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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第一章 来訪編
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第五羽. 辺境伯のご令嬢


 「さぁて、街を目指としますかぁ」


 そう言ってテトラから飛び降りる。テトラの体が収縮し見知ったサイズになと視界に魔物や魔獣の死体が多数目に入ってきた。大きくなったテトラに目を奪われて気が付かなかったが、辺り一面に魔物や魔獣の死体が転がっているのだ。


 「テトラ、周りのこれはいったい?」


その異様な光景についてテトラに尋ねると、


 『したいだよ~!』


 そのまんまの答えが返ってくるのみだった。そしてそれが何か?みたいな感情が伝わってくる。


 「そ、そうなんだが。。。そういうことを聞いているわけではなくてね。。。テトラが倒したのかな?」

 『えぇ~と、おそいかかってきたから、かってやったの!!!』


 褒めてぇ~、と言わんばかりの声が響いてくる。


 「あ、ありがとうな、テトラ!」


 その言葉を聞いたテトラが嬉しそう飛び跳ねているのを見ながら、こうしていると可愛いんだけどなぁ~、などと思いながらテトラのステータスを確認した。


 名前:テトラ

 種族:テトラエレメンタルスライム

 性別:不詳

 年齢:0歳

 レベル:15

 エーテル値:45000

 称号:なし

 スキル:四属性魔法、四属性魔法無効、物理無効、膨張縮小、

     分裂、吸収


 私のエーテル値もそうだが尺度が分からない。この値が高いのか引くのか判断できかねる。これについては街に到着した後に色々と鑑定してみるか。それよりも魔法無効に物理無効とはチートだな。テトラ、なんて恐ろしい子、と思っているとテトラが左肩に乗ってきた。そしてさも当然のように胸に移動を開始する。


 そのまま胸に収まろうとするテトラを摘まみ上げ、


 「そこに入るのはやめなさい!」


 と、一喝するが、


 『だって、いごこちがよいからぁ~』

 「とりあえず、肩のに乗ってること。それとむやみに乙女の胸に入らないこと。いいね!」


 当然のような返答をするテトラに対して注意するも、


 『は~い!』


 まったく反省していない返事が返ってきた。そんな返事を聞きながら再度左肩にテトラを乗せて、


 「肩に乗ること!」


 軽く注意をしているそんな時、微かにではあるが爆発音らしきものが聞こえてきた。聞こえてきた方向に意識を向けると人か魔物の区別は出来ないが20体近い反応が確認できた。


 「距離にして2000mくらいか。戦闘に人が関わっているかもしれない、確認しに行こう。」


 周りの魔物の死骸を収納し移動を開始する。短距離転移を繰り返し爆発音がした方向へ移動していると、


 『レベルが上がったことにより、転移スキルがアップグレードしました。』


 《オモイカネ》からの報告と共に転移先の空間座標が表示される。どうやら認識可能範囲なら座標地点に飛べるようになったみたいだ。座標地点への転移を実行に移すと現場から少し離れた木の枝に転移していた。


 気付かれずに様子を窺うと豪華な馬車を二十人の野党?が取り囲んでいる。馬車の前方に15、後方に4。あと馬車の周りには既にこと切れた騎士数名といまだ抵抗を続けている騎士が四人、明らかに騎士側が分が悪い。


 「辺境伯騎士団の名にかけて、お嬢様を守り切れ!」


 鼓舞を続けているが風前の灯なのは自明の理である。辺境伯といっているから貴族か。あまり貴族とは関わりたくはないが、見捨てるのも後味が悪いか。せめて真っ当な貴族であることを祈るか。。。

