第六章~番人と謎の少女~
第六章~番人と謎の少女~
エレナの母「リカ」の提案で、僕の記憶を取り戻すため、敵の本拠地「ミシェル製薬」の本社ビルへ向かうことになった僕とエレナ。
しかし、その道は平坦ではなかった。組織の追手、レイダーの「ヴォルケン」に襲撃され、BAR「hazama」から命からがら逃げ出す僕たち三人。
「マスター…必ず生き延びてくれよ…」
背後に迫る炎の気配を感じながら、僕は振り返ることができなかった。
エレナの手を握りしめ、混沌とする新宿から渋谷へ向かう。
ミシェル製薬の本社ビルに辿り着き、リカの指示のもと地下ラボへ向かった僕たち。
しかし、そこで待ち受けていたのは想像を絶する裏切りだった。
「…リカ…どうして…」
僕の呟きは冷たく響いた空間に吸い込まれるだけだった。
エレナの目には、憤怒と悲しみが入り交じった複雑な感情が滲んでいる。
「ママ…どうして…!?」
エレナの叫びにもリカは答えない。
その冷たい背中を前に、僕たちは脱出を決意する。
突如、催眠ガスが充満し、防護服を纏った男たちが迫る中、絶望が僕たちを飲み込もうとした、その時だった!
「コッチだよ!」
どこか懐かしい声が響き、現れたのは、あの「謎の少女」だった。
「リィナ!!!!」
エレナの叫びを皮切りに、僕たちは再び「狭間の世界」へと足を踏み入れる。
リカの裏切り、そして僕たちを追う刀使い「夜叉」。
物語の歯車は、止めどなく動き出していた。
「はぁ~よかった~!」
草原に大の字になったリィナが、心底安心したように笑い声を上げる。
「リィナ!!!」
エレナが彼女の傍に駆け寄る。その声には怒りと安堵、そして母性すら感じられた。
「リィナ、ダメじゃない!力を無理に使うと、元の世界に帰れなくなるかもしれないのよ。」
「それどころか、命だって危ないの!」
エレナの真剣な表情に、僕は一瞬、目を見張る。まさかこの二人…?
「大丈夫だよ、ママ!あと2回くらいは大丈夫だって言ってたし!」
ママ!?エレナがママ!?
衝撃的な事実に、僕は呆然と口を開けるだけだった。
「でも…ありがとう、リィナ。」
「おかげで助かったわ。さっすが私の娘ね!」
エレナの顔に笑顔が戻る。
それを見て、僕も思わず微笑んでしまった。
「ねえ、ママ、もう話したの?」
「ううん。まだなの。もう少しだけ時間をちょうだい。」
「わかった。待ってるね!」
空を見上げながら少し考え込むリィナ。
しかしすぐに僕に向き直り、天使のような瞳で微笑んだ。
「これで二度目だね、青。」
「私はリィナ。狭間の世界のもう一つの鍵だよ。」
その言葉に、僕の心はざわつく。
もうひとつの鍵、、、、
「でも、私にできるのは現代と狭間をつなぐことくらい。」
「だから…お家にはもう5年も帰れてないの。」
「5年も!?」
僕の驚きに、リィナはクスクスと笑う。
その無邪気な仕草が、この世界の残酷さを一層際立たせていた。
「ねえ、リィナ。君はいったい何歳なんだ?4歳か5歳くらいにしか見えないけど…」
すると、リィナはぷぅーっと頬をふくらませ、僕をじっと見上げる。
「レディに年齢を聞くなんて、失礼よ!青!」
えっ?急にそんなことを言われて、僕はとっさに謝罪した。
「それは申し訳ない…」
すると、エレナとリィナはお腹を抱えて大笑いする。
「せ~い~~真面目すぎ!わはははは!」
その笑い声に包まれると、不思議とさっきまでの不安や恐怖が少しだけ和らいだ気がした。
物語の謎が深まる中、エレナ、リィナ、そして僕。
三人の絆が新たな局面を迎えることを、僕は予感していた。
エレナとリィナが草原の上で笑い転げている。
その無邪気な姿は、さすが親子だ。
見ているこちらまで顔がほころぶような光景だった。
すると突然、空を裂くような羽音が響き、どこからともなく一匹のフクロウが舞い降りてきた。
大きな羽を「ばさっ、ばさっ」と広げながら、近くの岩に優雅に降り立つ。
「あっ!オディちゃんだー」
リィナが指をさし、笑いながら呼びかける。
そのフクロウ「オディゴス」は、リィナを見て穏やかに話し始めた。
「リィナ、とても楽しそうですね。」
「あなたがそんな表情をされるのは、いつ以来でしょうか。」
