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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第六十九羽. 過去の遺産


 「やった、の・・・?」


 かすれたアヤメの声にエルヴィンが反応する。


 「あっ、アヤメちゃん大丈夫かいっ。」


 「まだ、頭がふらふらするけど・・・大丈夫っ。」


 頭を押さえながらエルヴィンに応えるアヤメ。


 「まだ横になっていた方がいいよ。まだみんなも気を失ったままだからっ。」


 エルヴィンの言葉にアヤメが周りを見渡すと、アルジェント、ヴェイン、メルディナの三人が横たわっていた。


 「これって・・・」


 「詳しいことは、後で話すよ。だからもう少し休んでな。」


 「それじゃぁ、そうするよ。」


 アヤメが再び横になった時、丁度セリアがエイドロンの残骸を回収して戻ってきた。


 「エルヴィンさん、みんなの様子は。」


 「それなら、ちょっと前にアヤメちゃんが目を覚ましたところだよ。」


 「セリアねぇ、ごめん・・・。」


 身体を起こそうとするアヤメを制して、横にしゃがみ込むセリア。


 「全然・・・役に立ってないよね・・・。」


 「そんな事は、ないよ。十分役に立っているさ。それでも自分が許せないなら・・・後はアヤメ自身が、どうするかを考えるんだっ。」


 「・・・うんっ・・・。」


 アヤメは顔を腕で隠しながら頷く。そんなアヤメの頭を優しく撫でていると、アヤメの隣で横たわっているメルディナの声がふたりに届く。


 「やれやれ・・・おぬしは相変わらずアヤメに甘いのじゃ。」


 「メル、大丈夫なの?」


 アヤメが顔を横に向け、心配そうにメルディナを見つめる。


 「なに・・・心配はいらんのじゃっ。確かに・・・酷い目にはあったがの。」


 油断したとはいえ、自分が気絶させられるとは思っていなかったメルディナの顔には悔しさが滲んでいた。


 「セリアねぇ、聞きたい事があるんだけど。エイドロンを倒した時の技って何?初めて見たけど。」


 「なに、単なる抜刀技だよっ。」


 「単なるって・・・僕の目には追えなかったよ。鞘から抜いたのすら分からなかったし。」


 「それだけ、動きが速かったということさ。」


 「それで、名前はあるの?」


 「・・・表技(ひょうぎ)(ぜろ)ノ型 無月、かな。」


 「アヤメはもう少し休めっ。メルは本当に大丈夫かっ。」


 「気絶させられただけなのじゃ。それ程心配はいらん。それにしてもおぬしの技を使ってくるとは・・・味方だと頼もしいが、敵にすると・・・あんなに厄介だとは思わなかったのじゃ。」