 そんなことを考えながら枝から飛び下り、戦闘現場へと近づいていく。


 「横槍を入れて申し訳ないが、どちらが悪者かな?」


 私の質問に対して、隊長らしき人物が即座に返答する。


 「我々はアデルフィート辺境伯が騎士団。ご助力頂きたい。」

 「私も打算があるのでお忘れなく!」


 そう言って騎士の前に転移を行い、質問を投げかける。


 「この方達の生死は問わないと思っていいのかな?」

 「あぁ、問わない」

 「了解、こちらは私が引き受けるので、後方はお願いします。」


 騎士に答えながら指を鳴らす。すると馬車を中心に結界が形成される。


 「多少の攻撃なら弾くので馬車は安全ですよ。」


 『テトラ、念のため馬車の護衛を頼む。』

 『りょーかい!』


 そういって肩から馬車の屋根に移動していった。


 『それと《オモイカネ》、今回は支援なしでね。対人戦闘訓練も兼ねているので。』

 『承知しました。ただし、もしもの場合は介入します!』


 《オモイカネ》の強い意志を感じ、心配性だなぁ、と思っていると野党から罵声が飛んでくる。


 「無視してんじゃねえぞ!」

 「たかが獣風情が調子になるなぁぁ!!!」


 勝手に話が進んでいることに怒り心頭のようだ。


 正面にいる男が私の体を舐め回すように眺めたあと、


 「獣風情だがいい身体してるじゃないか。あとでたっぷり遊んでやるよ!!!」


 その台詞と共に下卑た笑いがこだまする。


 「はぁ、その要望は叶えられないよ。なにせここで全員、私に刈られるのだから!」


 溜息交じり告げると、《ツクヨミ》をストレージから出現させる。


 「かかってきな!」


 左手の掌を上に向けて、指を折曲げる動作をしながら野党を挑発する。


 「全てを略奪しろ!!!」


 ボスらしき者の掛け声に呼応して野党が一斉に迫ってきた。


 まず真正面から向かってきた敵の剣を柄で弾き、鳩尾(みぞおち)あたりに蹴りを入れ後方へと吹っ飛ばす。これで中央は暫く足が止まる。

 次に左右から迫ったきた6人を鎌の一振りで胴体を上下に切断。矢継ぎ早に敵後方から飛んでくる矢を鎌を回転させることで対処。


 「残り8」


 最初に蹴り飛ばした敵はもう起き上がることはない。そして一連の出来事に敵の足が止まる。


 「先程までの威勢はどうした?」


 「この身体を(もてあそ)びたいのだろ。さぁ、かかってくるがよい!」


 左腕を胸の下に持って行き胸を強調し、舌なめずりしながらセックスアピールを行う。


 「来ないのか。来ないなら、こちらから行くぞ。」


 急接近しそのまま鎌を振り抜き2人の首が宙に舞う。そのまま体を回転させながら前進し弓を構えている一人を袈裟斬りに、その右隣を左逆袈裟斬りにて切り裂く。


 次の行動に移ろうとしたとき、何かを感じ後ろへ飛びのく、今までいた場所に炎が着弾する。


 「ほぉ、よく避けたな。」

 「あとは俺がやる。下がれ!」


 生き残っている三人が後ろへ下がると一人の男が前へ出てくる。


 「俺の名はガロア、この盗賊団を率いている。名前を教えちゃくれないか?」

 「私はセリア、ただの通りすがりだ」


 私が答えると同時に切り掛かってくる。初撃をかわし、切り返したところを柄で受ける。


 「かなり、やるな。どうだ俺の仲間にならないか?」


 「冗談にしても笑えないな。弱いやつの下につく気はない!」


 剣を押し返しガロアが数歩下がったところに、《ツクヨミ》を回転させ石突を鳩尾(みぞおち)あたりに叩きつけると同時に魔法を放つ。


 「シャドー・オブ・ペイン」


 ガロアは体を数回痙攣させるとそのまま崩れ落ちた。残りを確認すると走り去る後ろ姿が見えた。放っておくを選択し、《ツクヨミ》を格納し後ろを振り向く。そちらも制圧が完了したところだった。


 剣を鞘に収め、隊長らしき人物がこちらに近寄ってくる。


 「私はパブロフ、この隊の隊長を務めている。貴殿には感謝する。」

 「そんなに気にしなくていい。打算もあるしね。」


 地面に伏している敵の首領を見て質問をしてくる。


 「これはどうなっているのだ?」

 「あぁ、これは私の魔法で動けなくしている。麻痺、暗闇、毒といった状態異常を対象に付与する魔法です。」


 ストレージから紐を取り出し、ガロアを縛り上げながら質問に答える。


 そんなやり取りをしていると、馬車から一人の少女が降りてきた。その少女は金髪でぱっと見でも高価で仕立ての良さがわかる衣服を身に着けていた。この世界の基準はわからないが、少女は日本の基準でも美人の分類に入ると思われた。


 少女が私の前まで来て一礼する。その所作は外見も相まって優雅でいっそうの高貴さを醸し出していた。

 

 「この度は危ないところを助けて頂き、誠にありがとうございます。」

 「アデルフィート辺境伯の次女、シルク・アデルフィートと申します。」


 シルクに対して軽く頭を下げ、自己紹介を行う。


 「これはご丁寧に、私はセリアと申します。しがない旅人です。」


 シルクは遠慮がちに、何かを尋ねてくる。


 「あ、あのぉ。。。セリア様。これから、父が治める街、領都ローレルに向かうのですが、よろしけれご一緒していただけませんか?」


 「構いませんよ。ただ無作法なのはご了承ください。」


 提案に笑顔で答えると、満面の笑顔を湛えるシルクがいた。


 「では、ご一緒に参りましょう!」


 シルクはセリアの手を取り歩き出そうとする。


 「セリア様、少しお待ちください。私は少々やることがあります。お先に馬車にお戻りください。」


 シルクを馬車へと促し、パブロフに向き直る。


 「パブロフ殿、亡くなられた騎士達の遺体はどうされるのですか?」


 「騎士達の亡骸はローレルまで運びたいのだが。。。」


 亡くなった騎士達をローレルに連れて帰れない悔しさに顔を歪めるパブロフを見て、セリアは一つの提案を持ちかけた。


 「亡くなられた騎士達は私がローレルまでお運びいたします。」


 「それはかまいませんが、どう運ぶのでしょうか」


 パブロフは疑問に思い問いかけた。


 セリアが騎士の亡骸に近寄ると、亡骸が何もなかったかのように消えていく。全ての亡骸を収容し呆然としているガロアのもとに戻ってくる。


 「色々と収容する能力を持ち合わせているので」


 「助かります。このままここで埋葬しようと思っていました。これで彼らの家族に引き渡せます。」


 パブロフが深々と頭を下げ、お礼を言う。


 そのあと、野党の遺体処理などを済ませ、出発の準備が整い領都ローレルに向かい始めたころには空が赤く染まり始めていた。



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