「このオディゴスもとても幸せでございます。」
彼は器用に翼を広げると、僕たちに向かって深々と礼をした。
「おひさしぶりでございます。我が主。お元気そうで何よりです。」
「オディ、青には記憶がないの。」
エレナが説明を始めると、オディゴスは再び丁寧に礼をした。
「そうでしたか。我が主、ご無礼をお許しください。」
「お会いできたことが嬉しすぎて、ついはしゃいでしまいました。」
驚きはしなかった。
フクロウが喋るなんて普通なら目を疑うことだが、この世界では驚きの連続で、僕の感覚はすっかり麻痺しているのだろう。
「いや、大丈夫だよ。ご丁寧にありがとう。」
そう返すと、オディゴスは満足げにうなずいた。
オディゴスは、リィナの唯一の友達であり、この狭間の世界の「番人」だという。
彼は、僕の記憶を取り戻す手助けをすると言い出した。
「オディ!ダメだよ!青の記憶に関する情報を教えちゃ!」
エレナが焦ったように止める。
しかし、オディゴスは穏やかに首を振った。
「エレナ様、、、、大変申し上げにくいのですが、それは彼女の“嘘”でございます。」
「え?」
エレナが困惑した表情で問い返す。
「わたくしの番人の能力『記憶の回廊』を使い、我が主の深層の記憶をお見せします。」
オディゴスが語り出すと、彼の体から光が放たれ、草原の空間にまるでプロジェクターのように映像が映し出された。
【五年前、狭間の世界で組織をようやく追い出したトライデントは、組織を壊滅させようと現代に向かおうとしていた。
少数精鋭で向かうため、リーダー、僕、エレナ、リカの4人での作戦を立てた。
残りの戦闘員を未来に返すため僕は未来のゲートを開いた。
リィナはその時に紛れて狭間の世界に入り込んだのだという。
まずはリカを組織に潜入させるために現代に送り込んだ。
エレナには行方不明になったということにして。それがリカの望みだった。
僕たち三人はリカの手引きで組織に向かった。
唯一連絡を取っていたのはリーダーだけ。
僕とエレナはリーダーの指示に従い組織に侵入した。
しかしそれは罠だった。
誰もいない深夜のビルを爆破する予定だったが、そこには1000を超える戦闘員。
それでも僕たち三人は必死に戦った。
何人倒しても敵の数が減らない、、、
エレナも必死で戦っていたが銃で撃たれ気を失ってしまう】
エレナが驚いた表情でオディゴスを止める
「待って待って!違う!」
「銃で撃たれた記憶はあるけど、それ以外の話は私の記憶とはぜんぜんちがうわ」
どういうことだ?
確かにマスターと食い違う部分がある。
そもそもあの時のマスターの話にリカは出てきていない。
「マスターも組織の人間だったのか?」
「まさかそんなはずはないわよ!」
困惑している僕とエレナにオディゴスが優しく語り掛ける
「大丈夫。彼は今も昔も勇敢な戦士でございます。」
「あなた達を裏切るなんて万に一つもございません」
「では、続きを、、、」
オディゴスが続ける。
【倒れたエレナを守りながら、リーダーと僕は戦い続けた。
だが数に圧倒され結局は捕まってしまう。
閉じ込められた僕たちは何とか脱出しようと試みるがどうすることもできなかった。
先ほどの戦闘で瀕死の状態のエレナはそう長くはもたない。
そこに入ってきたのはリカだった、、、
リカは白い白衣をきて優雅に歩いてきた。
そこで彼女が出してきた条件は、僕を置いて二人はこのビルを出ていくことだった。
そしてもう二度と組織に関わらないこと。
つまりは僕を捨てて行けということだ。
エレナの母であるはずのリカは娘が瀕死であるのにもかかわらず、条件を突き付けてきた。
僕とリーダーがまずはエレナの治療をするように頼み込むが聞いてもいないそぶりだ。
リカは条件を飲むならエレナを治療すると言った。
自分の娘を交渉材料にしかみていないサイテー母親だ。
僕はエレナを救うためにリーダーを説得した。
そして三人は別々の部屋に移動させられた。】
「その後、エレナ様は治療を受けました。」
「同時にお二人は記憶を改ざんされていたのです。」
「彼女にはこの後の算段に勝算があったのでしょう」
「続けます。」
(じゃ僕の記憶もやっぱり彼女が?)
