いました。」
「でも、あなたとエレナを信じて少しずつ仲間を集めたんです。」
「今では、僕が未来支部のリーダーです!」
僕は笑いながら言った。
「あの弱虫レオが、こんなに立派になったんだな!」
レオは顔を赤くしながらも、しっかりとした声で言った。
「青さん……やめてください。恥ずかしいです。」
「今では一応…リーダーなんですから…」
僕はレオを見つめながら小声で囁いた。
これだけの人数をまとめ上げ、整然とした部隊を作り上げるには、並々ならぬ努力が必要だったはずだ。
僕はほころんだ顔を引き締め、彼に敬意を表しながら言った。
「よろしい、レオ隊長。」
「よくぞここまでの部隊を鍛え上げた」
「皆もよく集まってくれた!礼を言う!!」
僕はレオ隊長と数百の戦闘員に賛辞を贈るように敬礼をした。
「これから最後の戦いに行く。」
「我ら!トライデントの力を見せつけるぞ!」
「了解です!」
レオは胸を張り、部隊を振り返る。
「みんな聞け!トライデントの武神が帰ってきた!」
「これから最後の戦いだ!恐れるものは何もない!」
「さぁ、行くぞー!!!」
「おおおおおおおおおおおおーーーーー!!!!」
戦闘員たちの声が響き渡り、部隊は一糸乱れぬ動きで狭間の世界へと進んでいった。
その姿を見つめながら、僕は誇らしい気持ちを抑えきれなかった。
「青さん、改めてお帰りなさい。」
レオが小さく言った。
「レオ、お前、本当によく頑張ったな。」
僕はレオの頭をなでながらそう答え、ふと微笑む。
「ところで、レオ、本当に強くなったのか?」
「えっ!?青さん、それひどいですよ!」
レオは抗議するように言いながら、どこか困ったように笑った。
「よし、ちょっと手合わせしてみるか。」
「ええっ!?いきなりですか?」
突然の申し出にレオは戸惑ったが、同時にその目には隠しきれない闘志が宿っていた。
僕は無言で軽く拳を構える。
それを見たレオも、気持ちを切り替えたように姿勢を整え、深く息を吸い込む。
「では、失礼します!」
レオの声と同時に、彼の拳が鋭く突き出された。
「ほう、いいスピードだ。」
僕はわずかに身をひねり、彼の拳を紙一重でかわす。
その瞬間、レオはすぐさま間合いを詰め、逆の拳を繰り出してきた。
「おお、なかなかやるじゃないか。」
僕はその拳を片手で受け止める。
衝撃が手に伝わり、以前の弱々しいレオとはまるで別人だと感じた。
「行きますよ!」
レオは一瞬後ろに跳び、すかさず足元を狙った蹴りを繰り出す。
僕は軽くジャンプしてそれをかわし、彼の動きを見極める。
「攻めるのはいいが、もっと冷静になれ!」
僕はアドバイスを飛ばしながら、彼の隙を見つけ、右腕で軽く押し返した。
「うっ!」
レオは体勢を崩しながらも、なんとか踏みとどまる。
しかし、その時には僕が間合いを詰め、手刀で彼の肩へ振り下ろしていた。
「くっ……!」
レオはなんとか防御しようと腕を上げたが、その衝撃でバランスを崩して地面に倒れ込んだ。
僕はゆっくりと彼に手を差し出した。
「ハハハ…強くなったじゃないか、レオ!」
「青さん……ひどいっす……。」
「全然歯が立たないじゃないですか!」
レオは悔しそうに笑いながら僕の手を取って立ち上がる。
「でも、いい動きだったぞ。」
「以前のお前とは比べものにならないくらいだ。」
僕の言葉に、レオは照れくさそうに頭をかいた。
「これでも、かなり訓練したんですけどね……。やっぱ青さんには勝てないっす。」
「これからだよ、レオ。」
僕は彼の背中を強く叩きながら笑った。
周囲で見ていた戦闘員たちが拍手を送る中、僕たちは次なる戦いへの準備に向かっていった。
僕は思わず笑ってしまった。
こんなにも成長したレオがいる未来を見て、胸が熱くなる。
この戦いには意味があったのだと改めて感じた。
もう迷いなんてない。僕を信じて待っていてくれた人たちのために、僕は戦う。
敵が誰であろうと、立ち止まるわけにはいかない。
「さぁ、最後のブリーフィングを始めるわよ!」
macotoの号令が響き渡り、僕たちはいよいよ最終決戦へと向かった。
第八章~完~