 身体を起こしながら、セリアの顔をに目を向けるメルディナ。


 「なら・・・私のありがたみが、分かったかな。」


 「やれやれ・・・なのじゃっ。」


 メルディナは立ち上がると、肩をすくめてセリアの言葉をやり過ごす。


 「うっつぅぅ・・・。」


 次にヴェインが目を覚ます。


 「ヴェイン、目を覚ましたか。」


 「セリア、二層に続き三層も戦闘不能とは・・・申し訳ないなっ。」


 「ミラージュ戦は私にも原因がある。気にするなっ。エイドロンも想像以上に強かったからな。」


 悔しさの滲む顔をしているヴェインに向かってセリアが言葉を続ける。


 「そんな悔しいなら・・・もう少し訓練きつくするかなっ。」


 一瞬驚きの顔を見せたヴェインだが、次の瞬間には真面目な顔で頷く。


 「あぁ、頼む。」


 差し出されたセリアの手を力強く握ると、ヴェインは起き上がる。それからしばらくしてようやくアルジェントの意識が戻った。


 そして・・・。


 「セリア様、大変申し訳ありません。セリア様の盾として責を果たせず、傷を負うなど・・・。」


 気が付いた途端、アルジェントはセリアに土下座を始めた。


 「そんな事は気にしていない。それよりも怪我もしていたようだし、調子はどうなんだ、アル。」


 「調子の方は、まったく問題ありません。二度とこんな失態を犯さぬよう精進いたします。」


 土下座をするアルジェントを無理やり立たせたセリアは、アルジェントに対して言葉を紡ぐ。


 「そうやって私の為に頑張るのは嬉しい事だが、自分の身体も大切にしてほしい。」


 「はいっ!」


 セリアの言葉に力強く応えるアルジェント。


 「よいしょっとっ。僕も、もう大丈夫だよっ。」


 アルジェントの事がひと段落するとアヤメが起き上がり、身体を軽く動かしながら自分も大丈夫な事をアピールした。


 「セリアちゃん、これで全員・・・復活だねっ。」


 「えぇっ、それじゃっ・・・ハノイの塔へっ。」


 第三層に出現した転移門をくぐった先は、中央に装置のような何かがあるだけのこじんまりとした空間だった。セリアはリアンから受けた説明の通りに中央にある装置にリアンの血を吸った布を置き、軽くエーテルを流す。


 ”十三王家・クラヴィウス家の系譜を確認。ハノイの塔への転移を開始します。”


 装置から言葉が流れると、装置を中心に魔法陣が展開される。魔法陣が発する光がセリア達を包むと一瞬にしてその姿が消える。



 ◇◇◇◇◇◇


 重力の感覚が一瞬だけ喪失するような浮遊感と共にセリア達の視界が反転する。再び足裏にいつも感じる重さが戻ると、そこはまったく異なる空間がセリア達を迎え入れる。


 セリア達が今まで外から眺めていた青白い魔晶石の輝きが塔の内部にまで及んでいた。セリア達の視界に広がるのはハノイの塔、第一層。


 「やっと・・・ここまで来たね。」


 「えぇっ。」


 エルヴィンは自分を見るセリアに笑みを向けると、先頭を切って歩き始める。


 リアンの説明によるとハノイの塔は全部で四階層になっている。第一層ではシャドウハノイで対峙した防衛機構の開発やハノイの塔建設に関わる研究開発が。第二層では当時の動植物の標本や遺伝子因子が保管され。第三層には何らかの観測機器が。そして第四層はテュラノスが待ち受ける場所。


 第一層を手分けをして探索して中、とある部屋がセリアの目に留まった。部屋の扉はセリアが前に立つと音も無く横にスライドする。部屋の中には端末が一台。


 セリアは備え付けてある椅子に腰を下ろすと、軽快にキーボードを叩き始める。次々と流れていく情報。その中でとある情報にセリアの手が止る。


 【研究記録:No.IXーAーGP03】

 ”封印区画:C3ー06S。種族:星霊駿アストラル・ステリオン。分類:幻獣種。性別:牡”

 ”封印状態での保存に成功。因子劣化なし。反応波形は低く抑えられているが、生存反応継続中”


 この表示を見た時、セリアの中で何かが囁き始めた。その表示からセリアは目が離せなくなっていた。そんな中、《オモイカネ》からとある提案が行われる。


 『マスター、この端末から得られる情報を可能な限りサルベージする事を提案。』


 『あ、あぁ、分かった。』


 ーーー今の感覚は、いったい・・・。


 突然襲われた感覚に疑問を抱きながらも、セリアは《オモイカネ》の提案を受け入れた。セリアは掌から極めて細いエーテルの糸を作り出すと掌をかざす。エーテルの糸が端末に絡まり、情報の海へと接続し、情報を吸い上げ始めた。


 『マスター、終了までの時間で報告があります。』


 『空間の歪みでも広がったか。』


 『そちらは問題ありません。魔法陣の解析により四体の獣王である蹄王・オルデニール、翼王・グリュオルニス、甲王・ヨルゼル、牙王・ガルザヴァルグの創造が可能となりました。』


 ーーー突然、何を言っているんだ・・・《オモイカネ》は。


 そして、セリアは蹄の塔(ホプレー)でのとあるシーンを思い出す。エーテルの塊の周囲を高密度な魔法陣が展開され、最終的にエーテルの塊が蹄王・オルデニールに変じて行く様を。