エレナの治療をして記憶を改ざんしたリカは手下に二人をBARまで運ぶように指示をした。
エレナの記憶があるのはベッドの上だったそうだ。
「そして我が主、、、、」
【僕は別の研究室に捕らわれた。
狭間の扉を開け逃げないように拘束されていた。
4人の監視がついていた。
どうやら組織は僕の頭の中にある「鍵」を取り出そうと僕を研究するらしい。
その場所は薄気味悪く、人間と動物を掛け合わせたような奇妙な動物や、ゾンビのような人間。
人間に変な薬を打ち、人と人を殺し合わせていたりまるで地獄のような光景がみえる。
僕は諦めていた。
もう記憶を抹消してみんなを救うしかない。
この能力は組織には知られていない。やるしかない。
ひたすらタイミングをチャンスを伺っていた。
そこに一人の男が入ってきた。
研究員が緊張した顔でその男に話しかける。
「ジョシュ様このような場所にどうされたのですか?」
彼の名前は「ジョシュ」
リーダーの双子の弟だ。
「うん。いやちょっとね。少し彼と話したいから二人にしてくれないかい」
優しい口調のジョシュ。
彼とは顔なじみだ。
一緒に戦闘訓練を受けた、僕にとっても弟のような人だ。
ジョシュは拘束されている僕に歩み寄ると、拘束具のベルトをそっと緩めた
「青さん、、、お久しぶりです。決してここで暴れないでくださいね」
「僕はまだあなたを殺したくない」
「これさえなければ、あなたの能力でここからでるのは簡単でしょ」
無邪気な笑顔でジョシュは僕に微笑みかけた
「僕はね、青さんを目標に、青さんと闘うためにここにいるんです」
「ちゃんと逃げてくださいね。万全の状態で僕があなたを倒しますから」
「あ!逃げれなかったら、娘さん、、、殺しちゃいますからね~」
そう言い放つとジョシュは部屋を出て行った】
「まってオディゴス!!僕には娘がいるのかい?!!!!」
青の声は震えていた。
まるで身体の奥底から搾り出されたような声。
耳を疑う言葉が、自分自身のものとは思えないほど遠く響く。
娘?自分に?
目の前のオディゴスが肯定の言葉を口にするたびに、心臓が乱暴に鼓動を打ちつける。
もし本当ならば、どれだけ長い間、自分はその存在に気づかず、守るべきものを放置していたのだろうか。
知らぬ間に傷つけてしまったかもしれない未来。
想像すらできない恐怖と後悔が青を飲み込んでいく。
「まさか、、、僕に、、、娘!?」
思わず呟いた言葉は、自分自身への言い訳にも聞こえた。
エレナが話に割って入る
「青、オディその話は後!!!続きを見ましょ!!!!」
「どうしたエレナ?そんなに焦って?」
「いいから!!!!!!!!」
「かしこまりましたエレナ様。続けます」
【拘束具が緩まった僕は、あたりを見回し、扉が開けられそうな場所を探す、、、
人が入れそうな書類棚をみつけると僕は目をつぶり力を使おうとした。
なぜだ?ちからが発動しない、、、、、この薬のせいか??
