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新しい記念日を君に ーカレンダーに記す、君への想いー

作者: 吉見 依瑠

「なろうラジオ大賞6」参加作品のため1000字の超短編です。

 一人の寂しさを紛らわすようにつけたテレビは、笑い声の効果音が耳障りですぐに消した。

 

 同棲して五年の史香は出張中で、帰りは日を跨ぐと先ほど連絡がきた。


「明日は初デート記念日か」

 

 史香は記念日を大切にする女性だった。付き合った日や誕生日は勿論、出会った日も初めてキスした日も記念日で、カレンダーは♡で囲われた数字で溢れている。

 

 初めは正直めんどくさって思った。でも史香はちょっといいおかずをデパ地下で一品買ってささやかに祝ったりするだけで、俺に何かを望むことはない。

 俺から祝うのは誕生日と付き合った日だけで十分とわかってからは負担に感じたことはない。

 むしろ仕事に追われる毎日に、ちょっとした彩りを添えてくれる日が、おめでとうと言い合える日があるのもいいものだと思うようになった。


 来月は史香の誕生日。その日くらいは俺が♡をつけようと、チェストに置かれた柴犬の写真の卓上カレンダーを手に取った。12月の記念日は、

 

 6日 ♡ 初デート記念日

 18日 ♡ 初映画記念日

 24日 ♡ 付き合った記念日


 ダメ元で告白したからイブと記念日が被るなんて思わなかった、と悔しがった史香を思い出して笑う。

 さて1月30日に「♡史香誕生日」と書き込もうかとカレンダーをめくると……

 

 一月の予定はまっさらだった。

 そんなわけない。一月は初キス記念日も初H記念日もある。


「どうして」


 史香はいつも早めに先の予定を書き込んでいた。嬉しそうに笑いながら。


「まさか」


 誕生日がくれば史香は三十歳。そういえば付き合いたての頃、三十までには結婚したいと言っていた。

 もしかしてなかなか結婚を切り出さない俺に見切りをつけたのか?


「嫌だ嫌だ……」


 史香のいない毎日なんて想像できない。

俺はペンを持つと30日に一度ペンを当て、止まった。

 誕生日? いや、史香は記念日が被ることを嫌がった。じゃあ……


 俺は1月22日に♡をつける。焦ったせいで少々歪だが仕方ない。そしてその下に書くのは、


「プロポーズ記念日」


 いい夫婦の日は本来11月だが、1月だって読めないことはないし、他の記念日とも被らない。

 新しい記念日を贈るから、どうかこれからも君と一緒にお祝いさせてほしい。


 数日後、カレンダーをめくった史香の絶叫が家中に響いた。

 一月の予定がまっさらだったのは、超絶好みの一月始まりのカレンダーを使いたかっただけらしい。


 それから毎年この日は俺が♡を書いて、デパ地下で食材を買ってお祝いする日になったのだった。


カレンダーをめくらないまま新しいカレンダーに替えようとした史香に「待って、俺この柴犬のカレンダーめっちゃ気に入ってるから1月までは使わせて」と懇願したところも入れたかったです。

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― 新着の感想 ―
面白かったのです。それで、余計なお世話と思いますが、「なろうラジオ大賞6」の募集要項に、「『作品タイトル』に過去テーマとされたワードを挿入して」ありますので、この作品タイトルでは要項を満たしていないか…
プロポーズ記念日いいですね。 思わぬサプライズになったみたいで良かったです。 結婚記念日に入籍記念日とこれから新しく増えますね。
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