 そこで、セリアの頭にとある疑問が(よぎ)る。


 『オルデニールは私が戦ったから、魔法陣が解析出来るのは分かる。だが他の三体はどうしたんだっ。』


 『他の三体については、戦闘の支援を行った際に個体名:アルジェント、ヴェイン、メルディナの視界を通して情報を取得。』


 『戦闘の支援まあ・・・いいが、それと視界のジャックとは関係ないと思うが。』


 『そこは・・・。』


 『そこは?』


 『マスターに有益な情報が得られるのではと推察。』


 『普段からやっているのか?』


 『否。本事案は緊急性の高さから実施。』


 『これからは、報告を義務付ける。可能な限りな・・・。』


 『承知しました。』


 『セリア様、今どこにいらっしゃいますか?』


 《オモイカネ》との念話を切り上げてすぐに、アルジェントから念話が入る。


 『アル、何かったか?』


 『いえ、もう集合時間になります。』


 『もうそんな時間か・・・そこで、待っていてくれ。もう少ししたらそっちに向かう。』


 『かしこまりました。』


 『マスター、サルベージ完了。』


 「も、もう終わったのか?」


 セリアは想像以上の速さに驚き、念話でなく口に出していた。


 『中にどんな情報が入っているかの解析はこれからになります。』


 『情報サルベージしたんじゃないのか?』


 『正確には、情報が格納されている領域を丸ごとサルベージした為、中にどのような情報があるのかは現段階では不明です。』


 ーーーそれでもかなり、速い気もするが・・・まぁいいか。


 『それじゃ、引き上げるかっ。』



 ◇◇◇◇◇◇


 アルジェント達の合流したセリアは今、第二層にいる。そして、”封印区画:C3ー06S”と書かれたプレートの前に。プレートの横には漆黒の身体に、白銀の(たてがみ)をたくわえた一頭の馬型の魔物が封印されていた。


 プレートに手を当てるとセリアはおもむろに操作を始める。


 「セリアちゃん、何をしているのかな?」


 「なにって、この魔物をここから解放しようかと・・・。」


 「そうか、解放か・・・何を言ってるんだ。そんなの、駄目に決まっているだろぉっ。」


 「なぜですか。」


 「何故って、決まっているじゃないかっ。危ないからだよ。未知の魔物なんだから何が起こるか分からないっ。」


 「大丈夫です。そんな事は起こりません。」


 自信に満ちたセリアの目に、何か制御する術でもあるのかと思いエルヴィンは問いかける。


 「大丈夫って・・・何か根拠でも?」


 「私の・・・勘でです。」


 「勘って・・・。」


 そんな問答をしている間にセリアは封印を解除していた。


 「セリアちゃん、まだ・・・。」


 エルヴィンの言葉も虚しく、プシュー、という音と共に魔物を拘束していた器具が外れ、魔法陣が消えていく。静かに開かれる瞳は蒼と紫の双彩、白銀の(たてがみ)が光流のように揺れ、漆黒の身体には星のような瞬きが生じ始める。


 今まで反対していたエルヴィンの瞳が熱を帯び始める。


 「ま、まさか・・・星霊駿アストラル・ステリオン


 「エルヴィンさん、知っているんですか?」


 「知っているも何も・・・伝承に語られる伝説の魔物だよ。既に絶滅したと言われている。」


 「セリアちゃん、この階層って・・・もしかして。」


 「えぇ、絶滅した種が保存されています。」


 「セリアちゃん、一つ確認していいかな。」


 「なんでしょう。」


 「見る限り、ここには色々な動植物がいる。それを解放しようとしてる?」


 「それがなにか・・・。」


 「何か、じゃない。研究者の端くれとしてそれを容認出来ない。」


 そんなふたりの言い争いを邪魔するように星霊駿アストラル・ステリオンが割って入る。そしてセリアに向かって頭を下げる。セリアは星霊駿アストラル・ステリオンの首に優しく撫でながら静かに尋ねる。


 「私達と一緒に来るか。」


 セリアの言葉を肯定するように星霊駿アストラル・ステリオンが小さく鳴くと、セリアが額に手を当てる。セリアの手から流れ出たエーテルが、星霊駿アストラル・ステリオンに流れ込む。