腕に打たれた数本の点滴を一気に抜き、体の拘束具をすべて外す。
実力行使で行くしかない。幸いさっきの疲れは寝ていたおかげで回復してる。
「おい!奴が逃亡するぞ!!」
叫び声とともに激しい警報が鳴り響く。覚悟を決めてやるしかない!
逃げなければ娘がやられてしまう、、、、、その時だった!
「コッチだよ」
種類箱が開く。
「リィナじゃないか!!」
「リィナ!どうして!」
「いいから早く」
僕は種類箱に飛び込み扉を閉めた。
狭間の世界に着くとオディゴスとリィナがそこにいた。
「我が主、ご無事で」
「オディゴス!どういうことだ!なぜリィナがここにいる?」
ふとリィナに目をやると青ざめた顔でリィナがニッコリと声にならない声で囁く
「オディちゃんを責めないで・・・・ワタシが勝手にしたことなの」
「無事でよかったお、、、、、、い、、、、、、」
「リィナーーーーーーー!」
彼女が崩れ落ちた瞬間、青は反射的に駆け寄った。
だが、彼女の小さな体はあまりにも軽く、その顔は真っ青だった。
信じたくない光景だった。
「リィナ、大丈夫だ、しっかりしろ!」
声を張り上げたが、言葉は宙に浮いたまま、彼女に届いていないようだった。
温もりを感じるはずの小さな体が冷たい。
目の前が霞み、何度も彼女の名前を呼ぶ。
「こんな小さな子が…なんで、なんでこんな無理を…」
青の心には、罪悪感と不甲斐なさが押し寄せた。
自分の無力さがリィナを追い詰めたのではないかと、頭を抱えるほどの後悔が胸を突き刺した。
彼女のためにも、ここで立ち止まるわけにはいかない。
だが、その決意の裏で、青の心には痛みが残り続けた。
オディゴスが言うにはまだ小さい彼女に力を使うのは早すぎなのだと】
「ここまでが我が主の記憶の再現でございます」
オディゴスの冷静な口調が空気を震わせるたび、青の胸の中では得体の知れない焦燥感が膨れ上がっていった。
リカが裏切った?記憶を改ざんした?すべてが繋がるようでいて、霧がかかったままだ。
「つまり、、、、、、」
「リカが初めから僕らを裏切り、マスターとエレナをだまして…また裏切った?」
エレナが険しい表情でうつむく。
冷静さを保っているように見えて、その瞳の奥には抑えきれない怒りと悲しみが浮かんでいた。
青はエレナをみつめながら、自分の頭を必死に働かせる。
しかし答えは出ない。
「オディゴス、待ってくれ…僕はどこで記憶を失うんだ?」
声に滲むのは、自分への苛立ちと無力感だった。
どうして何も思い出せない?なぜこんなにもすべてが絡まり合っているんだ?
「我が主…」
オディゴスが静かに言葉を発した。
その声にはわずかな温もりが混ざっていた。
「リィナも疲れて眠ってしまったようなので、ひとまずお茶にいたしませんか?」
「狭間の世界に時は流れませぬので」
言われて青はようやくリィナの方を振り返った。
エレナの腕の中で、リィナが静かに眠っている。
目を閉じた彼女の顔は、まるで光をまとっているようだった。
その無垢な姿は、青の胸に鋭い痛みを突き刺す。
彼女が命を削るようにして力を使ったことを知っているからこそ、その姿が尊くも悲しい。
「こんな小さな体で…」
青はそっと彼女の頬を撫でた。柔らかな感触が、まるで壊れ物に触れているようで胸が締め付けられる。
「エレナごめん。」
「僕が無理をさせすぎたのかもしれない…」
エレナは黙ったままリィナを抱きしめ、青を見上げた。
「大丈夫だよ青。私の娘は強いんだから」
涙ぐみながらエレナは青に呟いた。
その目には何かを訴えるような光があったが、言葉にはせず、ただそっとリィナの髪を撫で続けた。
青はため息をつき、拳を握りしめた。
このまま立ち止まるわけにはいかない。
けれど、彼女たちを守るために、どれだけの力が必要なのだろうか。
その答えは、まだ見えないままだった。
ーーー青が逃走後の研究所ーーー