 「今日から、エルミオスだ。」


 何故だか分からないが、自然とその名が口から出た。ここにエルミオスとの従魔契約が締結する。


 『よろしくね。ぼく、てとら。悪いスライムじゃないよ!!!』


 テトラがセリアのフードから飛び出すと、エルミオスに飛び乗り、恒例の挨拶を始めた。


 『よろしく頼む。我が名はエルミオス。』


 「星霊駿アストラル・ステリオンとの従魔契約は素晴らしい事だけど、その他の解放は・・・さっきも言った通り容認できない。」


 エルヴィンはいつになく真剣な眼差しを向けながら話を続ける。


 「ここにいる動植物、そして魔物達は絶滅したてから久しい。食物連鎖の環から外れていた物がその環に加わったらどうなるか。最悪、既存の食物連鎖を破壊しかねない。それに今の人類に有害な病気を持っていたら、セリアちゃんはどうやって責任を取るつもりなんだい。だから断固として反対する。」


 「封印区画にいる物については病原体の心配はないでしょう。エルヴィンさん生態系への影響は100%とは断言出来ませんが、ほぼ大丈夫でしょう。私が管理している場所で解き放ちますから。」


 「セリアちゃんの管理している・・・場所?」


 「えぇ、ひょんなことからから手にいれた場所があるんです。外界と隔絶してますから、影響はほとんど無いと思います。」


 「あ、あそこかぁ。」


 アヤメはそれが何処なのか思い浮かび、言葉を漏らした。アルジェント、ヴェイン、メルディナの三人もアヤメの言葉に頷く。


 渋々ではあるがエルヴィンが納得すると、手分けをしてストレージへと格納し始める。その様子にエルヴィンは疑問を抱く。


 「あ、あのさぁ、封印区画の動植物や魔物は何処にしまっているんだい。」


 「何処って、セリアねぇのストレージに。」


 エルヴィンの質問にアヤメが当たり前のように答える。セリアが物の出し入れをしているのを目の当たりにしているので、その点はエルヴィンも分かっている。


 だが・・・。


 「セリアちゃんの、そのストレージに何でアヤメちゃん達がアクセス出来るんだい。それにセリアちゃんのストレージは時間停止タイプじゃないのか。」


 作り置きしていた料理が冷めずにいたので、エルヴィンはそう推測した。


 「さぁ、なんでだろぉ。」


 ーーーこれは、私が説明しないとダメだな・・・。


 アヤメの回答を傍で聞いていたセリアが割って入る。


 イングから託されたこのブレスレッドには、2つの領域が存在する。メインの格納領域で物質的な時間の流れが完全に停止しており、腐敗・蒸発・錆・劣化といった一切の変化が起こらない停時主層(テンポラル・ゼロ)と、時間の流れが1/10,000以下に制御されており、微弱ながら酸素やエーテルの循環が保たれ、生命活動を”ほぼ停止状態で維持”できる遅延副層(クロノス・プール)がある。


 この2つの領域にアクセス出来るように、庭園(ガーデン)のメンバーにはブレスレッドを配布している。それぞれのブレスレッドからアクセス出来るようにしたのは、《オモイカネ》の力が大きいのだが・・・。


 「それ・・・僕も欲しいっ。」


 セリアの説明を聞いたエルヴィンは、当然のことながらブレスレッドを欲しがった。


 「説明した通り、これは庭園(ガーデン)の証ですから。」


 「じゃぁ、僕も庭園(ガーデン)に入るっ。」


 「あなた・・・ユークリッド機関のトップでしょっ。」


 「あまり未練ないしっ。」


 「そんな事を言っていると、ミーアさんに叱られますよっ。」


 ミーアの名前を出されたエルヴィンは、たじろぎ口を(つぐ)んだ。そうこうしているうちに、封印区画にあった絶滅種を全て回収しえた。


 サルベージした情報の中には、遺伝情報しか残っていない動植物や魔物が多く含まれていた。それらがラピュタの地で蘇る事になるのだが・・・それは別の話である。


 第三層には重要な観測装置等が置かれていたが、今のセリア達にとってそれの重要度を理解するのは難しい事であった。大きすぎるのもあり、ストレージへの格納も難しく、そのまま捨て置く以外の選択肢は存在しなかった。


 そして、ついにテュラノスが待つ最終層にセリア達は踏み入る。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

作品を読み、少しでも「面白い」、「先が読みたいと」と感じた方は、ブックマークと評価をお願いします。

気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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