薄暗い廊下を歩くリカの足取りは重かった。
遠くで機械の低い唸り音が響くたび、彼女の胸がぎゅっと縮み上がる。
「リカ、BOSSが読んでいるよ」
突然声をかけたのは夜叉だった。彼の冷たい瞳がリカをじっと見つめる。
その視線はまるで首筋に刃を当てられたような緊張感を与える。
「ええ、すぐ行くわ」
リカは努めて平静を装ったが、その声はわずかに震えていた。
(まずい…青を逃がしたのは痛手よ。あそこの責任者は私。どうして失敗したの?計画は完璧だったはずなのに…)
焦りが頭の中を駆け巡る。
青の逃走による責任が重くのしかかる中、リカは覚悟を決めてBOSSの部屋の扉を開けた。
「失礼します」
部屋の中は異様に静かで、空気が重く感じられる。
中央に立つのは、この組織の頂点に君臨する男、、、、
月影 玄。
長身で端正な顔立ちをしているが、その優しげな微笑みの裏には、とてつもない威圧感が漂っている。
「リカさん…どうしました?」
玄の声は穏やかだが、その一言一言が刃のように突き刺さる。
「申し訳ございません、玄様。手違いが起きまして…」
リカは膝をつき、頭を下げた。
背中を汗が伝う感覚がわかるほど緊張していた。
「リカさん、言い訳はよくないですよ」
玄の言葉は柔らかかったが、背後に潜む冷酷さがリカを震え上がらせる。
「私はね、成果しか求めていません。」
「そして、時間を無駄にするのが一番嫌いです」
「…はい。存じ上げております」
リカの額から汗がぽたりと床に落ちた。
その音がやけに大きく聞こえる。
「で?この後は?」
リカは息を整え、急いで策を口にした。
「幸い、リーダーとエレナの記憶改ざんは成功しております。」
「近いうちにリーダーから連絡があるかと存じます。」
「そして青を見つけ次第、ヴォルケンと共に捜索に向かいます。」
「鍵はまだ青の中にあるはずです。それを取り出せるのは私しかおりません」
彼女は自分がまだ役に立つ存在であることを必死に訴えた。
「なるほど、まだリカさんには利用価値があるということですね」
玄は微笑みを浮かべたが、目の奥は冷えたままだ。
「ですが…失敗のペナルティは課さなければなりませんね」
玄が指を鳴らすと、数人の部下がリカの目の前に4人の男を連れてきた。
その男たちは、青の部屋を監視していた者たちだ。
「あなたたちは、重要な人物を監視していたにもかかわらず、持ち場を離れました。」
「その行為は罪です。死をもって償いなさい」
口を塞がれた4人はもがきながら必死に何かを訴えようとしている。
リカは目をそらしたくなったが、視線を動かせない。
次の瞬間――。
「はぁ、またつまらないものを切っちゃった」
夜叉が呟いた。すさまじい速度で4人を切り裂いた刃は、鮮血と肉片を辺りに撒き散らす。
リカの顔にも血飛沫が降り注ぎ、冷たい感触がじわじわと広がっていった。
「BOSS…僕にあんまりつまんない仕事させないでよ」
夜叉は退屈そうに刃を振り、血を払った。
「いつもすまないね、夜叉くん。ご苦労さま」
玄は変わらぬ笑顔で夜叉を労う。
リカは放心状態で部屋を後にした。
背後には、切り裂かれた4人の無残な姿と、玄の冷たい微笑みが残っている。
廊下を歩くたび、血の匂いと感触がまとわりつくようだった。
ーーーそして狭間の世界 現在ーーー
僕はオディゴスが入れてくれた紅茶をすすりながら考えていた。
なぜリィナに力があるのかを、、、
そして、、、僕の娘、、、、
(まさかな、、、)
フッとこぼれた笑みにオディゴスが語り掛ける
「すみません我が主。主の大好きなマッカランをご用意できず」
「配下としては失格でございますね」
「オディゴス、、、そんなことないよ。ありがとう」
「ではリィナの力とこれからについてお話させていただきましょう。」
オディゴスはゆっくりと語り始めた、、、、
第六章~完~